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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
8章

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第186話 嘆きの亡霊


「クウリ! “飛行”使ったから、上からもいっぱい来てるよ!」


「船の甲板に一旦降りろクウリ! 流石に多すぎる!」


「ミイラの方はノーライフキングに任せちゃって良いんだよね!? 上も下も全部対処するのとか、流石に無理だからね!? 数が多すぎるよ!?」


 翼を使って海賊船の上まで飛び上がってみれば、仲間達からはそれぞれ叫び声が上がった。

 とはいえ、こればかりは仕方ない。

 本来でも乱戦上等な感じに陥ってしまう状況だが、今の所ゴースト船長とミイラ達はノーライフキング一行が相手している様だし。

 まぁ、普通にやるよりマシだと考えるしかない。


「最近のフラストレーションを一気に発散するぞ! エレーヌ、イズ! 一部でも良いから着地地点を綺麗にしてくれ!」


「でも、船には傷を付けず……なのよね? 面倒な指示を出してくれるものね」


 溜息を一つ溢してから、エレーヌが俺から手を放し。

 彼女に続いて、イズもこっちから離れて甲板へと落下していく。

 現状亡霊兵達がミイラを抑えてくれているが、やはり馬鹿みたいに数が多いな。

 それこそ足の踏み場が無いって程に溢れ返っているのだ。

 こんな大混雑の中へと落下した二人はと言うと。


「まぁ、所詮は取り巻き。面倒なだけで苦戦する要素は無いな」


「こうなって来ると、大技が使えないのが厄介と言う他無いわね。素振りでもしている気分よ」


 上から見ても分かる程に蹂躙し、着実に甲板の上にスペースを空けてくれていた。

 流石、見ていて心配になる要素の方が少ないってもんだ。


「クウリ上! 上! 来てるから!」


 ガックンガックンと此方の装備を揺らして来るダイラ。

 声に従って空を見上げてみれば……うわぁ。

 これでもかって程の“空のお邪魔虫”が、俺等目掛けて滑空して来ているではないか。

 まぁこのボスに対して対空戦出来たら難易度変わっちゃうからね。

 そこら辺は、運営も頑張って対策したのだろう。

 今となっては、そのシステム的な制限がとんでもなく邪魔をしてくれる訳だが。


「上は任せろ! 船を巻き込む心配がねぇならどうとでもなる! ダイラは着地と同時にプロテクションとブレイク、放射でノックバック! 雑魚をまとめて甲板から押し出せ! トトン! ダイラを抱えて飛び降りろ!」


