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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
9章

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第225話 クリティカル


「ハッ! 随分とウチのちびっ子を虐めてくれたみてぇだなぁ? 覚悟しやがれ!」


 なんて、高らかに声を上げて杖を構えてみたものの。

 うっわ……めっちゃくちゃやり辛ぇ。

 2Pカラーとはいえ、見た目は向こうもトトンだし。

 何だかんだ言っても、コイツはユートピアオンラインで一番長い付き合いなのだ。

 スキルの試しとかで模擬戦をした事はあったものの……“殺し合い”となると、マジで気が引けるな。

 などと思いつつ、ヒクヒクと頬を引きつらせていると。


『クウ……リ』


 色違いのちびっ子が、ポロポロ涙を零し始めてしまったではないか。

 ちょぉぉぉぉい! コレ本気でやり辛ぇって!?

 違うじゃん! 俺のコピーと全然違うじゃん!

 あっちはガチで“そういうイベント”って感じで、バカスカ攻撃して来たし。

 俺のコピーは完全に、ぶっ殺してやらぁオラ! 掛かってこいやぁ! 的な勢いだったじゃん!

 こっちもそういうテンションだったし、そもそもそんな事を考える暇もない程忙しかった。

 だというのに、何だよコレは。

 まだ牽制しかしてないよ、こっからPVP本番だぜって感じなのに。

 あ、もしかしてアレか?

 エレーヌが登場した時と似たような感じで、奥義使った後でMPが無いとか。

 いやでもトトンならMP切れでも、状況次第では身体能力だけで俺にいくらでも勝てそうだしなぁ。

 泣く程絶望する状況かと聞かれると、ちょっと違う気がするのだが。

 なんて、混乱していると。


『……無理、止める』


 それだけ言って、相手は大盾を投げ捨ててしまったではないか。

 あ、ありゃ? これはサレンダーとか、そういう事で良いのかな?

 ひたすら首を傾げる状況になってしまったが、目の前のちびっ子はポロポロ涙を零し続け。

 オリジナルの方のちびっ子は、後ろから引っ付いたままビエーって感じに泣いている。

 何じゃいこりゃ、俺はどうすれば良いんだよ。

 傾げる首の角度が更に傾いていると、2Pトトンはテクテクと此方に歩いて来てから。


『そっちだけ、ズルい』


「へ?」


『こっちも』


「はい?」


 よく分からん言葉と共に、今度は前から引っ付かれた。

 いや、マジで何? これどういう戦闘?

 全然理解出来ないけど、二体のちびっ子にサンドイッチされてるんですが。


『無理だよ……クウリと戦うなんて、俺には出来ない。だから、降参』


「あ、はい。えぇと?」


 混乱しつつも、とりあえず正面2Pカラーのトトンを眺めていると。

 ゆっくりと、足元から透け始めたではないか。


『クウリから攻撃された時、怖かった。というか、凄いショックだった』


「え、あぁ~……ごめん?」


『でもそれと同時に、安心した。やっぱり、来てくれるんだって』


 そんな事を言いながらも、徐々に透けていく相手。

 ズビズビと鼻を啜りながらも、顔を上げたソイツは。

 いつも通り、ニカッと笑ってから。


『やっぱり、クウリは格好良いね』


 その一言と共に、色違いのちびっ子は背伸びしながら。

 此方に対して、ちゃんと顔を上げて笑顔を此方に向けて来た。

 マジで意味不明な状況に対して、俺の方は何と言葉を返せば良いのか分からずにいると。

 相手は随分と柔らかい微笑みを零しつつ、そのままゆっくりと全身が透明になっていき。


『大好き、クウリ』


 それだけ言って、完全に姿を消した。

 消えてなくなった……というか、“存在そのもの”が無くなったのだと、感覚的に分かった。

 コレが、コピーされたNPCの最期……か。

 俺の時は消し飛ばしたから、こんな感想を持つ暇も無かった。

 なんて、ちょっとだけしんみりしてしまったのだが。


「い、いだだだだっ!? トトン! トトン!? しま、締まってるが!? 抱き着かれた腕が、万力みたいに締めてきているが!?」


 後ろからくっ付いて来ていたちびっ子が、俺の身体を鎧ごと押し潰して来たではないか。

 おい待て。

 まさかコッチがコピーで、さっきの奴がイメチェンしたトトンだったとか言わないだろうな!?

