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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
7章

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第174話 これまでに無い“縛り”


「案外、普通だな」


 本日の野営、平和。

 随分と開けた場所だし、周囲に敵の気配も無し。

 こういうのに一番鋭い魔女だって、非常にのんびりしている御様子だ。


「未開拓領域、なんて仰々しい名前だからこそ警戒していたが……確かに、わりと大人しいな」


「周囲のエネミーのレベルがちょっと上がったって感じだね~。待ちに待ったアプデで、適性以下のフィールドに入った気分。魔人は割と強かったけど」


「その辺はまぁ、カンストまでしちゃってるアバターってのもあるんだろうけど。あとはリアルだからこその影響が大きいんじゃない? 奥義一発でも、かなりの影響力だし」


 なんて、皆揃って焚火を囲みながらまったり喋っていた。

 やはり全員感じている様だが、そこまで苦戦するって程でも無い。

 ダイラの言う通り、やはりリアルだからこその影響ってのは一番デカいのだろうが。

 ゲーム時代では、奥義なんて御大層な名前が付いた所で強スキルの一つでしかなかったし。

 団体戦なら初手デウスマキナ、無限の狂乱を使いながらイズが一閃で暴れてから、やっとこさまともに戦闘開始~なんて事だって多かったのだ。

 それらを考えると、やはり手こずっているという印象は薄い。

 しかし当然周囲の環境にも影響するからこそ、無暗やたらにバカスカ撃つ訳にも行かないのだが。


「なぁエレーヌ、前に来た時はどうだったんだよ? 前回もこんな感じだったの?」


 特に何も考えず、そんな事を聞いてみたのだが。

 相手は、はて? と首を傾げてから。


「もう随分前の事だから……と、言いたい所だけど。以前は今よりずっと苦戦した記憶があるわ」


 ありゃま、つまり本番はこれからって事なのかね。

 それとも旦那さん……で、良いのかな?

 今は棺桶に入っているその人が戦闘員ではなく、そちらを守りながら一人で戦っていたというのなら、それもまぁ頷ける。

 そう納得しそうになったのだが。


「でも……不思議ね。今貴女から聞かれて違和感を持ったけど、前はこんなに自然豊かだったかしら……? ずっとゴツゴツした岩場を歩いていた様な気がするんだけど」


「ん? どういうこった?」


 ここから先、一気に地形が変化するとか。

 もしくは最前線とやらの砦の向こうからは先は、もっと不毛の大地だというのなら分かる。

 しかし今の所、ごく普通の大地が広がっている為……あまり、想像する事が出来ないのも確かだ。

 更に言うのなら、俺が訪ねるまで違和感を覚えなかった?

 こんな所まで旅をしたというのなら、随分と前の記憶だろうと忘れる事など無さそうだが。

 ウチの魔女は、結構抜けている所があるのも確かだ。

 だがもしもコレが本人の意思云々の話では無く。

 これまた世界規模、またはシステム的内容が関係しているのだとしたら……ちょっと厄介というか。

 こんな所まで来て、また不安要素が増えてしまう。


「他には? 何か違和感があったりするか? それこそ未開拓領域だけじゃなく、世界全体としてっていうか……」


「どういう意味かしら?」


 などと、話もこれからって時だった。

 ゾクッと、身体中が震え上がる様な寒気を感じた。

 思わず立ち上がり、キョロキョロと周囲を見回してみると。


「なんだ……? コレ。いつからこんな“霧”が発生してやがった?」


「不思議ね、さっきまで何も感じなかったのに。今では周囲から嫌な気配が漂って来る」


 いつの間にやら、俺達どころかキャラバン全てを飲み込む程の濃い霧が発生していた。

 普通なら、こんな事態に気が付かない筈がない。

 だからこそ間違いなく魔物か魔獣、もしくは魔人の影響なのだろう。

 エレーヌと共に、全力で警戒しながら周りを確認していると。


「クウリ、エレーヌ……その、どうした? 敵の気配があるのか?」


「えと、俺にも分かんないだけど……敵の気配、する? エレーヌの次には気配の感知得意だった筈なんだけど」


「えぇと……? 霧がどうとか、何の事?」


 残る三人も、俺達に合わせて立ち上がったのだが……え? いったい何を言っているんだ?

