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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
5章

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第116話 会議!


「第一回、異世界での初心者育成方針会議ー!」


「うぃーっす」


「うん、まぁ、はい」


「好きだな、相変わらず」


 給仕の仕事が終わり、部屋に戻ってから。

 皆で寝泊まりしている大部屋で盛大に宣言してみた訳だが。

 各々から微妙な反応が返って来てしまった。

 ねぇもっと楽しもうよ、ルーキーだよルーキー。

 これからどんな風に育っていくのか、楽しみになるの俺だけなの?

 なんて思ったりもするけど、どちらかと言うと俺に呆れているだけって雰囲気が強い。

 まぁね、こういう事で騒ぐのいつも俺が最初だし。

 と言う事で意見を待つのではなく、此方から求めて行こう。


「はい、トトン。率直な感想を」


「クウリが初心者育てるの好きっての知ってる。けどあのリーダーの男子、クウリに対して明らかに“そういう好意”があって、なんかウワァってなる」


「それは俺も嫌。安心しろ、俺にBLの趣味は無い」


「今は女だけどねぇー」


「シャラップ」


 この会話に対し、魔女だけは首を傾げているが。

 まぁ良い、放置しよう。

 今説明すると長くなりそうだし。

 というか、同じ部屋でも基本的にエレーヌが肌を晒さない人で良かった。

 前にアバターと本体は違うって話はしたけど、その後掘り下げなかったね。

 もはやこの身体に慣れ過ぎて、違和感をあまり持たなかった俺等も不味いんだけど。


「次にダイラ、どうぞ」


「俺は別にどっちでも……って感じではあるけど。まぁ良いんじゃない? 現地の人が強くなって悪い事は無いし。このままこっちのパーティに加入させるよって言ったら、危ないからちょっと待ったってなるけど。単純にあの子達を育てるだけなら有りなんじゃない?」


 ダイラに関しては、コレと言って問題視はしていない御様子。

 まぁね、これまでも現地の人とそうやって仲良くなって来た訳だし。

 戦闘は効率化したいけど、私生活まで効率化しなくても良いしね。


「続きまして、イズ。どうぞ」


「此方の世界では、強さはそのまま生存率に比例する。だから俺は賛成だ、少なからず関りを持った人間なら、誰しも生きていて欲しいと願うだろうしな。前衛を鍛えるというのなら、此方で担当する。彼等の剣術は少々荒っぽいというか、素人感が抜けきっていないからな。一から鍛えよう」


 イズに関しては大賛成の御様子で。

 許可さえ出せば、前衛育成プランを勝手に考えそうな勢いだった。

 まぁそうなった場合はコイツに任せよう。

 当人達にとっては、地獄になるかもしれないが。

 それはソレ、これはコレ。


「最後にエレーヌ、魔女様としてはどうよ?」


「……あまり、乗り気はしないわ。でも繋がりを大事にするという事に関しては、否定するつもりはない。あまりにも長い時間ココに留まる、とかではない限りは……まぁ」


 と言う事で、最後の一人にも了承を得られた。

 んじゃまぁちと久々にやってみますかねぇって事で。

 ゲーム内で今回みたいな事やって、他のパーティやらクランに巣立って行ったフレンド達は、今元気でやっているのだろうか?

 いやはや懐かしい、とか思ってしまったが。

 よく考えればあのゲーム、サービス終了したんだよね。

 うん、考えるだけ無駄だった。


「んで、だ。今日聞いた話だと、彼等のパーティとしてはちょっと不満……というか自信喪失みたいな現状にあるらしい」


「ほぉ? いやしかし、あり得るか。ゲームなら上位互換を先に考察する、程度の認識だが。実際では果てしない努力と、更には才能が求められる訳だからな。あまりにも自らとの違いを認識してしまえば、目指す前に折れてしまってもおかしくない」


 イズだけはうんうんとすぐさま納得し、トトンに関してはふーん? 程度。

 ダイラに関しては何か悩んでいる御様子だが、魔女は完全に上の空。

 部屋の隅に置いてある棺桶をポンポンしてる。


「今イズが言った通り、俺達みたいに軽く考えられないってのが一番の原因だと思う。そこで、分かりやすい目的を達成させていって自信を付けさせる。それが一番の近道だと思うんだ」


「エピッククエストみたいな? レベルとかスキルツリーが無いと、確かに実際の成長って感じ辛いかもね」


「ダイラ正解。まずは指揮系統を俺が教育、動きが分かって来てからイズの戦闘特訓に入る。多分その辺からダイラやトトンの動きも、見てるだけでも参考になり始めるんじゃないかな」