 などと変な思考回路にシフトし始めた頃。


「……クウリは無自覚ハーレム体質」


「んなっ!? てめぇコラ何がハーレムだ! 彼女なんぞもう随分と長い事居ねぇわ! つぅか痛ぇ! 放せ! そもそも同性だろうが! 俺にそっちの趣味は無――」


「だから、“今は”ね? 昔っから俺、女だよ?」


「ほへぁ?」


 後ろから万力の様な力で締めて来るちびっ子が、これまたおかしな事を言いだしたんだが。

 いや、うん? 君は何を言っているのかな?

 だって俺等四人、全員元は男じゃないの?


「う、嘘だね! だってお前、ステラにドレス貰った時めっちゃテンパってたじゃん! “こっち側”に来てから、俺と一緒で女の恰好するのに抵抗ありそうだったじゃん!」


「そりゃ抵抗あるよ。あんなフワフワフリフリの服、着た事無いもん。俺には絶対似合わないし」


 あ、ありゃぁ?

 でもそういえば女性服着た時、明らかに難色を示したのって俺とイズだけだったかも。

 トトンは何も考えてないんだろうな~って雰囲気で、ケラケラ笑ってたし。

 ダイラに関してもすんなり着替えて、シレッとしてた様な……いや待て、後者に関しては諦めていただけの可能性の方が高い。


「でもでも、風呂とかも周りに気を使ったし! エレーヌの裸からだって必死に目を逸らしてただろ!? 最初なんか胸がどうとか、お前が一番盛り上がってたじゃんよ!」


「気を使ったのは皆と一緒だから、エレーヌに関してはクウリとイズが目を逸らしすぎて他を見なかったからでしょ? 胸に関しては……ゴメン。俺、リアルだと本気で“無い”から……つい」


 何かもう、完全に思考が停止した。

 あれ、待てよ?

 俺等がキャラの感覚に馴染んでいく現象、コイツが一番影響出ているって思っていたけど。

 よく考えれば、他の面々も長時間こっちに居るんだから、もう影響し始めてもおかしくねぇよな?

 でも俺達残り三人に関しては、普段の行動とかあんまり変化無いし。

 むしろコイツが元から女だというのなら、キャラクターの“構えモーション”とかの影響が出て、最初の方が逆に男っぽく見えていたって事?

 確かに前衛だし、タンクだし。

 男女関係なく、どっしり構えるよね。

 んで、女の子っぽくなって来たなぁって感じたのは……もしかして、気が抜けて来て“素”が出て来ていただけ?

 もしくは、身体が馴染んで来た影響で自然な振る舞いに男女の差が露骨に出て来た、とか。

 俺やイズなんかが分かりやすいけど、全然影響ないって事は無いはずだ。

 だとするとこの現象、俺等が想像していたよりずっとゆっくり?


「待て待て待て、色々混乱してる。というか、そうなると次に女らしいダイラは? アイツの行動も、傍から見ると結構普通に女の人~って感じだよな? キャラに染まって来たのか、他人から違和感を持たれない為にあえてそうしてるのかと思ってたんだが……」


「ダイラも多分元から女の人だよ? 行動見てれば結構分かるっていうか、そもそも服を選ぶセンスとか、女性向けアクセサリーに詳しかったり。あとは酔っぱらったクウリに対して、何の迷いもなくトイレまで付き添ったでしょ? 対処だって完璧だったし。元から詳しくないと、あそこまですんなりいかないでしょ」


 だ、そうです。

 は? いやマジで?

 だってアイツの元のキャラネーム、“大淫乱お姉さま”だぞ?

 どう考えたって、アホネタに走ったネカマでしょうに。

 いやネカマって意味では俺も一緒なんだけどね? そこを悪く言うつもりは無いんですけどね?

