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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
5章

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第121話 サキュバス


「え、いや。相手魔人なんだよね? 俺等二人じゃ不味いんじゃないの? 魔人って強いんじゃないの? いやでも、前の羊頭は弱かったしなぁ……」


「アイツは確かに、弱かったわね。使役魔法を試してみたら、普通にテイム出来ただけよ。邪魔になったから野に放ったけど」


「おいコラ、ペットの管理は最後まで責任持てよ」


「今は反省してるわ」


 などと気の抜けた会話をしてしまったが、エッチなお姉さんは首を傾げている。

 ちなみにどれくらいエッチかと言うと、エグイ角度のハイレグ……いや、何て言うの? あぁいう恰好。

 バニーガールとはまた違う様な、露出の多いお姿をしておられる。

 しかも革だかエナメルだかの、テカテカしているような生地。

 とにかくそういう恰好で、結構肌面積が多い。

 胸部に特大の危険物を備え、結構ギリギリで隠している程度な上、長いグローブやらブーツやら。

 若干SMチックな雰囲気を醸し出している、本気ダイラとはまた違ったスケベ装備。

 とか何とか、妙な感想を残していた訳だが。


「どっちが、月の魔法を使ったの?」


 月の魔法? あぁもしかしてリジェネの事か?

 ダイラの話では、聖属性も陰と陽が分かれてるって話だしな。

 とはいえ、相手に此方の情報をくれてやる必要なんて――


「コッチよ。私には使えないから」


「ちょっとぉ!? 手の内バラしてどうすんだよお前!」


「……それもそうね、今後は気を付けるわ」


 残念魔女のせいで、さっきから環境がギャグにしかならない。

 コイツこんな調子で、今までどうやって旅して来たんだよ。

 あれか、全部物理で解決してきたのか。

 止めてね、俺等の情報ばら撒いたりしないでね?


「へぇ……そっちの黒い鎧の子は、私達と同じなのかしら? 貴女も魔人?」


 そう言って、エッチなお姉さんが此方をジロジロと観察してくる。

 昔であれば前かがみになってしまったかもしれないが、現状は此方も同性な訳で。

 そもそも何かを感じて反応する部位が無……いや、止めよう。

 こういう下品な言葉選びは嫌われるから。

 特に何かを感じる訳でも無く、その視線に晒されていた訳だが。

 ふぅん……“私達”、ねぇ?


「その月の魔法とやらを感じて、下っ端のお前がお使いに出されたって訳か? ご苦労なこった」


「……あまり、過ぎた口を利くものじゃないわよ? “お嬢ちゃん”。貴女の態度次第では、クイーンも迎え入れてくれるかもしれないわ」


 此方の言動が気に入らなかったのか、ピクッと口元を動かしてから。

 相手はツラツラとそんな事を言って来るではないか。

 ハハッ、ガチで下っ端か。

 ペラペラと喋っちゃってまぁ、ザーコザーコ。

 そんでもって、明らかに舐められた状態で“お嬢ちゃん”とか言われると……ちょっとイラッと来ちゃうねぇ。


「クイーン、ねぇ? サキュバスの上位種って所か、まぁゲームには居なかったけど。それで? 俺がお断りすれば、その魔人の軍団がコッチに差し向けられるってか?」


「調子に乗らないで、たった一人に軍勢で攻め込む訳が無いでしょう? 私一人でも充分よ。でもクイーンが月の魔法を行使した相手に興味を示した、だから私はその使い。大人しくそっちの黒い方だけ付いてきなさい」


 クハハッ、だから下っ端なんだよお前。

 相手は軍勢と呼べる規模が揃っている、つまり魔人……というかサキュバスの集団がどこかに存在してるって訳だ。

 更に言うなら、遠く離れた場所でも俺のリジェネを感じ取れたクイーン。

 つまり聖属性の、言わば陰の方が得意分野って訳か。

 だがしかし、いくら魔人と言っても察知能力にだって限界があるだろう。

 だったらこの周辺に、コイツ等の住処があるって事になる。

 しかも冒険者ギルドでそういう仕事だとか、噂が広まっている様子は無かった。

 と言う事は、コイツ等は現状“隠れている”状態。

 魔人が人類の驚異として見られる程の力を持っているのなら、逃げ隠れする必要なんか無い筈。

 だったら本体がそこまで強い個体じゃないのか、それとも別の理由か。

 ハッ、異世界の未知にまた一歩近づいたってか?


