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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
6章

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第141話 無理なモノは無理

 仲間内では色々とあった訳ですが。

 事態の変化というのは俺達を待ってくれる筈もなく。


「クウリ、この状況をどう見る?」


「どう見るって言われても、ねぇ……?」


 イズとそんな会話をしながら、皆で雪山をテクテク歩いていた。

 テクテク……歩ければ良かったのだが、ズボッ! ズボッ! と足が埋まる様な雪道。

 これでも一応、遺跡に向かっているのです。

 色々あって、整備されている街道を進んでいる訳では無いのだが。

 そして俺達の後ろからは、ゆったりとした速度で付いて来る……デカい箱。

 うん、そうとしか言えん。

 なんかキャタピラモドキの付いた、馬車より大きいくらいのサイズの、箱。

 その窓からは、何かおっかない顔したおじさん達が俺達の事を見下ろしている。

 この人達と出会ったのは、今朝の事。


「えぇと、まさかこんなに早くお越し頂けるとは思ってもいなかったのですが……クウリさん、コチラこの国で魔道具の研究や開発を任されている――」


「ステラ様、無駄な挨拶は不要です。我々も暇ではありませんので。私は“イカルド”だ。君達が今回話に出た冒険者達で良いんだな? では、調査の許可を出す前に実力を見せてもらう」


 というとても短い挨拶を済ませ、それはもう早速街を出た訳なのだが。

 なんでも実力を見る為に、メインの街道や馬車は使わず。

 徒歩で遺跡まで辿り着き、魔獣と遭遇した際は俺達のパーティだけで対処する事。

 だそうです。

 え、なんで? 遺跡の調査と戦闘力って何か関係あんの?

 とか何とか疑問に思ってしまったが、当然答えてなどくれない。

 ついでに言うと、本人は数名の研究者みたいな恰好をした人達を連れて来て、皆揃ってあの四角い物体に乗り込んでしまった。

 そして現在に至る、という。

 なぁんも説明とかしてくれないし、本人達は言葉通り一切手を出すつもりは無い様で。

 つまり俺達が怪我しようと、その場で死のうと。

 あのデカイ魔道具? から降りるつもりは無いのだろう。

 なんか頑丈そうだし、あっちは皆武器とか持っていない御様子だったし。

 どう見たって協力は求められそうにない。

 ま、戦闘に関しちゃどうでも良い事ではあるのだが。


「観光名所を自由に調べさせろって言ってる訳だし、嫌な顔されるだろうなぁとは思ったけど……」


「まさかこんな嫌がらせをして来るなんてね、いい度胸をしているわ」


 ダイラとエレーヌも、随分と面倒臭そうな顔をしながらボヤいている。

 まぁ、だよねぇ。

 むしろこんな事させて、俺等が音を上げるのを待ってるんじゃねぇの? とか思ってしまうくらいに、意味が分からない。

 ここでゴネれば、相手としては“じゃぁ今回の話は無しで”と言えば済む訳だしね。

 姫様から出て来た話だし、当然お相手の王子とやらだって話に多少は噛んでいるだろうし。

 その辺りの関係で、断わるに断れなかったって可能性もあるのだろう。

 だとしても、コレはなぁ……。

 デカい街道ならまだしも、旧道ですって感じの道のり。

 王都の近くと言う事もあり、メインの街道には魔獣避けやら除雪設備やら色々あるみたいだが。

 こっちは当然整備など行き届いている筈もなく、所々雪が積もり過ぎて酷い事になっている。

 そんな所を、徒歩。

 一部の魔道具が停止している様な場所では、普通に腰くらいまで埋まる程雪積もってるし。


「ぶわぁぁ……埋まるぅぅ……」


「トトーン……ファイトー……」


 俺達の中で一番小さいトトンに関しては、もはや全身雪塗れ。

 この状況でも怖い顔したまま見てるだけの大人ってのも、ある意味凄いよね。

 向こうはキャタピラ付きな上に、車内で優雅にしておられるってのに。

 などと舌打ちを溢しそうになっていると。


「何匹か来るわね。それなりの大きさのが、正面」


 皆色んな意味でグッタリしている中、ふとエレーヌがそんな声を上げた。

 ため息を一つ溢してから各々武器を取り出し、正面に構えてみれば……なんだ?

