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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
6章

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第154話 穏やかな旅立ち


「随分とまぁ……派手なパレードになったもんだな。大人しく済ませるとかって話じゃなかったっけ?」


「今回の一件が王女の手柄となり、お相手に王位を継がせようとする周囲の声に熱が入った結果。らしいな?」


 呆れた声を上げながら、式を挙げていた大聖堂のベランダから街中へと視線を向けている俺達。

 全員新しく用意してもらったドレスを身に纏っている為、少々落ち着かない気分ではあるのだが。

 だが俺等なんぞ空気になるくらいに、ド派手な結婚式……というか、もはや凱旋みたいになっている。

 街中をドデカイ馬車が練り歩き、ステラとお相手の王子が手を振って民の声に応え。

 そしてその後ろには……今回俺等が討伐した、メカドラゴンの首が連なって運ばれている状態。

 もはやあの二人が竜をぶっ殺した、というかぶっ壊したかのように見えるね、ホント。

 そういう勘違い的な意味合いも含めて、今後あの二人に差し向けられる悪意を退けるんだとか。

 逆に牙を剥く連中もいるだろうが、そちらの対応として今回俺達が用意した魔道具を渡しておいた。

 姫様と旦那さんの分を含めて、ブレスレットと指輪を一つずつ。

 ステラに関しては、こういう派手な場所で他の女性陣に見劣りしない様に、との事で。

 イカルド達から提供してもらった“氷竜の涙”と呼ばれる宝石を使い、なかなかに派手なネックレスも作っておいたが。

 前に宝石店で見せてもらった、目が飛び出る程の値段だったソレ。

 まず間違いなくあっちより価値が付きそうな程に豪快に使ってしまったが……まぁ、お姫様だしね。別に良いかって事で。

 ついでに言うと、付与された魔法を考えたらパレードの主役となっているお二人は普通に兵器。

 どれも制限は掛かっているモノの、ダイラの防壁と回復や解毒が可能な上。

 今では微笑みながら手を振っているお姫様に関しては、劣化版プラズマレイが発射可能なのだ。

 前回の一発で破損する指輪に関しても、研究所の屋根をぶち抜いたらしく、なかなかの騒ぎになったらしいが。

 まぁ、今度は上手く使ってくれって事で。


「ドラゴンの頭取られたぁ……」


「他は貰ったんだから、頭くらい諦めようよトトン……ね? 本来全部向こうに持っていかれちゃっても、全然おかしくなかったんだし」


 未だ若干ふてくされているトトンと、ソレを慰めているダイラ。

 今でこそコレだけ平和になったが。

 イズに相談した内容を皆に打ち明けた後は酷かったのだ。

 トトンに関しては。


「もう一回遺跡に行く! 俺等もログインすれば、クウリだけ悩む必要無いじゃん!」


 と言い出し、もうあの遺跡に行っても意味が無いと説得するまでに、物凄く時間が掛かった程。

 実際あの後遺跡にもう一度足を運んだが、俺と同様の現象が起こる事は無かった。

 あれに関しちゃ、やはり扉を開ける為の初回認証みたいなものだったらしく。

 どうにか俺と同じ状態になろうとするトトンは、最終的に魔女から取り押さえられるまで暴れ続け。

 ダイラからは。


「確かに色々言いたい事はあるよ? でも“もしかしたら”を想像した所でキリがない、だからそっちは良いよ。俺等全員あの場で慌てても意味無いし、こうして落ち着いて説明してくれてるからちゃんと聞ける事も理解してる。でも本当にその時が来たら……一番傷付くのはクウリなんだよ? 間違いなく後悔を一人で背負う事になるよ? なんでまだそんな事が分からないの!? 何で一緒に背負ってくれって言わないの!? いい加減その癖直しなよバカクウリ!」


 涙目になりながら、本気で怒られてしまった。

 いやはや、ホント俺、隠し事とか向いてないね……。

 結局すぐバレるし、結果として全員を怒らせる状況を作ってしまうんだから。


「なっさけねぇな、ホント」


「まったくね。配下の管理くらいちゃんとして頂戴、魔王なんだから」


「配下じゃねぇっす」


「そうだったわね」


 本日ばかりはいつもの灰色ローブを脱ぎ去り、随分と着飾った魔女が隣に並んで来たかと思えば、随分と呆れたため息を溢されてしまった。

 ま、今回の一件でエレーヌにも迷惑かけたしね。

 しかも不安を煽る様な回答しか出来ず、確たる答えは提示できないという。

 なぁんとも、なっさけない結果に終わってしまったが。


「まぁ、北に行けば分かる事よ。仲間から不満を買ったくらいで、いつまでもふてくされていないの。常に最善を選べる人間なんて居ないのだから。何か言って来る奴が居るのなら、その人はきっと全てを完璧にこなしているのね。現状さぞ幸せな事でしょう」


