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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
1章

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第25話 MAGURO! WASABI!


「やっぱ考える事が多いな……」


 皆でマグロを吊り上げてからというもの、暫く釣りを続けた。

 その際雑談含め今後の方針を考えたり、不安点などを上げていった訳だが。

 やはり、問題だらけだ俺達。


「クウリ、どったの? 難しい顔しながら本広げて、勉強?」


 河原の近くでそのまま夜まで待つと決めた俺達。

 もはや完全にキャンプの状態だ。

 イズは料理の腕前を見せつける様に豪快に料理を続けており、ダイラはその手伝い。

 先程まで薪などを集めていたトトンが、今は暇になったのか此方に顔を出した。


「勉強するにも教材がねぇっつの。“空のスキルノート”出したら普通のノートとして使えそうだから、今の所の問題点と、これから俺等がやらないと不味そうな問題点を上げてんの。つまり今後生きる為の計画を立ててんの」


「真面目~」


「いや、マジで俺等の生活に直結する問題ばかりだからな? お前も少しは真面目に考えろ?」


 覗き込んで来たトトンは、俺がメモった内容を覗き込んで来るが。

 ホント、マジで多い。

 生活面で言えば、旅を続けるのかどこか一カ所に身を置くのかによってかなり変わって来るし。

 今後本当に冒険者として仕事をするか、それとも街で普通の仕事をするかなどなど。

 戦闘に携わるとしたら、これからどういうスキルや武装を使いまわして行けば良いのか。

 周りに見られても問題無いスキルは? 仲間達を巻き込まないスキルはどの程度か。

 そういうものを疑念と感想も含め、ひたすらに書き出していたのだが。


「うへぇ、クウリ全部の……というか全員のスキル覚えてるの? 俺こんなに覚えらんないよ」


「全部じゃねぇよ。でもこういうの覚えておかないと、指示が出せないからな」


 ため息を溢しつつズイズイと出て来るトトンが鬱陶しかったので、とりあえず膝の上に乗っけた。

 今の状態でも俺の膝に収まるんだから、本当にちっちゃいなコイツ。


「お前は何か気になる事あるか? どうしても俺だと戦術的な思考回路が前面に出て来てな、生活面とか多分見落としが多い」


「んー、服はそれなりに買ったけど。やっぱ自分で選ぶとダサいのは考え物だねぇ」


「マジでそれな」


 姫様から報酬を貰って、とりあえず服買うかーって店に寄ったのだが。

 俺等、中身は全員男。

 つまり、パンツスタイルを皆選ぶ訳だが。

 どいつもコイツも、クソダサかったのだ。

 その為、自らでは「ちょっとコレは……派手じゃない?」と思うモノでも、メンバーが選んだ物を買う事にした。

 客観的視点というか、傍から見て悪くないと思うラインで買うモノを決めたのだ。

 要は見た目に似合っている物を強制的に買う事にした訳だ。

 せっかくキャラの外見を手に入れたんだからお洒落しろよ! というのもあるが。

 あまりクソダサくては逆の意味で注目を集めると警戒した結果なので、皆反論はしなかった。

 だがそのせいで、俺はやけに太ももだの肩だの露出する恰好になってしまったが。

 まぁ、多分メイン装備のイメージが強いのだろう。

 アレもこの辺露出してるからなぁ……そんな訳で、俺達は今完全に私服状態。

 旅人なんだからもうちょっと普通の格好しろよと、自分でも思うが。

 そもそも旅人らしい恰好って何? という結論に至った上に。

 俺達にはインベントリがあるし、ダイラの“清浄魔法”がある。

 つまり気持ちの面を度外視すれば、風呂も洗濯も必要無い。

 ゲームでこの魔法の役割は、汚れが溜まり過ぎると一定の店に入店できないなどの制約がある為、身体を綺麗にするというモノ。

 それこそ風呂屋に行くとか、装備を変えるとかで解消出来たのだが……生憎と、現実ではそうもいかない。

 スキルツリー初期で取得可能であり、布石として取っておくなら“まぁあれば便利じゃね?”くらいの感覚で習得して貰ったのだが、まさかこんな所で役に立つとは。


「あとは~……俺等、ガチで女の子になっちゃったんかね?」


「ん? あぁ~なるほど。確かに。この身体そのものって事か、忘れてた。もしも完全にそうなら、色々と予定に組み込まないとな。つぅかアレか、変な男に襲われない様にしないといけないのか」


