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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
8章

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第188話 砂漠の竜


「これは“盤面崩し”どころじゃないと思うなぁぁぁ!」


「しっかり捕まってろダイラ! 揺れるぞぉぉ!」


 必死に船へと掴まっている仲間に声を上げながらも、口元は何処までも吊り上がっていく。

 ゲームでは戦う他無かった相手、このボスの第一形態。

 コイツに対し、本来プレイヤーは自らの船を用意した上で潰し合わなければいけなかったのだ。

 だというのに、今では。


『――――! 面舵――!』


「クハハハッ! 最高だぜ! 速いなんてもんじゃねぇ!」


 これまでは脅威でしかなかった相手の戦力が、こちら側にあるのだ。

 本来戦う筈のボスの船に乗り、第三形態と思われていた恐竜を追い詰めていく。

 まさに大物を狙う海賊船。

 グングンと進んでいくソレは、砂の渦の様な物を各地に発生させ、ソレの流れを利用しながら高機動が可能。

 絶対に普通なら再現できない挙動を取りながらも、器用に巨大な恐竜の後を付いて行っているではないか。


「まだだ! まだ攻撃するんじゃねぇぞ!? 地上に身体を見せている間に攻撃すると、こっちがダメージ貰うぞ!」


 叫んでから、俺だけは相手に杖を向ける。

 今回のボス戦、第三形態。

 このネッシーモドキは、派手に砂を泳いでくれるものの。

 姿が見えているからと言って攻撃を叩き込むと、手痛い反撃を貰ってしまうのだ。

 相手に攻撃をヒットさせれば、その場所から腐敗液とも言える液体が勢い良く噴射。

 更には俺の“ポイズンミスト”の様な毒霧をまき散らし、しかもその場に停滞し続けるするというクソ仕様。

 つまり地上で相手に攻撃するとフィールドが変化していき、どんどんと此方が追い詰められる結果に陥るという訳だ。

 ではどうするか。

 それは。


「“シューティングスター”!」


 恐竜ゾンビに向かってド派手に攻撃魔法を放った。

 しかし、狙ったのは相手本体では無く。


「魔王……外れてるわよ?」


「これで良いんだよ! 砲撃戦準備!」


 若干魔女から呆れた視線を向けられてしまったのだが、コレも計画通り。

 相手の周囲に向かって、俺の攻撃魔法が炸裂した。

 派手に砂が柱の様に巻き上がり、攻撃を脅威と認識した相手は再び砂の中へと潜っていく。

 一見目視出来なくなってしまいそうな行動だが……ここまで馬鹿デカい巨体が砂のすぐ下を泳いでいるのだ。

 普通に見てりゃ、砂の流れで一目瞭然ってなモノ。

 このタイミングで。


「撃てえぇぇぇ! アイツは砂のすぐ下だぁぁ!」


『――――!』


 此方の声の後に、亡霊船長が何やら叫び声を上げる。

 するとすぐさま船側面から爆音が鳴り響き、並走する様に泳いでいた首長竜へ大砲による攻撃が始まる。

 こうすることで、相手の毒性デバフは全て砂のフィールドに吸われる。

 つまりプレイヤーにとって、環境が変わる様な事態は発生しないという訳だ。

 コレを繰り返し、相手の毒素を全て砂の中に出し切らせて……あとは、いつも通りタコ殴り。

 ただし一定時間で毒素を再び蓄える為、度々この行動を繰り返す必要はあるが。

 本来であれば持ち込んだ船による攻撃で、相手の牽制から地中への攻撃まで全てこなす。

 そうじゃないと火力が足りないので。

 しかし俺の極振りステータスなら、魔法攻撃の威力は船ギミックの大砲にすら匹敵する。

 だからこそ、牽制は俺。

 追加攻撃は船に任せてみたのだが。


「確認した! 巻き上がっている砂に、相手の肉片が交じっている! ちゃんと当たっているぞ! そのまま撃ち続けてくれ!」


 相手を観察しながら叫ぶイズは、ロープを掴みながらほぼ船から身を乗り出している様な状態。

 よくあれで落ちねぇなと言いたくなるが、そこは流石前衛組。

 腕力の影響なのか、それともバランス感覚なのか。

 トトンなんか、船の先端まで行ってめっちゃ覗き込んでいるし。


「よく分かんないけど……挙動が変! そろそろ“釣れる”かも!」


 ちびっ子が叫びつつ、片手をブンブン。

 よぉし、来た来た来た!

