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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
9章

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第207話 エンディング手前


「ったく! 飽きもしねぇでウジャウジャウジャウジャと!」


「ほんっと! ラストステージらしくなって来たねぇ~!」


 本日も敵の群れに向けて“ぶっぱ”をかまし、それでも抜けてくる敵をトトンが引き付ける。

 最終ステージは雑魚エネミーすら苦戦する仕様、これはユートピアオンラインでも同様だったらしく。

 これまで以上にヤバいのがウジャウジャと湧いてくるではないか。

 ちなみに今居るのは、何かヤドカリとカニが合体した様な見た目の生物。

 そのサイズは、トトンなんか平気でパクリと喰われてしまいそうな程にデカいが。

 無駄に硬い甲殻と、背中に背負った貝殻。

 あろう事か、貝殻の方はウチの前衛でも平気で攻撃を弾かれる程に防御力が高いと来ている。


「コイツ等が集団で出て来ると、本当に厄介だな!」


「口から出して来る泡にも気を付けてね! 俺等が経験した奴より強化型だから、どんな効果があるか分からないよ!」


「小さいのは見た記憶があるけど……こんなに大きいと、泡も吹くのね」


 若干一名ズレた事を言っているが奴が居るが、今はそれどころではない。

 もはや見た目が怪獣だよこんなの。

 人よりデカいヤドカリってなんだよ、普通に怖ぇよ。

 似た様なエネミーはゲーム時代に確認した事があるが、この大きさと色合いは見た事が無い。

 しかも何か変な模様まで入ってるし……最終エリア仕様の強化個体で良いと思うのだが。

 試しに攻撃を食らってみるかー、なんて事リアルでは出来る筈もなく。


「“プラズマレイ”!」


 とにかくデカいの叩き込んで数を減らしているのだが、群衆の中から“キンッ!”っと妙な音が聞えて来た。

 うっわぁ……すげぇ嫌な音。

 攻撃術師だったら、ゲーム内で一番聞きたくないSE。


「全員ふせろ! “反射”がくるぞぉぉぉ!」


 叫びつつその場に伏せれば、此方の頭上を……先程俺が放ったはずのレーザーが一本。

 真っすぐ返って来たし、横薙ぎに払う様な事も無かったので、そこまで怖い魔法反射ではない様だが……。


「ちょいちょいちょい! クウリのプラズマレイまで返して来るの!? どんな魔法抵抗能力!?」


「相手の数値以上の攻撃なら、基本的に“反射”は出来ない筈なんだがな……リアルだからこその影響か、それとも特殊個体だからなのか」


「とにかく、魔法特化の個体が群れに交じってるって事でしょ!? 探す! こっちで叩く!」


 仲間達はすぐに対応を始めてくれたが、唖然としているのが二人ほど。

 一人は当然魔女。

 魔法攻撃の“反射”というものを初めて見たのか、それとも俺の攻撃が返って来た事に驚いたのかは分からないが。

 嘘でしょ? みたいな感じで、目を見開いていた。

 そんでもってもう一人、こっちは……。


「おぉ、これはまた……奇天烈な事をする魔獣も居るものだね。まさか魔王の攻撃を跳ね返すとは。どうしてくれるんだい? 私の酒が台無しだ」


 後方で完全に俺等の観察態勢だった酒飲みが、被害に遭ったらしい。

 彼女が酒を入れているひょうたんが、先程のレーザーでぶち抜かれてしまった様だ。


「おいシュウ! 酒の心配より自分の身をちゃんと守れよ!? さっき伏せろって言っただろうが!」


「ハッハッハ、皆よく動くなぁと思って。まるで英雄譚の巻物でも眺めている気分だよ、楽しい楽しい。思わず酒が進んでしまった」


「いやお前も一応パーティに参加してる様なもんなんだからな!? というか少しは手伝えよ!」


 思わずウガァ! と吠えてしまったが。

 黄龍はケラケラ笑いながら空中に絵をかき、新しい酒を準備しているではないか。

 駄目だコイツ、全然役に立たない。


「だぁクソッ! こうなって来ると“ぶっぱ”ばっかに頼る訳にいかねぇじゃねぇか!」


「どうするクウリ!? 一回引く!? 単体攻撃だけじゃ、この数は流石に間に合わないよ!?」


 叫ぶダイラが、必死で防壁を展開。

 回り込んで来ようとする奴等をひたすらブロックし、必要があればブレイクと放射を組み合わせてノックバックで無理矢理距離を空けている。

 これを全体で、しかも必要最低限の大きさのプロテクションを連続で張っては壊しを繰り返しているのだ。