「うへぇ、男なのに男に襲われるとか……怖気が走るね」


「つっても、その辺の奴等に襲われそうな面子が居ないんだけどな。むしろ襲って来た奴らの心配するわ」


 思わず溜息を溢してしまったが、確かにその通りだ。

 俺達の身体は今“女性”なのだ。

 だとしたら、男の時では予想出来なかった問題が発生する可能性も高い。

 “そういう意味”で襲われた場合には……心配なのはダイラか。

 テンパって魔法行使がどうとかじゃなくなりそう、一番襲われそうな見た目をしてるのに。

 他の面々は、まぁ多分大丈夫だろう。

 トトンも身体能力に影響する“無属性”持ちだし、身体強化を使えば素手でも巨漢でもぶっ飛ばすだろう。

 むしろソレでも手加減が必要かも。

 イズに関しては、襲った相手に合掌するレベルだ。

 普段着でも、腰に剣を下げているし。

 多分おかしな事を考えた連中の死体は、翌日にサイコロステーキ状態で発見される事だろう。

 そして、俺。

 もしも取り押さえられたりしたら“デウスマキナ”を使ってやる。

 全てを無に帰してやる。

 と言う事で、その辺は心配ないのだろう。

 つまり、ダイラがテンパらない限りそっちの問題は解決。

 アイツを一人にしなければ良いだけだ。

 あとは日常的なアレやそれ、こればかりは時間経過と共に確認していく他あるまい。

 などと考えながら、次から次へと思いつく問題点を書き上げて行けば。


「ほら、二人共。そろそろ夕食にしよう。異世界の代物だし、川に居た魚だからな。一度火を通した方が良いかとも思ったんだが、そこら辺は“料理人”のスキルが使えた。そのまま食べられるかどうか、感覚で分かるみたいだ。それに完全冷凍と、解凍も一瞬だったぞ。便利だな」


 難しい事は終わりとばかりに、イズが俺達の前に丼を置いた。

 そこにあったのは……まごう事無き、鉄火丼。


「「うぉぉぉ! マグロォォォ!」」


「あら汁もあるよぉー。いやぁイズ凄いわ、マジで手際良いし。プロだねこれは」


 ダイラがそんな台詞を残しながら、俺達の前に味噌汁を並べていく。

 サブ職業、メインの戦闘系とは違いサポート的な副業だ。

 イズは“料理人”、リアルでも料理が出来る人なのでソレを選んだらしい。

 ゲーム内では、ステージやダンジョンに入る前に食事を摂ると大きなバフ効果を得られるという物だった。

 ダイラは“錬金術師”。

 特殊な素材を組み合わせる事により、NPCから買えない様なポーションなどを生成可能となる職業。

 俺が普段使いしていた“MP完全回復ポーション”という、贅沢な品もコイツが作っている。

 トトンは“鍛冶師”。

 特殊な金属を使い、武具の強化率を大幅に高める。

 俺達がやっていたのはネトゲだ、だからこそ強化失敗で武器破損なんぞ当たり前。

 しかしコイツが居るお陰で効率よく、尚且つ損害を最小限に抑えて最後まで強化出来たという訳だ。

 ついでに言えば、武具の修繕もお手の物。

 つまりこれからの生活に置いて、一番必要になって来る職業だろう。

 そして俺、皆と違ってアバウトというかアレなんだが。

 副業、“トレジャーハンター”。

 これに関しては、言葉通りではないのだ。

 相手を倒した際、特殊ドロップが発生する。

 ダイラやトトンが使う様な“特殊素材”の回収役というか。

 この職を選んでいないと、それらの素材が手に入らない。

 だからこそ“ぶっぱ”で一番殲滅力の高い俺がこの職を選び、皆が使う素材を集めていたのだが……この世界だと、マジで価値無し。

 ドロップアイテム無いしね、困った。

 これも問題点としてノートに書いておこう。

 もはや泣きそうになりながら、“俺、サブ職でも役立たず”と書き込んでいれば。


「クウリ、悩んでばかりいないでご飯にしよう。味見はしたが、かなり良いぞ?」


 俺の書き込んだ内容を見てイズは苦笑いを溢し、俺に丼を差し出して来た。

 うぉ、旨そう。俺の悩みなんぞ吹っ飛んじゃいそうだね。

 多分数時間後には思い出して頭を抱えるんだろうけど。

 この世界で、俺……マジで役に立たないし。

 周りの面々に比べれば、戦争にでも使って、ただの固定砲台にした方がずっと有意義な気がして来る。

 そんな事を思いながらも、「いただきます」と口にして鉄火丼をパクリ。

 その瞬間、カッと瞼が開いた。


「うっま! なにこれ!? マグロもすげぇけど、ご飯! え、なになに!? ワサビの味がする!」


「初めてだったか? ワサビを酢飯に混ぜ込んでるんだ。苦手だったら言ってくれ、米は大量に保管してあるから。サブ職“料理人”を舐めるなよ?」


 ニッとイズが笑って見せるが、いやいやいや、コレを代えるなんて勿体ない。

 確かに妙に拘って色々食物を育てていた上に、毎回食事バフ効果すげぇとは思っていたけど。

 俺のキャラ、毎回こんな旨いモン食ってたのか?

