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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
6章

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第148話 進む度に、謎は深まる


「我々の作った資料だと、こういう回答になるのだが……どうだ?」


「惜しいな。意味は大体合っているが、これは少し古い言い回しだ。この場合の表現では――」


 休憩を終えた後、研究者達も謎解きに参加し始めた。

 現在は古文の為、イカルドとイズが話し合っている。

 やはり飯は人の距離を縮めるね、というのと。

 彼等にしても、先程のフロアより先は未開拓領域だった様で。

 皆が皆真剣に各部屋の設備や、謎解きに対して色々と調べているみたいだ。


「しっかし、雰囲気が随分SFチックになって来たな。最初の方は訳の分からん古代ギミックだったのに」


「さっきはメカドウマだったしねぇ~」


「メカドウマ……どんどん名前が短くなるね」


「確かに、他では見ないゴーレムが多いわね」


 今回のフロアに居た敵の残骸を蹴飛ばしてみれば、思いっきり見た目はメカ。

 しかしながら純粋な機械という訳ではなく、やはり魔法と魔力を用いた不思議人形ではあるらしく。

 中身に関しちゃ空洞だったり、逆に鉄の塊だったりする訳だ。

 ザ、アイアンゴーレム。という感じではあるのだが……なぁんかフォルムがファンタジーゴーレムらしくないというか。

 “向こう側”のSF知ってる奴が作った、形だけは金属のロボットにしました。みたいな雰囲気なのだ。

 先程のフロアにはカマドウマ、今度は巨大カブトムシが出て来た。

 デカいのが一体だけだったから、むしろ対処が簡単だったが。


「ねぇー! おっちゃん達ー! この残骸貰って良いー!?」


 トトンがデカい声をあげると、研究者の一人が慌てた様子で此方に走って来て。


「前回のフロアみたいに、数の多い個体なら……まぁ少しくらいは。皆様が討伐したのに、こんな事を言うのは申し訳ないんですけど。これも非常に貴重な研究材料な訳でして……すみません」


「だよねぇ。いやうん大体予想してたから、そんなに謝んなくて良いよ。俺等お客さんだもんねぇ~」


 その辺はトトンも理解しているのか、軽い笑みを浮かべて流していた。

 まぁ、この地自体が彼等の管理する土地なのだ。

 ある意味俺達はお手伝いに来ているだけ。

 調査するという名目だった訳だし、まとめて現物を持って帰られたら堪ったものでは無いだろう。

 なのでカブトムシロボットは諦め、他の量産型メカを少しだけお土産に貰う約束だけ取り付けた。

 珍しい金属とかなら、トトンの鍛冶師スキルでどうにかなるかもしれないし。

 などとやっていると、今回の扉も終わったのか。


「皆、扉が開いたぞ。進もう」


「「「りょー」」」


 イズの声に反応して、テクテクと再び歩き出したのだが。


「そろそろ、終わりが近いのかもしれん」


「と言うと?」


 隣を通り過ぎる際に、イカルドが険しい顔をしながら注意を促して来た。

 今回の謎解きで、何かしらの発見があったのだろうか?

 不思議に思いながらも、そう問いかけてみれば。


「段々と扉の謎に、この地に残る“氷竜”の伝説の内容が含まれて来ている。これまでの問題でもチラホラ見かけたのだが、今回のモノはより直接的な内容になっていた」


「それってさ……この先謎解きしていくと、その竜が復活したり?」


「可能性として、ゼロではない」


 おぉっと……それは、やっちゃって良いんでしょうか?

 とは言っても現状敵の雰囲気を見ると、急に生モノが出現するとは考え辛いのだが。

 しかしドラゴンと言われると、それは間違いなくボスクラス。

 下手すればレイド級って事だってあるのかもしれない。

 これはまた、ちときな臭くなって来たな。


「君達なら、竜を殺せるか?」


「殺すだけなら、多分な。とは言え、初見の相手だった場合約束は出来ない」


 そう答えてみると、相手は珍しくニッと口元を吊り上げてから。


「では、頑張ってくれたまえ」


「言ってくれるぜ、まったく」


 此方もまた、似た様な表情で返しておくのであった。

 だけども、竜かぁ……。

 ゲーム通りならそういうのも居たけど、レイドクラスで氷属性のドラゴンっていなかったよなぁ。

 だとすれば、何とかなるか?