「煽るねぇ……ていうかそう言う所、意外とポジティブだよな」


「細かい事を気にし過ぎても、足が止まるだけだもの。だったら歩いて、一歩でも多く進んだ方が有意義だわ。それに、止まっていてもお腹は空くからね」


「違いねぇ。生きてて足が付いてるなら、とにかく進めって事か」


 ハハッと笑い声を溢しつつ、改めてこの街を見渡しみてる。

 随分と広いし、だいぶ栄えている御様子ではある。

 今回はコッチに来てから冒険者としての仕事もろくに受けていないし、街中も探検していないのが非常に惜しい。

 でも立ち止まる事が許されないと分かった以上、早い所北に向かわなければ。

 ゆっくりしたいのなら、それこそちゃんと安心出来る情報を掴んでからでも、遅くはないというものだろう。

 今後も俺達が、俺達のまま“コッチ側”で生きていくというのなら。


「さて、クウリ。ここからどうする? 式が終わり、落ち着いてから出発。なんて言っていたら……あの姫様の事だ、どうなるか分からないぞ?」


 隣で話を聞いていたイズがククッと笑いながらそんな言葉を放てば、ムスーっとドラゴンの首を眺めていたトトンも顔を此方に向け。


「王子にも色々渡しちゃったけど……もしかして、お礼言われる場とかに呼ばれたりすんのかな?」


「そうなって来ると、相手は王族だし。それはそれは御大層な席にご招待されそうだねぇ……予定合わせるのにも、結構な時間が掛かりそう」


 ヤレヤレと首を振るダイラも、少々疲れたため息を溢していたりする訳だが。

 そうだよなぁ……今回結婚式を挙げるのだって、街に着いてからコレだけ時間掛かった訳だし。

 そうなってくると、やはり。


「よし、逃げるか」


 とはいえ、今回ばかりは前の時みたいな結果にならない様にしないと。


 ※※※


「お待ちしていました、皆様」


「……あれぇ? 普通に見つかったぞぉ?」


 借りた服やらドレスやらの返却と、その他部屋に残して来た私物なんかを回収しようと屋敷に戻ってみれば。

 そこには、姫様とずっと一緒に居たメイドさんが待っておられた。

 え、嘘。

 ダンジョンの時から一緒に付いて来てた人だし、絶対式の裏方でバタバタしていると予想していたのだが。

 というか、そう言う意味で他のメイドさん達は出払っており、お屋敷の中は随分と静か。

 だというのに、何故この人だけ残っているのか。

 ここはやはりこの場は適当に誤魔化して、ササッと置手紙だけ残して去る。

 この戦法しかないか、なんて思っていたのだが。


「皆様に此方を渡す様、仰せつかっております」


 それだけ言って、何やら書状と……何だコレ? バッジ? 胸に付ける勲章みたいな物を差し出された。

 全員分ある様で、とりあえず受け取ってはみたモノの。

 これ、何に使うんだろう?

 とかやっていると、ソレに対してピコンとアイコンが出現し。

 ソイツを注視してフレーバーテキスト……じゃないな。

 詳細を確認してみると。

 この国の名前が入った、王家から栄光を称えられた人間のみに送られる勲章だという事が発覚。

 しかも最上位とか書いてある上に、コレを持っているだけでこの国そのものが後ろ盾になる。みたいな事が書かれているんですが?

 お、おやおやおやぁ?

 こんなの、ポイッと貰っちゃって良いものなのだろうか?


「どうせ正式な場を用意しても逃げるから、顔を見せたら渡しておいてくれと」


「お、おう……バレてらっしゃる」


「ちなみに、今の御召し物を返却にくるだろうから、そちらは差し上げた上でお土産を渡しておけとも言われております」


「全部読まれていらっしゃる」


 ポカンと呆けていると、その間にズドンズドンと音を立てながら重そうなバッグが俺達の前に出現。

 今普通に腰に付けたポーチから出て来たけど、どうやって入ってたの。

 いやあれか、マジックバッグって奴か。

 俺等ソレ持ってないんだよね、インベントリで満足しちゃって。

 などと関係ない事を考えていれば。


「旅に必要であろう物は全て揃えておきました、これ等をどうぞご活用下さいませ」


「い、いやぁ……流石に色々と申し訳ないというか。というか、俺等逃げようとしてるんですけど……」


「はい、伺っております。なので、感謝の印にと。姫様が用意した物になります」


 あ、はい。

 なんかごめんなさい、いつも去り際こんなので。

 色々終わったら、この国に戻って来てからちゃんと謝ろうと思います。


「それから、その勲章は存分に活用してくれて問題ないと、陛下から許可を頂いているそうですので。何かまた困りごとがあれば、こちらの国を頼って下さいませ」


「あれ? 今陛下って言った? 姫様とか王子とかじゃなくて、陛下って言ったよね? つまりこの国で一番偉い人?」


「左様でございます。直接お会いした訳では無くとも、姫様のお話と、そして皆様の実績を見て。是非我が国と友好関係を築いてくれと仰っていたそうですよ? ちなみに……普段はかなり大らかな方らしく、面倒事があったらコッチに全部ぶん投げて良いぞ。だそうです」


 これはまた、随分な優遇処置です事。

 対面した事も無い相手に、そこまでしちゃうかね?