 ゲームですら冴えない男の顔とか見たくないし、イケメンにしたらそれはそれで何か悔しいし。

 だったらゲーム中くらい可愛い女の子を見たいってなもんで。

 とはいえ、今はそんな事どうでも良くて。


「……マジ? トトンとダイラ、元から女の子?」


「ん、まぁ。ダイラは多分だけど、そうだと思うよ?」


「お前は学生……なんだよな?」


「一応俺高校生、ダイラは短大出た後だって言ってたね?」


 シレッと言い放つちびっ子に対し、思わず掌で顔を塞いだまま天を仰いだ。

 おぉ、神よ。今すぐ俺をぶっ殺したまへ。

 コイツ等が男だと思って、適当な言動ばかりしていた中年に片足突っ込んだ馬鹿野郎に、攻撃判定有りのサテライトレイをぶちかましたまへ。


「マジでスマン! セクハラ紛いな事とか言ってなかったか!? そういうつもりじゃないの! 本当に! 訴えたりしないで!?」


「気にして無いよ~?」


「いや怖いわ! 中年と言われる幅広い世代の男性は、若い女性の一言で社会的に死ぬの! か弱い生物なの!」


「今は同性だから問題無いねぇ~」


「だから今じゃなくて昔が怖いって言ってんだよ!」


 何だかいつも通りのテンションに戻った頃、周囲には霧が立ち込め始めた。

 俺にとっちゃ馴染みある、“夢”の終わり。

 だというのに。


『ご馳走様……』


「あ、テメェこらシュウ! また覗いてやがるな!? さっさと戻しやがれ! というか戻してくださいお願いします! むしろ俺の“夢”を覚ましてくれぇぇぇ! やらかして来た事は全部、俺の夢だったって事にしてくれぇぇぇ!」


 天から降り注ぐ黄龍の声に反応し、思わず叫び声を上げるのであった。

 俺、アレじゃん。

 女性プレイヤーに声掛けて、馬鹿テンションで連れました変なヤツみたいになっちゃってるじゃん。

 ねぇお願い、夢だったって事にして、最初からやり直させて?

 そしたらキッチリ行動するし、ゲームはゲームとして異性でも大人な距離感でしっかりやるから。

 新イベントやらガチャやらのタイミングでロリロリしい衣装が出ても、おふざけでトトンにプレゼントしたりしないか。

 妙に色気のある装備が出る度に、ダイラに押し付けたりしないから。

 いやそうなってくると、イズはちゃんと元男なんだよな!?

 俺アイツに腐る程泣き言洩らしてるぞ!?

 滅茶苦茶格好悪い言動取りまくって、嫌という程相談に乗って貰ってるぞ! 大丈夫だよね!?

 こういう状況、一見ハーレムに見えても現実だと普通に気まずいだけだからね!?

 周りが異性ばかりの環境が羨ましいなんて言う奴が居たら、そういう職場で働いてみろ。

 マジで地獄だから、気を使い過ぎて禿げそうな勢いだから。

 今更コイツ等に気を使うつもりは無いが、イズまで女だった場合……ちょっと、スンッてなってしまうかもしれない。

 ゲーム時代の俺を、全て忘れてくれと泣きながらお願いするかもしれない。

 オフ会とかで実は~みたいな空気だったら、「マジかよ!」程度で済むかもしれないけどさ。

 今までのテンションでも、顔合わせのイベントを境に、これからいくらでも方向修正出来るからね。

 あんまり気を使われ過ぎても、相手も気まずくなるだろうし。

 けどね?

 変えられない過去、というか“向こう側”の俺。

 ちゃんと異性としての状態の俺が、この情報を知らないままだと考えると……。

 直接顔を合わせるまで、ずっと馬鹿な事を言っていそうで。


「うわぁぁぁぁ! 男同士だと思って、無駄に格好付けた台詞とか吐くんじゃねぇぞリアルの俺ぇぇぇ! 後でネタにされるくらいが丁度良いとか思っても、女の子に言ったらガチで寒いヤツだからなぁぁぁ!?」


「“顔を上げろ、そしたら俺が見つけてやる”……とか?」


「止めろよお前ぇぇぇ! マジで恥ずかしくなって来ただろうがぁぁぁ!」


「うへへ、格好良かったよ?」


 ちびっ子に引っ付かれながらも、徐々に霧が濃くなり意識が薄れていく。

 なんだよ、なんだよこのゲーム。

 ユートピアオンラインに深く関わる度に、俺の黒歴史が思い出されたり追加されたりしていくんだが?

 おいコラ運営、というかトレック!

 てめぇ何でキャラボイスに合わせたボイチェンなんか付けやがった!

 そっちの世界に行ってサテライトレイぶち込んでやるからな! 覚えておけ!

 絶叫を轟かせながらも、視界は完全に霧に包まれるのであった。

 あぁ……もう、諦めよう。

 どうせ俺、今は女体化してんだし。

 全部諦めて、“こっち側”の事だけ考えよう。

 “向こう側”の俺……達者でな。

 大いに羞恥に悶え苦しむだろうが……多分、コイツ等ならネタにしてくれるから。

 これからも、仲良くやってくれ……頼む。

 今日この日この時、俺はある種の悟りを開いた気がする――

 諦めるって、大事だよね。

 心には致命的な一撃を貰った気がするけど。


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