 だって、近い距離じゃないと確認し辛い程に濃い霧が出て居るじゃないか。

 しかも急に発生した訳じゃない。

 さっきからあったのだ、しかし俺達が気付けなかったというか。

 妙な違和感しか残らないが、そう表現するしかない。

 “そう言えば”みたいな感じで、急にハッとしたみたいな感じ。

 だがしかし、仲間達三人はこの異常事態に未だ気が付いていない御様子。

 なんだコレ……まるで、前にイシュランさんの“呪い”を見た時の様な気分だ。

 同じアバターという存在の筈なのに、俺にしか見えなかった可視化出来るノーライフキングの呪い。

 あの時は、俺が呪術特化だからとか、そういう理由なのかと思っていたが。


「なぁ魔女、お前には今この状況がどう見える? あとエレーヌって闇属性魔術得意だっけ?」


「白い霧が周囲を包み込んでいる様に見えるわね。それから生憎と、貴女の様な闇適性は皆無よ。使えない事は無いけど」


 だとすれば、色々とおかしい。

 俺と魔女にはちゃんと見える霧。

 もしもエレーヌも俺と同様に闇属性魔術の適性があると言うのなら、一応納得出来たのだが。

 それすらハズレだというのなら……コレは、どう言う事だ?


「なんて、ゆっくり考えてる時間は無さそうだな」


「そうね……けど、相手がどこに居るのか分からない。この霧のせいかしら……?」


 俺とエレーヌだけ全力警戒する中、仲間達は戸惑った様子で周囲を見渡している中……ズルッと言うか、非常に気持ち悪い気配が近くで蠢いた気がした。

 しかもソレを感じた方向と言うのが。


「上だ! “プラズマレイ”!」


「っ! これはまた……随分と大漁ね」


 空に向かってレーザーを放ってみれば、空からボロボロと砕ける様にして落下してくる……影の様な、魚。

 そう、魚なのだ。

 とはいえ、サイズは馬鹿デカいが。

 そして数本のレーザーだけでは大した数を狩れなかったのか、未だに頭上には多くの影が泳いでいる。

 まるで水族館に来ている様な気分になって来るが、白い霧の中薄っすらと黒い影が見え隠れしているのだ。

 しかも間違いなく敵。

 こっちをぶっ殺してやろうという敵意を、本当に肌で感じる程だ。


「全員でキャラバンを守れ! あまりにも数が多すぎる! 対空戦は俺がやるから、お前等は近付いて来た奴を――」


「クウリ!」


 指示を遮る様に上がったイズの声に、今度は何が起きたのかと視線を向けてみると。

 ……おかしい。

 兵士や冒険者達は、何が起きたのかと慌てている様だし。

 イズとトトン、そしてダイラさえも。

 周囲を警戒した様子は見せているものの、何が起きているのか理解出来ないという顔をしている。

 つまりこの状況で、戦闘態勢にすら入っていない。

 いやいやいや、待ってくれよ。

 だって今、俺が撃ち抜いたデカい魚が降って来たじゃん。

 しかも周囲には、明らかに異常な霧が発生しているのだ。

 だというのに……何で皆、そんなに不思議そうな顔で俺達の事を見ているんだ?


