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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
8章

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第184話 魔王も歩けばボスに当たる


「クウリ~? おーい、大丈夫ー?」


 その声にパチッと瞼を開いてみれば、本日は目の前にダイラの顔があった。

 昨日もそうだが、これはまた。


「ちけぇって」


「あははは、ですよねー。ごめんごめん、何かうなされてたけど平気?」


 ケラケラと笑う性女に関しては、ちびっ子とは違いすぐに距離を置いてくれた訳だが。

 顔面偏差値高すぎる顔が寝起きにドアップだと、結構心臓に悪いのよ。

 という事でノソリと起き上がってから、大きなため息を一つ。


「なぁダイラ……超変な事言って良いか?」


「うん? クウリは大体いつも変な事言うから慣れてるよ?」


「おいコラ」


 これまたため息を零してしまいそうな事を言われたが、改め相手をジッと見つめてから。


「夢の中で……この世界の神様的な存在、というかゲームマスターみたいな奴と会ったって言ったら……お前、信じる?」


 色々と考えなきゃいけない事は多いし、あの夢が俺が勝手に生み出した都合の良い妄想とかではないのなら。

 ある種、眠る度に答えを貰っている状態になるのだ。

 こっちの大地に踏み込んでから立て続けにとなれば、流石に俺だってただの夢じゃないと思えて来るし。

 尚且つこれらの話を聞く事で、今後の俺等に深く関わって来る内容となって来る訳だが。


「ワ、ワー……それは凄いネー」


「全っ然信じてねぇよなソレは!? いや分かるけど! 急にこんな事言い出したら、そういう反応の方が自然だけどさ!」


 口元をヒクヒクさせながら、なんとか笑顔を作っているダイラ。

 ソイツから随分と片言のお言葉を頂いてしまい、ウガー! と吠えてしまったのだが。

 相手は再びヘラッと緩い表情を作ってから。


「ごめんごめん、冗談だってば。それが昨日クウリが悩んでた内容? だったら、ご飯食べながらでも皆にも話してよ。もう朝ご飯出来てるよ?」


 先程とは違い、えらく普通な感じでそんな事を言ったダイラは。

 よいしょっとばかりに腰を上げてから、そのままテントから出て行こうとしてしまうが。


「いや、アレ? 反応それだけ!? ちなみに今のちゃんと信じてくれたの!? それとも呆れてるだけ!?」


 ちょっとナチュラルに流され過ぎて、向こうがどう捉えているのかまるで分かんなくなっちゃうんですが。

 思わずその背中に向かって叫んでみれば、ダイラは振り返ってから緩い微笑みを浮かべ。


「信じない訳ないでしょ? だってクウリがそんな顔で冗談言うはずないし。それに、“サテライトレイ”の時だって他の人の夢にお告げがあったんでしょ? もう実績があるんだから、変なところで警戒しないの。ホラ、ご飯行くよー」


 そんな言葉を残して、性女はテントを出て行ってしまった。

 昨日もなんだかんだで朝からあった訳だけど、今日もまた別の意味で凄いな。

 トトンもそうだが、ダイラに関しても……なんか、女子力上がってねぇか?

 お姉さん的な雰囲気に、ちょっとドキッとしそうになってしまったんだが。

 というのと。


「信じない訳が無い、かぁ……たく、言ってくれるねぇ」


 思わずニヤけてしまいそうになる口元を隠しながら、ささっと朝の準備を済ませるのであった。


 ※※※


「いい加減この砂漠も、飽きて来たな」


「だな、砂と風が鬱陶しいったら無ぇ」


 砂漠地帯用のローブを纏い、口元さえも隠しているイズから愚痴が零れ。

 こちらも似たような言葉を返してしまったのは、流石に仕方ない事だと思うんだ。

 雪山の時もそうだが、リアルになると悪環境ってマジで行動し辛い。

 ダイラに数々のバフを掛けてもらっているので、普通よりずっとマシなのは分かっているのだが。


「クウリの夢に出て来たって内容も気になるのに、昼間の間はこうして歩かなきゃなんだもんねぇ……嫌になっちゃうよ」


「だねぇ、ホンット。うわっ、口に砂入った! ペッペッ……うぎゃぁ! 今度は目に入った!」


「あぁもう。トトン、ホラこっち向いて? 目洗った方が良いよ」


 現状一番忙しい補助術師ご本人と、悪環境になるとより一層悪影響を受けるトトンは大変そうだ。

 それこそゴーグルとか欲しくなってくるが……生憎と、そんな物持ってねぇしなぁ。

 ちっこいと下から舞い上がった砂もモロに受けるし、いくら補助魔法があっても足が小さい分埋まる。

 俺も他人の事言えないのだが……まぁ、トトンよりかは幾分かマシ。


「貴女の夢にだけ、ヒントを教えてくれる存在が出て来ると言うのなら……昼間の間も寝てる? おぶるわよ?」


 そんな事を言いつつ、エレーヌがスッと姿勢を下げるが。

 止めんか恥ずかしい、というかお前の背中には既に棺桶が装備されてんだよ。


「俺等は全員が戦える状態で、一番成果が上げられんの。指揮役が常に居眠りしてるとか話にならねぇだろうが。それこそ飛行して、一気に距離が稼げるって事なら話は別だが。これじゃぁなぁ……」


