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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
8章

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第199話 巣立て、何者であろうとも


「……起きたかしら? 魔王」


 瞼を開けてみれば、珍しい事にエレーヌがコチラの隣に腰を下ろしていた。

 テントの中、寝袋に包まれた俺の隣で、両手剣を抱く様な形で肩に掛けている。


「……おはよ」


「えぇ、おはよう。少しは落ち着いた?」


 周囲を見回してみれば、仲間達の姿はない。

 でもシステムメニューのマップを見てみれば、三人がココを守るみたいにして外で待機しているのが分かる。

 昨日の夜、シュウの言葉に暴走した俺。

 そして事実の一欠片とも言える言葉を聞かされた皆も、大いに混乱していた。

 だというのに……今は、俺が休む事を優先してくれているらしい。

 本当に、情けねぇリーダーも居たもんだ。

 ハハッ……と乾いた笑い声が零してしまったが。


「黄龍、シュウ。彼女が言っていた事は、事実なの? あの三人が貴女の作った幻で、私と貴女が近い存在。正直、理解しがたい事この上ないけど」


 ポツリと呟きながらも、魔女は静かに此方に視線を向けて来た。

 コイツにも、いい加減全部を話さないとな……。

 例え理解されない、信じられない様な内容だったとしても。

 ある意味、俺の様な存在であった方がまた納得というか。

 諦めの様な感情は浮かぶのかもしれない。

 でもエレーヌの場合は、全てが作られた存在。

 その過去ですら、愛する人と共に歩んで来た記憶すら作られたソレ。

 現状でも大事に相手の亡骸を棺桶に入れて引きずってまで、相手との繋がりを捨てたくないと藻掻いて来たのに。

 これまでの過去を全て否定される様な、ある種人生の意味すらも否定される様な答え。

 これを彼女自身に、俺の口から伝えなければいけないのか。

 自分自身の事ですらいっぱいいっぱいだというのに、他全員にも重要な事を伝える役が全部俺ってのも……なんだかなぁって感じではあるのだが。


「……あれから、シュウは?」


「近くには居るそうよ。落ち着いたら、また話そうって言っていたわ」


 チラッとテントの外を覗いてみれば。

 周囲には濃い霧が発生しているというのに、俺達のテントの周りだけ視界が晴れている。

 まるでダイラがプロテクションでも張って、周囲からの影響を阻害しているかのような見た目だが。

 これもまた、シュウからの気遣いなのだろう。

 龍の夢などに付き合う必要はない、今は心を落ち着けろって事らしいが……チッ、まったく。

 レイドボスの癖に、キーパーソンのNPCみたいな真似しやがって。

 昨日此方はあんな敵意を向けたってのに、次からどんな顔して会えば良いんだか。

 とはいえ、これのお陰で“アイツの夢”を見る事が出来た様だが。


「皆の所……行くか。エレーヌ、お前にも話したい事がある」


「今度こそ隠し事は無し、という事で良いのかしら?」


 やはり、コイツにも色々とバレていたらしい。

 まぁそりゃそうか。

 俺、隠し事下手クソみたいだしね。

 とはいえ。


「全部の答えが分かった訳でも、お前等の欲しい答えを全部用意してやれる訳でもない。けど……俺の知っている事、聞いた事は全部教えてやる。多分ソレは、お前自身を傷付ける事にもなる筈だ。答えも無いのに、今を否定する様な言葉を伝える事になるからな」


 それだけは宣言してみると、彼女はスッと目を細めてから。


「受け入れる……かどうかは、聞いてみないと分からないけど。覚悟はしておくわ、魔王。でも安心して、魔女は傷付く事に慣れているから。私に気を使い過ぎる必要はない、それだけは言っておくわ」


