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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
6章

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第145話 ローグライク


 もっと慎重に……なんて思っていたのだが。


「なぁ、コレいくつめ?」


「二十から先は数えてないかなー。またパズルだから、解いちゃうよー」


「謎解きだけ、というのも……アレだな」


「飽きたー」


 非常に、ダレていた。

 アレだな。サバイバルホラーとかのゲームで、よく謎解き系があるけど。

 一切敵が出ず、キーアイテムもドアの前に準備されており。

 ストーリーの類も一切無しに、とりあえず淡々とゲームを進行させているみたいな感覚。

 そりゃ飽きますわ。

 とはいえ種類も多く、奥へ進むたびに難易度は上がっていく訳なんだが。

 文字が読めれば全部書いてあるし、古い文章でもイズが読める。

 度々出て来るパズルに関しては、ダイラがあっさりクリアするし。

 なんか時間掛かりそうな謎解き……というかミニゲームみたいなのが出て来た時は、魔女が扉を蹴っ飛ばしたら開いた。

 最後の方法に関しては、イカルドから流石に怒られたが。

 扉だの仕掛けも、一応非常に貴重な古代の物品らしいので。

 でももう面倒臭ーい。

 とか愚痴を溢しそうになるが、実際パズル系を解いてくれるダイラに申し訳ないから声に出す訳にもいかず。

 今回も開いた扉の向こうへ、全員で足を進めてみると。


「止まれ。ココから先は、適当に進むと我々にも被害が出る」


 厳つい顔のおっさんから、急にストップを掛けられてしまった。

 だからさ、言い方。

 そっちの立場も理解しているし、言いたい事も分かるんだけどさ。

 そういう事情なら、普通に注意を促してくれるだけで良いじゃん。

 思わず溜息を溢しつつ、次の室内を覗き込んでみると。

 今度のお部屋には、何と床がチェス盤。

 そして俺等よりデカい駒が、ズラリと並んでいるではないか。


「なにこれ、チェスで勝負でもしろって?」


「その通りだ。しかも毎度手が変わる上に、負ければすべての駒が襲って来る。無視して進もうとしても、同様だ」


 あ、そうですか。

 全体把握と、指揮って事になれば俺が担当するべきなんだろうが。

 生憎と少数精鋭の方が好きなんだよなぁ……。

 出来ない訳では無いが、アレって初心者でもない限り、どうやって形に嵌めるかが重要になって来る訳だし。

 なので別段得意という程でも無い上に、時間掛かる事は出来ればやりたくない。


「あれも魔道具? 動力は? 壊したら不味い訳?」


「魔道具である事は間違いない。が、普通の物とは違う。ここはある意味ダンジョンに近い状態でな、遺跡その物から魔力を得ている様だ。だからこそ、魔石の魔力切れを狙うのは愚策だ。壊せるものなら、駒のみは壊しても構わん。我々もココで毎度足止めを喰らうからな」


