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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
6章

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第156話 手間は掛かるがやっぱり旨い


 皆さん、鶏皮は好きですか?

 俺は大好きです、焼き鳥屋に行ったら絶対頼むくらいには。

 誰に対して問いかけているのか、自分でも良く分からないが。

 そんなよく分からない思考回路になるくらいに、美味しい鶏皮を頂いた。

 パリッと心地の良い音が口の中で響く程に、良く焼きの表面。

 安っぽいというか、うっすい皮串なんかだとここまで焼くとただ焦がしただけって印象になるのだが。

 今回食べているモノは一味も二味も違う。

 皆が言っていた様に少々厚めの御様子で、ここまで旨い皮は初めて食ったかもしれない。

 表面はパリッ、そしてしっかりとした噛み応え。

 皮のブヨブヨ感が嫌い、という人も居るが。

 多分コレを食えばハマるんじゃないかなって程に……コイツは良い。

 食感花マル、そして肝心な味はというと……イズキッチンから、不味い物が登場する筈がない。

 基本は塩焼きベースなのだが、ただ揉み込んだり塩を振ったりしただけではない様で。

 ガブッといけば口の中に香辛料の香りが広がり、噛みしめてみると皮そのものの旨味と同時に、しっかり手が込んでいらっしゃいますわぁ……っていう美味しさが押し寄せて来る。

 ……うん、あれだな。

 相も変わらず、俺に食レポのセンスはねぇな。

 普通ならこの辺りが色々と語る部分だろうに、他にそれっぽい言葉の一つすら思い浮かばない。

 どうしても俺の料理能力の低さが露見するだけで、旨いしか出てこないのは困ったものだ。

 いやまぁ実際旨いから、それだけで十分なんだけどさ。

 とか何とかおかしなテンションのまま脳内食レポしていた自分に対し、セルフ突っ込みを入れつつ鶏皮をモッキュモッキュ。


「あぁ、やっぱり酒が飲みたく――」


「クウリ~?」


「すみません何でもないです。ワタシ、サケ、ノマナイ」


 酒の話になると、ダイラが怖い。

 まぁ、散々迷惑かけたからね。

 こればかりは致し方ない事なのだろう、なんて考えつつ鶏皮を満喫していると。


「手羽先餃子、そろそろ良いぞ。間違いなく熱いから、気を付けてくれ」


「うぉー! すげぇ、めっちゃ良い焼き色! 俺手羽先餃子初めて~! 食べた事無い!」


「トトン、思いっきりガブッて行ったら熱いどころじゃないからね? 気を付けてね? 多分肉汁凄いよ?」


「少しずつ食べれば良いのかしら? 私も食べた事ないわね。いただきます」


「んー! んん-!」


 コッチはまだ鶏皮を満喫中だというのに、食卓に手羽先餃子が並んでしまったではないか。

 欲張って串焼きを両手持ちしている場合ではなかった。

 と言う事で、ちょっと勿体ないがガブガブと鶏皮串を飲み込む様にして食し。

 皆より少しだけ遅れながらも手羽先餃子へと手を伸ばした。


「あっつ!?」


「クウリ、さっきから言っているだろうに……口に入れる前から火傷するなよ?」


 手羽先の骨部分……って言ったら良いのか?

 骨を残して、持ち手になっている所を掴んだ瞬間に火傷しそうになってしまった。

 くそう、少しコケた程度なら怪我一つしない身体の癖に。

 こういう所だけは、しっかりと温度を伝えて来るのだから困ったものだ。

 いや、それさえ感じなくなったらいよいよヤバいか。

 などと怖い事を考えてしまったが、今はナシナシ。

 おかしな事考えずに、旨い物を食うべし。

 改めて手羽先を掴みなおし、フーフーしてからガブッといってみると。


「うっ、まぁぁぁ……口の中がホックホクやぁ……」


「初めてだけど俺コレ好き! 超うまぁ……」


 思わず、トトンと一緒に表情筋が崩壊してしまった。

 だってもう凄いのなんの、良く焼きの表面は鶏皮串に負けるかとばかりにパリッ!

