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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
9章

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第209話 歌声


 その後、というか皆でめっちゃカニ食った後。

 件の“寝落ちの詩”を、魔女に披露してもらった訳なのだが……。


「こんな感じだけど、どうかしら? 何か思い出す節はあった?」


 シレッとそんな事を言い放つエレーヌを、ジッと見つめてしまった。

 相も変わらず顔が良い、ってのはいつもの事なんだけど。

 間違い無く、俺はこの顔と“向こう側”で出会った記憶などない。

 それにアイツも、あっちにはエレーヌは居なかったと言葉にしていた。

 けど、この詩の歌詞というか。

 ちゃんとした歌として耳にして、少しだけ……思い出した気がする。


「エレーヌには、それこそ“前の世界”っていうか……オリジナルとしての記憶は、パッと思いつかないんだよな?」


「そうね、私として生きて来たという過去しかない。貴女から話を聞くまで、オリジナルがどうとか、別の世界がどうとか何て考えたことも無かったわ。まぁ、コレも作られた記憶だというのなら……笑い種ね、私は全くと言って良い程“この世界”を見ていない事になる。“今の私”を受け入れられていなかったのは、自分自身だという事になるのだから」


 なんて、少々自虐的なお言葉を頂いてしまったが。

 しかしその顔、というか雰囲気は。

 今なら、どこかで見覚えがある気がするというか。


「どうした、クウリ。何か分かる事があったか?」


「やっぱりどこかで、また別の事例に関わってたとか? だとすれば、こっちの世界の“プレイヤー”って括りにクウリが選ばれたのも、意味があったとか?」


 イズとダイラも、気になるとばかりに顔を寄せて来る。

 ついでに言うと、トトンはダイラの膝の上で爆睡。

 俺が歌わなくても、やはり“寝落ちの詩”の威力は健在の様だ。


「あぁ~いや、ちゃんと思い出した訳じゃないって言うか。すげぇぼんやりとって感じではあるんだけど……どうかな。全然確信が持てないし、これが今の“俺等の問題”と何の関わりがあるんだって言われれば、多分無い。確かに“きっかけ”にはなったのかもしれないけど、それも偶然が重なっただけって感じだし……」


 などと、言い訳みたいな言葉を紡ぐしかなかった。

 だってコレ、本当に確証とか無いし。

 そもそも、間違いなく“俺達”って意味では関係ない話になって来るし。

 今対処しなければいけない事態から考えると、それこそサブイベントって言って良いモノなんだろう。

 しかもストーリーの本筋ではなく、俺個人のサブストーリーとも言える様な。


「しかし君の記憶には確かに残っている事例だった、という事で良いのかな? 鮮明に思い出せずとも、心の中には刻まれた過去の記憶。まるで君の意図しない形で蓋をされてしまったかのような。それは間違いないのかな? 魔王」


 未だに飲酒しておられる黄龍が、そんな事を言いながら此方に杯を渡して来る。

 とりあえず受け取ったが……今、霧に包まれていないんですけど。

 だからこそ、酒飲んだら明日が酷い事になるのが目に見えている為、出来ればご遠慮したいというか。


「これから“決戦”とも言える事態に対処しようとしているのなら、例え小さな心残りでも解消しておくべきだと思うけどね? 因果、絆、引き継いだ古の記憶、様々なものが絡み合った現状なんだ。ほんの些細な綻びだって、無視するべきではないと私は思うよ。全てのモノに意味があり、例え無視してしまっても問題無かった事例だとしても。その一手間が、他の誰かを救ったりする未来だって運んで来るものさ」


 それだけ言って、シュウは筆を取り出してから空中に何かを描いて行く。

 やがてソコには霧が集まり、随分と古風な酒瓶が出現したかと思えば。

 ソイツの口に結んである紐を解き、軽い音を立ててコルク栓を引き抜いた。

 そしてそのまま、俺が手にしている杯にチョロっと少量の酒を注いで来る。


「これは?」


「“神酒”、というヤツだね。正真正銘、私の力そのものが凝縮されている様な代物だよ。私は“夢”を司る龍。他人に夢を見せるだけではなく、他人の夢を促し、導き、そして当人の深層部分に触れる事だって可能だよ。それこそ、“夢の世界”では人は嘘が付けないからね。自らの心にさえも」