「了解っ!」


「せめて着陸までクウリがやってよぉぉぉ!」


 ちびっ子に抱えられたダイラが、叫びながら甲板へと落下していくのを確認してから。


「よぉ、邪魔する事しか能の無いモブ風情が。リアルでもちゃんと無限湧きか? 試してみようぜ」


 視線を上空へと向けてみれば、鳥の群れって言うより……これはもはや虫の大群だな。

 ワラワラ集まったソイツ等が、未だ飛行スキルを使っている俺に対して一直線に攻め込んで来るではないか。

 そちらに杖の切っ先を向け、ニッと口元を吊り上げてから。


「“飛行”解除……“シューティングスター”、“プラズマレイ”、“ルイン”」


 まだ空中だというのに、翼のアクセの効果を停止。

 そのまま、一対多において有効であり俺の得意とするスキルを連発した。

 結果、こちらからは数々の魔法攻撃とブラックホールが発生。

 飛行能力を失った俺の身体は落下していくが、ルインのブラックホールはその場で一切動かない。

 と言う事で真っすぐ攻めて来た相手の進行はそこで阻害され、ルインの範囲外に居る奴等は他のスキルで殲滅。

 でもこの攻撃中、俺動けないからね。

 杖を構えたまま自然落下を体感していると。


「イズの親方! 空からウチのリーダーが!」


「トトン、馬鹿言ってないで受け止めてやれ……クウリだけだと、落下ダメージだけでも結構なものだぞ」


 正面、というか空は此方の攻撃魔法により、視界に映るモブの大半を撃破。

 残骸さえもルインのスキルが吸収し、こっちには何も落ちて来る心配さえ無い。

 が、唯一落ちている俺の身体は甲板に近付いた辺りで、飛び上がったトトンにキャッチされ。


「ぐぼはっ! 結構痛ぇ……」


「そりゃお互い鎧着てるし、落ちて来るクウリと飛び上がった俺で運動エネルギー逆だし……仕方ないっしょ?」


 まるでお姫様だっこみたいな状況で受け止められたが、普通にガツンッていった。

 こればかりは仲間達からの攻撃という判定になったのか、ダメージは無さそうだけど。

 でも普通に痛かったんですけど、息止まるかと思った。

 とはいえ一旦上空は片付いた訳で、まだ襲い掛かって来る様ならミイラ共と喰い合ってもらおう。

 後はゆっくり甲板を掃除してから、ノーライフキングの様子を見る形になるのだが……。


「皆避けてね!? “ブレイク”……“放射”!」


 此方が甲板に辿り着く前に、ダイラのプロテクションがバラバラになってまき散らされた。

 この影響でノックバックが発生し、随分と広い範囲のミイラ達が甲板から砂の海へと落ちていったではないか。

 そんな訳で、随分と平和になった場所へと俺を抱えたトトンが着地してみると。

 船は急に加速し始め、砂の海を物凄い勢いで動き始めた。

 こればかりはゲーム通り、プレイヤーが船に乗ったタイミングから一定時間後、この船は高速移動を始める。

 暴れる船の甲板から振り落とされれば、それこそ乗り込む所からもう一度って訳だ。

 知っている事態だったからこそ、そう焦る状況でも無かったのだが。


『どうした! こんなものか!? もっと聞かせろ、貴様の魂の叫びを! これだけの同胞を連れ、ずっと旅を続けていたのだろう!? なら貴様の心は、貴様の嘆きは、この程度では済まない筈だ!』


 なんか、骨ボスが凄く主人公していた。

 相手はまさに海賊って格好をした亡霊船長。

 そんな奴が二本のシミターを振り回しながら魔法攻撃を繰り返し、ノーライフキングは魔法を使いながらも、なんと近接戦。

 俺の渡したレイド武器で、相手の刃を弾き返しているではないか。

 一対一でやり合っている御様子で、周囲にいるミイラも亡霊兵も近付いて来ない。

 まるで映画の主人公と、悪者の海賊が決闘でもしているかの様な光景になっているのだが……両方亡霊だからね。

 片方は骨、もう片方はミイラっつぅかゾンビみたいな外見だし。

 ちょっと絵面的にはアレなのだが。

 しかしながら、やはり相手の声は俺達には届かない。

 ノーライフキングが叫びながら戦っているだけで、海賊船長はカパカパと口を開閉しているだけにしか見えないのだ。


『もうお前一人で背負う必要など無いのだ。誰一人として、仲間を見捨てなかった。過去となってしまった同胞達すらも連れて、ずっと旅をして来た貴様は賞賛に値する。だからこそ、もう良いんだ……それ程までに苦しいのなら、もう……“頼る”事を覚えろ』


 何やらちゃんと会話しているらしく、とても恰好良い台詞を吐いているんですが。

 お前本当にノーライフキングだよな? 復活の為にイシュランさん呪ってた半端な位置のボスキャラだよな?

 ちょっと格好良いじゃん。

 などと思いつつ、周囲のミイラを対処しながら向こうの戦闘を眺めていると。


『魔王様! 申し訳ありません……“アチラ”をどうか、お願い致します! あの邪魔者さえ居なければ、こやつは冷静さを取り戻すかと思われます!』


「……はい?」


 アチラってのはどちらじゃい。

 などと気の抜けた事を言いそうになってしまったけども。

 船のすぐ隣から、馬鹿デカい“竜”が飛び出して来た。

 長い首、ヒレの様な手足。

 砂色の身体は、所々肉が腐って穴が空いている様な個所が見受けられるソイツ。

 ドラゴンゾンビ。

 そう呼んで良い条件は揃っている気がするのだが、コイツはプレイヤーから、そう呼ばれなかった。

 だって形が……。


「おいおいおい! 何で第三形態の“恐竜”がもう出て来てるんだよ!」


 見た目、ほぼプレシオサウルス。

 海の中を泳いでいたという、首の長い古代の生物。

 そんな奴のゾンビが、船と並走するかの様に出現したではないか。


「馬鹿デカい嫌な気配がすると思ったけど……こっちの船じゃなかったのね」


 チッと舌打ちを零す魔女が剣を構えるが、それに対してイズが慌てた様子で待ったを掛ける。


「待てエレーヌ! 今の状態で、アイツに攻撃してはいけない!」


「……どう言う事?」


 説明求む、とばかりに此方へ向かってジトッとした瞳を向けられてしまうけども。

 コイツの倒し方、説明するだけでも色々面倒なんだよな……そもそもゲームの時とは環境が違うし。

 つぅか何で第三形態がいきなり出て来てんだよ! おかしいだろ!


「ストーリー上で見つかる資料、考察する事しか出来なかったけど……アレかな、演出でプレイヤーが勝手に勘違いしていただけ、みたいな?」


 アハハッと乾いた笑い声を零すダイラと、甲板の手すりまで寄っていって、恐竜を眺めているトトン。


「第一形態が船、第二形態は完全に亡霊。ソレが沈んだら“コイツ等が捜していた”っていう恐竜が出て来るから……てっきり亡霊船が目的のソレに変異した、みたいなストーリーなのかと思ってたけど……」


 そう、コイツのボス演出としてはまさにソレ。

 第二形態になり、亡霊になってもこの“恐竜”を追い求めた奴らの成れの果て。

 全部まとめて化け物になりました、ってエンディングを迎えるボスなのかと思っていたが。

 どうやらコイツは……。


「例え亡霊になっても、コイツを逃がさなかった。というか追い続けた亡霊船、つまりそもそも海賊船とは戦う必要さえ無かった訳だ」


 まったく、こんなところに来てまでストーリーの考察させるんじゃねぇよ。

 


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