表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/64

52 迷路の中の存在






見上げれば高い高い天井。

最初は空かと思ったが、そうではない。



左右にはどこまでも続くレンガの壁。

おそらく、3メートルはあるだろう壁の高さ。



進む先は行き止まりだったり、どこかで通ったような道。







そう、三葉(みつは)は今、巨大迷路の中をただ1人、彷徨っていた。






「…………何なんだこの迷路は…………」






三葉(みつは)は湖に引きずり込まれて目覚めると、いきなりこんな迷路の中にいた。


そして、ずっとこの巨大迷路を歩き回っていた。スマホを開いてみても電話もメールも誰にも繋がらないし、大きな声を出しても誰の声も返ってこない。

そればかりか、自分の声すら反響し返ってこない。どれだけ広い空間なのだろう。



しかし、これは明らかに人工的な手が加わったものだと、はっきり言える。



自然にこんな空間が出来るワケがないし、何よりさっきからふざけた〝トラップ〟の数々。

行き止まりには大量のマキビシのようなものが敷かれていたし、道中にはいくつもの落とし穴。それに地面のスイッチを踏んでしまえば壁から発射される矢。





ーーーーーふざけている。





一歩間違えば、死んでしまってもおかしくない仕掛け。

作った奴、絶対に許さん。





そして僕は何でこんな場所にいるんだ。





それに、





「…………さっきから〝右手の法則〟で歩いているのに、全然意味がないじゃんか」





さて、皆さんは〝右手の法則〟もしくは〝左手の法則〟というものをご存知だろうか?



いたって単純な話だ。右側の壁に手を付いて、ひたすら壁沿いに進むという方法である。

壁の切れ目は迷路の入口と出口にしかない。壁の切れ目が存在するかすら怪しい状況だが、何もやらないよりはマシだ。最悪でも壁の長さ分だけ歩けば終了するのだから、体力勝負だと思っていた。



しかし考えが甘かったようで、行けども行けども




〝壁〟



〝壁〟



〝壁〟




流石に萎えてくる。





更にトラップを避けながらとなると、余計に体力は削られていくばかり。

段々と息も上がってくるし。


いつもでも避け続ける事は困難になってくる。





「せめて上空から迷路を把握出来れば…… 紙の上で解く場合だったら、行き止まりを全て塗り潰せばゴールまですぐなのにっっっ」




あっ。




その方法があるじゃんか。






三葉(みつは)は〝創造〟のスキルで地面を盛り上げ、壁まで届く階段を作る。そして壁の上に立ち、全体を把握した。



が、そこでも僕は絶望を味わう事になった。



360度、遠くまで見回しても、何と迷路の終わりが見えないのだ。





三葉(みつは)は最初から巨大迷路の中にいて、そもそも入口や出口があるのかすら怪しかったが、その希望をわずかにも捨てないで持っていた。




だが、これでは………




下を向いて、僕は挫けそうになる。

このまま諦めてしまえば楽になるのだろうか?現実から逃避できるのだろうか?


これまで逃げてきたように、部屋の片隅でうずくまっていれば、それで、それでいいのだろうか。





前世では姉たちを先に亡くし、自暴自棄になっていたあの頃の自分に戻ればーーーーー





そんなしょうもない考えが、頭をよぎる。





いや、このまま、くよくよしていても仕方ない。せめてどちらかに方角を絞って、進むしかない。進むしかないんだ。





今度こそはこの世界で、精一杯、生きるんだから。





三葉(みつは)は集中し〝創造〟で頑丈な板……よく工事現場で使われているようなものをイメージし、壁と壁の間にかけていく。



これを繰り返していくしかない。





今は、前に進もう。





前を向くと、ふと、ハヤテの顔を思い出す。


あの時のハヤテ、見たこともないくらい焦った顔をしていた。

手を伸ばしてくれたけれど、僕はその手を掴む事ができなかった。もしかしてハヤテの性格上、自分を責めたりしているんじゃないか……なんて、そう思うと余計早く戻らなきゃ。



それに、姉さんたちも心配しているだろうし。



こんなところで、いつまでも油を売っているわけにはいかないんだよ。





三葉(みつは)はひたすら〝創造〟を繰り返し、とにかく前へ進んだ。






〝創造〟



〝創造〟



〝創造〟






そして、その様子を空中から覗き見る1人の男。

顎に手をあてて、面白いものでも見るかのような目でじっと三葉(みつは)を観察する。






「ふ〜〜〜ん。そんな方法で俺様の迷路を破ろうと……?くくっ、面白いじゃないか」






三葉(みつは)はまだ、その存在に気付かないまま。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