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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
8章

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第183話 敷かれたレールと、在り方


「やぁ、また会えたね」


「……ただの夢。って訳じゃないんだな、やっぱ」


 瞼を開けた瞬間、テーブルを挟んで件の男が座っていた。

 ユートピアオンラインの創設者であり、株式会社“トレック”の重役。


「今日はこっちの質問から先で良いか? この前は何も聞けなかったからな」


「あぁ、もちろん。しかしなるべく手短に頼むよ? 私も、長時間君に干渉出来る訳では無いんだ」


 そう言ってから、こちらに珈琲を差し出して来る相手。

 それを一口頂いてから、フゥとため息を零し。


「結論から聞きたい、俺達はどうなる?」


 いきなり核心から攻めてみた。

 これの答えさえハッキリしてしまえば、今後の方針が考えやすくなるというもの。

 だからこそ、ここだけは正確な答えが欲しい所なのだが。

 相手は、少々困った様な笑みを浮かべてから。


「先に宣言しておこう。君が居る世界、というより基盤となる世界……“ユートピアオンライン”を作ったのは、確かに私だ。ゲームマスター、という言葉が正しいのかは分からないが……まぁ、そういう存在だと思ってくれて良い。しかしながら、私は“神様”という存在ではないと言葉にしておこう」


「どういう意味だ?」


 俺が今経験している世界、と断言してしまって良いのかは分からないが。

 この世界は、今まで経験してきたネットゲームにあまりにも似すぎている。

 フィールドや環境は違うにしろ、システムやエネミー。

 そういう所で、類似点が多すぎるのだ。

 だからこそ、ゲームを創設した人間だというのなら。

 それこそ“神様”って存在に近い気がするのだが。


「私は確かに“あの世界”を作った。しかしソレはあくまでゲーム、仮想の世界。私の知識や欲望を詰め込んだ、言わば箱庭にしか過ぎないんだ。だが“作った人間”が問題だった。私は、言うなれば“転生者”だ。しかし君とは違って、何の力も無いただの人間。だからこそ“こちら側”で、普通の社会人として生きている」


「……謎が増えていく一方なんだが?」


「こればかりはすまない。私も全てを説明出来る訳では無いし、知っている事を全て伝えるには時間が足りない。だからこそ、君の問いに答えるのなら……“私にも分からない”、だ。過去のデータを伝える事は出来ても、君がどうなるかまでは私にも予測がつかない」


 一つ目の問いに関しては、“不明”という答えが返って来る。

 これでは駄目だ、もっと的を絞った質問をしないと時間ばかり取られてしまう。

 相手は神様って存在ではない、転生者? ではあるが今は普通の人間。

 この二つを答えとして、ひとまずは疑問を飲み込むべきなのだろう。

 先程の言葉から、相手は万能ではないと自ら口にしているのだから。

 もしも“こちら側”の世界から、俺達が居た元の世界に誰かが来たとして。

 「この世界は何なのか、これから自分はどうなってしまうのか?」という質問をされた場合、俺だったら間違いなく答えられない。

 当然だ、ただの一般人に世界の真理など分かる筈もない。

 だからこそこの質問に時間を使うべきではないと、無理矢理にでも納得するべきだ。

 過去のデータってヤツは知りたい所だが……そっちは、それこそアーカイブを閲覧するような情報量になってしまうのだろう。

 そんな訳で口頭で説明してもらうには、こちらも些か時間が掛かり過ぎる。


「それじゃ次だ。アンタの分かる範囲で構わないが……“転生”ってのは何なんだ? 予想でも良いが、何故俺達なんだ? それに、世界との同化……ってのは?」


「これもまた、詳しく説明すると時間が掛かる内容なんだが……」


「すまん。けどその辺を知っておかないと、不安が拭い切れない。それどころか、予想も立てられないんだ」


 まずは俺達の安全確保。

 というのも、“俺達のまま”で居続ける為にどうしても必要な答え。

 だからこそ、今度ばかりは正確な答えが欲しいと願ってしまうのだが。


「とても簡単に説明する。細かい疑問は残るだろうが、後回しにしてくれ」


 彼の言葉に一つ頷いてみれば、相手は室内に観葉植物を指さし。


「世界全体があの木、そして植木鉢の中には根が張り巡らされている。その根の一つが、今君の居る世界。言葉として分かりやすいから“転生”と表現しているが、君達は別に他の根に移り住んだ訳じゃないんだ。我々の様な存在は、世界という木の栄養素、または細胞の一つだと思ってくれ」


「つまり?」


「我々は言葉通りの“転生”などしていない。私達という細胞が居たという記憶、データとして存在し、有益な細胞を他の根で再現、構築しただけだ。そうする事で、全体は更に育っていく事が出来る」


 どっかの遺跡にあった文字。

 “門は通る訳ではない、生まれるだけ”って言葉。

 それはつまり、こういう事なんだろうか?