 だそうです。

 まぁ魔力で動くお人形って事なら、いくらでもやり様はあるだろう。

 しかもぶっ壊して良いというのなら、なおの事。


「ほい、“ドレイン”」


 デカいチェス盤を包み込む様にして、全体から魔力を吸収してみると。

 コレを違反行為と認識したのか、駒たちは自軍敵軍関係なしに動き始めた訳だが。

 動きが、滅茶苦茶鈍い。

 フィールドから吸収できる魔力より、コッチが吸い上げる魔力の方が多い様だ。

 ま、でしょうね。

 俺が吸い上げられない程次々魔力が流れ込んでいるのなら、エレーヌ辺りがもっと警戒しているだろうし。

 欠伸しながら前方を眺めているという事は、コイツ等自体には大した貯蔵量が無いってこった。


「トトン。正面の自軍に、盾で連続パーンチ」


「“スマッシュ”!」


 ちびっ子の放ったスキルによって、自軍の駒……全滅。

 見事に粉砕され、バラバラに吹っ飛んで行った。

 残ったのは敵陣に居るチェスの駒達。

 しまった、我が軍は絶望的ではないか! ってな。

 自軍崩壊させちゃったし。


「ココでナイトとナイトを同時に前進、必殺まとめ斬りー」


「……それは俺達の事で合ってるか?」


「普通のナイトなら、流石に必殺技は使えないものね……まぁ良いわ」


 と言う事で、魔力が足りないブリキの人形達がギシギシしながら近づいてくるのに対し。

 此方はウチのナイト二人が飛び込んで行き。


「“乱舞”」


「“血喰らい”、起きなさい」


 片方からは炎が上がり、もう片方からは赤い閃光が輝いた。

 はい、終了。

 俺ドレインしただけだけど、全部片付いた。


「はい、これぞクウリお得意の盤面崩し~ってねぇ。アハハ、全然まともに相手する気ないねぇー」


 隣に並んだダイラからは、呆れた声を貰ってしまったが。

 だって面倒臭いじゃん……なんでこんな遺跡の奥深くまで来て、わざわざ普通にチェスしないといけないの。

 もはやスライドさせる壁面パズルとかも、毟り取ってくっ付ければ良い気がして来た。


「これは一応……勝利判定になるのだろうか?」


「敵陣の前に自軍壊滅させちゃったしねー」


「開かなかったら、また蹴飛ばせば良いわよ」


 もはや、皆やる気なかった。

 ダルくなってたの俺だけじゃないし、仕方ないね。

 一抹の不安を覚えながらも、次の扉にエレーヌが蹴りを叩き込めば。

 よし、無事に開いたな。

 ちゃんと勝利判定になっていた様だ。


「……まぁ、今回は大目に見よう」


 イカルドのおっちゃんは、非常に渋い顔をしていたが。


「次からは素通り出来るんだから、感謝してくれても良いぜ?」


「調子に乗るな、小娘。それから、扉は壊さない様に」


 魔女キックは、やはり怒られてしまった。

 確かに奥に居るエネミーが溢れ出した場合、ソイツ等もココを素通りしちゃうからね。

 今度からは気を付ける様にしよう。


 ※※※


「次の扉を開いた先から、まだ処理が終わっていないエリアに到達する」


「え? あ、そうなの?」


 その後も順調に謎解きを進めていると、急に背後からそんな事を言われてしまった。

 おかしいな、“手前の方”は処理が終わっていたと言っていた筈なのだが。

 俺等、一回も敵らしい敵に出会ってないんですが。


「君達が正解ばかりを引いたからな……正直、驚いている」


「ハズレを引いた場合、ていうか謎解きを間違った場合は?」


「正面扉とは別の隠し扉が開き、そちらを進むしかなくなるんだ。そこには数多くの敵が存在する」


 あぁ、なるほど。

 全員が通るといちいち扉が閉まるなぁとは思っていたが、そのまま戻る事は出来ない仕組みなのか。

 この人達が生きているって事は、間違った方の先には帰り道も存在しているのだろうが……一回ミスっても、とりあえず先には進める。

 しかしながら、エネミーの出現と謎解き問題も変わると見た。

 つまりココは、ダンジョン云々って言うよりローグライクに近いのか。

 此方の選択、というか回答次第で進行難易度や結果が変わって来る。みたいな。

 コレに関して、俺等は特に困らず真っすぐ進んで来ましたよと。

 まぁ、ほとんど答え書いてあったしね。

 確かに文字が読めなければ、苦戦しそうな内容ではあるわな。


「言い方からして、この先を確認して“は”いる。って感じ?」


「あぁ、その通りだ。敵の処理が不可能だと感じた場合は、部屋の何処かにある隠し扉を探せ。近付けば赤い光が灯るから、壁伝いに行けば見つからない事は無いだろう。素通りしようとするか、此方が手を出さない限り攻撃はされない」


「相手の数と種類は?」


「ゴーレムだ。しかも、特殊な。虫の様な形をしているが、装甲に使われている金属が厄介でな。魔法攻撃の威力を著しく低下させる上に、何より数が多い」


 あらまぁ、俺にとって天敵みたいな相手です事。

 舐めて掛かるつもりは無いが、魔法攻撃に特化させたのってある意味俺だけだしな。

 イズも魔法は使うが、どちらかと言うと剣士寄りだし。

 数の多い殲滅戦って事なら……サイズにもよるが、俺とイズで“もう一つの方の奥義”の合わせ技なら何とかなる気がする。

 まぁ、確認してみないと何とも言えないけど。


「だ、そうだお前等。相手によっては、ちと本気だすかも」


「あいあーい。とはいえ、まずは物理で試すんでしょ? トトンにお任せ~」


「此方も了解した。いけるぞ、クウリ」


「俺の方はいつも通りだねぇ」


「こっちは前衛に合わせれば良いのよね? なるべく物理で。了解したわ」


 誰も彼も、普段通りの雰囲気で武器を構える。

 とはいえやはり、今までよりも警戒しているのは感じられた。

 ちょっと気を抜いている期間が多かったからね、そろそろ本格的に気を引き締めないと。


「うっし、んじゃ開けるか。不味いと思った時は後退指示を出す、その時はダイラの後ろに隠れる事。ただし……俺とイズ以外」


「だと思ったよ。こっち側では初めての組み合わせだが……いけるか?」


 ニッと口元を吊り上げるイズは、念の為本気装備の赤い鎧に変更し。

 それに応える様にして、此方もいつもの黒い鎧に姿を変えた。


「上等。つか、屋内だと大技がこれしか使えそうにないからな。悪いけど頼むわ、イズ。二つ名“焔の剣”、いざとなったらまた見せてくれよ」


「その名で呼ぶな、恥ずかしい。俺はお前と違って、大々的に名乗っていた訳ではないからな」


 ククッと二人揃って笑ってから、コツンと拳をぶつけてみる訳だが。

 はてさて、どんなのが出て来る事やら。

 そんでもって、イズはやっぱり正真正銘戦闘狂だな。

 久々にもう一つの奥義が使えるかもという状況に、兜の奥で不敵に笑っているのが分かる。

 トトンが俺の笑顔を魔王スマイルなんて言ってくれたが、多分今のイズの方が何倍も怖いって。


「さって、と! んじゃ、行くぞ! 突入しろ!」


 俺の号令と共に、正面扉を押し開いたトトンが真っ先に飛び込んでいくのであった。

 さぁ、見せて貰おうじゃないの。

 ココの遺跡には、どんなのが湧いているのかを。


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