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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
1章

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第14話 馬子にも衣裳


 なんだか、凄く柔らかいベッドで寝ております。

 俺達が経験した宿屋は、それはもう固いベッドで床の上に薄い布団を敷いたかの様な寝心地だった訳ですが。

 なんかもう、モフモフというかフカフカというか。


「ぬぁぁ!? 何だココ!? リアルでもこんな気持ちの良いベッドで寝た経験ねぇぞ!」


 慌てて起き上がってみれば、ベッド脇には二名のメイドさんが控えていた。

 それはもう深々と頭を下げた後に。


「御着替えをお手伝いしますね」


 そう言って俺の身体に触れて来る訳だが……ごめんなさい。

 多分コレ、普通に着ているって言うより“装備”の扱いになってます。

 現状角や羽のアクセは付けていないが、装備しているのはいつもの黒い鎧。

 馬鹿みたいな金と時間と労力が掛かっている装備なので、あんまり雑に引っ張らないで頂きたいのですが……。


「あ、えと。すみません。大丈夫ですから……お仕事に戻って頂いて――」


 声に出してみたが、彼女達は俺の装備を外す事に苦戦しているらしく。

 ここで“解除”と思ってしまえば、もしかしたら普通に脱げるのかもしれないが

 生憎と、こちらの最高装備を誰かに預けるつもりは無い。

 と言う事で。


「インベントリに戻して……あぁもう、また学生服で良いや」


 と言う事で装備変更した瞬間、メイドさん達は自らの体重の限り吹っ飛んで行った。

 こればかりは、ちょっとだけ目を瞑って頂ければなと。

 こちらも悪いと思うが、人の最重要装備を勝手に脱がそうとしていたのだから。


「えと、すみませんでした。それでどういったご用件でしょうか? それから、俺の仲間はどこに?」


 すぐさま起き上がって近づいて来たメイドさん。

 尻餅を着いてしまったので、ちょっと痛そうだったが。

 流石はプロ、表情には全く出ていない。


「コレは失礼いたしました、姫様がお待ちです。どうぞ、こちらへ」


 それだけ言って、扉を開けられてしまうのであった。

 うぅんと? これは、付いて行けば良いのかな?

 それから、姫様って何。

 ベッドから飛び降り、テクテクと彼女達の後に続くのであった。


 ※※※


 向かった先は、楽園でした。

 うん、ホント。変な意味じゃなくて、見た目そんな感じ。

 お城の中庭で、まさにお茶会ですわ~って雰囲気の建物。

 そんな場所で、俺以外の面々と昨日の悪役令嬢みたいな人が何かしてる。

 いや、お茶以外ないか。

 あの、帰って良いですか? 俺完全に場違いなんで。

 こんなシーン、アニメでしか見た事無いよ。


「あら、ごきげんようクウリさん。昨日は随分と良く眠っていらしたので、失礼ながらそのまま部屋に運んでしまいましたわ」


「あぁ、えと……どうも」


 ごきげんようですって、初めて聞いたわ。

 俺までお上品になってしまいそうだ。

 あらあらウフフ、オホホホホホ……止めよう、寒気がする。

 到底無理だ。


「おはようクウリ。酒……今度からは気を付けような?」


「おはよ、もう昼だよ? 大丈夫? 二日酔いとか平気?」


「おっす。わりぃ……まさか二杯で酔いつぶれるとは」


 案内された席に腰を下ろせば、イズが困った様な表情を向けて来た。

 が、しかし。


「あれ? お前等そんな服持ってたっけ?」


 なんだか妙に高そうな服に身を包む仲間達。

 イズは装飾の付いた軍服だし、ダイラは何か位の高そうな神官服になってる。

 後者に関しては、露出が少ない服を着ている所を初めて見たくらいだ。

 更に言うなら、トトンは。


「……なんか、視覚情報に慣れない」


「俺も慣れない、モッサモッサしてる……歩きづらい。これならいつも通りジャージの方が良い」


 今日は随分と大人しいと思ったが、トトンが見事なドレスを着せられているではないか。

 なんかもう本当に、“服に着られている”って言葉が正しい。


「流石に鎧姿のままでは堅苦しいと思いまして、私の方で用意させて頂きましたわ。クウリさんにも何かご用意しますから、ご希望などございますか? やはりトトンさんと同じく、可愛らしいドレスでしょうか。似合いそうです」


 フフフッと上品な笑みを浮かべている悪役令嬢。

 凄いなぁ、金持ちは。

 服を買いに行くって話をしていたのに、その前にどうやらプレゼントしてくれるらしい。

 ワーどうしましょー。

 こんな高級そうな服とか、俺に全く似合わなそう。

 ドレスとか、正直嫌です。

 むしろいらないです。


「いや、その……俺は別にこのままで」


「そう仰らず、私からのプレゼントだと思って受け取って下さいな。これからも仲良くしたいと思っていますので」


 はぁ、そうっすか。

 何かもう貰わないと話が進まなそうな雰囲気があるんですけど。

 もはや溜息が零れそうになってしまった所で、トトンが俺の袖をちょいちょいっと引いて来る。


「新しい発見があったよ、クウリ。このドレス、俺が一人で着たって言ったら信じる?」


「はぁ? 流石に嘘だろお前。こんなドレスって言ったら、他人の手を借りるのが普通なんじゃねぇの? 良く知らんけど」


 もしかしたら、一人で着る事が出来る物もあるのかもしれないが。

 でも間違いなく、俺達には無理だ。

 だって中身男だし、普通の服だって自分で選んで購入する事さえ難しいだろう。

 気持ち的にもってのはあるが、物理的にも苦戦するはず。

 今までの格好はインベントリからの早着替えだからこそ、何とかなっていたというだけであり……って、まさか。


「貰った服とか、物とか。魔獣素材と一緒でインベントリに収納可能。試しにソレを選択してみたら、“装備品”の扱いらしく一瞬で着替えられた」


「ま、マジか……なるほど、それなら納得だわ」


 トトンがテンション低めで普通に喋っている方が違和感も凄いのだが。

 まぁ本人も、この恰好でいつものテンションは違うと自覚しているのだろう。

 騒いで汚したり破いたりしたら、後で返せって言われても困るしな。


「と言う事で、クウリ様にはこちらを」


 とか何とかメイドの一人が、ケースに入ったやけに高そうなドレスを差し出して来る。

 黒いのは俺の趣味に合っているが、えぇ……マジで着るの?


「皆様からお話を聞いておりますので、ケースのままお納め下さい。装飾や下着の類も入っておりますから、まさにフルセットですね」


 いらん気遣いだわマジで。

 頬をヒクヒクしながら、とりあえず受け取ってみると。


「クウリ、俺の仲間になって……」


 トトンだけは、悲しそうな顔で俺の腕を引っ張って来るのであった。

 もう、諦めるしかないか。


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