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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
8章

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第182話 異変と環境


「なぁ、コレはどう解釈したら良いと思う?」


 岩場を歩き続け、これいつまで続くんだよ~なんて愚痴りながら普通に進んでいた……筈だったのだが。

 視界が“切り替わった”。

 それはもうガラッと、一瞬で。

 これまでの冬景色と岩場は何だったのかと言いたくなる程の、急展開としか言いようが無い。

 だって目の前には、急に砂漠が広がったのだから。


「エリアごとにフィールドが変わるイベントステージ……みたいなモノか?」


「いやぁ……あははは。ゲームでは多少、というかあり得ない話では無かったけど。現実でやられると、感覚バグるね……」


「うわぁ……振り返っても砂漠だぁ。マップ無いと、これ絶対迷うヤツだよね。戻ればまた岩場に切り替わるのかな?」


 仲間達からそんなお言葉を頂いてしまったが、こればかりは唖然とする他無かった。

 だって砂漠だよ、砂漠。

 急にカラッとした天気になるし、足元砂だし。

 確かにこういう急展開、ゲームならあり得るのかもしれないけど。

 現実で起こるとマジで脳みそがバグる。

 マップを確認してみても、一応問題無く進んでいる様だし。

 このまま真っすぐ進んでしまって良いみたいだが……えぇぇ。

 これ、ゲームだったとしてもフィールド対策大変過ぎて絶対キレるヤツだって。


「……」


「エレーヌ、どったの。理解が追い付いてない感じ?」


 俺達としては、やはりゲーム的な知識があるからこそまだ……と言える状況だが。

 やはり現地人にとっては、こんな異常事態は余計に理解しがたいのか。

 呆然とした表情のまま固まっている魔女。

 が、しかし。


「こんな記憶、私には無いわ……」


 彼女の言葉に、ピタッと身体が停止した。

 そう言えばそうだ。

 コイツは、既に一度この地に足を運んでいる筈。

 だというのなら、こういうフィールドギミックだって知っていないとおかしい筈なのだ。

 なのに、本気で驚いている様にしか見えない。


「以前より難易度が上がってるって事か?」


「……分からない。けど、こんな摩訶不思議な現象に見舞われた記憶は無いわ。それに、以前は――」


 喋っている途中で、少しだけ顔を歪めて頭を押さえるエレーヌ。

 これはまた、不思議現象が起きているのか。

 それとも以前とはまた違う条件の下、環境そのものが変わってしまったのか。

 他の要素を上げるのなら、“神様”とやらからフィールドにアップデートが入ったなどなど。

 色々と考えられる訳だが。


「話している時間は無いみたいだよー? 多分サンドフィッシュ! 砂漠のデカ魚の大群!」


 トトンの声に正面を向き直ってみれば、そこら中から砂ぼこり……と言って良いのか分からないが。

 砂漠の砂を撒き上げながらも、こちらに向かって一直線に近づいてくる背びれが見える。

 これはまた、御大層なお出迎えがあったものだ。


「考えるのは後回しだ! やるぞお前等、砂漠地帯の戦闘準備! ダイラ!」


「こっち系のバフ特盛で行くよ! 遠慮無しに全盛りするからね!」


 と言う事で、俺等にダイラ補助魔法が掛かったのを確認してから正面に杖を構え。


「まずは地上に誘き出すぞ! トトンは地面に馬鹿デカい音を立てて注目を集めろ! 集まった所でイズは高周波系スキル!」


「うっしゃぁぁ! 全部こっちこぉぉい! “ヘイトコントロール”! “スマッシュ”!」


 勢い良く正面に飛び出したちびっ子が砂の大地に大槌を叩きつけ、この衝撃を感じ取った砂魚達が一斉にそちらへと背びれを向ける。

 そして、トトン周辺に十分近付いた所で。


「本来は道具を使った方が早いんだがな……“金切り”」


 まるで居合いの様な構えを取ったイズの正面に黒い球体が出現し、それを素早い動きで一刀両断。

 その後鞘に長剣を戻す瞬間、切断された球体と剣からは……キーン! っと甲高い音が周囲に鳴り響いた。

 ゲーム内では地中や空中、本来プレイヤーが直接手を出し辛い場所に存在する敵への威嚇攻撃というか。

 耳が良い相手に対しての、一時的な足止めとして使われている甲高い音を立てるスキル。

 リアルで使ったのは初めてだったが、コレヤバイな。

 こっちの耳までキーンって強い耳鳴りがする程だし、周囲の音が若干遠のいた気がする。

 これ等のスキルは、基本的にモンスター相手の牽制みたいな仕様だったが……そりゃそうか。

 実際すぐ近くで、物凄く高い音の炸裂が起きれば俺等にも影響するよね。

 という事で味方側も若干クラッとしてしまったが、俺等より耳が良い連中はそれ所では無かった様で。

 砂から飛び出して来た上に、地上でビタンビタンと暴れはじめた。


「っしゃぁ! 後は俺がや――」


「すまん! 聞えない! 何だって!?」


「クウリー!? 俺が倒しちゃって良いのー!?」


 すぐ近くで高い音をもろに浴びた前衛に関しては、完全に鼓膜がやられている御様子で。

 指示の途中だというのに、二人揃って声を被せ来た。