 とはいえ、ここに出るゴーレムなんてゲームでは見た事無いし。

 はてさて、今度は何が出てくるのやら。


 ※※※


 終わりが近いのかも……なんて恰好の良い台詞を言ってくれたのは誰だったか。

 ねぇ全然終わらないんですけどぉ!

 日の光が見えないので、時間の感覚が物凄く狂っている気がするけど。

 それでも滞在時間は結構なモノで。

 イカルド達が時計で確認した所、ほぼノンストップで労働基準法に違反するくらいの時間は突き進んだらしい。

 昼前に遺跡に入ったから、つまりもう結構遅い時間のはず。

 と言う事で、本日はここまでと言う事になり。

 銀色の残骸に囲まれながらも、屋内でテントを張って野営? する事になった俺達。

 夕飯に関しては皆でワイワイしながら終わり、相手からお礼がしたいと言われた結果。

 なんと身体を洗浄する道具があると言いだした彼等。

 そして完成したのが簡易シャワー室みたいな物体。

 おぉ……技術の進化が凄い。

 それ以外にも色々と珍しい魔道具を見せてもらいつつ、交代でシャワーを浴びてからそれぞれ別のテントへ。

 とは言ってもやはり完全に気を許した訳ではないというのと、遺跡の中で今度はどんなトラップが発動するのかも分からない為。


「おぉー炙りイカゲゾ」


「ガスバーナーモドキ、便利だな。本当に貰ってしまって良かったんだろうか?」


 交代で見張りをする事になり、現状は俺とイズ。

 とは言っても本気で研究者達を警戒している訳でもなく、今の所遺跡の方も大人しい。

 何もしなければ、何も発動しない。という事なんだろうけど。

 まぁ暇なので、彼等から貰ったガスバーナーモドキでオツマミを焙っていた。

 こんな匂いさせたら、安眠妨害も良い所かもしれないが。

 とか何とかやりつつ、しばらく二人でまったりしていると。


「こんな所まで来てなんだが……そろそろ、ちゃんと話しておくか? 今後の事。ダイラはまだしも、トトンは完全に残る意思を示した訳だからな」


「あー……うん、まぁそうだな。俺等全体の行動方針も、ある程度まとめておきたい所ではあるなぁ」


 ポツリと呟いたイズに対し、此方も少しだけ声を抑えながら答えた。

 こう言った内容に関しては、この二人で話す事の方が多かったのは確か。

 そういうチームポジションが実際にある訳ではないが、サブリーダーは誰かと言われれば間違いなくイズだ。


「そっちとしては、実際の所どう考えてる訳よ? 戦闘自体を楽しんでるってのは、傍から見ても分かるけどさ」


「ハハッ、ある意味俺が一番“こちら側”に馴染んでいて、普通と言う意味では馴染んでいないと言った所だな。“向こう側”の人間としては、通常ならダイラの反応が一番正しいのだろう。戦闘を恐れ、避けるのが正しい思考回路だ」


「ま、そういう意味じゃ俺も大概なんだけどな」


 そもそもとして、コレだけ戦闘に適応出来ている時点で異常なのだ。

 これらは全て、“キャラクターの感覚”。

 つまりこれまでのゲーム内での経験を引き継いでおり、コレによって俺達は戦えて来た……なんて勝手に解釈している訳だが。

 実際の所は、どこまでがあっているのかなんて分からない。

 アバターを実体化させ、体験した過去の経験をそのままに、俺達の記憶だけをコンバートしたかの様な。

 むしろその類じゃないと説明が付かないのだ。

 ただの平凡な一般人であった俺達が、こんな血生臭い世界で生きていけている理由が。

 まるで脳みその役割を務める本体のプレイヤーと、ゲーム内で肉体の意味を持つアバターが、世界を跨ぐ事で対比が逆になってしまったかの様。

 いや、記憶そのものは“俺達”なのだからコレも少し不正解なのか。


「その辺りを考えると、そもそも“戻る”って表現になるのかどうか。って所も怪しくなって来るんだよな」


「そうだな、事実“向こう側”で俺達の身体がどうなっているのかも不明。そもそも俺達が“帰る”と表現している手法が取れない可能性だって、大いにある。他の懸念点としても、まだまだあるしな」


