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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
8章

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200/224

第200話 ひとりひとり、色々ある


「クウリにはあぁ言ったがな、俺達も俺達で話し合っておく必要があるだろう」


 レイドボス、“夢の黄龍 シュウ”が用意した豪華すぎる料理を腹いっぱい食べた後。

 トトンとダイラを連れて、テントに戻って来た俺達。

 現状はシュウの結界に守られている……というか彼女の霧が俺等を包み込み、こちらへの攻撃停止指示を出している為、何も心配する必要はないのだが。

 それでも一応、なんて言って周囲の警戒として外に出ているクウリとエレーヌ。

 アチラもアチラで、色々と話す事があるのだろう。

 そして残ったこちらの面々としては。

 やはり環境が同じ者同士で話したい事もあるだろうという事で、時間を貰った形。


「イズ、悪い……その」


「任せろ、クウリ。それから、俺には気を使わなくて良い」


「そういう訳にも……」


「これでも、皆に比べれば“大人組”だからな。お前が思い悩んでいる事も想像がつく。しかしその上で言う、俺を“頼れ”。いいな?」


「……すまん、いつも頼ってばっかで」


「いいさ、俺も頼らせてもらっているからな」


 なんて会話を挟んだが……馬鹿モノめ。

 アイツのせいではないというのに、どこまでも責任ばかりを感じている。

 そんなリーダーの元に集まってしまったのだ。

 だったら、俺達だって頼ってばかりとはいかないだろう。

 という事で、今日は俺が話のまとめ役として名乗りを上げた訳だが。


「まぁ、色々と思う所はあるけどね……理解が追い付いてないってのが、正直なところかな。実は俺達だけ、そもそも転生とか“そういう事”の外側でしたって急に言われても。クウリの“転生特典”みたいなモノでした~って言われてもねぇ、現に身体がある以上……どゆこと? としか」


 アッハッハと、大袈裟に笑って見せるダイラだったが。

 この様子からするに、本人も相当混乱しているのだろう。

 とはいえ、アイツの前ではその様子は見せなかった。

 無理はしていたのだろうが……それでも、答えは決まっているのだろう。


「ダイラは、本当に良いんだな? 北の門へ向かってしまって」


「ん、俺は本当にソレで良いよ。引き返せばずっと皆と居られるって保障があるのなら、そっちも悪くないって思うけど。でも不安があるのなら、クウリに頼る方が……俺らしいかなって。すっごく情けない答えだけどね? でもウチのリーダーは、絶対俺等の事見捨てないって知ってるから」


 ニヘヘッと、ちょっとだけ困った様な笑みを浮かべるダイラ。

 自らの運命を他者に任せるという、そんな決断をした様にも見えるが。

 それでもコイツなりに考え、そしてクウリに託す事を選んだのだろう。

 実際このまま不確定要素を抱きながら生きて行くのは不安しかない。

 かといって北の門へと向かえば、その答えがすぐ目の前に迫ってしまう。

 例えそれが分かっていたとしても……ダイラは、共に居る事を選んでくれたという事だ。

 もしかしたらソレが高くない可能性であったとしても、俺達の妄想の様な代物だったとしても。

 クウリなら、何とかしてくれると信じて。


「それにさ、言葉を悪くしちゃうなら……俺等だけじゃどうしようも出来ないじゃん? 戻る戻らない、元の世界の身体云々って前に、今ココに居る俺達も俺達な訳で。他の選択肢を選ぶって、つまり死ぬって事でしょ?」


「まぁ、そうとも言えるのかもな」


「だったら、こっちの方が良くない? みたいな。ほんっと、情けない答えしか出てこないんだけど。俺って元々そういう人間だからさ……今後の事とか、重大な事を決める時って……すぐ、逃げたくなっちゃうんだよね。先延ばしにして、周りから何か言われる環境を避けて。でも、でもさ……」


 今まであえて軽い雰囲気を作っていたダイラだったが。

 その身体は徐々に震え始め、まるで押さえつけるかのように自らを抱きしめてから。


「そんな“選べない”ヤツに、いきなり選べって言われても……無理だよ。出来る事なら選びたくなく、今すぐ逃げ出したい。けどどこに逃げれば良いのかも分かんないだよ……戻ってもいつまで続くか分からない、進んだらすぐ死んじゃうかもしれない。こっちで死んだらどうなるの? 元の世界に戻るの? それとも単純に今の俺が居なくなるだけ?」


「……ダイラ」


「俺は皆みたいに強くない。だから“向こう側”でも全然駄目で、中途半端なヤツで……けどココなら、皆と一緒の時だけは……ちゃんと頼られるプレイヤーになれたんだよ。だから俺にとって、パーティが“逃げ道”なんだ……それさえ奪われるって言うのなら、進む。皆と一緒に、ずっと一緒に居られるかもしれない道を選びたい。なんて……これも“逃げ”だよね。結局皆に頼って、判断をクウリに全部任せちゃってる訳だし」


