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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
8章

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第193話 龍が住む霧の谷


 “龍は千年の夢を見る”。

 そんなタイトルコールと共に始まるレイドイベントがあった。

 プレイヤーは険しい山岳地帯に挑み、数々の不思議なエネミーと遭遇する。

 それら全ては夢の中に登場する実体のない存在であり、まるで筆で美しく描かれた水墨画の様な見た目。

 多種多様の生き物がその様な外見で登場し、特性としては通常の個体と同様の動きを見せるのだが。

 その全て、魔法と物理の混合生物という。

 ゲーム的に言うのなら、弱点が曖昧な上に、こちらに与えて来る攻撃すらも魔法物理のミックス。

 描かれた墨の色で、どちらの割合が大きいかを見極めながら攻略を進めないと、気を抜いた瞬間モブ戦ですらパーティ全滅なんて事もザラ。

 最終的にエリアごとの特性を見極め、攻略チャートを組み上げているプレイヤーも数多く居たが。

 何とこのイベント、四季があるのだ。

 しかもステージ進行、攻略具合に関係なく時間経過で季節が変わり。

 それと同時に、全体がガラッと姿を変える。

 これの影響で、環境的なデバフ要素や足場の具合……だけならまだしも、エネミーの種類だって当然変化。

 更には墨の色まで変わり、形としては以前同様の敵が、これまた魔法物理のバランスを変えて襲って来るのだ。

 つまり、本当に“色を変えて”世界そのものが襲ってくる。

 これによってプレイヤー側はかなり瞬発的な観測と、判断力が求められる。

 そして季節や墨の色、敵の種類の識別。

 生態系などの地域データまで記憶するという能力を求められる、まごう事無き高難易度ステージ。

 ふざけんなとブチギレる奴は多かったが、それでも挑んでしまうのがゲーマーというモノで。

 俺達四人もまた、このイベントステージを経験してはいるのだが――。


「え、えぇと~えぇっと! 黒の割合が多くて、柄が白と桃色だから……」


「トトンそのままパリィ! 追加で魔法攻撃が来る、弾いたらすぐにその場を離れろ!」


「りょ、了解!」


 どうにか戦闘行為が出来るであろう場所を見つけ、一旦そこで周囲のエネミーを殲滅する事にしたが……厄介どころの話じゃねぇ。

 一つ一つのザコエネミーでさえ特性が変わって来る上に、全員がソレらを完璧に記憶している訳では無い。

 その影響で、トトンはひたすら混乱。

 今回攻撃して来た奴に関しては、通常ステージならただの獣。

 単純な突進攻撃なので、ウチのタンクが苦戦する事など有り得ない。

 なのだが……大盾で相手の攻撃を逸らした瞬間、その場には墨を水に落とした時の様なエフェクトが残り。

 急いで回避行動を取ったトトンのすぐ近くで、軽い魔力爆発を起こした。


「どわぁぁっ! そっか、白ピンクの組み合わせは“弾ける”んだっけ……」


「次来るぞ! 青、紫の組み合わせ! 見た目は遠距離魔法攻撃だが、ダメージは物理の割合が多い!」


「訳が分からないわね……何なのコイツ等」


 チッと舌打ちを零すエレーヌが、放たれた魔法攻撃を両手剣で打ち落とした。

 対処法としては大正解。

 見た目は普通の魔法なのに、それの特性としては物理的に物を投げられたのと一緒。

 コレを見誤って魔法特化の防壁なんぞ展開してしまうと、平気で防壁を貫いて来る攻撃に変わる訳だ。

 そしてこれらの記憶ゲーが一番得意なのはダイラ。

 柄と色と季節、それらで判断してもらい俺が戦闘の指揮をする状態。

 全部一人でこなそうとすると、モブ戦でさえキャパオーバーを起こす難易度。

 だというのに、現状性女様に関しては別の作業をお願いしていた。


「ダイラ、どうだっ!?」


「イベントアイテムに使う素材自体は残ってる! けど入れ物とか、そういう物の代用品探さないと……えぇと、えぇっと! ごめん、ちょっと時間掛かるかも! 色々試さないと無理!」


