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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
1章

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第16話 物は試し


「どうする、クウリ。どう考えても、面倒事な上に……その、何だ。生きていく為の道を絞られる事になる気がする」


「だよな、イズ。俺もそう思う。別に大冒険がしたい訳じゃないが、この話に乗ったら……というかお姫様に従ったら、もう逃げられない雰囲気が凄い」


 お茶会も終わり、各々部屋も用意された訳だが。

 皆俺の部屋に集まり、作戦会議中。

 周りにはそれぞれに付けられたメイドさんも滞在しているが、もう気にしない事にした。

 あれらはそういう置物なんだと思わないと、話し合いも出来ないので。


「良い人、っぽくはあるんだけど……まだ分からないしね。俺達を使って実績を作ろうってのは、立場としては仕方ないかもしれないけど。結構単純な作戦に思えちゃうし、この条件を飲んで戦い続けたら、多分俺達兵器扱いだよ……」


 ダイラも怯えた様な声を洩らして、自らの身体を抱きしめている。

 現在俺達は、何と寝間着姿。

 これも全部姫様が用意してくれた。

 何でもかんでも貰っていると、感覚がバグりそうだが。

 それでも昼間のドレスから解放された影響なのか、トトンは完全に溶けている。

 俺の膝の上で。


「うはぁぁ……楽」


「おっ前、別に良いけど俺らの中身分かってるよな? その状態でコレはどうなんだ?」


「別にいいじゃーん、クウリだし。それに今は俺もロリな訳で、頼りにしてま~す」


 環境適応能力が高すぎるのよ、お前は。

 緩い顔を浮かべているちびっ子をベシベシしながらため息を溢し、仲間達に再び視線を向けた。


「とはいえ、簡単に断る訳にはいかない相手っぽいし。更に言うなら……国が困る程の相手に挑めるのは、正直チャンスだとも思ってる」


 これもまた、俺の感覚がキャラによっておかしくなっている証明なのだろうが。

 戦ってみたいと、そう感じてしまったのだ。

 頭じゃ危ないから止めとけって分かっているのに、この感覚ばかりは未だ慣れない。

 でもあえて良い方向に考えるのなら、このパーティの全力を試す良い機会と言っても良い。

 俺達が全力を出したら、どうなってしまうのか。

 どの程度のスキルまで使って良いのか。

 それを検証するには、良い機会だ。


「弱く弱く調整する、その事ばかりに気を取られていたが。確かに全力なら何処まで対処出来るのか、それも大事な項目だな」


「戦闘は嫌だけど……でもどの程度の相手なら戦っても大丈夫なのか。ソレが分からないと、いざと言う時に失敗しても不味いからね……」


 俺の言いたい事は分かってくれたのか、二人共頷いてくれる。

 しかしこの仕事を受けると、あの第三王女と繋がりが出来るのも確か。

 だからこそ、簡単に首を縦に振れない理由でもあるのだが。


「だったらさ、クウリ。もう完全、マジで、本気の全力でやってみない? それこそ国でもビビるくらいの成果を出して、コイツ等を敵に回したらヤベェって思わせる様に。そしたら、無茶苦茶な依頼とかお願いは無くなるんじゃないの?」


 膝の上のトトンが、そんな事を言って来た。

 オイオイオイと思ってしまったが……まぁ、確かに。

 位云々があるから逆らえない世界ってのは分かっているが、圧倒的な火力を見せつけた後ならどうだ?

 あんまりふざけた事抜かすと、今度はこの攻撃がお前に向かうぞって脅しつけた場合。

 確かに相手は好き勝手な事が言えなくなる気がする。

 まぁ、あんまり穏やかな作戦ではないのは確かだが。

 中途半端に実力を見せるよりかは、そっちの方が良い可能性もある。

 逆に戦争に導入されそうではあるが、そもそも相手の言う事を聞かない集団。

 というか自由にならない強者だと認識されれば、今後も“お願い”の形が崩れる事はないのかもしれない。

 むしろこの国から敵視されてしまう、なんて事態に陥りかねないという懸念もあるが。

 その時はあれだ、とんずらしよう。

 別の街で改めて異世界生活を始めよう。


「悪くは無いかもな……貴族社会とか良く分かんねぇから、甘く考えてるだけの可能性もあるけど」


「でしょでしょ!? 久しぶりに全力で暴れてみようよ! 俺、クウリの広範囲殲滅魔法見たい! アレをこっちで使ったら、どういう感じになるのか見てみたい!」


 俺の膝の上から飛び上がり、トトンがそんな事を言って来る。

 本当にコイツは、元気だな。

 というか、相変わらず俺に懐いてんのな。

 ゲームの頃から、弟みたいな雰囲気で色々教えていたが。

 まさかTSしても、そのままのテンションで絡んで来るとは思っていなかった。


「あんなもん使ったら、多分色々酷い事になるぞ」


「でも見たい! クウリの魔法は全部恰好良いからな!」


 満面の笑みで、ロリっ子が俺に向かって要求してきた。

 見た目って、やっぱ重要だなぁ。

 なんかもう妹が出来たみたいな、そういう感覚に陥っている。

 中身、男だけど。

 でも可愛い女の子にそう言われてしまうと、まんざらでもない。

 あぁもしかして、これもキャラの影響か?

 クウリってキャラクターに引っ付いて来たトトン、それがいつもの事だったから俺にも嫌悪感が生れない、みたいな?

 その辺は良く分かんねぇけど。


「メリットもデメリットも、多分俺等の想像出来ない程色々ある。でも、受けてみる……か? 国の抱えた問題を解決する仕事。他の兵士と合同だとか、接待みたいな戦闘とかは断るとして。俺達のみで参加出来る、“殲滅戦”だけって条件で」


 そう言ってため息を溢してみれば。


「検証としては、都合の良い仕事だとは思う。クウリには苦労を掛けてしまうが……俺は、賛成だ。スキルをもっと試してみたい」


 イズは力強く頷き。


「嫌ではあるけど……でもこのままチマチマやってても、分かんない事だらけになりそうだし。一回大きな事をやってみるのも良いと思うよ。でもほんと、無理はしない方針で。もっと言うなら、貴族の付き合いとか俺無理だからね?」


 普通の格好になったダイラも、おずおずと賛成してくれる。

 あとは、最後の一人。


「俺がクウリの意見に反対すると思う? 付いてくよ、リーダー」


 ニカッと満面の笑みを浮かべるちびっ子。


「ったく。今の台詞、お前が女だったらホレてたかもな」


「今の俺、女だけど?」


「うるせぇ、俺も女だっつの」


 ガシガシとトトンの頭を撫でてから、皆に向き直った。

 そして、俺も覚悟を決め。


「姫様の依頼を、受けよう。但し私兵だ騎士だのは無しだ。あくまでコレは、俺達の全力を試す為。この世界で、本気を出したらどうなるか。それを検証する為に受ける。いいな?」


「「了解」」


「ういういさー!」


 皆の返事が返って来た瞬間、周囲のメイド達が微笑んだ気がしたのだが。

 気のせいかな? 何か企んでいると言うよりも、微笑ましいモノを見ている様な瞳を向けられている気がするのは。

 なんじゃい、リアルメイドさん。

 チップ渡しちゃうぞ。


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