第101話 シナリオフラグ
「パーティ登録って何? 冒険者の言うパーティ、つまり寄せ集めと何か違うの?」
「いや、まぁ俺達の場合システム的な内容が関わって来るっていうか……」
「しすてむ的な内容? それはどういう魔法? 味方の攻撃を無効化するなんて、聞いた事が無い」
「いやぁ……何と言いますか……」
見事に、魔女様から問い詰められてしまった。
相手は既に戦う気は無いのか、両手剣だって地面に突き立てて放置。
無手になったとはいえ、此方が警戒しているのは変わらず。
ダイラにMPポーションを呑ませながらグルルッと唸っているトトンも健在。
その状態にも関わらず、魔女様がグイグイ来るから余計に質が悪い。
「教えて、魔王。貴女は私に何をしたの? コレは貴女だけが使える“特別”な魔法なの?」
「魔法でも無ければ俺がやった訳でもねぇ……というか、お互いに殺す気マックスだったし……」
「じゃぁこの状況は何? 教えて」
「いやぁ……正直俺もわかんないっていうか……」
おい誰か説明してくれよ。
以前のミラさんとかね? そういう人達とパーティが組めました、なら分かるよ?
だというのに、今回は完全に敵。
仲間になろうとした記憶も無いし、滅茶苦茶戦ってる最中だったじゃん。
なのに、この状況はおかしくない?
だって仲間になれる筈も無い関係だし、そもそもシステム的な内容は俺等に弄れないし。
おいシステムメニュー出て来いよ、そしたら確認出来るし解除も出来るんだから。
なんて事を思いつつ、どんどんこっちに寄って来る魔女様から身を引いていれば。
「それ以上近づかないでくれないかなぁ? コッチは、アンタの事を信用した訳じゃないんだから」
ダイラにポーションを与え終えたのか、物凄く警戒した様子のトトンが間に入って来た。
すると相手は。
「怪我、大丈夫?」
「……は?」
「私も、子供は出来れば斬りたくない。だから、傷跡とか残ってないかなって」
そんな事を言いながら、以前トトンが負傷した場所に触れながら覗き込んでいる魔女。
急に心配される様な行動を取られて焦ったのか、ビクッと震えてから身を離すトトン。
しかしながら今の魔女様は敵意も無く、ズイズイとちびっ子に迫っていくと。
「傷跡一つ無い……凄いのね、君達の仲間の聖女様は。それに、君も強い」
「う、うるさいなっ!」
顔を真っ赤にしながら、必死に逃げようとするウチの盾役。
褒められる事に慣れていない、みたいな事言ってたし。
更に言うならトトンはリアルでも若い上に、相手は超ド級の美人だ。
そういう反応も分かるのだが、今の見てくれは女同士だからね。
ちょっと色々危ない雰囲気になりそうで怖いんだが。
「トトン、こっち来い。今は相手に敵意も無い、大丈夫だ」
「シャー!」
「俺に隠れながら猫みたいな威嚇すんな……」
完全警戒態勢でありながら、毒気を抜かれてしまったらしいトトンが小動物みたいになってしまった。
まぁ良いんだけど。
ピリピリしているトトンは、見ていて不安になるし。
「んで、だ。魔女、こうなった以上俺達の決着は着かない。だったら協力とまでいかなくとも、話し合いくらいするべきだと思うんだが」
「そうね……だとすれば、聞きたい事が沢山ある。貴女は本当に魔王なの? そっちに居る聖女は本物? 他の二人もとんでもなく強い、“天人”なの?」
「うん、急に色々聞かれましても」
この魔女、懐に入れるとすぐに懐くタイプだな?