「一応言っておくけど、この子はサキュバスじゃないわよ?」


「おい赤い方。お前には何も聞いていない、さっきから鬱陶しいわよ? おかしな存在ではあるみたいだけど、とっととこの場から失せれば攻撃は――」


「その子、“魔王”だけど。貴女程度で対処出来るの?」


「……は?」


 などとエレーヌが注意を引いた所で、相手の背後へとテレポート。

 そして。


「はい終了、残念だったなぁ? 魔人の“お嬢ちゃん”」


 ニィィッと口元を吊り上げながら、相手の頭を後ろから掴み。

 そのまま魔法を行使した。


「“グラビティ”……鬱陶しいから、俺の上空を飛び回るんじゃねぇ。落ちな」


「なっ!? はぁっ!?」


 急展開について来られなかったのか、此方の魔法の影響により上空から急降下するサキュバス。

 難しい事は何も無い、相手の重力を倍以上に増やしてやっただけ。

 ただでさえ空を飛んでいる相手ってのは、飛行のバランスさえ崩してやれば簡単に落ちる。

 そして、その先に待っているのは。


「エレーヌ!」


「殺さない程度に、ね? 分かってるわ」


 落ちて来たソイツに対して、軽い声を上げながら連撃を放つ魔女。

 どうやら手足の筋を切断した上に、翼を斬り裂いたらしく。


「貴女、もう少し瘦せた方が良いわよ? 見た目の割に随分と体重が重いのね? その内飛べなくなるわよ」


 すみません、多分ソレ俺の魔法のせいです。

 とはいえやはり、女性としては言われたくない一言だったのか。

 相手は痛みに苦しみながらも、物凄く顔を歪め。


「貴様等ぁぁぁ! 何なんだお前等はぁぁぁ!」


 地に伏せたエッチなお姉さんが、滅茶苦茶怖い顔をしながら叫んでいた。

 と言う事で俺達は相手を見降ろしながら、剣と杖の切っ先を相手の眼前に向け。


「ただの冒険者――」


「魔王と魔女よ。覚えておきなさい、雑魚」


 エ、エレーヌさーん?

 俺も他人の事言えないけど、安易なフラグ建ては止めて下さいねぇー?

 とはいえ、相手は随分と怯えた様子で此方を見上げて来るのであった。

 わっはっは、こりゃもうあれだね。

 完全に俺等が悪役だね。

 仲間に見られたらドン引きされる光景だわ。

 まぁ、俺の性格的に正義の味方って方がしっくりこないので。

 ある意味、魔女の言った事は間違ってないのだけど。

 ちょっと可哀想になる勢いで、地面に寝転んだ女性は震えている。

 うん、分かる。

 訳わかんない攻撃した上に、訳わかんない存在に見下ろされてるんだもんね。

 そりゃ怖いだろうさ、完全にコイツの命はコッチの掌の上にある訳だし。

 月の光を背負っている状態だから、逆光で目だけ光っている様に見えたかもね。

 ハッハッハ。

 魔王プレイしている時なら、テンション上がったかもしれない。

 けど、コレは無いわ。

 完全に俺等、今この子を脅してるわ。


「ま、魔王……それに、魔女って」


「言葉通りよ。お前は、そんな存在に牙を剥いた。生きて帰れると思わないで? その首、ここにおいていけ……」


 それだけ言って、エレーヌが両手剣を振り上げる訳だが。


「おい、約束」


「……コイツは魔人よ? 人間じゃないわ」


 確かに、それもそうか。

 とか言ってスパッとやられてしまっては困るので。


「コイツは連れて帰る、もっと情報を引き出さないとな。なんたって、軍勢を準備しているらしいからなぁ? おぉ、怖い怖い」


 そんな言葉を紡ぎつつ、傷付いた相手を担ぎ上げてみると。


「……貴女は、やっぱり魔王ね。とても悪い顔をしているわ。そんなに楽しみ? 魔人の軍勢と戦う事が」


「さて、どうかねぇ?」


 人型をしていると、攻撃し辛い。

 そんな感覚はあるのだが。

 しかし魔女と戦った時は、そんな甘い思考はどこかへ吹っ飛んだ。

 つまり、戦闘は出来る。

 しかしながら……軍勢がおり、更には此方に牙を剥く可能性があると聞いた瞬間。

 だったらコイツを調べて、相手の情報と勢力を確認してから。

 むしろ此方から攻め込んだ方が有利なのでは?

 そんな事を考えてしまった俺は、相当“染まって来ている”気がするのだ。


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