 俺等っていう存在の記録が世界樹とも言える存在に蓄積され、それをベースに他の場所で似た細胞……つまり俺達を作り出した。

 そうなって来ると、やはり俺達は元々の“俺等”ではなく新しく生まれた存在。

 ファンタジーなアニメとは違って、転生だの転移はしていない。

 全く新しい個体として産み落とされ、ただただ記憶と言うデータを引き継いだに過ぎない。

 これが確かなら、俺達が迷っていた“帰るかどうか”については、完全に決着がついたと言っても良い状態になる訳だが。


「ここから少し分かりにくい話をするが、“そういう事例があった”とだけ認識して聞いてくれ。私が経験し、そう判断した内容に過ぎない」


「え、あぁ……はい」


 何やら先程とはまた違った様子で、とても真剣な瞳を向けられてしまった。

 今度はいったいどんな情報が飛び出してくるのやら。

 ちょっと話の規模が大きすぎて、俺にしっかりと理解出来るかは分からないのだが。


「先程は植物の一細胞、と表現したが……世界との同化、に関しては少々クセがあるというか。これまた根を移る行為……この際“転生”と名付けてしまおう。言葉通りではないにしろ、分かりやすいからね。我々の様な存在の事だ」


「あぁ、それは構わないが……」


「件の転生。それを経験した者には、ある種の監視が付くという認識に近い。こうなって来ると、細胞というより病原菌の様に感じてしまうが。まぁ本来他の根に無かった、新しい何かが増えたんだ。要は様子を見る状態になるって事だね」


 は、はぁ……と気の抜けたような声を返してしまった。

 ちょっと何が言いたいのか、いまいち把握出来ないので。


「そこで監視されるのが、我々“転生者”。コレが本当に有益なものなのか、それとも他の根に移った時には病原菌に変わるのか。もしもその根……つまり一つの“世界”にとって害を成すモノだった場合は、当然本体から排除しようとする働きが発生する訳だ」


 それが世界との同化……の悪い方の結果って事で良いのだろうか?

 だとすれば、それこそBAN(追放)の様な処置が取られそうなものだが。


「しかしその基準は曖昧で、尚且つその人物の行動によるとしか言いようが無い。だが私の経験から語るのであれば、世界にとって有益であり“刺激”であり続ける事が、君達自身でいる事に繋がる」


「刺激?」


「あぁ、他者に影響を及ぼし、その他の細胞……つまりその世界の者達を活性化させるような働き。私は“ユートピアオンライン”でプレイヤーを夢中にさせればさせる程、過去の記憶が蘇った。逆に何もしていない時は、それこそ自らは何者なのかという事すら自然に忘れてしまう程」


 つまり、そっちに関してはある意味俺の予想が正しかったという事なのか。

 世界との同化、言い方を変えてしまえばモブに変わる。

 プレイヤーである事を忘れ、過去の自分を消し去って世界そのものに溶け込む行為。

 しかし先程から上がっている曖昧な言葉の数々が、それだけが答えではないと語っている様だが……。

 それに以前遭遇したタコの化け物。

 アイツだって、元は俺と同じプレイヤーだって話なのだから、余計に。


「そろそろ時間だから、更に極端に話そう。“転生者”は周囲に影響を及ぼさないと、無価値と判断される。それは害を成すのではなく全体を活性化させる事が前提、下手な真似をすれば何が起こるか分からない。そして最後に……我々に関わった者達は、次の候補に選ばれるんだ。まるで、触れ合った事で感染するかの様に」


「……え?」


「転生者に感化され、世界に認められる程力を付けた者。それはデータを回収され、他の世界でも活用される。しかし君が生きている世界は、“私が作った世界”なんだ。そして決定的な欠陥がある……“北の門”だ。アレをストーリーに組み込んでしまったが為に、システムの一環としてその世界は“転生”というイベントを頻繁に繰り返してしまっている。そしてゲームという存在だったからこそ、“プレイヤー”はいくらでも居るという状況に陥ってしまった」


 待って、マジで待ってくれ。

 そんないっぺんに言われても、全然理解が追い付かないっていうか。

 などと慌てている内に、今回も徐々に視界に霧が立ちこみ始め。


「君は私のせいで巻き込まれた被害者だと言って良い。だから、恨んでくれて良い。しかし……お願いだ。あまりにも我儘になり過ぎたその世界の入り口を、君の手で閉じてくれ。エピッククエストの最後の項目……それはユートピアを隔離し、“現実”に落とし込むという内容なんだ」


「いや、え、ちょっ!」


「アレがある限り、その世界はよりデータを収集し、他の場所から他者を求め続ける。そして分かりやすい“転生”というモノを味わっても、愚直な程真剣に世界と向き合える存在というのは、思いの他少ない。人間性としても、能力としても優秀な人物ではないと駄目なんだ。ユートピアオンラインをクリア出来る人間は……“魔王”と呼ばれたプレイヤー、君しか居ないと確信している。世界の理を否定し捻じ曲げるのではなく、尚且つ“特別”な存在として君臨しろ。“北の門”を破壊するんだ、クウリ」


 その言葉を耳にしながら、完全に意識は真っ白な世界へと旅立っていくのであった。

 あぁぁぁ、もうっ! 訳わかんねぇ!


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