 いやまぁ……メカドラゴンの討伐ってのが、かなり効いているのかもしれないけど。

 にしても、すげぇな。

 今回の遺跡調査の報酬というか、姫様にお願いした内容として。

 俺等の後ろ盾になってくれ、とは言ったけども。

 まさか国そのものが付いてくれるとは思わなかった。

 うん、ヤバいな。

 普通だったらこの状況で逃げるとか、確実に首が飛ぶ案件でしょ。


「なので……またこの地へ戻って来た時には、是非顔を出してくれと。陛下だけではなく、コレは姫様の願いでもあります。友人の一人として、いつまでも皆様を待っていると」


 そう言って、メイドさんは随分と優しい微笑みを此方に向けて来た。

 本当に、なんかもうバタバタ出て行っちゃうのが申し訳なくなって来るけども。

 ステラに関しては、これすら予想して俺等を見送ってくれるって言ってる訳だもんな。

 王族の人間ってのは、やっぱり凄いね。


「毎度こんなので申し訳ない、けども……ごめん、ちょっと急ぎの用が出来ちゃったので。姫様にも、よろしく伝えておいてくれると助かるかな」


「えぇ、承りました。それでは皆様、行ってらっしゃいませ。どうぞ、良い旅を」


 本当にすんなり、とてもあっさりとした別れ。

 一人のメイドさんから見送られ、お祭り騒ぎの街中抜けて、街の入場門までやって来た。

 本日ばかりは入場者が多いが、出ていく人は少ないらしく。

 呆気ないと思ってしまう程に、街の外までやって来た俺達。

 何か、ちょっと不思議な感覚だ。


「それこそ結果がどう転ぼうと、北の門へ辿り着いたからってすぐに“帰る”という選択は出来なくなってしまったな? 大きな借りだぞ、コレは」


 ククッと笑い声を上げるイズが歩き出し、その後ろを追う様にしてトトンも走りだす。


「だぁね。ま、俺は戻るつもりとか無いけど。色々気を使って貰ったお礼しないとねー、結局服とかいっぱい貰っちった」


 相も変わらず俺達の旅は手ぶらの為、元気なちびっ子はその辺を走り回ったりクルクルしたり。

 本日も元気なのは良いが、コケるなよ?


「戻る、戻らない前に“門”を徹底的に調べないとねぇ。何にせよ、すぐ答えは出ないよ。でも時間は無い、かも? と言う訳で出発~。あ、夜になったクウリの羽使ってね? 俺皆程体力無いからねー?」


 ダイラに関しても旅自体に完全に慣れた様子で、随分と気軽な態度を見せている程。

 どいつもこいつも変わらない様な、変わった様な。

 そんでもって、俺等が俺等でいる為には。

 やっぱり北に向かってこの世界の深い所まで調べなきゃいけない訳で。


「時間があるんだか無いんだか、それくらいはハッキリして欲しい所だなホント」


「何にせよ、まずは一歩ずつ。でしょ? 貴女達が世界にとって何かしらの影響を及ぼさないといけない、なんて大袈裟な仕事があるのなら……名実ともに、魔王でも目指してみたら?」


 ため息を溢しながらボヤいてみれば、エレーヌが小さく微笑みながらそんな事を言って来た。

 あぁぁ……あったねぇ、そんな条件も。

 謎だらけで、もはや考えるのも面倒くさいけど。


「ま、いざとなればソレも悪くないかもな」


 ククッと口元を吊り上げつつ、冗談のつもりで呟いだのだが。


「クウリ、それをフラグと言うんじゃないのか?」


「だとすると、勇者! みたいな主人公タイプが、俺等を討伐しにくるのかなぁ? どっかで空き地見つけて、魔王城でも作る? “おもちゃ箱”あれば作れない事はないよー?」


「ク ウ リ! だから安易なフラグ建ては危ないってば! ただでさえソレっぽい戦力になり掛けてるんだから!」


「亡霊の配下なら軍勢も作れるしね。それに今居る戦力だって相当なものよ? 悪くないかもしれないわね」


 と言う事で、本日も総突っ込みを頂きながらテクテクと進んでいくのであった。

 この瞬間だけは、マジで異世界放浪記って感じするよなぁ……。


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