表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/163

第17話 ぶっぱ!


「本当にありがとうございます!」


 一緒の馬車に乗った姫様、ステラはそんな声を上げるが。

 俺達の考えは伝えた後なのだ。

 つまり彼女の求める存在にはならない、そうキッパリ断った筈なのだが。

 彼女は嬉しそうな顔で、今回の依頼を遂行する様に促して来た。

 いいのかな……達成しても、傘下には加わらないって言ってるんだけど。


「お父様も喜んでいましたわ! “出来るものなら”とも言っていましたが」


 おっとぉ、雲行きが怪しくなって来たぞぉ?

 今回彼女が俺等に依頼したのは、ダンジョンから溢れ出した魔物の討伐。

 要はスタンピード一歩手前という所か。

 このまま放置していれば周囲に大きな被害が出るが、それでも国が動かない理由。

 それはつい最近まで、冒険者が熱心にアタックを掛けていたからだと言う。

 つまり人気のダンジョン、本来なら俺達が手を出す必要も無いかもしれない。

 でも溢れ出す程に、魔物が生れてしまう状況に陥ってしまった。

 話を聞いた限り、ダンジョン内の魔物の駆逐より生産の方が上回った時に、“溢れ出す”現状が起きるらしい。

 そういった物を放置し、溜まりにたまったソレ等がいっぺんに溢れ出すのがスタンピード。

 つまり、駆逐が追い付いていればこの現象は起こらない。

 ちなみに言うと……これから俺達が向かう所は、既に溢れ出ている状態が始まっているそうで。

 そろそろ本格的にドバッと出て来るかもって事で、お国の方で重い腰を上げたそうな。


「そんなに厳しいダンジョンなのか?」


「濃い魔素を含んだ特殊個体が確認されています。だからこそ、やがて全員撤退する他無い状況に陥ったんだとか」


「特殊個体、ねぇ……」


 フレーバーテキストにはあまり興味が無かったが、暇潰しで読んだ記憶はある。

 例えばステージ1で出て来た雑魚キャラが、少し進んだ先で色とかを変えて登場する。

 これすら、多分“特殊個体”なのだろう。

 プレイヤーからすれば、初期と変わらない奴がちょっと強くなって出て来た。

 それくらいの認識なのだが……現実では、間違いなく何かしらの進化を遂げた存在。

 相手から貰った資料を見る限り、そうとしか思えない。

 初期モンスターの変異種。

 ちょっと違う耐性を持っていたり、力が強くなっていたり。

 見た目が少しだけ変わって基礎ステータスが上がっていたり。

 まぁ、そんな所なのだろう。

 しかしながら、たったこれだけの違いだとしても皆は苦労する。

 それは当然だ。

 ゲームの時の俺達みたいに“死んでも平気”という条件が無いのだから。

 レベル上げにだって躊躇してしまうだろう。

 そもそもレベルという概念が無い以上、必要以上に拘って強者と戦う人間は居ないのかもしれない。


「どう、ですか? 対処出来そうですか?」


 不安そうに姫様が声を掛けて来るが、こちらとしては別の不安がある。


「このダンジョン、それから周辺。まだ人が居るのか? だとすれば、俺達は本気が出せないんだけど」


 渡された報告書には、兵士の事は書いてあるけど冒険者の事とか書いてないし。

 その辺の確認が取れないと、やっぱり小技を使いながら徐々に攻略する他無い。

 そうなって来ると、本来の目的が達成できないというか。


「ダンジョンアタックを掛けている冒険者は、まずいないでしょう。既に溢れ出し始めている状況なので、既に中は魔物だらけです。そして肝心な兵に関しても、実際の所準備が遅れています。今行っているのは、ダンジョンよりずっと手前に砦を構え、人と物資を集めている最中と言った所ですかね」