 こればかりは、ゲームだから実際に食えなかった事を後悔するばかりだ。


「うひぃぃ、ツーンと来る」


「おや、トトンはダメだったか? 普通の白米もあるぞ?」


「いや、違う! 旨い! けどツーンって来る!」


「ホ、ホラ! あら汁! こっちを飲めば多分落ち着くよ!」


 未だ俺の膝の上に乗っかっているトトンが、ヒーヒー言いながら丼を掻っ込みあら汁を飲んでほふぅっと緩い息を吐き出していた。

 そんな訳で、俺も汁物を一口。

 うぉぉぉ……何だコレ。

 こんな贅沢して良いのか? 現代でこんな飯食ったらいくらするんだよ。

 そんな事を思いながら、トトンと一緒に「ほふぅぅ」と訳の分からない声を洩らしてしまった。


「相変わらず、仲が良いな」


「俺がパーティに入った頃は皆揃ってたもんね、トトンとクウリが最初に組んだんだっけ?」


 などと言われてしまって、ちょっとだけ恥ずかしくなってしまった。

 確かにゲーム内でもトトンは妙に距離が近かったが、リアルともなると話が別だ。


「おいトトン、食い辛い。離れろ」


「いいじゃんかよー! 今の俺ロリなんだから喜べよー!」


 無駄に抵抗するトトンを押し退けながら、また鉄火丼をパクリ。

 うんめぇぇ……。

 ワサビご飯? 初めて食べた。

 確かにコレなら、マグロに醤油をちょろっと掛けるだけでも無限に喰えるかもしれない。

 というか、ワサビとご飯を混ぜるって。

 普通やらないというか、思いつきもしなかった。

 しかしながら、生わさび? をその場ですり下ろした物を混ぜた影響なのか。

 香りが段違いだ。

 ツーンとした辛さが鼻に抜けるが、それすら心地良い。

 そしてあら汁。

 鯛が取れたのか!? なんて思ってしまったが、よく考えれば釣ったの俺だわ。

 川で釣れるなよ、鯛。

 それらを存分に使い、イズが腕を振るってくれた結果。

 今夜の晩飯は街に居る時より豪華というか、滅茶苦茶満足の行くものだった。

 やべぇよ、イズの飯を食い続けたらコレだけで元の世界に戻りたくない理由になるかも。

 彼女も嫁も居ない俺だからこそ、イズのご飯が食べられるのなら今のままでも良いかも知れない。

 そんな事を思ってしまうくらいに、旨かった。

 マグロを口に運べば、回転寿司では絶対味わえないだろう旨味が口に広がり。

 続けてご飯を掻っ込めば、ブランド米かな? という程のしっかりと味のするお米。

 更に混ぜ込まれた生わさび、コイツがヤバイ。

 ツーンと鼻に来るくせに無限に食欲を湧きたてる程、次を掻っ込めと急かして来る。

 そしてあら汁を啜ってみれば、胃袋から満足してますって返事が来たかのように、ホッと温かい吐息が漏れるのだ。

 こんなの、食うしかねぇ。

 ガガガッと丼を掻っ込み、イズにおかわりを宣言してみれば。


「あははっ、満足してくれて何よりだ。それから……どうしようか? デカイマグロ一匹だから、実は色々出来るんだ。例えば……大トロ丼、とか」


「うわぁぁぁ! なんだそれ、なんだそれ!? いったいいくらするんだ!? でも喰ってみてぇ!」


「ズルいズルい! 俺も! 俺も大トロ丼食いたい!」


「二人共、元気だなぁ……元々の記憶からすると、俺はやっても中トロかなぁ。胃が、アレな気がする」


 そんな会話をしながら、夕食は進んでいく。

 イズが、食事中は完全オカンになった。

 でも旨い! 旨いは正義!

 と言う事で、俺とトトンはひたすらにどんぶり飯を掻っ込むのであった。

 あぁ、もしも現実に帰れますよって言われても。

 イズは付いてきますか? って聞いちゃいそうだわ。


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