 かなぁり器用な事をしているのは見ていても安心感があるが、かなり無理をしているのは明白。

 だからこそ、出来れば短期決戦に持ち込みたい所なんだが……。


「イズ! フレイムボム! 直接当てない限りは、“反射”は無い! “お試し”だ、周囲にまき散らしてくれ!」


「了解! “フレイムボム”!」


 此方の指示に、イズが周囲に向かって炎属性の攻撃をまき散らした結果。

 爆発に関しては、貝殻の中へ逃げてダメージを避ける個体が多数。

 しかし燃え上がった炎に関しては。


「うっし、弱点属性判明! トトン、イズ! 奥義! 全部まとめて焼きガニにしてやれ!」


「覚醒! 奥義、“ヒプノシス”!」


 ガツンと盾を打ち鳴らしたトトンが、超が付く程強力なヘイトコントロールを使用すれば。

 ヤドカリ共は、一斉にちびっ子に向かってウジャウジャと集まり始める。

 こうも軍団規模だとかなりの恐怖だし、はっきり言ってキモイってのが正直な所なんだが。


「風魔法で自分をふっ飛ばしからのぉ~、“エアハイク”!」


 四方八方から襲って来る魔獣に対し、トトンは空に逃げた。

 アレなら“飛行”の扱いにはならないし、空から他の“お邪魔虫”が襲って来る心配も無い筈。

 だからこそ舞い上がったアイツの足元には、ほぼ近接攻撃しか出来ないエネミーがワラワラ……だけだったら良かったのだが。


「どわぁぁぁ!? 仲間を使って登って来てる!? ヤドカリタワー! ねぇヤドカリタワーが建築され始めてるよ!?」


 空中で、トトンが悲鳴を上げていた。

 いや、うん。アレは確かに怖いわ。

 集まって来た仲間を足場にして、ヤドカリ共が上へ上へと昇り始めたのだ。

 ヒプノシスの影響で、一心不乱にちびっ子目掛けて集まって来る事は理解していたが……まさかここまでやるとは。


「い、いい……か? そろそろ使ってしまって」


「ま、まぁ……大体集まった、かな? うん、頼むわ」


 皆揃って、うわぁ……と引いた様な表情を浮かべてしまい、未だ空中に居るトトンは悲鳴を上げる。

 アイツの空中足場も、時間が短いからな。

 さっさと片付けてやらないと、あのヤドカリの海に落ちる事になるのだ。

 想像するだけでも恐ろしい……というか、周りがずっとワシャワシャしている環境なんてゾッとする。

 という事で、今度はイズが飛び出し。


「覚醒……奥義、“煉獄”」


 パパッと大技をかます前衛を中心として、炎の地獄絵図が発生。

 大規模火災待ったなしの、広範囲高火力技。

 そんな訳で、集まって来たヤドカリのほとんどが炎の海に呑まれてみれば。

 渦巻き状の貝殻を燃やし尽くす事は出来なかったが、真っ黒に焦げたそれが幾つも降って来る。

 そして中身に関しては、綺麗にそのまま炭になってくれた様だ。

 今回もまた大技連発で片付けてしまった訳ですが……いかんなぁ、結構戦略が雑になって来た気がする。

 まぁ現状対処出来ているし、この方が早いので構わないっちゃ構わないんだけど。

 などとやっていたが、ハッと重大な事に気がついた。


「シュウ! お前大丈夫――」


「おぉー、派手だねぇ。周囲一面火の海じゃないか」


 慌てて振り返って見れば、思いっきり火炎に呑まれながらも飲酒している酒カスが一人。

 よ、良かった……コイツに関しては、エレーヌと違って“パーティ登録”されているのかちゃんと確認していなかったからな。

 とんでもない技で検証する結果になってしまったが、まぁ被害が出てないって事はそういう事なのだろう。

 という事で、思い切り胸を撫で下ろしていれば。


「しかし、随分と良い匂いがしたね? これだけ火力が強いと、本当に燃える一瞬だけども」


「あぁ、そういえば確かに。なんだか美味しそうな匂いが……」


 思いっ切り戦場だし、現状はイズの炎に俺等全員が呑まれている最中だというのに。

 魔女と、戦闘にさえ参加しない酒カス……ではなく、黄龍がクンクンと鼻を鳴らしているではないか。

 なぁにやってんだかこの二人は。

 まさかアレか? コイツ等を食ってみようってか?

 止めとけ止めとけ、素人が野生のモンに手を出したら、腹壊すだけじゃ済まなくなるかもしれねぇぞ?

 なんて、声を掛けようかとしたのだが。


「そういえば……ヤドカリは、かなり旨いと聞いた事があったな。俺は実際食べたことが無いが、大型の物を食用として出している店は見たことがある」


 イズが、余計な事を言ってしまった。

 この一言に、ギュンッ! と凄い勢いで此方に視線を向けて来るのが二人。

 あのさぁ……俺等これから世界に挑むぜ! みたいな集団な訳ですよ。

 なのに最終目的地付近でやることが、ヤドカリの試食?