 目を瞑ってインベントリを漁り、あっちもこっちもと色々な物品を取り出しているダイラ。

 はっきり言おう、このステージを全てまともに攻略するのなんて不可能だ。

 だからこそ、そういう所で救済してくれるのがやはり“アイテム”。

 本来は期間限定アイテムショップで販売されたり、楽に攻略する為の課金要素だったりする訳だが。

 ユートピアオンラインに関しては、“遊びイベント”でも無い限りそんな真似はしない。

 ガチの攻略を目的とした、運営の本気とも言えるイベントにおいて。

 あの会社は、楽な救済措置は用意してくれないのだ。

 イベントステージで実際に経験し、資料を集め。

 これまで集めた道具や、経験と知識が全ての鍵となる。

 この為“錬金術”が使えるプレイヤーは、新ステージが始まると本気で忙しくなるという訳だ。

 これに関してはダイラも一緒。

 しかしながらウチには急かして来るような輩は居なかったので、結構平和だったのだが……。


「すまんダイラ! 今回だけは急いでくれ!」


「分かってる! どうにかしてすぐ作っちゃうから、それまで何とか耐えて!」


 戦場のど真ん中、しかも敵に囲まれた状態での“錬金スキル”。

 アホみたいな膨大なレシピの中から、求めている物品を作るだけでも大変なのに。

 リアルになった影響で、その効果をちゃんと保管出来る容器まで用意、または一から作らないといけないという。

 とんでもなく無茶ぶりなのは分かっているのだが、こればかりはダイラの代役を務められる者も居ない。

 なので。


「ちょっと無茶するぞ! 近付いて来た奴は頼む! 俺は動けなくなる!」


「ちょいちょい! この霧の中で!?」


「地形に影響させると崩れるかもしれない! あまり大技は使うなよ!?」


 前衛の二人からはそんなお言葉を頂いてしまうが、やるしかない。

 さっき白ピンクの奴が居たから、下手に攻撃を貰って爆発される方が不味い。

 当然こっちにも被害が出る上に、イズの言う様に地形へのダメージが無視できない。

 もしもこの足場が崩れてみろ。

 こんな濃い霧の中、谷底に真っ逆さまなんて洒落にならねぇよ。

 だというのに……さっきから“上空”も煩いのだ。


「“ポイズンミスト”、“ウィジャボード”! 結構上の方に……“ルイン”! んでもって、来い! ノーライフキング!」


『御意』


 毒の霧も、まき散らした呪いも周囲の霧に飲まれ、正直どうなっているか分からん。

 上空に発生させたブラックホールすらも、どれくらい効果を発揮しているのかも不明。

 しかしながらMPは削られているので、間違いなく発動はしている。

 地形に影響してしまう為、これくらいしか広範囲攻撃が出来ないが……あとは、数で何とかするしかない。

 と言う事で、ノーライフキングと亡霊兵達をまとめて召喚。

 広く展開し、なるべく広範囲で戦闘を繰り広げてもらう結果に。

 なっさけない程その場凌ぎも良い所だが、それでも敵も都合良くは動いてくれないもので。


「正面! 多分小型の群れ! 足音が多い!」


「チッ! 厄介な“色”じゃない事を祈れ!」


「何色だと何なのか、私にはさっぱりよ……」


 前衛三人が武器を構え、正面の霧を睨みつけているが。

 白い世界から飛び出して来たのは……狐の群れ。

 しかも最悪な事に、柄は黄色と赤。

 やっべ……確かアレって。


「“倒すな”! こんな所で攻撃すると、その数じゃ間違いなく足場が吹っ飛ぶぞ!」


 エネミー討伐時、残された死体が大爆発を起こすという、視界の悪い中では一番出会いたくない相手。

 本来は遠距離から攻撃し、遠くで処理してから安全に進むのが鉄則。

 だというのに……そんなのが、群れで襲って来やがった。


「これはちょっと……本気でヤバイって!」


 俺の指示に従い、トトンは盾でとにかくガード。

 相手の突進を止める事に成功したが、相手をぶっ飛ばす訳にも行かず、やはり抜けて来る敵は多い。


「くっそ……クウリ! ダイラ! 一旦回避に専念しろ!」


 すぐさま双剣を仕舞ったイズは、まるで柔道みたいな動きで相手を掴み取り、谷底に向かって放り投げていく。

 しかしながら此方も、対処出来る数は限られている訳で。


「倒すなって……じゃぁどうするのよ!」


 珍しく慌てているエレーヌも両手剣をその場で投げ捨て、襲い掛かって来た狐を素手で鷲掴みにしているのだが。

 やっべぇ……本気で数が多い。

 というか、普通にやったら対処なんて不可能だ。

 思い切り舌打ちを零し、ルインを解除。

 上空からまた襲って来るかもしれないが、その時はその時に考えるとして、今は目の前の対処。


「覚醒! “シャドウバインド”!」


 こちらから影の拘束魔法が伸び、周辺に迫った敵を全てバインド。

 この程度の小物なら、オーバードライブ状態で10秒程度は動きを止めてくれる筈。

 なので、その間に。


「ダイラは一旦中止して、俺達だけを守る防壁展開! 全員俺にしがみ付け! この場を諦めてでも殲滅して、一旦撤退――」


「……お待たせ、待った?」


 環境ごとぶっ壊してでも、一度引く事を判断したその瞬間。

 ダイラの声と同時に、俺達の周辺を青い蝶がパタパタと飛び回り始めた。

 まるで虫籠から一斉に放たれたかの様に、幻想的な輝きを放つ数多くの小さな蝶々が。

 そして、背後に居た錬金術師へと視線を向けてみれば。


「“龍の谷”限定の、特殊条件を抑えるアイテム。“胡蝶の夢”、完成で~す」


 淡く蒼い光を放つランタンを掲げるダイラが、ニッと不敵に笑って見せるのであった。

 聖女なんて呼ばれた奴だとは思えない程、子供っぽく。

 やってやったぜ、みたいな顔をしながら。

 これに対して、間違いなく全員の口元が吊り上がった。


「よくやったダイラ、流石の記憶力だぜ。んでもって……作戦変更! 全員、全力で敵を殲滅しろぉぉぉ!」


「待ってましたぁぁぁ!」


「特殊条件さえ無ければ、こんなのはただの雑魚だ。まとめて捌いてやる……」


「もう殺して良いのね? 殺すわね? じゃれ付いて来た獣畜生……その首、置いて行きなさい」


 前衛三人が、ぶっ壊れたかのように暴れはじめた。

 環境を意識して誰も大技を使う様な事は無かったが……クハハハッ! この短い間に、随分とフラストレーションが溜まったらしい。

 いいねぇいいねぇ、どいつもコイツも良い暴れっぷりだ!

 そんな訳で、こちらも空に杖を構えてから。


「ノーライフキング、敵を確認した場所を俺と共有。追尾攻撃の誘導を頼むわ」


『全幽霊兵の感覚を、貴女様の元へ……』


 と言う事で、全く目視は出来ないが霧の中の敵情報が流れ込んで来る。

 こっちは今、システムの力も使ってんだ。

 テイムモンスターを通してロックオン、なんて真似も出来る訳で。


「まとめて消し飛びな……“プラズマレイ”! “シューティングスター”! “アイシクルエッジ”!」


 とりあえず、上空に向かって“ぶっぱ”するのであった。


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