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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
2章

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第49話 現実の生物だからこそ


 目の前に迫る巨体に対して、とにかく両手の魔剣を叩き込んだ。

 遅い、ゲームの時よりもずっと。

 まるで血管の様に張り巡らされたマグマの道筋。

 ソレは相手にとって血液と同じだったのだろう。

 しかしソレは、クウリとダイラによって遮断された。

 血管内で血液が冷えて固まった状態に等しいのかもしれない。


「――――っ!」


 未だアイスドリンクの煙に包まれている為、声に出さず心の中でスキル名を叫んだ。

 だというのに、しっかりと効果は得られた様で。

 デカイ岩の身体を切断していく。

 大丈夫だ、通る。

 刃が抜けると言う事は、その個所はくっ付かない限り使用不可となる事だろう。

 そしてもう一人、俺と一緒に飛び込んだトトンに関しては。


「――っ! ――!」


 口を塞ぎながらも、ハンマーを相手の頭に叩き込んでいた。

 流石、物理担当。

 普段は盾ばかり使っているのに、今回はその必要無しと判断したみたいだ。

 一撃で相手の全身にヒビが入り、今にも崩れそうな威力を叩き出している。

 これもまた、“現実だからこそ”の効果なのだろう。

 ゲームでは数字だけで収まっていたダメージが、現実では間違いなく相手を蝕んでいく。

 だからこそ俺達は、リアルでもレイドを攻略出来る筈だ。

 ニッと口元を吊り上げつつ、こちらも飛び込みスキルを連発した。

 今だ、この瞬間が攻撃のチャンスなのだ。

 第一形態、女神の様な姿をしている内はほぼ魔法攻撃しか効かない。

 と言うより、武器を用いた物理攻撃が殆ど避けられるか、前衛が接近するとドンドン足場を悪くしていくのだ。

 ゲーム内では環境自体に攻撃など出来なかったので、足場が悪くなればそのまま戦う他無かったが。

 今回は違う、全てに影響を及ぼす事が出来る。

 もしも失敗した場合は、クウリが“奥義”を連発してどうにか第一形態を乗り越える。なんて話をしていたのだが。

 結局上手く行ったのだ、だったら……俺達が失敗するのは、非常に恰好悪いだろう。


「クッ、ククク!」


『呼吸を止めろ、息を吸うな。マジでこれドライアイスっぽいから、二酸化炭素中毒になるかも』

 などと、言われてはいたが。

 どうしても、笑い声が零れてしまった。

 お前は凄いよ、クウリ。

 土壇場でこんな行き当たりばったりな作戦を実行してしまう事も、それが全て良い方向に転がる“運”も。

 実際溶岩神ペレの魔力を奪い続け、火山の様子は大人しい。

 更には氷魔法と特殊アイテムの影響で、前衛に必要な足場が出来た。

 もっと言うなら、その影響で高温のデバフを受けていないのだ。

 全てが良い方向に転がっている。

 レイドボスだというのに、誰もダメージを負う事無く第二形態へと進み。

 更にはソレさえも今では切り刻まれている状態。

 ゲームとリアルの違いというのもあるが、やはり……恐ろしいよ、お前は。


「トトン、イズ! 一旦引け! “トルネード”!」


 リーダーの言葉に攻撃を止め、後ろに跳躍してみれば。

 “トルネード”の魔法より周囲の空気が集められていく。

 竜巻が起こってはいるが、視界がクリアになっていく事を思うに、周囲の煙を吸い上げているのだろう。

 これなら、呼吸が出来そうだ。

 などと思いつつ、相手を見つめていれば。


「カッチカチボロボロになったその身体で、俺の攻撃が受けきれるか? ちょいと試してみようじゃねぇか……魔法、効かないはずだもんなぁ? “覚醒”! “プラズマレイ”!」


 天空から、クウリのレーザーが降り注ぐのであった。

 もはやただの冷たい岩となった相手にソレを防ぐ術は無く、攻撃によって細切れになっていくレイドボス。

 あぁ、なるほど。

 物体として、生命体として。

 そういう存在になった時点で、コイツの前に立つのが間違いなんだ。

 思わず、そんな感想を覚えてしまった。

 こんな少ない人数で、ゲームの時よりも圧倒的優位に立ちながら、レイドボスの第二形態を討伐してみせたのだから。

 しかも、奥義を使わずに。


「は、はははっ。底が知れないな、本当に」


「それを言うなら、アイスドリンクを作ったダイラもじゃない? あんな面倒臭い錬金レシピを、未だに記憶してるとか。クウリに関しては、上手く行って良かったー程度に思ってるみたいだけど」