 泣きそう、というかもはや目に大粒の涙を浮かべながら。

 ダイラは、確かにそう言葉にした。

 これが、コイツの本音。

 正直、俺達と関わっている時のダイラは非常に器用だ。

 記憶力だって凄いし、何よりその場その場で最善の答えを導き出す能力に長けている。

 それはダイラの強い武器だし、俺達がダイラを頼る際に一番期待している“才能”なのだ。

 多分、本人が一番分かっていない。

 パーティの中で常に、というか最も決断の回数が多いのは、俺等前衛でも攻撃術師でもない。

 ヒーラーであり、魔法防御担当。

 それにバッファーの役目と、クウリの最も近くでの補佐。

 言葉を並べているだけでも分かる。

 本人は頼っているつもりになっているのかもしれないが、防壁の一枚、魔法の選択一つに対しても。

 ダイラは常に考え続けて、選び続けているのだ。

 この才能は、間違いなく俺達には無いもの。

 本人が気づき、そして誇るべき“力”なのだ。


「お前は全然駄目なんかじゃない、それは俺達が一番よく見て来たからこそ分かっている。それにダイラは、いつだって思考を投げ捨てた事なんて無いんだ。ずっと考え、その答えとして相手に任せると決断したのなら。それは……クウリを信じて、“託した”という方が正解だろう。お前は凄いよ、本当に凄い。こんなの、パーティ全員が知っている事だ」


「イズぅぅ……今だけはそういう事言うの止めてぇ……泣きそう。マジで不安ばっかりだから、嬉しい事言わないで……」


「ハハッ、別に泣いたって誰も笑わないさ。多分クウリだって同じ事を言ったと思うぞ? 今はアイツの方が気にしていたから、俺が代わりを務めているがな?」


「やっぱ俺このパーティが良い……戻るのも、死ぬのも、クウリ一人だけ残しちゃうのも嫌だぁ……そんなの、絶対辛い結果にしかならないじゃん……」


 感情の限界が来たのか、ズビズビと泣きながらくっ付いて来るダイラ。

 コイツにしては珍しい事もあるものだとは思ってしまったが、まぁたまには良いさ。

 今でこそアバターの見た目も有り、それこそクウリに対してだって大人ぶった態度を取ろうとしたりはするが。

 実際にはまだ、学生を卒業したばかりの若者なのだ。

 自分の事を、自分で全部決めろと言われたって不安を抱くのも当たり前。

 だからこそ俺みたいな歳をくった者達が、困った時は寄り添ってやれば良いというものだ。


「ちなみに、イズに関してはどうなの? 何かもう、クウリから話を聞いてる時点で“覚悟は決まっている”みたいな、武人っぽい雰囲気だったけど。だって今まで、“戻るべきだ”って言ってたよね? 反対じゃないの?」


 引っ付いて来たダイラが、少々不安そうな顔で此方を見上げて来たが。

 此方としては、相手の様な御大層な理由がある訳では無いのだ。

 だからこそ、俺が決断を下した理由など話せば……それこそ、呆れられてしまうかもしれないが。


「別に、大した事じゃない……それにホラ、戻るべきだと言葉にしたのは、元々は別の世界で生きて来たからこそ、な訳で。個人の感情では無く、関わった全てに対して義理を果たすべきだという意味合いが強い」


「イズは何と言うか……ホントに現代の人? 実は侍とか居た時代の人だったりしないよね?」


 なんて、真顔で冗談みたいな事も言われてしまったが。

 流石にそれはない、無いのだが……実際には、結構古い家というか。

 考え方として昔の伝統を重んじる家系だったのは間違いない。

 その影響もあり、思考が少々堅苦しいのも理解はしているつもりなのだが……結局のところ、俺が“残る”為の可能性に乗った決定打と言えば。


「言葉にはしなかったが……あの馬鹿は、俺達の事でいつまでも悩んでいるからな。しかしアイツの瞳は、間違いなく“助け”を求めていた。だから、残ると決めたんだ。まったく、素直じゃないリーダーが居たものだな。気を使う事無く、助けてくれと言葉にすれば良いのに」


 これが、俺が残る事を決めた理由。

 本当に馬鹿みたいな話だが、本当にソレだけなのだ。

 助けを求められたから、助けてやろうと思った。

 魔王だ何だと高笑いを浮かべる癖に、いつまでも一人でウジウジ悩んで。

 そのくせ俺達の事となると、意地を張ったり無駄に気を使ったり。

 器用な癖に不器用なあの馬鹿を、放っておけないと思ってしまったのだ。

 なんて、考えていると。


「武士だぁ……心の在り方が侍だぁ……」


「イズ、絶対“向こう側”でもモテたでしょ……“漢”! って感じが凄いんだけど……」


 二人から、物凄く変な事を言われてしまうのであった。

 勘弁してくれ。

 俺はリアルだとこういう空気が、どうしても慣れない不器用な人間なのだから。


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