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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
1章

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第22話 魔王の二つ名


「小娘どもがぁぁぁ!」


「オラオラどうした! 後衛が前に来てやったんだぜ!? 殺してみやがれウスノロ!」


 叫びながら“縛りプレイ”のまま魔法を連射した。

 ストーンバレット。

 周囲に小石を作り出し、相手に向かって連射するスキル。

 初期の方で魔法職を選べば、すぐに習得出来る程度の小技。

 更には、スキルツリーの基本の部分というか。

 どうしても取得しないと次に進めないようなスキルの一つ。

 たったそれだけなのだ、つまり後半には全く使わなくなる死にスキル。

 だがしかし。

 俺のレベルも合わさって、銃弾みたいな速度で発射されているのは驚きだ。

 とはいえ相手はこんな化け物。

 真正面から撃っても怪我くらいはしそうだが、即座に殺すと言う事は出来ないだろう。

 しかしながら、イズが作った広い傷跡にぶち込んでみればどうか。

 こんなモノでも、十分すぎる程の効果が得られた。

 “縛りプレイ”なんて言えば聞こえは悪いが、コレだって連携の練習だと言えばどうか。

 仲間が作った傷跡に対し、俺が追撃を掛ける。

 そして。


「トトン!」


「お任せっ!」


 俺に対して振られた大剣を、ちびっ子がパリィする。

 つまり、俺はフリー。

 後衛職なもんで、イズみたいに速くは動けないが。


「ダイラ、初級スキル! 魔法攻撃力UPのバフ! 名前忘れた!」


「あれ3%とかしか上がらないよ!?」


「十分! 使え!」


 そんな訳で、ダイラからの支援も受けつつ。

 俺はもう一度人差し指を相手の傷口に向けた。


「ダンジョンボス、魔族。こんなもんか……良い勉強になったよ」


「このっ、クソガキ!」


「そのガキが手加減しても、お前は負けるんだよ。ま、来世では頑張んな」


 それだけ言って、ストーンバレットを乱射した。

 相手の傷口に向けて、何度も。

 固い皮膚に守られていない部分に対し、石の弾丸はそのまま相手の肉を抉り、相手の臓器を傷付けていく。

 脇から反対側に向けて大量に放ったんだ、肺や心臓。そういった重要器官を傷付けた事だろう。

 というか、生物にとって重要じゃない内臓なんて無い。

 だからこそ、リアルなら何処を傷付けても致命傷になりかねない訳だが。


「流石に、ゲームだったらこんな戦法出来ないからな。リアルになった弊害……というか利点の一つだな」


 膝を折り、口から大量に血液をまき散らしたゴート。


「こんな、低次元の魔法で……まさか、俺が……敗れるなど……ゴホッ!」


 倒れ伏す相手の言葉を聞いた瞬間、ダークネス中二病が発動した。

 すぐさま全身の装備を変え、黒い羽を広げた後。


「ハンッ、お前は挑む相手を間違えたんだよ。こっちが俺の本気装備だ」


「は、ははは……本当に、何なんだお前等は。その見た目……やはり、まるで魔族の様じゃないか」


 羊頭が血を吐きながら、そんな言葉を紡いだ瞬間。

 コチラはニッと口元を吊り上げ。


「俺に挑んだ人間は、俺に“魔王”と二つ名を付けた。名実共に、とはいかないが。それでも俺は、魔王と呼ばれた人間だ。それに牙を向いた意味が、やっと分かったか?」


「魔王、魔王か……くく、ハハハッ! だとしたら、光栄だ! 魔王様万歳! 俺は魔族の繁栄の為に、この命を使って魔王を見つけ出した! どうか、どうか他の魔族を――」


 そう言いながら相手は事切れ、そのままダンジョンに“食われた”。

 ボロボロと崩壊していくボス、残るは……デカイ魔石が一つと、ヤツの使っていた大剣が一つ。


「色々とイベントが発生したけど、なぁんかフラグが立ったみたいな終わり方になっちゃったな」


 それだけ言って、ため息交じりに杖を肩に担いでみれば。


「クウリは、その……やっぱり魔王だな。普通死にゆく相手にあんな言葉を掛けるか?」


 目を治療してもらったイズからは呆れた様な視線を貰い。


「無駄にフラグ立てないでよ! この先色々起こったらどうするの!? また訳わかんない魔族とか魔人出て来たら嫌だよ!?」