もはや警戒心など無いと言わんばかりに、ズイズイと顔を近付けて来るではないか。
どうすっかなコレ……そもそも天人って何よ。
そんな種族聞いた事ねぇし、エネミーでもその手の名称は無かった。
天の人、なんて言われたら召されちゃった方? とか聞きたくなるが。
つぅかパーティに編成されたと分かってから、俺の方もマジで敵意湧かないんだけど。
すげぇなこりゃ、ある意味こういうゲームシステムも呪いか何かに近いのかもしれない。
もしくは感情がアバターに引っ張られているのと同様、システムによっても感情が左右される……とか? いや、怖っわ。
んな事言ったら神様だかゲームマスターだか、訳わからん存在が何か手を加えたら簡単にコロッと騙される人形に成り下がるんだが。
さっきまでガチバトルしていた相手に対して、コレだけ接近を許しちゃうとか普通あり得ないだろ。
「え、えぇと……そうだな、まずは……」
どうしよう、どれから聞こう? というか話そう。
なんて思って、ポリポリと頬を掻いていると。
隣からイズが身を乗り出して来て。
「まず、その天人というのは何だ? 詳しく教えて欲しい。正直に言うと、此方側の情報に疎いんだ。だから、まずはソチラから情報提供してもらいたい」
そんな事を言い放つイズに対し、魔女は不思議そうに首を傾げてから。
「此方側……という言い方は不思議だけど、簡単に言うと御伽噺みたいなものよ。天人とは神という存在から認められた人間、またはそれそのモノに匹敵する人物。“特別な何か”を持っていたり、下手すれば別の世界の知識を有していると言われているわ」
彼女の声を聞いて、此方としては思い当たる節が多いのも確か。
特別な何か、もはや言うまでもない。
この身体と、ゲーム内で使っていたスキルの行使。
そして別の世界の知識。
コッチに関しては、マジで言葉通りなのだ。
俺達は、そういう存在なのだから。
「その天人ってのは……他にも居るのか?」
「過去の書物には残っているけど、私は会った事がない。でも天人は“北の門”に向かうと聞いた事があるわ」
「北の門?」
はて? と首を傾げてみせれば、魔女様は空中に掌を向け。
そのまま何も無い空間に対して、ズボッと手を突っ込んだ。
「は!? 何それ!? こわっ!」
「収納魔法……貴女達だって使っていたでしょう?」
おぉ、最初の街で聞いたアレか。
コレがコッチの世界でいう収納であり、俺等からしたらインベントリになる訳だ。
けど俺等の場合両目を瞑らなくちゃいけないんだけど、魔女の場合はそんな事はしていない。
特に荷物を漁る様な動作も見せず、パッと地図を取り出してみせたが……えぇ、便利ぃ。
目を瞑らなくても良いし、アイテムを取り出すのも一瞬ですか。
いやでも、片手はその瞬間使えなくなると考えると微妙なのか?
しかし俺達のインベントリより使い勝手良いのは確か。
いいなぁ、欲しいなぁ。
あとオートモードとショートカットキーの設定が欲しい、マップ機能とかスキルツリーとか。
欲張り出したらキリがないんだけど、元々あった物が無くなるのってすんごく不便。
などと思っている内に、目の前に広げられた地図。
そこに描かれていたのは……。
「なんか、俺等が持ってるヤツより正確に描かれてる……」
「場所によって書き込む内容が違うから、当然。それに時代によっても変わる。これはソレなりに古い物だけど、当時は“未開拓地域”が今程多くなかったから、その影響もあるわ」
へ? 未開拓地域なのに、昔の方が探索進んでたってどういう事?
いやまぁ人が住めない環境になっちゃったりとか、エネミーの大量発生とかで撤退したって事もあるのかもしれないけど。
まぁ、今は良いか。
「ここ、分かる? 最北端の位置に、印が描かれているでしょう? ココに不思議な門があるの、普段は開かれていないけど」
「ほ、ほぉ? そんで、何でその天人達は門を目指す訳?」
何か重要そうなシナリオフラグが立った気がするが、天人……仮に俺達みたいな存在がそうだったとして、何故そこを目指すのか。
きっちりと理由も聞いておきたい所なのだが。
「この門が開く時、異界と繋がると言われているわ。だから天人達は“帰る”為に、その地を目指したそうよ。私の場合は、別の意味でソコを目指したけど。でも今は非常に濃い魔素に包まれており、魔獣達も活性化している。それにそういう場所には、“魔人”が集まる。だから気軽には到達出来ない」
ここに来て、まさかの帰還出来る可能性を見つけてしまった。
へぇ……この世界には、クリアの概念が一応あるって事なのか。




