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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
9章

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第215話 挑戦


 それから暫く、皆で話し合ってはみたものの。

 やはり予想は予想でしかなく、結局イベントを発生させてみないと分からないという結論に。

 とはいえ、試しに一人ずつ踏み込む真似など出来る筈もなく。

 少しだけ時間を作って、ひたすら下準備を整えてから。


「全員、インベントリはある程度整理したな? もしかしたらこのまま無理矢理団体戦に持ち込める可能性もある。けどどういう原理かは知らんが、ガチの個人戦になった場合……ステータス完コピエネミーに勝てるとすれば、アイテムだ。回復はもちろん、攻撃用のアイテムもすぐ取り出せる位置に整理したな?」


 此方の一言に、皆頷いて見せるが……あと一つ、懸念があるのだ。

 もしもココが最奥というか、目的地だった場合。

 踏み込んでイベントが発生したところで、“夢が覚める”恐れがある事。

 メールでは可能性は低いと分かっているが……あくまでそれは“プレイヤー”に対しての情報。

 そしてコレが発生した場合はガチで最悪。

 北の門にアクセスするやり方すらまだ判明していないのに、俺は仲間達を失う事になるのだ。

 上手くいけば、一時的……にはなるかもしれないが。

 だが再度“転生”というイベントを繰り返した場合に、皆がどうなるのか。

 これまで共に旅して来た記憶が残っているとも限らないし、もしかしたら“こちら側”に来た時と同じ状態で再召喚される様な状態になるのかも。

 だとしても、俺は皆を受け入れる……が。

 それはつまり、“こっち側”に来てからの仲間達は……“無かった事”になってしまうのだ。

 もしもコレが現実になった場合は。

 正直、冷静で居られる自信はない。

 そして何より、どの可能性もまだ“出来る”と決まった訳では無いという不安要素も付きまとう。


「すぅぅぅ……」


 思い切り息を吸い込み、どうにか気持ちを落ち着かせようとするが。

 なかなかどうして、小心者の俺の心はいつまで経っても冷静にはなってくれず……。

 もしかしたら、俺一人で踏み込んだ方が良いのかもしれない。

 いやその場合は、ストーリー通りエレーヌは連れて行っても問題無いのか?

 しかし皆の存在が、俺の存在ありきでこの場に残っているだけなのだとしたら。

 俺が物語を進める事で、結局同じ結果に陥るのかもしれない。

 なんて、色んな思考がグルグルと巡っていると。


「クウリ、早く行こー? ちゃちゃっと終わらせて、ユートピアオンラインをクリアした初のプレイヤーになろうぜぃ!」


 いつもの調子で、トトンが俺の腕にしがみ付いて来た。


「いつまで悩んでいても、結局はやってみないと分からないさ。もしかしたら俺達が正式な“転生者”ではない以上、コピーされるのはクウリだけかもしれないぞ? そしたら……パーティ全員で、お前をフルボッコにすれば良いだけだ」


 反対側の肩を叩いて来るイズ。

 思わず「おいコラ」とか言いたくなったが……気を使ってくれていると、嫌でも分かる。


「あはは、そうなって来ると警戒するべきは奥義を三つ持ってる事かなぁ。せめてサテライトレイを撃たれる前に、皆で何とかしないとねぇ」


 冗談みたいに言い放つダイラも、隣に並んでニコッと微笑みを浮かべた。

 あぁ、そうだな。

 先の事を考えても分からないなら、進むしかない。

 そんでもって、試しにやってみて、駄目だったら次を考える。

 その方が、俺等“らしい”って事なのかもしれない。

 極振りで少人数のパーティだからこそ、常にトライ&エラーばかり。

 こんな事ばかりを繰り返してここまで上り詰め、そして共に旅して来たパーティなのだから。


「最後まで迷惑をかけてごめんなさい……なんて、ここで私が謝るのは違うのかしらね。“これからもよろしく”って、そう言っておこうかしら」


 棺桶を下ろして身軽になったエレーヌも隣に並んでから、御自慢の魔剣を肩に担ぐ。


「各々準備はよろしいかな? さぁて、皆で世界の扉から“真理”ってヤツを覗いてみようじゃないか。これは夢の終わりではあるが、夢の始まりでもある。そして私は“夢の黄龍”……是非、観察させておくれ? なぁに、君達の事は気に入っているからね。私の手くらいは、貸してあげるさ」


 相も変わらず偉そうな事を言うシュウも、最後に俺達の隣に並んで来た。

 さぁ、始めようか。

 これだけの面々が揃い、それぞれ覚悟を決めたのだ。

 だったらいつまでも、リーダーの俺がビビっていたら話にならないだろう。

 だからこそ、笑った。

 無理にでも、無理矢理にでも口元を吊り上げ。

 牙を見せる様にしながら、悪い顔で思いっ切り笑った。


「ククッ、クハハハッ! んじゃちょっと、世界に喧嘩売ってみますか。転生だ他の世界だ、色々とメンドクセェ枠組みに俺等を放り込んだ事、後悔させてやろうぜ。そのシステム、丸っと良い様に使ってやらぁ」


