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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
2章

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第26話 次の街へ


「着いたぁ! 新しい街!」


 ちびっ子トトンが、街に到着した途端にそんな声を上げた。

 夜の内には俺が飛行するからグングン進んだのだが、やはり昼間の間は地道に歩くか時間を潰す他なく。

 マップ上でいう“近くの街”とやらに到着するまで、結構な時間を有してしまった程だ。


「つっかれたぁ……ねぇクウリ、今日はもう休まない?」


 この中で一番体力がないであろうダイラは既にげっそりとしているが……まぁ、街に近付く程当然人が増えるので。

 夜の間でも迂闊に飛び回る事が出来ず、最後は結局徒歩になってしまったので仕方ない。

 そんでもって、ここまで来る間に分かった事もいくつか。

 先程ダイラが一番体力がないとは言ったものの、やはりアバターの影響が強いのか。

 元々の男の姿より、ずっと長い間歩く事が出来たのは事実。

 もっというなら、トトンが盛大にコケようがかすり傷一つ負わなかった。

 つまり身体能力や外皮……って表現は何か嫌だけど。

 そういうのも軒並み強くなっていると考えて良いのだろう。

 まぁ元の姿だったら戦闘とか無理だしね、ある程度察してはいたんだけど。


「宿を探すのも良いが……先にギルドに移住届けを出した方が良いんじゃないか? 何かあった時に、登録が前の街のモノでは色々と不味いかもしれない。すぐにこの街を出る、というのならいらないかもしれないが」


 体力的にも、思考的にも一番キッチリしているイズがそんな事を言いだした。

 まぁ確かに、無いとは思うが衛兵に捕まっちゃった時とか不味いかもね。

 大変な思いをしながら、ここまでテクテクとやって来たばかりなのだ。

 強制送還されたら堪ったもんじゃない。

 別に急ぎの旅をしているという訳でもない以上、すぐに街を出るような事態は起こらないだろう。

 というか、売れる物が多そうなら長期滞在も視野に入れたい所。

 何たって、ココは……。


「まずはイズの言う通りギルドだなぁ。んで、売れそうな物を探る。それこそ、見た目からして“有りそう”じゃないか? たんまりと、売れそうなアイテムが」


 ニッと口元を吊り上げながら周囲の露店を眺めてみれば。

 鉱石、とにかく鉱石。

 武器屋や道具屋も多い様で、結構な数の店が賑わいを見せていた。

 もしかしたら火山が近いのだろうか?

 だとしたら端から鉱石の種類と名前を聞き出して、俺達が所有している物と被ってさえいれば。

 インベントリの肥やしになっているアイテムを売れる、働かなくても金が入る!

 モンスターは実際に目にしてみないと何とも言えないが、鉱石は街中で現物が見られるし。

 店員に聞けば、どこでどれくらい採掘出来るなんて話も聞けるかもしれない。

 それらに合わせて、売るモノを絞って小出しにしていけば前みたいな事にはならないだろう。

 もう王族に目を付けられたり、おかしな仕事ばかり任せられるのは嫌だからな。

 この街で俺達は、とても大人しく過ごそうと決めているのだ。


「クウリー! この店鉱石の買い取りもしてるってー! 売って昼飯代作ろうよー!」


 一人突っ走ったちびっ子が、露店の前で手を振っているが。

 お馬鹿、何をどれくらい売って良いのかまだ分からないでしょうが。


 ※※※


「あぁ~……いらっしゃい。お嬢ちゃん達、何? 依頼?」


 ギルドに辿り着き、意気揚々と手続きをお願いしようとした俺達の前に。

 ものっ凄くダレた受付嬢さんが、片肘を付きながら此方を眺めていた。

 た、態度悪っ!? というか物凄く面倒くさそう!


「あ、あのぉ~俺達今日この街に来たので、移住というか、移転の手続きを……」


 そういいながら、全員の身分証を差し出してみれば。

 お姉さんは溜息を溢しながらソレを受け取り。


「あーはいはい。向こうの街から来たのね、了解。全く……あそこは誰彼構わず登録し過ぎなのよ。はい、んじゃこの書類書いて。所属ギルドと、住んでる街の変更届だけで良いわよ。国境を越えたら、また書く書類が増えるけど。この街も、ディアス国の管轄地だから」


