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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
6章

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第150話 氷竜VSこどもの玩具


 このパーティの方向性はクウリが決めている。

 そりゃリーダーだし、当たり前の話なんだけど。

 とはいえ、決めているのは“方向性”だけなのだ。

 個人のスキルツリーや、習得スキルなんかに関しては基本的に好きなモノを自分で選べってスタンス。

 相談すれば一緒に考えてくれるし、今のバランスだとコレがお勧めとかは教えてくれる。

 そして全体の組み合わせとか、使い所なんかも提案と相談の繰り返し。

 実際試してみて、あんまり仲間達と嚙み合わないスキルだった場合でも。


「わざわざリセットしなくても良いぞ? お前が使いたいんだったら、使い所を整えてやりゃ良いだけだ」


 なんて言って、基本的に駄目とは言わない。

 他のクランや、パーティなんかを見ていると凄く思うのだが。

 この手の発言をするプレイヤーっていうのは、基本的にエンジョイ勢が多い。

 単純に楽しむって意味合いのエンジョイじゃなくて、結構浅めに、尚且つガッツリプレイする訳ではない人達。

 それ以外の、所謂“強いプレイヤー”の集まりでは。

 こんなのゴミスキルだ、その職なら絶対にコレだけは取っておかないと話にならない。

 そう言う言葉を、結構聞く事が多いのだ。

 そりゃ集団戦を想定するなら、絶対必要になって来るスキルってのは数多くあるだろう。

 だからこそ、ウチのパーティは何でそういう“縛り”がないのかって、クウリに聞いてみた事もあったのだが。


「基本のスキルなんぞ大体ツリーの関係上揃って来るからな。ソレを更に強化するのか、他で尖らせるのかは個人の自由だろ。“たった一人”のプレイヤーになれるゲームだぜ? わざわざ汎用型になる必要なんかないだろ、お前のやりたい事やった方が絶対楽しいと思わないか?」


 だ、そうだ。

 そんな訳でパーティのバランスを相談しながらも、かなり自由にスキルツリーを弄った俺達。

 イズはとにかく剣術って感じで、魔法に関しては“ゲーム”として汎用性を高める補助的な意味合いが強い。

 その為、イズのスキルツリーが最終的に行き付いた先が“一閃”の奥義。

 他のプレイヤーがステ振りを真似して、どうにかあの奥義に至ったプレイヤーも居たが……使いこなせているのは、これまでにイズしか見た事が無い程だ。

 これはダイラも同じ。

 とにかく補助を、とにかく防御を、皆がダメージを受けてもすぐ治せる万能型にという。

 ある意味欲張りなステ振りをした結果。

 ダイラは俺達皆を絶対に“落とさせない”バッファーに辿り着いた。

 クウリに至っては、もはや言うまでもない。

 趣味全開で辿り着いた先にあったのは“デウス・マキナ”。

 そして俺達と共に戦う為に、合わせてくれた結果が“無限の狂乱”。

 最終的に上手い事噛み合ったというか、むしろ結果に合わせて全員が戦い方を変えて行ったという形。

 こんなに自由で、我儘なキャラを思う存分使えるってだけでも楽しいのに。

 最終的には、こんな“ネタ奥義”の習得さえ許してくれた程だ。

 どんな奥義を選ぶかなんて、それこそキャラの最終方向性を決める程重要だというのに。

 でも、欲しいなら絶対このスキルを取れって、そう言ってくれたから。

 使い所の方が少ない、ふざけて楽しむ為だけに使う事の方が多い奥義だけど。

 俺は、コレがやりたくて“鍛冶師”のサブ職業を選んだのだから。


「奥義……“おもちゃ箱”!」


 掲げた掌からは巨大な白い魔法陣が出現し、ソレが周囲に広がっていくと同時に全てを飲み込みながら地面に張り付いた。

 クウリの作った“無限の狂乱”の魔法陣と交じり合い、明るい紫色の光に変わった瞬間、ニィッと口元が吊り上がったのが分かる。

 さぁて、準備完了だ。

 これでどんな“玩具”を出そうと、魔力消費を気にしなくて良いもんね。


「トトン」


 背後からポツリと、小さな声が聞えて来た。

 そちらに振り返って見れば、クウリがニッと牙を見せながら笑い。


「“好きにやれ”。オモチャの損害なんぞ気にするな、壊したらまた一緒に作ってやるよ」


「了~解っ!」


 この世界に来てからは、オモチャを作る材料に限りがあるから。

 出来るだけ被害は出さない様に~なんて、考えていたのがバレたらしい。

 好きにやれって、そう言ってくれるのなら。

 俺の一番のお気に入りを、見せてやろうじゃないの!