「でもさ~確かに強くなってるって実感出来るのって、結構先じゃない? 現実では微々たる変化な訳だし。そこまで時間掛けらんなくない? それこそ俺等の時は、強い装備が手に入ったーとかで分かりやすかったけど」


「トトンも正解。まさにソレを、やろうと思います」


 ふふんと胸を張ってみれば、トトンだけはうげっという顔をしたが。


「もしかして……」


「エピッククエストをクリアすると、ストーリーを進める為の最低限とも呼べる武装は手に入っただろう? それを俺達の方で用意してみようかなって、大袈裟にならない程度に。という訳でトトン、お前の出番だ」


「現地の物で強化武器作れって事だよねぇ……マジで? 前みたいな事になっても知らないよー?」


 ちょっと面倒臭そうな顔をするトトンだったが、インベントリを漁り始め鉱石の類を準備し始める。

 本格的な強化や修復となると、やはり工房が必要だが。

 軽いプラス値を付ける程度なら、簡易的な道具だけでも何とかなる。

 更に言うなら、いくら壊しても惜しくない様な武装を使うつもりなので。

 トトンレベルの鍛冶師サブ職なら、部屋の中だってチョロッと弄る事は可能だろう。

 何だかんだ言いつつ、コイツだって初心者の世話焼きが嫌いな訳じゃないんだ。

 そんでもって、自らもその経験があるからこそ結局は放っておけない。

 よしよし、良い子に育って俺は嬉しいよ。

 なんて事を思いつつ、彼等に渡せそうな武装を皆で選別していれば。


「魔王、一つ教えて。あの子達はこの街で出会っただけの、全く無関係な存在よ? なのに、貴女がそこまでしてあげる理由は何?」


 などと言い放ち、魔女様が此方をジッと見つめて来る訳だが。

 これに関しては、本当にごめんなさいなのだ。

 だって、結局。


「……趣味?」


「……はい?」


 それしか、言いようがない。

 コイツはどんなキャラ作るんだろうなぁって考えると楽しいし。

 仲良くなって、どんどん強くなって、当人がゲームに夢中になってる姿を見るのも好きだったし。

 すげぇ感謝されたり、もはや泣くレベルで恩を感じてくれちゃったりって事もあった。

 その上で、他の場所へ行きますって言って来るプレイヤーとか。

 そういう人達を見るのも、結構好きだった。

 やっぱ人間色々目指す先が違うよなーって、ゲームの中でも感じるのだ。

 そして何より、強くなったと実感して、自信を持って。

 俺にはコレが出来るんだって、自らの向いている部分を見つけた時。

 人は本当に嬉しそうな声で笑うのだ。

 あのゲームは、そういう意味でも最高だった。

 自分だけにしか出来ない事を見つける、それを突き詰めて“たった一人だけ”のプレイヤーを作り上げる。

 時間も金も掛かったけど、全然後悔なんかしていない。

 そういう、本当の意味でRPGだったのだ。

 もしも現実でもそういう経験が得られるのなら、それは多分……ある意味で俺達の成長にも繋がると思っている。

 この世界を生きていくのなら、どうしても切り離せない“人付き合い”ってモノ。

 これに対して俺達は、これまで極端な接触しかしてこなかった。

 だからこそ、“普通”ってヤツも学ぶべきだと思うんだ。

 こんなアバターを持っているからこそ、余計に。


「多分俺は、俺が教えられる事で相手が育ってくれるのが好きなんだわ。マジで自己満足だけど、それでも相手と関わって成長を促せたのなら大満足な訳。そんで、その結果俺の所に残ってくれた奴が三人も居た。ソレがゲームじゃなくて現実になったからこそ、間違ってなかったのかなって、そう思えるかな。だから、教えてくれって言われたなら、手を貸してやりたいんだよね。面倒に巻き込みそうな奴と、ただただアテにされるのは御免だけど」


「……本当に、全く。お優しい魔王様も居たものね。今後配下にする為だ、とか言われた方がまだ納得出来るのに」


 大きなため息を溢す魔女が、呆れた様な視線を此方に向けながらベッドに潜っていく。

 そして。


「好きにすると良いわ。私が教えられる事は少ないけど、必要だったらその時声を掛けて。このパーティのリーダーは貴女、だから協力はする。でも、私の目的は変わらないから」


「あぁ、肝に銘じておくよ」


 と言う事で、こちらとしては新人教育続行という結果になったが。

 問題は相手の方だよなぁ、自信喪失しちゃってるみたいだし。

 俺に指揮を委ねてくれるのなら、ちょっと無茶な戦闘でもやらせてみるか?


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