 まるで積もった雪を掻きわけているみたいに、土埃の様に雪をまき散らしている物体がいくつか。

 そしてソイツは、というかソイツ等は。

 雪の中を突き進む途中、呼吸しているみたいに上空へ向かって雪だか氷だかをまき散らしている様な……。


「なぁ、俺すっげぇ嫌な想像しちゃったんだけど」


「偶然だな、俺もだ」


 双剣を抜き放ったイズが、大きな大きなため息を溢してから隣に並んで来る。

 そして後ろに付いたダイラからは、うげっとばかりにゲンナリした声が上がり。

 正面に飛び出したトトンに関しては、もはや悲鳴を上げそうな勢いで顔を青くしていた。


「ねぇもしかして……あんなのが出るの? 嘘だよね? アレが出て来るステージ、マァジで嫌いなんだけど。防御中でもお構いなしにヒットエフェクト出るし……」


「でもゲームじゃないから、流石に攻撃不可って事は無い……よね? あの、正真正銘“お邪魔虫”」


 ゲーム内に登場した、雪原地帯で最も嫌われたエネミー。

 それは強いボスでも、大量に発生するクソ邪魔な雑魚モブでもない。

 『スノーワーム』とか呼ばれる、とある地域に非常に多く発生する……デカイ昆虫。

 シナリオでは、その姿をしっかりと見たモノは居ない。とか書かれていたが。

 んじゃどうするかと言うと、プレイヤーはひたすらソイツを避けるしかない。

 除雪車かって勢いで此方に雪をぶっ掛けて来るソイツは、ダイラの言った通りなんと攻撃不可。

 常に雪の中を移動する為、こちらが攻撃しても当たらないという設定なのだ。

 ストーリーとしては特別なアイテムを各地に設置して行き、コイツ等の被害を人里から引き剥がす~みたいな感じだったけども。

 どうしてこんなにも、全員が嫌がっているのかというと。

 雪をぶっ掛けられると問答無用で寒冷地のバッドステータスを受ける上に、移動速度と攻撃速度低下。

 そしてタンクにとっては一番辛い、問答無用のノックバック有りヒットエフェクト。

 スノーワームが出る地域では、コイツ等を避けながらどう戦うかというのが攻略のポイントになって来る訳だ。

 大した事ないエネミー相手でも、この通称“お邪魔虫”が居るだけで難易度が一気に跳ね上がる。

 というのが、ゲーム内での扱いだった訳だが。


「これはゲームじゃない訳だし、環境にも攻撃可能だ。だから当たらないって事は、無いと思うんだけど……多分」


「動きはやはり素早い様だがな。どうする? もう面倒だし、一気に雪を溶かしながら進むか? 足場は最悪な事になるが……」


「今でも既に最悪だよー……イズの炎で溶かしちゃってよぉ……」


「俺もトトンに賛成かな……何かもう全身ビチャビチャだし。今更泥汚れが増えても、既にどうでも良いというか」


 と言う事で、イズの双剣に炎が灯された。

 その熱は周囲を呑み込んで行き、俺達の周りの雪をすぐさま溶かしていく。


「では、久々に派手なのを使うか」


 双剣を構え、更に熱量を上げていくイズ。

 もはや剣に纏わり付く炎は、小さな竜巻かって程に激しく燃え上がり。

 そして。


「“炎舞”」


 踏み込んだイズが、そのまま舞う様にして両手の剣を振り回した。

 当然付与されている炎の竜巻も振り回され、結構な広範囲を包み込んでいく。

 そこまで攻撃力の高い魔法攻撃と言う訳ではないが、前衛に纏わり付く雑魚エネミーを一掃したり。

 はたまた集まったプレイヤーを散らしながら、相手に持続的な炎症のバッドステータスを掛けるなど、使い方は様々。

 そんなのをスノーワームが向かって来る先で行使してやれば、当然相手は雪の中に潜り続ける事など出来る筈もなく。

 イズが熱で除雪した先から、数匹の……ドデカイ芋虫が出て来た。


「「「キッモ!?」」」


「ダイラすまない! 全体にプロテクションを! これは生理的に無理だ!」


 珍しく、イズさえも悲鳴を上げた。

 でも気持ちは分かる。

 そこらの人間くらい……というかトトンか俺くらいのサイズがある、パステルブルーの芋虫。

 しかも体中、無駄に派手なカラフル模様。

 それだけならまだしも、背中にはパクパク動いている穴が無数に開いており、そこから雪を吹き出しているではないか。

 いやいやキッモ!?

 雪原地帯にデカくて派手な柄の蝶のエネミーが居たけど、コイツ等その幼虫か!?


「あ、あばばばば……」


「ごめんコレは俺も無理! 接近したくないよ!?」


「全体をプロテクションで包むから、イズは急いで戻って!」


 まさかの見た目に場が混乱し、どうにか皆ダイラの魔術防壁の中へと避難したのだが。

 ココで、更なる問題が。


「うぎゃぁぁぁ! 引っ付いて来たぁぁぁ!」


「腹の下見せるなぁぁぁ! キモイキモイキモイィィィ!」


「ブ、ブレイクと放射で一旦引き剥がして……それから、それからぁ……」


「ダイラ落ち着け! まだ迫って来ている! 今防壁を放射したら次は直接戦闘だぞ!?」


 もはや、パニック。

 コレはない、マジでない。

 デカい生物の腸とか見ても割と平気だった筈なのに、コイツだけはアバターの感覚でも全力拒否しているのが分かる。

 それくらいに、見た目がキモイ。

 動きは速いし柄も色もヤバイ、更には芋虫にしてはちょっと長めの脚がワシャワシャと動いているのだ。


「エレーヌゥゥ! ねぇ異世界最強種さん!? 魔女様の実力でどうにかならねぇのぉ!?」


「防壁を解いてくれるなら、端から斬って来るけど……」


 プロテクション解除しちゃったら、このキモイのが押し寄せて来るでしょうがい!

 完全に冷静さを欠きながら、どうにか魔女に助けを求めていると。

 相手は、非常に大きなため息を溢してから。


「ルイン、だったかしら? 防壁の外にアレを発生させれば、まとめて始末出来るんじゃない?」


「“覚醒、ルイン”!」


「ちょぉぉぉ! クウリ!? 流石に覚醒状態はヤバいんじゃないの!?」


「退避ぃぃ! プロテクションごと動かすから、皆退避ぃぃ!」


「クウリ! 担ぐぞ!? ルインの位置はそのままだからな!?」


 もうね、ひっさしぶりにこんなバタバタした。

 だってキモイんだもん。

 しかしルインを発生させたお陰で、芋虫どもは皆まとめてブラックホールに飲まれていった。

 オマケとして、周囲の木々だの地面だのも結構呑み込んでしまったが。

 今度から“お邪魔虫”の吹き上げる雪を見かけたら、すぐにプラズマレイを撃とう、そうしよう。

 もしも雪の中じゃ当たらないって事になったら、デウスマキナで周囲ごと消し飛ばそう。

 全方位からあんなモノが迫って来たら、思わずサテライトレイを使ってしまうかもしれない。

 それくらいに……見た目が悪かったのだ。


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