第119話 レベリング
「リタ! 貰ったナイフが凄いからって前に出過ぎ! それじゃダッサムに注目がいかない!」
「ご、ごめんっ! 気を付ける!」
「ダッサム! 一旦下がって! 俺が前に出る!」
「了解したっ!」
「俺が攻撃している間にロランは攻撃魔法準備! 引いた瞬間に攻撃して!」
「わかった! 準備しておく!」
「セリナ! 俺に筋力増加のバフをくれ! 突っ込む!」
という感じで、少年達のパーティの動きも徐々に良くなっていった。
役割をきっちりさせて、ちゃんと仲間を頼る事を覚える。
そして現在はリーダー君の指揮練習、というか全体を常に見る癖を付けさせている所な訳だが……うん、やはり皆素直だ。
言われた事をちゃんと覚えて、慣れないながらも意識して戦っているのが分かる。
「ダーっと行って、ドンっとやって……ガッと斬る!」
おい少年、何だかんだエレーヌの教えを理解しているのか君は。
ある意味凄いな、これまで以上に良い一撃が相手に入ったんだが。
そんな攻撃を叩き込んでから、本人はすぐさま引く。
このタイミングで、後衛術師である少年が使ったのは。
「“チェインライトニング”!」
おぉ、マジか。
ずっと練習していたけど、もう使えるようになったか。
流石に俺のスキル程の威力は出せていないみたいだが、それでも彼の杖の先からは間違いなく俺と同じ魔法が炸裂していた。
そんでもって、雷撃が相手に叩き込まれ見事戦闘終了。
「正面の相手は討伐確認! 周辺警戒!」
リーダーの声と同時に、近接担当が後衛を囲む様にして周囲に武器を構える。
うんうん、最後まで警戒を解かない様になったのも花丸だ。
前衛組が周囲を索敵し始め、後衛に関しては倒した相手から討伐証明部位を切り取る。
俺達の場合はインベントリがあるから、死体そのまま持ち帰っちゃうけど。
本来はあぁしないと荷物が大量になっちゃうからね、仕方ないね。
「敵影無し!」
「こっちも平気!」
「問題無い!」
ということで、本当にお仕事完了。
更に言うなら、今日はもうこの辺りが限界だろうな。
日も落ちて来たし、彼等の体力的にもこれ以上は危険だろう。
「お疲れさん、随分良くなってたぜ?」
「ありがとうございます!」
戻って来た皆を労ってから、そのまま夕食作りへ突入。
流石に一日動き回って、ずっと戦闘をしていた様な状態だったのだ。
皆腹ペコだったらしく、イズの元へとすぐさま集まっていく。
「皆手を洗ってからな? 今日は頑張った分、豪華にするぞ」
「「「ありがとうございます!」」」
前衛三人は、とにかくイズに懐いた御様子で。
まぁ剣術教えているのはイズだし、それは分かるんだけども。
料理の影響もあるのか、物凄く従順になってしまった。
率先して料理の手伝いをするくらいには。
「あ、あのっクウリさん……コレ、ありがとうございました」
「うん?」
術師のロラン君……だっけ?
彼はそう言いながら、此方にスキルノートを返して来る訳だが。
あぁ、使えるようになったから、もういらなくなったって事かな?
「ういよ、まさかあんなに早く使えるようになるとはね。記念にあげるよ? 売っちゃっても良いし」
「そ、そんな事出来ませんよ! 読ませて頂いただけでもありがたいのに、魔導書を頂くなんて……」
ま、普通は高価な物らしいからね。
流石に遠慮されてしまうか。
と言う事で、追加のスキルノートを生成してから。
「んじゃ次はこれね、適性は雷で良いんだよね? こっちも覚えておくと便利だよ」
「あ、ありがとうございます! ホント、何てお礼を言ったら良いのか……師匠と呼ばせて下さい!」
「お、おう……」
凄いな、勢いが。
この子にも短期間で随分好かれた様だが、男女の云々って感じではないので良しとしよう。
うんむ、強くなりたまへ。
とかなんとか、何様だって感想を残していれば。
「指揮能力とか、魔法とかを見習うのは良いけど。心意気まではクウリを見習わない様にね~? ウチのリーダーは何でもかんでも自分にヘイト向けて、周りを守ろうとするから。全員をちゃんと頼れ、なんて言ってるくせにね~」
「ダイラ……お願い、たまには格好付けさせて?」
いらんお言葉も頂いてしまったが、ロラン君はそのままお勉強開始。
バッファーの女の子……名前なんだっけ。
そっちもダイラから新しいスキルノートを貰ったらしく、必死に読み込んでいる。
本来なら皆で野営準備しないと不満が出そうな所だが、魔術師達の強化には時間が掛かるとちゃんと理解しているのか。
前衛組は嫌な顔一つしていない。
それどころか仲間達を応援している様子を見せながら、イズに対して二人の夜食も作って良いかという確認まで取っている程。
