表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/173

第151話 Please Login


 銀色の巨人が、その身にも匹敵する程大きな槌を振り下ろした。

 美しいとも思えるソレは、我々を絶望させた竜の頭を砕き、この遺跡の床に相手を勢いよく叩きつけた。

 その衝撃と風圧は凄まじく、魔道具の盾を構えて離れていた我々の元まで襲って来る程。

 部屋に入った瞬間、正直死を覚悟したというのに。

 普通の人間では勝てる筈もない、巨大な竜。

 ソイツに向かって、今回行動を共にした少女達が突っ込んで行った時は正気を疑った。

 確かにこの子達は強い、それはこれまででよく分かった。

 だが目の前に居るのは竜なのだ、人知を超えた存在。

 しかし彼女達のリーダーは言った、自分達なら竜も殺せると。

 あの言葉は……嘘では無かった。

 アレは、虚言でも妄想の類でもなく、単純な事実だった様だ。

 一言で表すのなら、まるで神話の1ページを目撃した気分。

 鋼色の竜を、銀色の巨人が討伐する光景。

 これはもはや、人類が踏み込んで良い戦場では無かった。


「素晴らしい……」


 この光景に、歓喜しない男がいるだろうか?

 いや、絶対にそんな奴はいないだろう。

 守り神の様な出で立ち、圧倒的な力強さ。

 そして何より巨人のあの形。

 そこらの魔導人形などとは訳が違う、あんな美しい魔道具は初めて見た。

 全ての攻撃を弾き返し、どんな敵でも打ち砕きそうな最初の大きな姿も良い。

 最後にはそれら全てを自ら脱ぎ捨て、一つの武器へと変形した際には感動のあまり涙を溢しそうになってしまった。

 いったい我々は何を見せられているのだ、という至極当然の感想と共に。

 奥底から震えあがる程の情熱と、竜によって冷やされた空気すら溶かしそうな程の熱さを……この身体が、心が放っていた。

 まるで初めて大きな魔道具に触れた時の感動と、輝かしい鎧に身を包む騎士達を見た時の感情に似ている。

 どちらも本当に幼い頃の記憶ではあるものの、あの感覚だけはずっと覚えているのだ。

 全身が震え上がり、体中に鳥肌が立ち。

 ただただ心の奥底から、一つの感想だけを思い浮かべた。

 それは……“格好良い”、だ。

 こんな歳になって、もはや全ての事例に対し冷静に判断出来るつもりになっていた。

 危険な存在を目の前にしても、どうするべきか、何をすれば生き残れるか。

 そう思考する程には、落ち着きというモノを手に入れたと思っていたのに。

 今の私にも、こんな感情が残されていたとは。

 好奇心と、憧れと、尊敬。

 私が作り出して来た魔道具など、この巨人に比べればチンケな物でしかない。

 あの竜に比べれば、現状人類が用いている道具など鼻で笑ってしまう程度だ。

 そんな二つの巨大魔道具がぶつかり合い……残ったのは、銀色の巨大騎士。

 まるで役目を終えたとばかりに、槌を手にしたまま動かなくなってしまったが。

 触れてみたい、調べてみたい。

 あの小さな少女の様に、巨人の肩に乗ってみたい。

 そして何より……。


「私も……いや、俺も。あんな魔道具を、作り出したい!」


 最近歳を感じる様になったこの身体に。

 本日見たこの光景は他の何よりも、これまでのどんな代物よりも。

 熱く滾り、迸る程の燃料と化したのであった。


「おーい、イカルドー? 皆無事かー?」


 巨人を見上げたまま拳を握り締めていれば、彼女達のリーダーが此方に声を掛けて来た。

 この子もまた、珍しい魔道具を使っている。

 大きな翼や、頭から生えた角。

 アレも確かに興味深いし、後で詳しく話を聞きたいと思っていたのだが。


「今は、あの巨人を見ていたい……」


「……は? え、何。泣いてんの? どうして急に男泣き?」


「感動、しているのだ。なんて素晴らしい魔道具……あの形、あの大きさ。そして力強く、あれ程動いても自壊する事も無い。なんと、なんと神々しいのか……どうしてここまで格好良いのか。今の俺は、アレから目が離せそうにない」


「……あ、そう」


 やはりこういう感情は、女性陣には理解出来ない類の様だ。

 その証拠に、彼女達はいたって普通にしているが。

 此方の職員達は皆、共に巨人を見上げて涙を溢しているのだから。


「あ~えぇーと……少年の心があるようで、何より? なんでも良いけどさ……えぇと、竜の残骸、貰っても良い? あのロボット直すのに、結構素材が必要で……出来れば、現地調達したいなぁって」


