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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
7章

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第170話 敵襲、北の魔人


 そしてその夜、皆で野営をし始めた頃。

 早速問題起こりました~! イエー、パチパチパチー。

 フラグ回収、本当にお疲れ様です。


「だからよぉ! 俺等ばっか戦って、一日中休んでた奴等だって居るじゃねぇか! ソイツ等の報酬をこっちに回せって言ってんだよ! それとも何か? 俺等以外は馬車の隣を歩くだけって依頼でも受けてたってのかよ? 同じ報酬貰ってんのに、この扱いの差は何だよ!?」


「ですから、それぞれの役割りに合わせて戦闘をお任せしている訳でして。本日貴方方が活躍したのはしっかりと把握しています。それだって明日には交代、他のパーティに任せると何度もご説明――」


「俺等冒険者はよぉ! 実績ありきで金貰ってる訳だよ! 今日何もしてねぇ奴が同じ報酬もらうってのは納得がいかねぇって言ってんだ! どうせトラブルが起きりゃ、俺等だって休む暇無く働く事になるんだろうが! なんか間違った事言ってるか? なぁオイ、兵士だからってあんまりお高く留まってんじゃねぇぞ」


 はい、分かりやすい程にこういうトラブル。

 起きるだろうねぇ、そりゃもう。

 他のパーティの事情なんか当然何も知らないし、何で自分達ばっかって思っちゃったら不満も溜まるでしょうね。

 とはいえ今は集団行動中、更には長期依頼と来たものだ。

 全員が全員、わーって敵に集まったら……それこそボールに集まる少年サッカーみたいになっちゃうでしょうが。

 実際今日、数パーティでもその状態だったんだから。


「そもそも今日なんて、女が居るパーティは全部後ろに下げたままじゃねぇか! もっと言うなら、女だけのパーティまである。ホラ、アイツ等だ! 舐めてんのか? どう見ても戦えそうな奴が居ねぇじゃねぇか。それともアレか? ソイツ等は“別の意味”で仕事してもらう為に連れて来たってか? だったら話は早ぇ、さっさと仕事させろよ。丁度夜なんだしよ、発散要員なら今から稼ぎ時だろ?」


「その発言は少々看過できないですよ? 何度も説明している通り、男性女性関わらず、お任せしたい仕事があるからこその編成です。誰彼構わず前に出ろ、というのは指揮する者が無能な証拠だ」


「だからテメェが無能だって言ってんだろうか!」


 兵士達と、説明を続ける隊長さんが少々ピリッとした雰囲気になり始めた頃。

 相手の冒険者も随分とヒートアップ。

 他のパーティに居る女性冒険者なんかは、ヒッと声を上げて仲間達の後ろに隠れているし。

 そりゃまぁ、怖いよね。

 ここは街の外だし、逃げようにも未開拓領域だし。

 おかしな事をされても、一人では逃げ出せない状況にあるんだから。

 と言う事で、目立たない様に端っこで干し肉を齧っていた俺等だったが。


「あーあー、そこのお兄さん? その話、俺等が乗ってやろうか?」


「あぁ!? なんだガキ! って……あぁ、随分とお綺麗なお嬢ちゃん達かい」


 此方が声を上げた瞬間、相手はヘイトを此方に移して怒鳴り散らしたが。

 俺等のパーティ全員を見た瞬間、ニヤッと口元を歪ませたのが分かった。

 仲間達からは、呆れたため息が聞こえて来たけども。


「ほぉぉ、兵士の奴らのお気に入りかと思ってたが……お嬢ちゃん達が、俺等の話に乗ってくれるのかい?」


「あぁ、良いぜ?」


「ククッ、そうかい。だったらさっさと裸に――」


「明日からは、俺等が全て戦闘を担当する。その代わり、テメェ等の報酬も全部俺達の物。そういう事で良いんだろ? 自分で言った通り、明日からは大人しく馬車の隣を歩くだけ。本当に何もしなくて良いぜ? 木偶の棒に変わりな、お前等に仕事は振らねぇからよ」


 ケッと吐き捨てる様に言い放てば、相手はピクピクと額に青筋を作ってからズンズンと大股で此方に歩いて来た。

 これに対し、仲間達は立ちあがろうとしたが……掌を向けて、それを制する。

 ちなみに隊長さんは、「勘弁してくれよ……」って感じの疲れた瞳をこっちに向けていたけど。


「おう、嬢ちゃん。あんまり調子に乗ってると痛い目に会うぜ? そのお綺麗な顔に傷を残したくなけりゃ、さっさと股開きな」


「ハッ、生憎と俺もそれなりの歳でね、身体が固くて開脚は苦手なんだわ。俺に股開いて欲しけりゃ、整体師でも呼んでくれよ。そうすりゃ身体の調子も良くなって、更にお前の仕事はなくなるだろうけどな」