「まさか俺達にしか見えてない……とか、無いよな?」


「私と魔王だけを狙った幻影、というのならあり得ない話じゃないけど……フンッ!」


 飛びあがった魔女が、近付いて来た魚を真っ二つにぶった斬った。

 そして、地上に戻って来てから。


「少し不思議な感触だけど、間違いなく“居る”わ。幻影じゃない、齧られれば怪我じゃ済まないわよ。ちゃんと魔力を纏っている」


 最悪だ、マジで。

 というか、これまでに無い程酷い状況と言っても良いかもしれない。

 何たって……仲間達にすら、敵の姿が見えない。

 つまりは、いつもの様にパーティとして動けない事を意味する。

 それは正直……俺にとって、死活問題どころでは無いのだ。

 此方のパーティは、それぞれ補い合う事を前提としているのだから。


「チックショ……どうすんだコレ」


「魔王、来るわよ。周りに説明してる時間はないわ、私達でやるしかない」


 迫って来た魚達に、端から両手剣を叩き込んでいく魔女。

 しかしながら、全方位から襲って来るとなれば。


「っ! あぶねぇ! 後ろだ!」


 キャラバンの近くで休んでいた冒険者の一人が、バクンッと魚に喰い付かれた。

 噛み付かれた人は、それこそ悲痛の表情を浮かべながら悲鳴を上げ。

 そのまま霧の中へと連れて行かれたというのに。

 周囲の人間は、一切そちらに視線を向ける事は無かった。

 それこそ、パーティの仲間達でさえ。

 本当に何なんだ、コレは。


「チッ! だぁぁクソ! 悪い皆、今だけは俺の言葉を信じて指示に従ってくれ!」


「クウリ……? えっと、本当に何が……」


 戸惑う声を上げる仲間達を無理やりキャラバンの近くに寄せ、状況を理解しきれていない様子のダイラにプロテクションを張ってもらう。

 周りの魚を観察してみれば、一応魔術防壁の中には入って来られないみたいだ。

 だからこそ、このまま守って貰えばもう被害者は出ない……筈。


「クウリ! 何があったの!? コレいつまで防御してれば良いの!?」


「ちゃんと説明しろ! お前達には何が見えている!?」


「ねぇクウリ! 俺も行く!」


 仲間達の声が聞こえるが、流石にコレは……俺でも、どう説明したら良いのか分からない。

 もっと言うのなら、全く見えない状態でコレ等を相手にするとか、流石にコイツ等でも無理だろ……自殺行為どころじゃない。

 と言う事で。


「わりぃ、今回だけは待っててくれ……もしも俺とエレーヌだけおかしくなってるって状況だったら、後で思いっ切り笑ってくれて良いからよ」


「クウリ!」


 どうにかこうにか、無理矢理笑顔を作ってみれば。

 プロテクションの内側で、トトンが泣きそうな声を上げているが。

 今だけは、連れて行く訳にはいかない。


「来い、ノーライフキング。お前はもう俺の一部だ、だったら……見えるんだろう?」


『御意。問題無く、確認出来ます。これはまた、随分と生臭い環境ですな』


 こっちの予想通り、コイツには相手が知覚出来るらしい。

 骨ボスの声にホッと安堵の息を零してから、改めて杖を構え。


「ノーライフキング、お前の全勢力を使って皆を守れ」


『魔王様、よろしいので? これ等は恐らく分身体、もしくは私が使う僕と同じです。どこかに本体が居る筈』


「そっちは、俺と魔女で何とかして来るわ。だからお前等は、皆を頼む」


『承知いたしました』


 周囲から出現する亡霊兵に防御を任せ、此方は思い切り翼を広げた。

 訳の分からない状況、濃い霧で視界も最悪。

 どこから迫って来るかも把握しきれない魚介類共に対し、こっちは俺とエレーヌの二人だけ。

 あぁぁ……クソがよぉ。

 こんなふざけた真似してくれるのは、どこのどいつだよ。

 俺さぁ……こういうすれ違いとか仲違いが発生しそうなイベント、ガチで嫌いなんだよね。

 ミニゲームとかでも、人狼ゲームみたいな真似させられるイベント、ガチスルーだったし。

 と言う事で。


「即ぶちのめす。地形だ何だの、環境の被害なんぞ知った事か。本気で潰してやらぁ」


「随分とご機嫌斜めね、魔王。まぁ、私も良い気分じゃないけど」


「付き合えよ、魔女。このふざけたフィールドごとぶっ壊すぞ」


 両者とも低い声を上げながら、正面に向かって杖と両手剣を構えるのであった。


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