 ゲームだと船の操作までコマンドで指示を出さなければいけなかったが、今回はベテランの亡霊とミイラの皆様の完全お任せ操作。

 しかもぴったりと相手にくっ付いて離れない完璧な動きを見せてくれているので。


「うっしゃぁ! お前等準備しろ! コレはリアルだ、一回で片付けるぞ! 総攻撃の支度をしておきな! 合図と共に思う存分暴れて、喰い散らかすぞ!」


「ねぇあの馬鹿デカいのが出て来て、本当に殺し尽くせる!? しかも今の雰囲気を見るに、クウリの大火力使う訳じゃないんでしょ!? 周りも巻き込んじゃうよ!?」


 悲鳴を上げるダイラだったが、コイツには一番頑張って貰わないと。

 何たってゲーム通りなら、攻撃チャンスは二十秒程度しかない。

 このタイミングを逃せば再び砂の中へと戻って毒を溜め、その後は姿を見せるが最初の状態へと逆戻り。

 つまり砂に身体を沈めてもらう所からやり直しって事になるので。

 そしてそして、今回の主役はあくまでもこの船の乗組員たちだ。

 俺のスキルで跡形も無く消し飛ばしたところで、今度はこの船との戦闘が再開する結果に終わるだろう。


「ダイラァァ! “もう一個”の奥義準備ぃ!」


「んもぉぉ! アレ普段撤退の時にしか使わないのにぃぃ!」


 とりあえず叫び声を上げる性女は魔女に支えてもらいながらも杖を構え、覚悟は決まったとばかりにキッ! と目尻を吊り上げた。

 その間もドカンドカンと砲撃は続き、やがて一定のダメージを受けたらしいゾンネッシーは。


「うっしゃぁぁ一本釣り! 船を横に付けろ! 全員武器を掲げろ! “竜殺し”の時間だぜぇぇ!」


 砂から飛び出し、ビッターン! っとその身を大地に投げだした。

 しかしこのままでは、当然暴れる。

 それに巻き込まれれば、こちらも結構なダメージを貰う事になるので。


「ダイラ! “時間稼ぎ”頼む!」


「あぁもう! 覚醒! 奥義、“太陽神の短剣”!」


 ウチの性女が叫びながら杖を構えれば、これでもかって程にクソ暑い光を差していた太陽の光が一点に強く集まった。

 まるで虫眼鏡を使って火を付けようとしているかのように、分かりやすく集中していく太陽光。

 俺の“サテライト・レイ”とは真逆で、太陽が出ている間しか使えないスキル。

 この照射は、間違いなくデカいゾンビ首長竜の背中を指しており。

 更には。

 太陽から、“短剣”と言う名の馬鹿デカい光の剣が降って来た。

 その切っ先がゾンネッシーの背中に突き刺さると同時に、まるで時間が止まったかのように“完全停止”する相手。

 まるでゲームがバグったみたいに、それはもうピタッと。


「行けぇぇぇぇ! 全員突っ込め! 効果は十秒弱! 狙うは首! 頭蓋骨を砕くより、首を切断する方が楽だ! ゴーゴーゴー! 全員突っ込めぇぇぇ!」


 これと同時に叫び声を上げれば、竜の近くに停船した船から波の様な勢いでミイラ達が飛び降りていく。

 誰も彼もがその手に刃を掴み、そのまま相手に向かって突き立てていく。

 まさに数の暴力。

 巨大な生物に、大量の蟻が挑むかのように。

 どいつもこいつも、夢中で大物の首に自らの“牙”を突き立てた。


「魔王、コレは? 初めて見るけど、あれも“切り札”の一枚って訳?」


 不思議そうな顔を浮かべて、眼下の光景を眺める魔女。

 しかしながら、こっちとしてはニッと口元を吊り上げてから。


「ダイラのもう一つの奥義、“太陽神の短剣”。アレに突き刺された奴は、一切の動きを封じられる。時間内なら、例えその首が切断され様とも……指一本すら動かせないって訳だ。ただし、短剣があのサイズだからな。大物じゃないと当たらないが」


「……だから私の時には使わなかったのね。とは言っても、コレが当たっていたら、ほんの少しの時間でも間違いなく殺されていたわ」


 おー怖い、とでも言いたげな声を上げるエレーヌだったが。

 これだって、そこまで都合の良いスキルではないのだ。

 奥義だからこそ、チートかって程の効果を発揮するのは間違いないが。

 しかし効果は十数秒。

 今はオーバードライブ状態なので、ボス相手だし保って十五秒程度だろう。

 完全に相手を停止させるとはいえ、時間としてはその程度。

 かなりの壊れ技である事は間違いないが、それでも十数秒で相手を殺し切るのはゲーム内では不可能だった。

 大ダメージを与えられるのは間違いないが、当然デメリットだって大きい。

 この技が解除されると同時に、相手は“狂乱状態”という暴走モード……俺等でいう所のオーバードライブ状態に陥ってしまう上に。

 馬鹿デッカい神様の短剣が刺さった影響なのか、敵のMPはMAXになってしまうのだ。

 つまり大打撃を与える代わりに、向こうは耐えきれば大暴れ。

 なので“テオドシウスの防壁”同様、場面の転換。

 というより、コレ無理! 倒すの無理! って時の緊急撤退用奥義。

 とにかくアレをブッ刺して、十秒以内に離脱。

 暴れようが何しようが、その前に安地まで逃げる。

 でも狙うのはダイラ自身なので、的が大きくないととにかく当たらない。

 エレーヌの言う通り、魔女みたいな人型に使ったところでまず当たらないだろうし。

 他のボスに使ったところで、もっと酷い事になっていた可能性があるという訳だ。

 けどまぁ、このボスはこの奥義と相性が良い。

 何たってどんなにMPを貯めようと、牽制攻撃をすれば砂に潜ってくれるのだから。

 などと思っている間にも、事態は進み。

 ダイラの奥義も残り数秒となったあたりで。


「船長自ら行くのかい? 残り時間あと僅か」


『……感謝』


「そうかい。なら……行ってこい!」


 甲板の隅に立っていた幽霊船長が、二本のシミターを掴んだまま飛び出した。

 既にミイラ海賊のお陰で、ゾンネッシーの首は随分とズタボロになっているので……飛び降りた傍から大技を繰り出せば、なんとか間に合うか。

 なんて事を思いながらも。


「さて、後片付けくらいはやらせてもらうかね。お前等、戦闘準備だ!」


 カカカッと笑い声を上げてみれば、仲間達全員が武器を構える。

 さてさて、アイツ等に“首”はくれてやろう。

 しかしながら……胴体の方は、俺達が貰おうじゃないか。


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