「直す、直すと言ったか!? なら我々の研究所を提供する! 是非修理する所を見せてくれ! 協力は惜しまない!」


「う、うん。そりゃどうも……けどさ、そろそろこっち向かない? 違う方見上げてる奴と話してんの、結構変な感じなんだけど」


 すまない、少女よ。

 俺達は今、目が離せないんだ。

 とか何とか考えていれば、巨人の肩に乗っていた少女が。


「魔力切れで動かないし、もう仕舞うよー? クウリも魔力切れ平気~?」


「うーぃ、お疲れトトン。ポーション飲んだから、一応平気だ。竜も“おもちゃ箱”に仕舞っちゃってくれーい。全部とはいかないだろうけど、修理に使っても良いってさー」


「やったね! 特殊金属ボロ儲けじゃん!」


 彼女達のそんな会話が終わると同時に、巨人が足元の魔法陣に呑み込まれていくではないか。


「待て! 待ってくれ! もう少し、もう少しだけその巨人を――」


「あぁもう、帰ってから広い所でゆっくり見りゃ良いだろうが。ホレホレ先に進むぞ? いつまでも再発した中二病には付き合いません」


 よく分からない事を言われたが、此方がいくら嘆いても巨人は止まってくれず。

 そのまま地面に呑み込まれてしまうのであった。

 あぁ……もう少しだけ、見ていたかった。

 せめて、あと三日……いや、少なくとも一晩くらい。


 ※※※


 トトンの奥義、“おもちゃ箱”を片づけてからというもの。

 イカルドを含めた研究者達が、非常に鬱陶しい。

 アレはどんな仕組みで動いているのだとか、魔導回路はどうなっているんだとか。

 巨体を動かす膨大な魔力はどこから用意しているんだなどなど。

 これまで物凄く静かだった皆様とは思えないくらいに、めっちゃ絡んで来る。

 俺が言ってはいけない台詞なのかもしれないが……好きだよねぇ、男って奴は。

 あぁいうデカイ物やら、ロマンのある物体ってヤツが。

 分からなくもない、分からなくもないが……俺はどちらかと言うと、人間サイズで巨大生物と戦っているヒーロー系とかの方が好きだったりする。

 あとは一対多で大立ち回りとか、超恰好良い。

 なので俺のキャラは、そっちの方向性に突き進んだ訳だけども。


「あーもう、後だ後。帰ってからで良いじゃん、巨大メカの話は。今は休憩中なんだから、ワーカーホリックも程々にしろよ」


「す、すまんな……興奮が冷めなくて、つい……」


 呆れた表情を浮かべつつも、全員に飲み物を渡したら多少は大人しくなってくれた。

 現在、再びリキャストタイム待ち。

 竜と巨人が暴れた後なので、床はすんごい事になってしまったが。

 まぁ、休めない事は無いだろう。

 というかダイラにも奥義を使わせてしまったので、普通に休憩しないと動けない。

 “テオドシウスの城壁”も、イズの“一閃”みたいなバグ技使えればなぁ……とか思ったりもしたが。

 こればかりはどうしようもない。

 ダイラの方の奥義は時間制限有りな上に、魔力一括払いだからな。

 一気にゴソッと持って行かれると、体調不良どころの話ではないみたいだ。


「うぅ……ごめんねぇ。使う度に、毎度こんな状態で……」


「大丈夫だよー。その分汎用性高い上に、効果だってすんごいし。ダイラは休んでてー」


 非常に珍しい事に、脱力してしまった性女がロリに膝枕されている。

 普段なら逆の光景はよく見るが、馬車の中とかで。

 とはいえ俺も、調子に乗って魔力使い過ぎればあぁなるのだから注意しなくては。

 “おもちゃ箱”に関しては流石にMPも全部持っていかれるかと思ったのだが、案外あっさり終わったのでセーフ。

 しかし随分と消費したので結構なダルさはあるものの、その程度で済んでいる。

 イズとトトンに関しては、“無限の狂乱”発動中にスキルを停止すればMP消費無しなので結構元気だし。

 奥義の反動は来るみたいだけど。

 まぁ全員が体調不良を起こすよりかは、後衛組だけ後遺症があるって状況は幾分かマシか。

 ていうか、今更だけども。

 この頭おかしい効果を発揮する“無限の狂乱”よりも、更に魔力を喰う“サテライト・レイ”ってなんだよ。

 あっち使った時の方が、俺フラフラだったぞ。


「魔王、ちょっとだけ良いかしら」


「おん? どした」


 何やら一足先に奥の扉を調べていたエレーヌが戻って来たかと思えば、休憩中の皆を残して俺だけが呼び出された。

 ちょいちょいっと手招きされたので、特に何も考えず彼女に付いて行けば。

 魔女はポンッと扉に掌を突き。


「コレよ。前に貴女に話した、私が見たモノ。内容は違うみたいだけど、形は多分一緒」


「……うん?」


 自信満々にそんな事を言われてしまったが、コレと言って特に変化が無い様に見えるのだが。

 前に話していた……エレーヌが見たモノ? なんだっけ?


「……ん? 見えていないの?」


「え? 何が?」


 はて? と首を傾げてみせれば、魔女の方も首を傾げてしまった。

 うん? うん、何だ?

 話し方からして、この扉がって話ではないと思うのだが。


「私の目の前、半透明な板。見えない?」


「……え、今ソレ表示されてんのか!?」


 ガバッと彼女の隣から正面に顔を突き出してみたが、此方としてはやはり何も見えない。

 エレーヌから聞いた話に出て来たソレは、多分俺の予想ではシステムメニュー。

 本当に此方の予想が正しくて、俺等のプレイしていたネトゲと同じ仕様なら……これも一応納得ではある。

 あのゲームでは、基本的に相手のシステムメニューは目視出来ない様になっていたのだから。

 空中でちょいちょいっと指を動かしているだけに見えるのだ。


「もしも俺が知っているモノと同じなら、それは他の奴には見えない! なんて書いてある!?」


「……ごめんなさい、私には読めないわ」


「ソレ、そのまま地面に書いてくれ!」


 慌ててそう答えると、エレーヌは扉に触れたままチラチラと視線を動かしつつ。

 交互に見ながらも、ゆっくりと剣の先でガリガリと地面を引っ掻いて行く。

 そして、地面に描かれたソレは。


「マジかよ……」


「何か分かったの?」


 英語でログインIDとパスワード、それの入力を求められている……らしい。

 コレって……ユートピアオンラインで使っていた、俺のアカウント情報とか入れたら。

 何か起こったりするのだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