 ダイラからは、本気で怒られ。


「クウリ~お腹空いたー。もうダンジョンも終わりっしょ? パパッと帰ろー?」


 トトンからは、的外れなお言葉を頂いてしまうのであった。

 うーむ、これいかに。

 結構重要っぽいフラグが立った気がするのに、あんまり興味を示しているメンバーが居ない。

 というか、うん。

 普通に迷惑だったよね、ごめんね。

 魔族とか訳わからないモノに関わるの、もう面倒くさいよね。


「よし、帰るか。来た道をそのまま戻るのも面倒くさいので、真上をぶち抜くか、テレポートするか。どっちが良いー?」


「「「テレポート」」」


 こういう時だけは、皆同じ意見になるんだよな。


 ※※※


「皆様がダンジョンに入ってから……どれくらい経ちましたか?」


「姫様、落ち着いて下さい。まだ二時間程度です。冒険者の強い方でも、通常通りのダンジョンで中盤に辿り着ければ良い方かと……」


 メイドの声を聴きながら、馬車の窓から必死にダンジョンの入口を眺めていた。

 嘘つき! クウリさんの嘘つき!

 だってダンジョン入口で、溢れて来る魔物を狩るって言っていたのに!

 周りに何も居ないと分かってからは、すぐに問題の場所へと踏み込んでしまった。

 どう考えたって危険過ぎる、生き残れる筈がない。

 スタンピード直前のダンジョンなど、一階層でも魔物で溢れている事だろう。

 普通でない難易度、通常なら攻略など不可能。

 彼女達ならもしかしたら、そう考えてしまう程の実力は見せてくれたが、彼女が見せた術はあまりにも致死性が高い。

 仲間や自分がその場に居る状況では、間違いなく使えない魔法の類だろう。

 だというのに、皆様が攻め込んでから二時間も経ってしまった。


「これはもう、お父様に助けを求める他……」


「しかし相手は冒険者、安く見られるのは間違いありません。更には姫様が陛下に助けを求めた場合、それは“失敗”と同意義です」


 メイドにそんな事を言われてしまうが、私としてはもうそんなモノどうでも良い。

 皆様が無事に帰って来て、失敗してしまったと笑ってくれる方が嬉しいのだ。

 彼女達の実力なら、そう期待したのも確かだが。

 でもやはり無謀だったとしか言えないのだろう。

 だからこそ、グッと奥歯を噛みしめながら。


「彼女達の救助依頼を、出します……」


「姫様! 陛下が許すはずありません! 冒険者の救助に、兵を使うなど!」


「しかしこればかりは! 彼女達は……関わった日数は少なくとも、ちゃんと私と向き合ってくれました。だからこそ、私は――」


「あー、そういうのいらんと思います。立場があるのなら、軽率な行動は控えるべきだと思いますよ?」


 馬車の扉が開かれると同時に、そんな声が聞えて来た。

 慌てて振り返ってみれば、私が雇った冒険者が四名。

 疲れた顔で立っているではないか。


「とりあえず正面の敵は、姫様も見てた大技で殲滅。中身に関しては、まだちょっと残ってるかもしれないですけど……ボスは倒して来ました。あ、コレ戦利品でーす。宝箱とかじゃなくて、相手の武器が残るんですね。マジでいらねぇ……」


 そんな事を言いながら、巨大な大剣を取り出し地面に投げ捨てるクウリさん。

 そしてこれまで見た事もの無い程の大きな魔石を放り出し、本人は。


「はぁ……まぁ、こんなもんか。お前らぁ、普通の武装を買って、これからは“縛りプレイ”だからなぁ。本気なんぞ出す機会はない、ソレが分かっただけでも充分だろ」


「「うぃ~っす」」


「了解だ、クウリ」


 などと言いながら戦利品を仕舞い、皆様馬車に乗り込んで脱力し始めるのであった。

 え、えっと? これは……どういう?


「ダンジョン、クリアしましたよー。ボスも倒しましたし、さっきのがドロップです。特殊武器はダンジョンに吸収され辛いんですかね? 剣だけは回収出来ました。んじゃ、俺等は寝ますね。はぁぁ……ダンジョンってクソだわ、もう二度と潜らねぇ」


 それだけ言って、クウリさんが横になった瞬間。

 他の皆様も休む体勢に入ってしまった。

 えぇと、コレは?

 国の問題が、こんなにも早く解決したという事で良いのだろうか?

 たった二時間程度で?



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