「え、つまり既にここも立ち入り禁止状態?」


「そうなりますね」


 そんな言葉を返しながら、ステラは真剣な顔を浮かべていた。

 この言葉に嘘が無いとして……この子の扱いはいったいどうなってるのやら。

 俺達と本人、そしてメイドが付いて来ただけの馬車に乗せて危険地帯に放り込むとか。

 まぁ、そっちは俺が考えてもしかたないのか。


「周辺に広がった魔物の対処は?」


「そこが一番問題でして……この事態に陥ってから、随分とこの森も危険になっております。だからこそ、皆様に――」


「あぁ、なるほどもう良いや。結局、出来るモンなら“全部やれ”って事ね。ついでにこっからダンジョンに向かうまで、人は居ないっと」


 それだけ言って報告書を投げ捨て、馬車の窓から天井へと登った。

 更には角や翼も装備してから。


「ダイラ、到着まで頼む」


「りょ、了解! でも、今から派手なのを使う訳じゃないんでしょ?」


 そんな声が聞えて来た瞬間、馬車を防護魔法が包み込んだ。

 但し、俺を除いて。

 その物を守る“膜”の様な守り方だから、バリアというより保護シールド……って言ったら良いのかな。

 ダイラの魔法は、相変わらず汎用的に使えるモノが多くて助かる。


「もう既に索敵範囲内に居るんだよなぁ、うじゃうじゃと。なるほどねぇ、こりゃ普通なら近づかないわ」


 カカカッ! と笑いながら、杖を構えた。

 すると、森の中から数多くの獣達が姿を現し。


「ブワァカ、警戒して今まで牙を向かなかったのが裏目に出たな。“カオスフィールド”!」


 今まで隠れて俺等を追って来た魔獣たちに対して、範囲攻撃を放った。

 こっちが攻撃してから襲って来ても遅いんだよ、獣頭。

 などと思いつつ口元を吊り上げれば、周囲で爆散していく魔獣達。

 本来少ない持続ダメージの筈だけど、やっぱ本気装備だと威力が桁違いだ。

 そしてやはり肉体もアバターの影響を受けているらしく、俺にもある程度は敵の感知が出来る。

 というか、“敵意”と言うモノを察知することが出来る。

 ビンビンに感じるぜ、お前等の“殺してやろう”って感情が。

 だったら、こっちが殺しても文句ねぇよな?

 生憎と俺等は感覚がブレてるんだ、恨むんじゃねぇぞ。


「クウリ! 進行方向から何か群れが迫って来る!」


「了解トトン、任せろ」


 ニッと犬歯をむき出しにして笑い、杖を向けて瞼を細める。

 道の先から迫って来るのは、狼……か?

 ネトゲでも雑魚モンスターとして登場したが、ソレが三十程。

 確かに多いな、初心者なら一瞬で狩られてしまう数だろう。

 しかしながら、此方には熟練のゲーマーしか居ないのだ。

 どれだけ俺等がこのゲームをやり込んだか、どれ程このキャクターを強化するのに時間と金を使ったか……その身をもって、味わってみれば良いさ。


「“プラズマレイ”」


 俺の周囲からはレーザーが照射され、馬車の向かう先から迫って来ていた魔物を一掃する。

 あぁ、やはり便利だこの魔法は。

 とりあえず“ぶっぱ”で何とかなる上に、リキャストタイムも少ない。


「こ、ココは今厳重警戒地域に指定されているのですが……皆様でしたら、問題無さそうですわねぇ……」


 馬車から顔を見せた姫様が、そんな言葉呟くのであった。

 警戒地域、ねぇ。

 なるほど、この程度の相手でも世間的には相当警戒する内容になるのか。

 いいね、本当に良い。

 今回の仕事は、色々と調べられそうだ。

 そんでもって。


「ククッ、ハハハッ!」


「や~っばい。黒クウリが出て来た」


「魔王テンションになると、本当に止まらないからな。コイツ」


「しーらない、知らない! 本当にしらないからね! こうなったクウリ、マジで加減しないんだから、知らないからね!」


 仲間達の声を頂きながらも、行く先を睨むのであった。

 ほぉ、まだ居るか。

 森の中に潜んでいる雑魚共が。


「もうちょっと試したい所だな……来いよ、相手になってやる。モンスターなら、襲って来い! こんな無防備な馬車を襲う度胸もないのか!? とっとと来い雑魚共!」


「姫様、この森が無くなったら……責任取ってね? 俺等しらないから」


「何か凄く怖い事言っていますけど!? 彼女は何をしようとしているんですの!?」


 馬車の中から悲鳴が聞こえた気がするが、知らん。

 殺す為に迫って来る相手は、殺す。

 コレもまた、キャラと融合した影響なのだろう。

 そんな訳で、範囲攻撃系スキルを連発するのであった。

 ひゃぁ~、たぁのしぃ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