 一応仕事はちゃんとしてくれるらしい。

 それから……ほーん? なんか国とか街とか、あんまり意識して無かったけど。

 そっか、ここもあの国が管理してる土地なんだ。

 日本から出た事もない平々凡々の庶民だったので、外国といえば海の向こう! みたいなイメージあったけど。

 今の俺達は他県に引っ越した、みたいな感覚に近いのか。

 アニメとか漫画でも、そういう政治的な話やら国がどうやらって話、あんまりしっかりと読み取って無かったからな。

 なんか、身近になると凄く新鮮。


「書けましたー。お前等も終わったか?」


「あぁ、問題無い」


「多分? 大丈夫だと思う」


「相変わらず、この文字慣れねぇ……クウリ、これあってる?」


 そんなのんびりとした会話をしながら、必要書類を提出した俺等。

 すると受付さんはすぐさま奥に引っ込み、しばらくすると新しい身分証を此方に差し出して来た。

 おぉ、何か色が変わってる。


「それが新しいカードね、無くすんじゃないわよ? 再発行って結構手間だから」


「う、うっす」


 これで手続きは終了……だと思うのだが。

 受付さんが、何かすっごく俺達の事ジロジロ見て来る。


「えぇと、まだ何か手続きが?」


 はて、と首を傾げてみたものの。

 相手はジト~っとした目で、やはり俺達を観察した後。


「アンタ等、冒険者として登録したのよね? 何が出来んの? ていうか、これまで仕事受けた事ある?」


 あ、そっちか。

 まぁ確かに、俺達の格好今凄く普通だもんね。

 ただの小娘四人組にしか見えないよね。

 イズが長剣下げているくらいで、他は完全民間人スタイル。


「前の街ではーえっとぉ、ヒュドラと――」


 おかしな事を口走りそうになったトトンの口を秒で塞ぎながら、引き攣った笑みを相手に向けた。


「い、いやぁ……俺等登録したばかりでして。こう、細々とした依頼やって、日銭稼いでる様な状態です」


 ハ、ハハハと乾いた笑い声を洩らしてしまったが。

 お姉さんの疑いの眼差しは更に強くなり。


「登録したばっかで移転って、向こうのギルドで何かやらかした?」


「い、いえ! 何も! えぇと、アレです! 旅! 旅に出たいって話をしてまして。ココにも旅の資金を調達しに立ち寄ったといいますか!」


 自分でも思うけど、言い訳が苦しい。

 若い女四人で、しかも手荷物さえ無し。

 体格も華奢な上、どう見ても旅をする様な恰好もしていないという。

 誰から見ても怪しさ満点、疑われ易さのトリプル役満といったところだろう。


「……まぁ、別に何でも良いんだけどさ。でもアンタ等にお願い出来そうな仕事があるかしらねぇ。ここのギルドだと、ほとんど採掘の手伝いとか、火山地帯に出現する魔物の討伐ばかりよ? 体力的にも絶望的に見えるし、アンタ等戦闘って出来る訳?」


 おぉ、棚から牡丹餅とはまさにこの事。

 そういう話が聞きたかったんですわ。

 もっと、もっとそういう情報頂戴。


「一応全員、ある程度の戦闘は可能です。ちなみに、鉱石の買い取りやってる店が多い印象ですけど……冒険者が現地に向かって、勝手に掘っていいものなんですか? もしくは報酬として、現物支給みたいに鉱石を受け取るとか?」


「勝手に行って、勝手に掘るのはアウト。火山や鉱山って言っても、所有者が居るからね。そういう場合は、ギルドを通して入場許可を取るの。採掘した品を全部提示して、数割を土地の所有者に渡すか、それとも普通に入場料を渡すか。何かの依頼で現地入りすれば、それらは必要無いけど。現物支給ってのは、こっちから交渉する事ね。珍しい鉱石を掘り当てたから、武具に使いたい。けど仕事で来ている以上依頼主に渡さなくちゃいけない。そういう時には、本人達同士で交渉して頂戴」


 ほへぇ、このお姉さん雰囲気は悪いけど結構ちゃんと説明してくれる。

 ありがたい情報を聞きながら、ふむふむと頷いていると。


「あとは炭鉱で普通に働く日雇いの仕事とか……あぁでも、一つだけ冒険者側が絶対有利になれる条件があるわよ?」


「それは、どういった?」


 役に立ちそうなお話が飛び出し、身を乗り出す勢いで受付カウンターに張り付いてみれば。

 お姉さんはこの周辺? の地図を取り出し、やけにデカい山を一つ指さした。


「ここ。火山活動も活発だし、そもそも近付きづらい。それに多くの魔物が確認されているから、戦闘職が居ないと近付けない。それらの処理を受けてくれるなら、好きに掘ってくれて良いって依頼が、常駐依頼として出てるわ。ま、それだけ危険度が高いって話なんだけどね。でも質の良い鉱石がゴロゴロしてるって話だから、むしろ依頼主がこっちに交渉してくるくらいよ」


 おぉ、まさにゲームあるあるの発掘ポイントと言う訳だ。

 しかも聞く限り、あまり人が向かっていそうな雰囲気も無い。

 だとすれば、俺達は人目に付かずに好き勝手に出来ると言う事。

 別にギルドからの信頼とか、冒険者として有名になりたい訳ではないが。

 そういう場所に一切行っていないのに、ゴロゴロと鉱石を取り出して売りさばいていたら、また面倒事に巻き込まれかねない。


「あの、こう言う所で採れる鉱石の種類と、価値とかって教えてもらう事は可能ですか?」


「え、何? お嬢ちゃん達ここに行く気? 止めときなさい、絶対死ぬから。活火山に自ら向かうのよ? 戦う前に干からびて死ぬわよ?」


「これでも、手数の多い術師なんで」


 ニコッと微笑みながらそう伝えてみると。

 お姉さんは「へぇ?」と意外そうな顔をしてから、分厚い本を取り出して来た。

 そして、俺達の前で開いてみると。


「お、おぉ……図鑑というか、すげぇ細かく書いてある」


「当然、ギルドの資料なんだから。一度で覚えなさい、お嬢ちゃん達。私だって暇じゃないの。まずはコレ、普通の鉄鉱石と違って――」


 意外にも手厚いサポートをして頂いた俺達。

 すげぇ、俺の知りたかった事全部教えてくれるじゃん。

 これくらいの大きさで、これくらいの価値。

 どの辺りまで進まないと、こういう石は掘れないとか。

 はたまた魔物から獲れる鉱石もあるとか、今こう言う依頼に動いている面々がコレだけ居るから、現地で鉢合わせして喧嘩にならない様にとか、それはもう色々。

 あ、俺この人結構好きかも。

 ダラ~っとしている様に見えて、聞けば何でも答えてくれる。

 こういうサポートが欲しかったんですよ。


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