 トトンからはそんなお言葉を頂いてしまったが。

 確かに、俺やトトンは感覚的にサブ職のスキルを使っているが。

 あの二人はそうもいかないのだから。

 ダイラの錬金術に関しては、“レシピ”を確認する術が現状存在しないのだ。

 だというのに、幾多のアイテムの組み合わせを正確に覚えているというのも……ちょっと俺には真似出来そうにない。

 フィールドが不利なら、全て変えてしまえ。

 前衛が踏み込む場所は全て確保、後はそもそも事前に潰してしまえという戦法。

 ネトゲプレイヤーらしく“嫌らしい”思考回路を持ち合わせながら、現実的に対処してみせた二人。

 些か無理矢理というか、ごり押しな所はあったが、上手く行ったのならそれで良い。

 だからこそ。


「やってくれるな、相変わらず」


「ま、いつも通りだね。でも第三形態が来るよ」


 そんな言葉を交わしながら、トトンは武器を盾に変更して構えるのであった。

 さぁ、始めようか。

 溶岩神ペレの最終形態。

 攻撃力も防御力も前とは比べ物にはならないが、全ての攻撃が平等に通る様になる。

 だからこそ、ここからは総力戦。

 俺もまた魔剣を両手に構え、低く腰を落としていれば。


「大体分かって来た、こりゃもうアレだ。ちゃんと相手にしてやる必要なんて無いわ。レイドボスも物体として存在するなら、結構普通に対処出来るな。つぅわけで、先手撃つぞー」


 上空から降りて来たクウリが、呆れた声を上げながらも杖を振り上げた。

 あぁ~えぇと、これは……もしかして。


「最終形態なのに、コレだけ足場がしっかりしてるんだ。わざわざ相手がフィールドを荒らすの待ってやる必要はないだろ」


「クウリ、あの……えぇと、相手はレイドボスだ。その一撃で倒し切れる訳が無い」


「“ゲームなら”な? この一撃を受けて、傷一つ付かねぇ相手が居るならそうなるだろうけど。ダメージ表記じゃなくて、真正面からこの攻撃を生身で受けて。それでも死なないのなら、改めて……相手してやろうじゃねぇか!」


 それだけ言ってクウリが翼を広げれば、ソレに応えるかのようにマグマの中からはヤツメウナギの様な魔物の影が見えて来た。

 イベントのままで言えば、第三形態がマグマから飛び出してくる映像が流れる所なのだが。

 それに対し、ウチの高火力担当は。


「ムービースキップだこの野郎! 飛び出した瞬間に死にやがれ! “デウス・マキナ”!」


 彼の背後から、クウリを模した巨大な人形が現れ。

 口を開いたかと思えばマグマの中に極大レーザーを叩き込んだ。

 ゲームで言うのなら、これでも数割HPを削れた程度だろう。

 しかし現実ではどうか。

 相手の頭はレーザーに焼かれ、紛失し。

 首が無くなったボスが、マグマの中に再度叩き込まれていくではないか。

 コレが、リアルだからこそ起こる弊害。

 ゲームとは違い、徹底的に相手を倒す必要が無いという事態。

 その一片を、完全に証明してみせた。

 俺達はレイドボスでさえ倒せるのだと、証明してみせた。

 つまり、アレだ。

 俺達の“奥義”は、レイド戦でさえ一撃でも決定打になると言う事で。

 それの検証として、今回の戦闘はかなり役に立ったと言う事で良いのだろう。


「レイドボスも、所詮は生物って事だねぇ……え、待って。そうなって来ると、クウリの攻撃ってマジで魔王級って事にならない?」


「俺達だって、人の事言えないんだぞ? トトン。見た目はクウリの奥義より控えめだが、それでも威力は同じように高いんだからな」


「俺は違うからね!? 俺の奥義は攻撃系じゃないし! 皆程危険な存在じゃないからね!?」


 大規模戦闘が終わった後だというのに、すぐさま普段のテンションに戻る仲間達。

 本当に、逞しいモノだ。

 なんて、笑って終われれば良かったのだが。


「ん? 待て、何か変だ」


「止めろよ、イズ。そういうのフラグだぞ? 第四形態なんてペレには無かったし、今の所他のモンスターの気配も――」


 そこまで言って本人も気が付いたのか、口を閉じたまま足元を見下ろした。

 地面が、揺れているのだ。

 しかもその揺れは徐々に大きくなっていき。


「なぁ、コレってもしかして……普通に噴火しそうになってる?」


 ヒクヒクと口元を揺らすクウリが、火山口を見下ろしているが。

 とてもじゃないが、この地震は普通じゃない。


「奥義ぶっぱして、火山に衝撃が加わったから……とか?」


「だとしたら、相当不味いな」


「ちょっとちょっとちょっと! 喋ってないで逃げようよ! クウリ羽! もしくはテレポート!」


 ダイラの声にすぐさま皆反応し、クウリにしがみ付いた。

 そのまま上昇して、上空から火山を見下ろしていると。


「あぁ~あ……こりゃひでぇな」


 見事に、噴火が始まってしまった火山。

 これは……塞き止めてから帰った方が良いのだろうか?


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