いやぁ、ホント仲良いねぇ皆。
素晴らしきかな、若き男女の友情。
などとおっさん臭い事を考えていると。
「クウリー追加分も終わったよー」
軽い声を上げて、トトンがいくつかの武器を持ち込んで来る。
皆に用意した、エピッククエスト(仮)の御褒美の品。
もうちょっと見た目派手な方が良かったかなぁとは思ったが、あんまり豪華な物出しても、また遠慮されては困っちゃうので。
「サンキュ、トトン。プラス値はどんなもんだ?」
「ざっと10そこらって感じかな? 流石にミラさんの時みたいに盛っちゃうと、武器ばっかり強くなっちゃうし」
「だな、本人達に強くなって貰わないと。とりあえず、お疲れぃ」
などと会話をしていれば、料理している子も勉強している子も。
物凄く興味ありげな視線を送って来るが……。
「駄目でーす、目標達成してからのお楽しみでーす」
「「「そんなぁ!?」」」
さっさとインベントリに武器各種を放り込んでしまうのであった。
ま、斥候の子にはもうナイフあげちゃったし。
飯が終わってから、もう一人くらいはあげちゃっても良いのかもしれない。
やっぱ御褒美の有無で、人の伸びは違うからねぇ。
※※※
「ねぇ、セリナ。起きてる?」
「そりゃもちろん。こんなの興奮して眠れないって……」
女子用のテントで、興奮気味のリタが私に声を掛けて来た。
そして、二人揃って貰ったナイフと杖を取り出してから。
「ふ、ふふふ……やっばい、見てるだけで口元ニヤける」
「分かる。こんなのまで作れちゃうなんて、クウリさんのパーティは皆凄いね」
夕飯の後、今日の仕事達成の御褒美だと言って、私に新しい杖が渡された。
もう手にしているだけ分かる、そこらの店では絶対こんな代物買えない。
あったとしても、物凄く高い筈だ。
だというのに……コレを自作したというのだから凄い。
試しにいつものバフを使ってみたら、簡単に普段の倍は効果が出ていたと思う。
これで明日からは、仲間達ももっと良く動ける様になる筈。
などと考えれば更に口元がニヤけるが……ダメダメ、ダイラさんに教わったじゃないか。
バフは基本的に、急に強くしたらパーティのバランスが崩れる。
だからこそ、“慣らし”が必要なんだ。
それに瞬間火力の底上げとして使うなら、絶対にバフの停止が必要になって来る。
未だにそっちは練習中だが、明日には出来るようにならないと。
「でも本当に、何者なんだろうね? あの人達」
「リタは、まだあの人達の事疑ってるの?」
「ううん、それは全然無いけど。でもここまで教えてくれるし、こんな凄い武器までポイッとくれるし。もっというなら、セリナが借りてるの魔導書でしょ? 普通見るだけでもお金取られない?」
「うん……普通なら、こんな風に気軽に貸す物じゃないよ。ダイラさんもそうだけど、ロランに対してクウリさんが物凄い量の魔導書貸してたし……多分今夜は、寝る間も惜しんで勉強してるんじゃないかな」
あの人達は、皆やる事が規格外だ。
だからこそ、何故私達に目を掛けてくれるのか全く分からない……というのが正直な所。
「まさかクウリさんもカイに好意があって、それで協力してくれてるのかも~とか、最初は思ってたけど」
「絶対に無いね。というか、そういう雰囲気皆無だし。クウリさんって絶対恋愛云々に興味ない」
「だよね、あれは脈無しだねぇ。むしろ今なら、カイ如きがあの人の隣に並べる訳無いでしょ! って叱りつけるかも」
「最初は応援しようと思ってたのにね。残念だけど、アレは無理かなぁ」
とか何とか、二人して笑っていると。
どこからか、歌声……というか、鼻歌? の様なモノが聞えて来た。
凄く耳馴染みの良い、優しい歌声と子守歌の様なメロディー。
「この声……クウリさんかな? 凄く綺麗な声……」
「わぁ……あの人魔法も指揮もヤバい上に、財力もあって歌まで上手とか。ちょっと才能盛り過ぎでしょ」
なんて、お互いに感想を言い合っていれば。
彼女の詩を聞いている内に瞼が重くなって来た。
連戦続きだったから、流石に疲れが出たのだろうか?
さっきまでは興奮で全然寝付けないと思っていたのに、徐々に意識が夢の世界に旅立っているのが分かる。
「そろそろ、寝ようか……あんまり夜更かししても、明日に響いちゃうし」
「見張り交代の時間……起きられるか、不安になってきた……」
何かもう二人して、半分眠っている様な状態。
あぁ、駄目だコレ。
この歌声、聞いてるだけで凄く落ち着く。
「もしかしてこれ、スリープの魔法だったりして……」
「あり得る……クウリさんだし。もう駄目だぁ、おやすみぃ……」
そんな言葉を最後に、私達は完全に寝落ちしてしまうのであった。