「俺達の能力が、本当に“俺達のモノ”なのかどうか。急に取り上げられたりしたら、即アウト」


「それだけではない。アバターそのものが魔女の様に歳を取らなかった場合、世界から異物と見なされる可能性もある。また別の可能性として、クウリの言っている“能力の剥奪”。この際に、アバターそのものが機能を停止する可能性だってゼロではない。システム的にはBANに近いが、俺達にとっては死を意味する」


 だよなぁ……やっぱイズもソコは警戒するよなぁ。

 あまりにもゲームシステムに近い事例が多過ぎる為、最悪の場合“追放《BAN》”があってもおかしくはないのだ。

 もしもコレが発生した場合、戻る戻らない云々ではなく、その場で終了。

 誰かしらに……というか俺達をこっち側に送り込んだ奴から、利用規約でも見せて貰わない限り安心など出来ないのだ。

 そして当然、こんな不安を抱きながらずっと生きていく事になるくらいなら。


「だからこそ俺は、“戻るべき”ではあると言葉にしておく。俺達はこの世界にとって、あまりにも異物過ぎる」


「ね、ホントそれ。こればっかりはイズに完全同意ですわ。生殺与奪の権利を誰かに握られたままじゃ、おちおちスローライフだって出来ねぇってもんだ」


 スローライフとか、多分俺等には絶対無理だけど。


「そう言う意味合いと、これまで“向こう側”の人間として生きて来たという実績もある。だからこそ人として、常識の範疇では戻る“べき”ではあるが……感情としては、どうだろうな。どちらにせよ、“門”を調べるのは必須事項にはなって来るが。コレを明確にしないと、選択云々の話ではない」


「だな。結果がどう転ぼうが、俺たち自身を調べる意味でも。転生だの何だの情報は、とにかく欲しい。その上で個人的にどうしたいかって言うと……正直、答えが出てないわ。俺」


「俺もだ。お互い苦労するな、社会的な立場というモノを認識する歳になると」


 それだけ言ってから、二人して笑ってしまった。

 やはり俺等としては“戻るべきではある”、という答え。

 が、こんな体験が出来る人生は多分他では絶対にない。

 心機一転人生のやり直し! という選択を喜んで出来る程、前の俺に未練が無いかと言われると……正直わからん。

 感情優先、他の事なんか知らんと投げ出してしまえれば楽なのだろうが。


「つっても、トトンの件もあるし。ダイラも戻りたく無さそうだしなぁ……俺としては、そっちの結果次第で土壇場で判断鈍るかも」


「まったく、お前は……なんて、俺も他人の事は言えないな。事実、仲間達との旅はこの上なく楽しい。これもまた、事実だ。それから……クウリ、お前も気を付けておけよ?」


 え? 何が?

 急に鋭い雰囲気になったイズに対し、完全間抜け面で返してしまった訳だが。

 相手は、ため息を一つ溢してから。


「お前のその仲間を異常なまで守ろうとする思考回路。多分、かなりアバターの影響を受けているぞ? これまでの経験上、元の俺達の様な民間人は……身を危険に晒してまで誰かを守ろうとする者は、正直ほとんど居ない。ましてやお前は、デウスマキナに自ら飲まれたんだぞ? あの時お前自身、本当に生き残るつもりで奥義を行使したのか?」


 その一言に、少しだけ背筋が冷たくなった気がした。

 確かに……リーダーだからって、普通ここまでやるだろうか?

 だとすると俺は最初の方から、下手すりゃトトン以上にアバターの影響を受けた思考をしていたって事か?

 そうなってくると……マジで“自分自身”がなんのか、分からなくなって来るな。


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