 絶対違うでしょ、プログラム組んだ皆様が見たら総ツッコミを受けそうな行為だよそれ。

 コイツ等最終ステージで何やってんだって言われるって、絶対。

 そんな訳で、非常に……それはもう非常~に大きなため息を零していれば。


「うっひぃ……焦ったぁ。ていうか、俺の真下でヤドカリタワーが焼けたせいで、すっげぇ匂い付いた気がする。ねぇねぇクウリ、俺の身体からそういう匂いする?」


 戻って来たちびっ子が、俺に向かって「嗅いでみて」と言わんばかりに手を広げてみせた。

 コレに反応したのは、やはり食い意地の張った二人。

 さっきまでろくに動こうともしなかった黄龍まで、随分な勢いでトトンに近付き、二人揃ってクンクンクンクン。

 俺等も結構、道中では食い物食い物ってやっていたけど……何だろうね。

 ここまで空気を読まないのが二人も居ると、流石に呆れる。


「魔王、一つ提案があるんだけど……いいかな?」


「いいかな? じゃねぇのよ。駄目なのよ、お断りなのよ黄龍さんや」


「私からも提案があるわ、魔王」


「却下するんだわソレは。聞く前から却下なんだわ、魔女さんも」


 コイツ等だけ見てると、現地人って逞しいねって思っちゃうけど。

 絶対違うよね、この二人だけだよね。

 いやまぁ、食に関しちゃ研究しない方がおかしいから……安全な環境であれば、否定はしないけども。

 間違い無く、今やる事ではないと分かる。

 というか分かれ、ちゃんと理解しろ。


「クウリ、スキルを止めるぞ?」


「おーぅ、お疲れぇイズ。ダイラー、すまん。トトンに“清浄”使ってやってくれーい、見事に焼きガニ臭だわ」


「はいはーい、ただ今~」


 そんな訳で、“龍の谷”を抜けてからの戦闘はこんな事ばかり。

 基本強化されたエネミーが出現し、俺等も見たことが無いタイプだからどうしても一気に進む事が出来ない。

 遠方&高所からだったら視界の先に見えていた“北の門”だったというのに……。

 ここに来て、また亀の様な歩みになってしまったという訳だ。

 流石エンディング手前、楽にはいかせてくれないねぇ。


「私も戦闘に参加するから! ね!? 一匹くらい試しに食べてみても良いじゃないか!」


「美味しいかもしれないわよ? それも、物凄く美味しかったらどうするの? こんなにいっぱい居るのなら、今の内に食料を確保するべきだわ」


 あーあー、うるせぇうるせぇ。

 シュウがガチ目に戦闘に参加して、俺等を楽にしてくれるっていうのなら考えるが。

 コイツの攻撃も、第一形態だと俺と同じ“魔法ぶっぱ型”だしなぁ。

 しかも、一点特化ではなくフィールドを包み込む様な放射型。

 さっきの“反射”持ちでも来たら、いったいどうなってしまう事やら。

 黄龍の攻撃なのか、それとも相手の反射攻撃なのか分からない弾幕が飛び交ったら、流石に危険以外の何物でもないってもんだろう。


「レイドボス様が、俺の指示にちゃんと従ってくれんのなら……まぁ、一匹や二匹は考えない事も無いがぁ? 調子乗ってバカスカ撃たれると、こっちにも被害が出かねないからなぁ~」


「従うと約束するよ!? 絶対するよ!?」


「どんだけヤドカリ食いたいんだよ……」


「だって美味しいんだろ!?」


「いや知らんし、イズだって食った事ないって言ってただろうが」


 もう嫌だこのレイドボス、酒と肴の事しか考えてねぇ。

 ゲーム時代は、こんなのヒーヒー言わされてたのかって思うと……なんだろう、無性にムカつくな。

 俺等が相手していたのは本人じゃないと分かってはいるのだが、何かイラッと来るな?

 お前のドロップ品、マジで出ねぇし。

 出費度外視で何回倒したと思ってるんだよ。

 などと、思いっきり深いため息を吐き出していれば。


「あーえっと、クウリ? ちょぉっと、緊急事態かも」


「ん? どうした、ダイラ」


 こっちはこっちでおかしな方向で話が盛り上がっていたが、今度は性女様が若干口元をヒクヒクさせていらっしゃるではないか。

 なんか嫌なものでも見つけたのかと、その視線の先を追ってみると。


「……うわぁ」


「ボス……だろうか?」


「フィールドボスって感じはするねぇ……デッカ」


 ダイラが見つめている先では、“丘”が動いていた。

 しかもこっちに向かって来るのが分かる。

 見た目は丘だね、完全に。

 なのに、下からは嫌という程さっきまで見ていた、ワシャワシャが生えているのだ。

 ついでに言うと、こっちに向かって来るのだ。

 更に言うと、ソイツの周りにもウゾウゾしているのがいっぱい。


「はぁぁぁぁ……やるかぁ……アレ片付けたら、今日のキャンプ地はココだなぁ……」


 俺の一言に、目を光らせたのは二人だけ。

 他の面々は、思いっきりため息を零していた。

 ゲームだったらある程度理解出来るっていうか、難易度爆上がりは覚悟するんだけどさぁ……。

 これは流石に、やり過ぎだろ運営……。


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