「ハハッ、流石は世界最強種の魔女様だな」


「どうかしらね……貴女達や、昨日黄龍みたいなのと会うと、自分が強いという自信がどんどん無くなっていく気がする。どうしてくれるのかしら?」


「なら、俺等と一緒に居ればいいさ。そうすりゃ間違いなく、“負け”はねぇ」


「言うわね、魔王。その自信過剰っぷり、嫌いじゃないわ」


 二人して軽口を叩いて、少しだけ気持ちが楽になった。

 さて、話すか……全部を。

 これまでは“答え”を求めて北の門を目指して来た。

 けどここからは、“未来”を求めて北の門へと足を向ける事になる。

 それも全て、皆の決断次第にはなるのだが。

 “招待”ってヤツだって、此方から送る事が出来るのかも分からない。

 けどアイツがあんな事を言っていたくらいだ、全く可能性が無いって事は無いのだろう。

 そして何より、アイツと俺は同じ“転生者”という扱い。

 だったら、“世界を作り出した”なんてスゲェ真似をしたアイツと、似たような事だって俺にも出来る筈なのだ。

 作り出した世界と繋がりを持った“プレイヤー”を、無意識ながら“招待”した。

 俺はそこまで頭が良くないが、でもその権限に近いモノを持っているというのなら。

 出来ないって事は、無い筈なのだ。


「伝えるだけで、全部お前等に選んでもらう。こんな無責任な魔王が居て堪るかよ……ったく、なっさけねぇよな」


「良いじゃない、別に。情けない支配者なら、下が逞しくなるものよ。そんな仲間に囲まれているのなら、貴女は自信過剰に高笑いでも浮かべなら、世界にでも何でも喧嘩を売れば良いんじゃない?」


「プッ、ハハッ! 確かに、その馬鹿っぽさは俺らしいかもな」


 なんて言葉を交わしてから、俺達は二人揃ってテントから歩み出した。

 さぁ、話そう……全部を。

 全部伝えて、納得いくまで話し合って。

 あぁでもないこうでもないって言い合って、全員で答えを出そう。

 俺達はこれまでだって、そうやって冒険してきたのだから。


 ※※※


「やぁ、話はまとまったという事で良いのかな?」


 一日掛けて、俺の知っている事を全て仲間達に伝えた後。

 夕食の時間に差し掛かった頃、黄龍シュウは再び姿を現した。

 周囲の濃い霧の中から、本当にフラッと。


「答えも無い、納得もしていない。まだまだ分からない事ばかりで、マジで頭が痛くなりそうだが。一応、方向性はまとまったって感じだな」


「ほぉ、それは何よりだ。では、私にも聞かせてくれるかい? 君達は、どんな答えを出したのか。過去の人々は、曖昧な答えを出す者ほど後悔を抱いた。これまで自らの持っていた筈の“特別”が無くなってしまう訳だからね。もしもそうなるなら、引き返す事をお勧めするよ。私だって、年端も行かない若者達が絶望する姿は見たくは無いからね。自然と夢が覚めるその時まで、ゆっくりと残された時間を満喫する方が有意義だ」


 少しだけ困った様に笑うレイドボス。

 その姿は、本当にそこら辺の人と変わらない様子で。

 無知で、何も分からないまま突き進んで来た子供達を諭す様な瞳をしていた。

 きっとコイツは、ずっとココで俺達みたいな奴等を見送って来たのだろう。

 様々な答えを出した“天人”達を見て、その度に声を掛けて来たのだろう。

 まったく……他のボスもこんくらいフレンドリーだったら良いのに。

 そうすりゃ戦う必要も無いし、こんな力は無用な長物って事で捨てる事も惜しくない筈。

 だけどもまぁ、世界ってのは色んな奴が居る訳で。

 どうしたって戦う事も必要で、俺達の我儘を通すのならそれ相応の力ってのがやっぱり必要な訳で。

 そんでもって、俺等はやっぱり“俺等”じゃないと……生きて行けないんじゃないかなって、そういう結論に落ち着いた訳だ。


「俺等は進むよ。んで、答えを捥ぎ取る。無理やりにでも、“都合の良い”結果を求めてな」


「その答えが、どう足掻いても君達の望むモノではなかったとしても? 人とは、求め望み、そしてその答えが少しでも理想と違えば……たった小さなズレでも、生きて行く希望を失ってしまうモノだよ? その覚悟が、君達にはあるのかい?」