「でっかいヤツにはでっかいオモチャ! 来いっ! “メタルカイザーXX”!」


「相変わらず名前がダセェ!」


 クウリからは突っ込みを頂いてしまったが、俺の足元からは巨大なアイアンゴーレムが出現する。

 無駄にゴツい銀色の身体に、どう見ても重量過多の全身装備。

 そんなのが魔法陣から現れ、俺を肩に乗せたまま立ちあがった。

 さっきまで見上げる程デカイ竜が、今では目の前に居る。

 というか、相手は四足な分こっちの方が背も高くなった。


「これで身長は俺の勝ちだもんね、全長だと負けるけど」


 俺の奥義“おもちゃ箱”は、攻撃スキルでも無ければ補助スキルでもない。

 出来る事はただ一つ。

 この奥義取得者のみ操作可能なクリエイトメニューを使用し、自由にモノを作る事。

 武具の類を作る時と違って、本当に制限など無いって程に細かい所まで作り込む事が出来る“創作系プレイヤー”にとってはたまらないスキルなのだ。

 そして実際にオモチャを作り上げ、コレを自分で操作するというのがこの奥義のミソ。

 しかしながら当然デメリットも数多くあり、デカければデカい程動かすにも魔力消費が多くなる。

 これだけなら“無限の狂乱”の影響で、余裕でクリア出来るのだが。


「メガトンパーンチ!」


 適当な技名を叫びながらゴーレムに指示を出せば、無駄にゴツイそれは拳を振り上げ。

 ギャーギャーと威嚇していたドラゴンの頭をぶん殴った。

 ズドォォン! と、凄い衝撃と轟音が室内に響き渡る。

 相手は吹っ飛んだし、これまで皆のスキルでも傷が付く程度だった筈の装甲が、顔面部分だけボロボロになって落っこちた。

 いよしっ! ちゃんと効いてる! だけなら、良かったのだが。


「追えー! 逃がすなー!」


 ズゥンズゥンと進んでいくゴーレムだが、とにかくおっそい。

 こんだけの重量があって、ちゃんとした機械兵器という訳ではないので仕方ないのだが。

 同じスキルを持っているプレイヤーが、デカい戦艦とか作っただけで満足しちゃう理由がコレ。

 とにかく、戦闘向きではないのだ。

 などとやっていれば当然。


「トトン! 尻尾が来るぞ!」


「どわぁぁ!?」


 メカドラゴンの方が動きも速く、見事に尻尾攻撃を貰ってしまった。

 その際肩の装甲が剥がれ、ズゥゥンと重い音を立てて床に落っこちてしまったではないか。

 このスキルの悪い所、二つ目。

 スキルで物は作れるし操作出来るけど、魔法だけではすぐに直す事が出来ない。

 つまり、ぶっ壊れたらそのまんま。

 安地に帰ってから、ゆっくり自分で修理しないといけないのだ。

 更には、材料は当然自らのインベントリから消費する。

 要は……滅茶苦茶素材とお金と時間の掛かるオモチャを作り、ただ動かすという奥義な訳だ。

 この為、自分の作品を“おもちゃ箱”専用のインベントリにしまったままにするプレイヤーや、クランの飾り物として展示するだけの人の方が多い。

 でもせっかくなら、動かしたいじゃないの! と言う事で。


「諦めるな! 動けー! “機動兵器ZZZ”!」


「さっきと名前変わってんぞ!?」


 逐一クウリから突っ込みを貰ってしまうので、結構気の抜けた雰囲気になってはいるが。

 こっちとしては真剣そのもの。

 この鈍足ロボットを使って、クウリのMPが切れる前にドラゴンを討伐しないといけないんだから。


「パイルバンカー、発射準備! 全弾撃てぇぇぇ!」


「飛んでったらパイルバンカーじゃねぇからな!?」


 背中に付いたミサイルポッドみたいな代物が起き上がり、大砲の様な音を立てながらドデカい杭を発射して行く。

 それらはドラゴンに突き刺さり、確かなダメージを与えているのが分かる。


「弾切れのランチャーはパージ! 続いてぇ……って、ヤバァ!?」


 傷付いたドラゴンが此方に向かって口を開け、背中のファンが回り始めているではないか。

 間違いなく、ブレスが来る。

 こっちのゴーレムなら、多分一撃でぶっ壊れる事は無い。

 半壊はするかもしれないけど。

 だが例え“オモチャ”が無事でも、肩に乗っかっている俺が無事では済まないだろう。

 その上あんなの喰らって凍り付いたら、オモチャが物理的に動かなくなるかも。

 どうしようどうしようと、巨人の肩の上で慌てていれば。


「トトン! そのまま進め! 頼むダイラ!」


「奥義、“テオドシウスの城壁”!」


 光の城がフロア全体を包み込み、更に俺の前には二重三重とプロテクションが張られていく。

 うぉぉぉ! ダイラの絶対防御だぁぁ!


「イズ! エレーヌ! 背中のタービン!」


「覚醒、“フレイムボム”!」


「あの回ってるヤツ……よね? 撃ち出した杭、借りるわよ?」


 イズの魔法がファンの中へと叩き込まれ、破壊までは至らなくとも何やら異音を発し始める。

 更に魔女に関しては先程此方のゴーレムが発射した杭を引っこ抜いて、相手に向かって投げつけたではないか。

 抱える程のサイズだというのに……あの人、やっぱり滅茶苦茶だわ……。

 とは言え仲間達の協力のお陰で、前に見たブレスよりも随分と弱弱しい攻撃がダイラの防壁によって目の前で弾かれた。

 であれば、俺のやる事は一つ。


「装甲全パージ! そしてぇ……“変形、合体”!」


 ゴーレムの素体だけを残し、全身に付いていた分厚い装甲が剥がれたかと思えば。

 それらは一か所に集まって行き、ガションガションと凄い音を立てながら組み上がって行く。

 最終的には、巨大な大槌へと姿を変えた。

 ソイツを巨人が掴み取り、非常にゆっくりとした動きで天に向かって振り上げてから。


「その特殊金属、全部置いてけぇぇ! お前は新しい“オモチャ”の材料だぁぁ!」


 作り出したゴーレムに、必殺の攻撃指示を放つ。

 ちなみに、ゲーム内でもこんな事をやっていたら。

 俺に付いた二つ名は、“超合金ロリ”。

 なんだか一人だけネタキャラみたいな扱いで、ちょっとだけ不満だけど。

 そんな事を考えながらも、振り下ろされた大槌は相手の頭を叩き潰すのであった。


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