 チラッと空を見上げてみれば、これまた数多くの飛行生物が。

 前回の岩場からもそうだが、思いっきり無限湧きですって数の空飛ぶ魔獣。

 アイツ等はゲームにも存在していた。

 飛行するスキルや魔道具、そして乗り物なんかが実装された影響で登場した……新たな“お邪魔虫”と言って良い存在。

 要は運営が飛行制限を掛けたいエリアや、あまりにも上空まで飛んで行かれるとゲーム内の最高飛行高度に引っかかる高さ等など。

 そういう場所には、こういうお邪魔虫が登場するという訳だ。

 倒せない事は無いが、ゲームではマジで無限湧き。

 更には飛行制限に引っかかったプレイヤーに対し、一斉に襲い掛かって来るのでいくらMPがあったって当然足りない。

 だったら大人しく歩いて移動した方が苦労も少ないというもの。


「実際、眠れば確実にその夢が見られるという確証も無い。だが“試し”に睡眠時間を増やすにしても、俺等に残された時間がどれ程あるのか分からない。だからこそ、歩みを止める訳にはいかない」


「そ、マジでソレ。ていうのと、こんなエリアで攻撃術師が欠けるのは流石にヤバイだろ。下からも上からも襲われてみろよ、絶対手が足りないぜ?」


「ただでさえ足場が悪いのに、考えたくないわね」


 そんな会話をしながら、大人しく皆でテクテク。

 度々マップを確認してはいるが、方角的には問題無し。

 けど……歩くだけってマジで面倒臭い!

 低空飛行なら何とか行けるか? なんて試してもみたのだが、翼を使った瞬間一斉に空の奴等が襲って来るし。

 夢に出て来たアイツの言う通りなら、ここは完全に“飛行禁止エリア”なのだろう。

 今までよりも、ゲームに近い感覚のフィールドだと思った方が良さそうだ。


「だが、段々と答えが分かって来たのは良い事だ」


「まぁ、な。けどまだ確証がある訳じゃない、本当に俺が勝手に作り出した夢って可能性もあるんだ。安心する材料としては、ちょっと弱すぎるだろ」


 本日の朝、夢で見た内容を皆にも伝えてみた結果。

 各々考え込む様子は伺えたが……トトンとダイラに関しては、それこそ普段よりすっきりした表情を浮かべている気がする。

 “帰る”という選択肢が消えた事に対する喜び、というのもあるのだろうが。

 それ以上に悩みの種そのものに選択肢が無かったという事例が、本人の意思とは別の所でも安心感を与えているのだろう。

 感情としては“帰る、帰らない”。

 けど現実問題としては、どうする“べき”か。

 これらを含めて、心から完全なる決断を出来る人間などいないのだろう。

 そういう意味で“選ばなくて良い”という結果に転んだ事に対し、そしてソレが本人達の望みに近いモノだったからこそ、引っかかっていた枷みたいなものが外れたのかもしれない。


「とはいえ、やっぱり“何者でもない”って状況は結構怖いんだけどな。分かってんのかね、アイツ等」


「あとは、世界との同化。そっちに関しては、実際に発生してみないと分からないからな。元々この世界の人間なら、ただ元に戻るだけ。しかし何も無い所から“発生した”俺達に関しては……」


「完全にゼロになる可能性だってある、もしくは“存在する事だけ”は許された場合。記憶や能力が全ロスするなら、そりゃ死ぬよりヤバイかもしれないぜ?」


 イズと二人でそんな話をしていると、急に魔女が立ち止まり。


「何か来る……大きいわよ」


 その場に棺桶を下ろしたかと思えば、すぐさま両手剣を抜き放ったではないか。

 ったくもぉぉ……あっさり通過させてくれるとは思ってなかったけど。

 またデカい奴を相手にしなきゃなのかよ?

 思わず溜息を零しながらも、俺等も武器を構え。


「全員警戒! さてさて、今度はどんなのが出て来やがった?」


 ニッと口元を吊り上げてから、まだ遠くに居る相手に目を細めてみたのだが。

 おい、ちょっと待った。

 気のせいか? すっげぇ遠くに、馬鹿デカい影がユラユラと揺らめいているんだが。

 そんでもって、あの大きさと形って……。


「船に、見える気がするんだけど……流石に気のせいだよね?」


 ヒクヒクと頬を引きつらせるダイラ。

 更にトトンも、ウゲッと嫌な顔をしながら。


「でも、敵……なんだよね? え、えぇ~……他にも居るじゃぁん、せめて違うのにしようよぉ……」


 思いっ切り、泣き事を洩らしていた。

 でも、気持ちは分かる。

 だって俺等の記憶通りの“奴等”だった場合、アレは。


「終盤に近いエピッククエストのボス……だったな。おかしいな、あの戦闘の第一形態では、こっちも船に乗っていた気がするんだが」


 イズに関しては、思いっきりため息を零しておられる。

 駄目だってアレは、徒歩で相手するモノじゃないって。

 ストーリー進行中に色々と素材集めて、NPCに俺等用の船作って貰って、やっとまともに戦える様になる相手なんだから。


「……厄介なの? 先手を打って壊してしまえば良い気がするのだけれど」


 不思議そうな表情で首を傾げる魔女。

 そうだね、リアルに影響を及ぼす世界に来たのだから、そうしてしまえば良いのかも。

 けどね……あの船、壊しちゃった方が後で大変なんだ。


「だぁぁチクショウ! レイドじゃねぇだけ楽だと思うしかねぇ! やってやらぁ! まさか最終エリアはボスラッシュとか言わねぇだろうなぁ運営!」


 とりあえず叫んでから、こちらに向かってグングン進んで来る豪華な船を眺めるのであった。

 あーあーあー、このボスって事になると……集団戦確定だよ、まったく。


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