 虚勢を張りながらも、いつも通り杖を肩に担ぐ。

 行け、踏み出せ。

 未知を恐れず、楽しむ為に。

 俺達はプレイヤーで、ゲーマーで。

 無理だと思われて来た境地を、何度も潜り抜けて来た面々だ。

 だったら今更恐れるな、全て上手くいくと信じろ。

 むしろ都合の良い方向に進めるのだと、自らの手で勝ち取るのだと想像しろ。

 自分を信じられない弱小野郎なら、一緒に居てくれる仲間達を信じれば良い。

 ソイツ等に格好悪い所を見せない為に、俺は馬鹿みたいに笑いながら無理を可能にする術を考える。

 本当に、“いつも通り”で良いんだ。


「行こうぜ、お前等。マジで最終ステージだ。個人戦で、しかも自分のコピーだなんて言うのなら……正直負ける気がしないね。運営の組んだアルゴリズムなんぞより、俺達の方が優秀なんだと証明しろ。そしたら……この世界でも間違いなく、俺等はランカーだ。今度は世界そのものに名前を刻むぞ!」


「「「了解!」」」


 宣言と共に、俺達は大広間へと足を踏み込んだ。

 勝つさ、どんな状況になろうとも。

 ここには、それだけの面々が揃っているのだから。

 そう思って、胸を張って、堂々と広間へと入った所で。


「……は?」


 視界が、“切り替わった”。

 周囲には荒廃した“現実世界”の光景が広がっており、夜の空に浮かぶ月は二つ。

 やけに輝きの強い白い月と、血の様に赤い月。

 瓦礫と化した見知った建築物やら、傾いて今にも倒れそうになっている大きなビル。

 いやまぁ、最後の神殿だけ随分SFチックだったから、こういう展開も有りなのかもしれないが。

 けど、変化はそれだけに収まらなかった。

 俺の周りから、“誰も”居なくなったのだ。

 書かれていた設定とは違って、エレーヌの姿さえない。

 “こっちの世界”では、アイツもNPCではなくプレイヤーに近い存在。

 だからこそのエラーか、それともまだ実装前のイベントだからこそ、何かしらのバグが発生したのか。

 色々と不安になりながらも、キョロキョロと周囲を見回していると。


『それで強くなったつもりで居る訳? “あの人”に認めてもらう為に、恰好付けていただけの存在の癖に。ダッサィなぁ……お前』


「……あぁ?」


 倒壊した建物の上から、一人。

 他に誰も居ない大地で、たった一人だけ生きている存在を見つけた。

 そしてソイツは、“巨大な翼”を開いてみせた。


「おいおいおい……コピーすんのは、ステータスだけじゃないのかよ」


 そこに居たのは、俺の良く知っている顔と姿。

 でも色合いが違う。

 まさに2Pカラーって感じで、白銀の鎧を纏っている。

 その手には散々苦労して手に入れた記憶のある杖を掴み、意地悪い微笑みを浮かべている性格の悪そうな面。

 肌は褐色だし、パッと見の雰囲気はガラッと変わっている様に見えるモノの。


「ハ、ハハ。こういう“ド定番”って言えるコピーイベントも、今じゃ逆に珍しいと言えるのかもな」


『呑気に喋ってる暇があるのかよ? やろうぜ、俺を楽しませろ』


 ソイツは更に口元を吊り上げ、牙を見せて笑う。

 真っ黒い長髪に、黒い瞳。

 だぁクソ。

 肌の色は違うのに、その見た目でその色だと、嫌でも誰かさんを思い出すってもんだが。


「まさか本当に、“俺自身”とPVPする事になるとはなぁ? 元々そういうイベントだったかもしれんけど、リアルになった影響で性格やら記憶まで再現してるってか? ったく、やってくれるぜ」


 どっからどう見ても、ソイツは俺と同じ姿をしていた。

 かぁぁ……嫌だ嫌だ、こんなもん嬉しくねぇよ。

 本来のゲーム通りならNPCとしてエレーヌも居る筈だから、その分楽になるのだろうが。

 残念な事に、魔女は欠席みたいなので。


『口だけは達者な様で何より。んじゃ、死にな。“プラズマレイ”!』


「上等……テメェこそ俺を楽しませやがれ! “プラズマレイ”!」


 両者の範囲攻撃が、互いにぶつかり合って対消滅を起こすのであった。

 俺は“俺の攻撃”を防げるような防御スキルなんぞ持っていない。

 だからこそ、ぶつけるしかない。

 攻める事しか出来ない、頭の悪い攻撃術師だからこそ。


『「“シューティングスター”!」』


 性格も戦略も同じ御様子で、相手もまた此方と同じ攻撃を放ってくる。

 こりゃマジで……結構苦戦するかもしれねぇなぁオイ。

 皆の方は、本当に大丈夫だろうか?


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