 あっちゃぁ……コレはちょっと、使い所を考えないと結構危険かも。


「ダイラー……スマン、まずは回復頼む」


「えぇ? なんだってー!?」


「かいふくぅぅぅ! 皆耳やられてるぅぅぅ!」


 とりあえず、デッカい声で叫んだ。

 あぁもう、やっぱりリアルでの戦闘は滅茶苦茶だよ。


「……とりあえず、倒して来るわね?」


 自己回復能力特化の魔女様だけはすぐさま動き出し、地上に飛び出したデカい砂魚を端から捌いてくれたのであった。

 サーセン、助かります。


 ※※※


「意外と、大変ね。こういう地域は」


「だよねぇ、俺もびっくりしちゃった」


「エレーヌに関しちゃ、昔はこういう所は通らなかったのか? 北の門がどうとかって意味じゃなくても、普通に旅として」


 その日の夜、どうにか見つけた岩場にテントを張り、再び見張り。

 砂漠地帯の夜って、ガチで寒いのね。

 ダイラの補助魔法が無かったら、本気で凍えていたかもしれない。

 ついでに言うと、当たり前だけど砂の上だと普通のテントが役に立たなかった。

 杭刺さらねぇ……ってのと、風のせいで砂が酷い事酷い事。

 翌朝起きたらテントごと砂に埋まっていそうだったので、仕方なく遅くまでしっかりした場所を探した訳だ。

 こういう所でも、リアルの旅は大変だねぇ……などとため息を零しつつ、エレーヌ&ダイラと一緒に夜の番。

 また砂の中からエネミーがこんにちはしても困るので、前回の岩場よりしっかり見張らないといけないだろう。

 砂の中って、魔女でも気配読み辛いみたいだし。


「昔は……と言って良いのか分からないけど、以前ココに来た時は間違いなくこんな場所は無かったわ。他の地域で言うのなら、砂漠を足で渡ろうとしたのは初めてね」


「そうだよねぇ~……普通徒歩は無いよねぇ。ラクダとか?」


 のんびりした様子のダイラが、チビチビと飲み物を口に運びながらそんな事を問いかけてみれば。

 魔女はフム……と首を傾げてから。


「ラクダ……も確かに居たけど、私の記憶では船で渡ったわね。素人が踏み込んでも干からびるからと言われて、それこそ海を渡るみたいに」


「砂漠に船! いやぁロマンあるなぁ……実際問題、そういうのって実現可能なのかな。あぁ、こっちの話じゃなくて、俺等の世界の方ね? あぁでも、砂漠で見つかった船もあるんだっけ……専門じゃないから、詳しくないなぁ」


 そんな話で盛り上がっている御様子だけれども、俺の方はまたちょっと違う事を気にしていた。

 チラッと上空を見上げれば、見た事あるエネミーが風に乗って優雅に泳いでいる姿。

 これでは気軽に翼を使う訳にも行かず、地味に歩いて砂の海を渡る他無いのは確か。

 というのも、あるのだが。


「エレーヌ、実際のところどうだ? 前に来た時と比べて……その、違和感とか」


 俺の思い過ごしなら良いのだが、進む度にフィールドそのものが“記憶にある”光景に変わって来ている気がするのだ。

 簡単に言うと、ゲーム時代に見た事あるような景色。

 だからこそ、その辺も含めて魔女の記憶とすり合わせておきたい所だったが。


「ごめんなさい……何故かは分からないけど、本当に思い出せないの。あの時は必死だったから、という理由なら良いのだけど。思い出そうとすればするほど“違和感”が残る。必死で足を進め、どうにか“北の門”へ辿り着いた。その記憶はあるのに……それ以外が、ボヤけている」


「……そか。まぁ、こんな不思議空間だからな。無理もないさ」


 彼女の言葉を聞いてから、スッと視線を逸らしてみると。

 今度はダイラの方がジトッとした瞳を此方に向けながら、俺の事を覗き込んできており。


「クウリ~? また良くない癖が出てるよ? 情報共有、大事だからね? ちょっとの違和感でも、何かあるなら言葉にする。良いね?」


「うぐっ!?」


 ウチの性女、こういう所マジで鋭い。

 とはいえ今回は、マジでどう相談すれば良いのやら。

 変な夢みましたってのも、真剣に相談する内容とは違う気がするし。

 もしもアレが、サテライトレイの事を教えてくれた二人にも影響していた何か、だったというのならまだ分かるのだが。

 今の所、それもまだ確信を得ていない状態。

 とはいえ、ずっと隠しておいて良い内容では無い気もして来るし。


「フィールドが何か見覚えある気がするなってのと、あとは……もう一個あるんだけど。そっちはもう少し情報が欲しい、だから少なくとも明日まで待ってくれ。な?」


「まぁぁたそうやって、すぐ隠そうとするんだから。まぁ生きてる以上、何でもかんでも話せってのは無理なのは分かるんだけどさ」


「わり……」


「いいよー別に。人間隠したい事の一つや二つ、三つや四つや百八つ。色々あるからねぇ。俺だって全部皆に話した訳じゃないし」


 最後のは煩悩じゃねぇの? とか言いたくなったけど。

 でも普通煩悩は他人に話さねぇよな、ある意味間違ってないのか。

 などとやりつつも、月明かりの眩しい夜の砂漠を見つめるのであった。

 今夜、眠った後。

 またあの夢を見るのなら、今度こそ皆に相談しよう。

 それこそ世界の、というか俺達の事情に深く関わる出来事かもしれないのだから。


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