 そう言ってから、黄龍は怪しげに微笑んだ。

 その瞳はまっすぐ此方を見つめながらも、まるで俺の奥深くを覗き込んでいるかの様な雰囲気で。


「全てのモノに意味があり、繋がりがあり、因果は常に纏わり付いてくるもさ。例えそれが、自らの予想だにしない遠い遠い世界の話だったとしても。自らは何者なのか、自らが何者であったのか、自らはこれから何者でありたいのか。世界を跨いで旅を続ける程の存在なんだ、それはもう……自分では忘れ去ってしまった様な“過去”すら、もしかしたら何かの鍵になるかもしれないよ?」


 何やら意味有り気な言葉と共に、彼女は酒を勧めて来る。

 間違い無く今の俺達には必要無いと言えるようなイベント、それは分かっているのに。

 その杯に、ゆっくりと口に着けた。

 次の瞬間には、強すぎる酒気にクラッと来たが。

 フラ付く身体は倒れ込み、そのまま誰かに支えられ頭をゆっくり降ろされた。


「眠れや眠れ。例え作り物の世界だったとしても、そこに魂があるのなら……それは、間違いなく君自身なのだよ? 今一度、自らと向き合ってみると良いよ、魔王クウリ。君は何を求め、自らの役目は何か。その答えは、意外と自分の中にあったりするものさ」


 遠くから聞えて来る夢の黄龍の声に、ゆっくりと意識を手放していくのであった。

 自ら眠りを望み、意識の覚醒を放棄する。

 これが本当の意味で、“意識を手放す”って事なのだろう。


 ※※※


 歌が、聞こえたんだ。

 多分学校から帰る途中、友達と散々遊んで、もう周囲は暗くなっていた頃だと思う。

 やけに大きな家、もはや御屋敷って言って良い様な、田舎のデッカい家。

 帰り道の途中、背負っているランドセルを邪魔に思いながらも。

 全力疾走で家に帰っているところで、たまに聞えて来る歌声。

 これを聞く度に、足を止めた。

 なんだか凄く印象に残って、心が安らぐ気がして。

 だから……なんて言った所で、今考えれば犯罪もいい所だけど。

 その家のデッカい塀によじ登り、ちょっとだけ中を覗いてみた。

 そこにあったのは、凄く広い庭。

 庭の中に川がある! なんて感動したのも束の間。

 俺の視線はある場所で止まり、釘付けになってしまった。

 大きな屋敷の縁側に腰掛けた女の人。

 赤い着物を身に纏い、黒くて長い髪を風に揺らしている女性。

 若いけど、俺よりずっと年上。

 高校生くらいだろうか? なんて事を考えながらも、歌っている彼女の事をジッと見つめていれば。


「ボク、居るんでしょう? 遠慮せずに入っておいで」


「どわぁ!」


 急に彼女がコチラに声を掛け、更には視線まで真っすぐ向けて来たので。

 焦って塀の上から落っこちた。

 小学生の身長からすれば随分と高所から落下した事により、普通に足を挫いた。

 こっちの姿を見て、なのかは分からないけど。

 塀の向こう側からは、ちょっと慌てた様な足音が聞えて来て。

 すぐ近くにあった、家の門が開いた。

 そして。


「……大丈夫? ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったのだけれど」


 ちょっとだけ慌てた様子の彼女が、綺麗な黒髪を揺らしつつ家の外に出て来てしまったではないか。

 見つかった、ヤバい、とか。

 絶対怒られるって、ひたすらに焦ったのだ。

 しかしながら、彼女は静かに歩み寄ってから微笑み。


「怪我したの? 立てる?」


 そう言って、こちらに白い掌を伸ばして来た。

 小学生のガキながら、多分……初恋だったのだろう。

 日が沈むのも早くなって、気の早いお月さまが空に輝く時間帯。

 その背に優しい月光を浴びながら、彼女は俺に対して静かに微笑みを向けて来たのだ。


「ごめん、なさい……」


「謝る必要なんか無いわ。また、聞いてくれていたんでしょう?」


「気付いてたの?」


「えぇ、昔から気配を読むのは得意なの。ホラ、おいで。気休め程度かもしれないけど、怪我の手当てをしてあげるから」


 そんな言葉を耳にしてから、俺は彼女の手を取った。

 もはや足が痛いとかそういうのを忘れるくらいに、心臓が煩くバクバク脈打ったのを良く覚えて……いた、筈なんだけどな。


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