 売り言葉に買い言葉。

 まぁ見事にやらかしている訳だが、このまま放置しても埒が明かなそうだったので。

 あのテンションが毎晩続くとなると、周りのパーティだって気が休まらないだろうし、実際俺等も迷惑している。

 はっきり言って、鬱陶しいのだ。


「嬢ちゃん……ちぃと大人の怖さってヤツを教えてやった方が良さそうだな……」


「クハハッ、おぉ怖い怖い。脳みそが股間に詰まってる奴は、何しでかすか分からねぇからな。今後被害が出る前に今夜俺が去勢してやっから、かかってこいや」


 場を荒らし続けるプレイヤーの対処法、その一。

 つけ上がった時点で、徹底的に潰しておく。

 荒しは放置しましょ~、通報しましょう~ってのが鉄則な訳だが。

 運営が対処するまで放っておくと、全体に迷惑をかける馬鹿が長時間空気を悪くする事も多々。

 なら、いかなる状況でも結構エグいPVPが可能だったあのゲームでは。

 “悪い意味で”出た杭は、陥没するまでブッ叩けってのが常識だった訳で。

 俺のアバターには、その感覚が染みついている様だ。

 そんな訳で相手は剣を抜き、此方は杖を構えた瞬間。


「魔王、遊んでいる所悪いけど……来たわよ」


「ん? 何が?」


 未だ干し肉を齧っているエレーヌが、つまらなそうな声を上げたかと思えば。


「多分、魔人」


「マジで?」


「大マジよ、しかも二体。結構速いわよ」


 エレーヌの声と同時に、ダイラが休んでいた人達の周りにプロテクションを展開。

 イズは双剣を抜き放って構え、さらに前へと飛び出したトトンが大盾で何かをパリィした。

 弾かれたソレは宙を舞い、クルクル回りながら俺と男の間に振って来たのだが……。

 それはもう、でっけぇハンドアックス。

 刃の部分が無駄にデカいのに、持ち手の部分は短い。

 こんなの普通の人間じゃ使えないでしょってサイズの、おかしな武器がぶん投げられたみたいだが。


「こんな夜更けにお客様か? ったく、礼儀を知らねぇ奴だなオイ。本日の営業時間は終了しましたってのが雰囲気で分からねぇのか?」


「馬鹿を言っていないで、準備しろクウリ」


 イズに怒られながらも視線を向けてみれば、そこに居たのは……なんだろう。

 下半身、馬。

 そして上半身……というか本来馬の首の位置から上に、人間の上半身みたいな形をした身体が生えており。

 顔面は、牛だ。

 う、うん。牛だよな?

 ケンタウロス……いや、ミノタウロス?

 え、なにどっち?

 これを俺は、なんて表現すれば良いの?

 しかもソイツの後ろから、今度は逆パターンの変なのまで登場した。

 身体が闘牛っぽくて、頭が馬。

 当然上半身はムキムキマッチョメンの人間の姿、ちなみに両者共裸。

 うーむ、情報量!

 システムコンソールに頼ろうとしても、“魔人”とか表示されないし。

 役に立たねぇ!

 更に言うのであれば。


「ズハハハッ! 兄者、活きの良さそうなのがウジャウジャおるのぉ!」


「喜べブラザー! 女もたっくさんおるぞ! 今夜は宴じゃ!」


 喋り方! あと兄弟なら呼び方統一しろ! 情報量が多くてバグるわ!

 そんな馬だか牛だか分からない魔人たちは、再びハンドアックスを構え。


「我等!」


「俺達は!」


 何やら無駄なポーズを決め、馬牛さん達が名乗りを上げようとしてる。

 と言う事で、しばらく待ってみると。

 「せ~の」と小声で聞えて来た後に。


「北の(地獄の)魔人兄弟なりぃ(だぁ)!」


「いや最後くらいは合わせろよ! 聞きづれぇわ!」


 思わず、変なのに突っ込んでしまった。

 羊だかヤギだか分からないのから始まり、蝙蝠面のサキュバス。

 それだけでもお腹いっぱいなのに、今度は馬と牛と人間のランダムミックスと来やがった。

 相も変わらず、と言ったら悪いけど……人間の様に表情豊かなので、ぶっさいくです事。

 そんな良く分からん奴等に向かって全員武器を構えてみれば。


「接敵、せってーき! 全員、抜剣! 魔人だ!」


 流石は兵士の皆様。

 あちらもすぐに戦闘準備を初めて、周囲に展開しようとしていたが、ダイラの張った防壁にゴツッ! とちょっと痛そうな音を立てながら阻まれている。

 冒険者諸君に関しては……ありゃ駄目だな。

 怯えている者、状況を理解出来ない者、放心している者。

 本当に色々だ。

 そりゃまぁ魔人なんて言ったら、居るかどうかも分からない怖い奴等ってイメージしかないみたいだし。

 今回の街でどういう扱いなのかは知らんが、初めて見る奴の方が多いのだろうから仕方ない。

 ということで。


「俺等だけでやる、アンタ等は下がってて良いぜ。それこそ、明日の仕事が任せられるかどうか、よく見ておくこった」


 ニッと八重歯を見せながら振り返ってみれば、ダイラのプロテクション内に居た全員がギョッとした表情を浮かべ。


「しょ、正気か!? 相手は魔人なんだろ!? だったらさっさと逃げた方が――」


 先程大層な勢いで絡んで来た冒険者は叫び、近くに居た隊長さんはグッと奥歯を噛みしめたかの様な表情を浮かべてから。


「いくら何でも無茶だ! 我々も加勢する! 早く魔術防壁を解除してくれ!」


 なんて、格好良い台詞を言ってくれている訳だけども。

 それに対して更に口元を吊り上げて。


「引っ込んでな、正直邪魔だ。そんでもって……俺等は“慣れてる”。安心してそこに居てくれよ、ちょっと未開拓領域の魔人ってのと遊んで来るから」


 全員揃って、本気装備に切り替えるのであった。

 俺に関しては、またいらん誤解を招く可能性があるが。

 それでも、こんな場所で出会った魔人だ。

 舐めて掛かるつもりは無い。

 だからこそ、全力で笑顔を浮かべ。


「ククッ、クハハハッ! 遊んで行けよ、馬面と牛面。こっちの地域の魔人の実力とやら、試させてくれよ! あっさりくたばるんじゃねぇぞ? 俺達を楽しませろ!」


 月夜に照らされながら、此方は黒い大きな翼を広げるのであった。


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