 もはやこの為だけに焦げ目を入れるの、正解過ぎる。

 しかも甘辛のタレと一緒に焼いていた影響で、噛み付いた瞬間から幸せになれる味。

 そしてコッチも素晴らしき鶏皮の食感、ソイツに噛みついて牙が表面を突き破ってみれば。

 溢れ出すという表現がぴったりな程の、美味しい餃子と肉汁がお出迎え。

 アチッアチッなんて言いながらハフハフと咀嚼してみると、ただ手羽先を焼いただけでは絶対に味わえない満足感たっぷりの餃子のタネ。

 頑張ってコネコネした肉、細かく刻まれた野菜、パンチの利いた味つけと来れば。

 もはや最強と言うしかない。

 なにより、手羽先餃子の場合はまさに“喰っている”という実感が桁違いなのだ。

 ある意味“向こう側”にも存在するロマン料理とも言えるだろう。

 コレを最初に考えた人は、マジで天才だって……。


「気に入った様で何よりだ。ニンニクも少し炒めてから入れたから、ガッツリ後に匂いが残るという程でも無いと思うが」


「普通の餃子より、強めの味でも抜群に合うよねぇ……あぁ、ホント美味しい。イズは本当に何でも作れるよね」


「まぁ、こう言っては何だが……変わり者の多い家だったからな、何でも要望されたんだ。剣道場なのに双剣を教えたいとか言い出すくらいだからな、頭がおかしいと言っても良い。料理もその一環で、本当に何でも作らされたものだ」


 随分まったりした様子でダイラとイズが話している中、俺とトトンは完全にトリップ状態でモグモグ。

 今夜だけは、争って食う様な真似はしない。

 絶対火傷するので。

 とかやっていると、隣から「アチッ」という小さな声が聞こえて来る。


「ありゃ? エレーヌは、こういうの食べ辛かったか?」


 視線を向けてみると、魔女が必死でフーフーしておられた。

 コイツも結構食べるし、見た目に反して割と俺等の様な食べ方でも問題無かった筈なのだが。


「そういう訳ではないのだけれど。こう……これは熱くとも、絶対にガブッと喰らい付くのが正しい気がして。実際貴女達はそうやって食べていたし」


 仰る通りでございます。

 ある意味唐揚げと一緒だ。

 絶対に熱いと分かっているのに、ガッと行ってホフホフと熱い息を溢しながら食いたい一品。

 と言う事で、ニヤニヤしつつ俺とトトンで見守っていれば。

 やがて決心がついた御様子で、ガブッと噛みついた魔女様。

 案の定「ホッホッ」みたいなお口熱々状態には陥っていたが、それでも頑張って咀嚼していけば。


「美味しい……」


 普段ほとんど無表情の癖に、間違いなく頬が緩んだのが確認された。

 この人アレよね、飯の時だけは表情豊かだよね。

 ということで今度は三人揃って緩い表情を浮かべつつ、手羽先餃子をハグハグと口に運んでいると。


「随分と気に入った様だな、皆。せっかくだ、もう少し作るか。“揚げ”にでもするか? あれもあれで旨い物だ」


 イズの一言にトトンと俺、そして魔女さえもカッと目を開いた。


「揚げ手羽餃子食いたい! 絶対食いたい!」


「俺も俺も! 唐揚げみたいになるの!? それとも素揚げ!?」


「是非、食べたいわ」


「あはは……トトンだけじゃなくて、皆子供みたいになっちゃったね」


 という事で、本日はいつもより遅くまで焼き鳥と手羽先餃子のパーティーが開催されるのであった。

 この後飛行する事を考えると、あまりお腹いっぱいにすると眠くなりそうだけど。

 しかし、抗えない。

 鶏肉料理の誘惑、恐るべし……。


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