 無いよ、そんな覚悟。

 マジで無い。

 いざ北の門に到着して、その瞬間全部無くなって。

 その場で死にたくなる様な絶望に襲われるかもしれない。

 でも、進まないと……多分逃げた先では、俺等が本当に望んだモノは絶対に手に入らないから。

 いつか覚めてしまう“夢”に怯えてずっと暮らすくらいなら、例え世界に打ちのめされて明日を待つ勇気さえ無くなってしまうくらいなら。

 もしもこの世界が、そんなエンディングを用意してくるのなら。


「俺は、この世界で生きて行くしかないみたいだからさ。新しく生まれちまった命だってんなら、この地で生きるしかないんだろ? でも、もしも世界が俺の欲しい答えを用意してくれないのなら……その時は」


「その時は?」


 すぅぅ、と息を吸い込んでから。

 思い切り、不敵に、思う存分“悪役”ってヤツを演じながら。


「この世界そのものに、俺達は喧嘩を売る。下らねぇルールが存在するというのなら、俺等の都合の良い所だけ使って、気に入らねぇ所は捻じ曲げる。ソレが出来るのが“プレイヤー”だってんなら、その責任として世界にとっての“特別”であり続けろと求められるのなら……俺は、本物の“魔王”になってやる」


「本物の、魔王……ねぇ?」


 この言葉に、相手は何を思ったのか。

 笑いを押し殺したかの様な、随分と楽しそうな表情を作り。

 彼女の口元は、これまでに見た事も無い程歪んでいく。


「ハッ! くっだらねぇ、もう悩むのは止めだ! アレは駄目コレは駄目、知るかってんだそんなもん。世界にとっての特別になれ? 舐めるな、俺は……俺等は既に特別なんだと知らしめてやらぁ! 上等だよ、そんなクソ生き辛い条件余裕でクリアしてやるぜ。この世界そのものを支配でも何でもしてやらぁ! その為には、絶対に“仲間”が必要なんでな……だから」


 ガツンッと杖の石突を地面に突き立て、そして背中の翼を思い切り広げてから宣言した。

 彼女に俺達の事を伝えると同時に、俺達の事を見ているであろう“世界”ってヤツに宣言する為に。


「まずは“俺の夢”とかほざきやがった世界に喧嘩を売って、仲間達の存在をこの世界に知らしめる。その後は……ずっと俺のターンだ。世界の平穏? 刺激? 新しい種を異世界から調達? 呑気な事言ってる間に俺等が全部食ってやるよ。もしも“神様”ってヤツが居るのなら、ソイツに真正面から言い放ってやらぁ。テメェの世界貰うわ、返して欲しけりゃ俺達を殺してみせろってな」


 クハハッ! と笑って見せれば。

 シュウは顔を伏せながらプルプルと震え始め。

 そして。


「プ、プハハハッ! いいねぇ、いいよその強欲な意思。人の子はやはりそうでなくちゃ! 世界のルールなんて、古臭い枠組みなんて知るかって? 運命に拘り過ぎる長命の私達では辿り着けない、非常に我儘でいい加減な答え。なのに勢いだけは一丁前と来たものだ。ほんっとうに最高だよ、それでこそ可愛げがあるというものだ」


 ウケを狙ったつもりは無かったのだが、シュウは腹を抱えて笑い始め。

 ヒーヒー言いながらも、やがて収まって来た頃に筆を取り出した。

 そして、何かを空中に描き始めたかと思えば。


「であれば先人としても、年寄りとしても、若者の門出は祝わないと嘘だろうね。さぁ、飲めや歌えや、存分“最後の晩餐”を楽しんでおくれ。なぁに、“夢の終わり”というだけだ。目が覚めたのなら、自分達で“最高の宴”を用意してやれば良い。若者よ、巣立て。若者よ、大いに羽ばたけ。それも思い切り我儘に、全てを巻き込みながら。それこそが、人々の“進化”の第一歩というものさ」


 宣言した俺達の周りには、随分と御大層な建築物と、更には豪勢過ぎる料理の数々。

 まさに“宴”の会場というべき“夢の光景”が、この周辺を大地ごと作り変えるのであった。

 ハ、ハハハ……リアルだとこんな事も出来るのかよ、流石は“夢の黄龍”。

 感情に任せて喧嘩を売らなくて、ガチで助かったかもしれない。


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