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サクラ三姉妹の楽しい学校  作者: 千間 美胤
出会いと旅立ち編
48/64

44 話し合いは続く、そして緊急の知らせ





それから話し合いはまだ続いた。





「…………あとでちゃんと休むから、少しだけ質問に答えてくれ。まず、ロー、貴様は何の用で村へ来た」



ブレイヴはローを疑うような目で、睨みをきかせている。



「おやおや、いきなりじゃな。今回はいつもの〝配達任務〟じゃよ。この暁月村にも届け物があってな?ついでじゃから、この村でも集荷できる荷物があれば持っていくぞい?」



それに対してローは、少しおどけるような感じでそう返す。



「相変わらずか。いくつかそういった依頼があったはずだ。あとで掲示板を見てみろ。………それと他の村や王都の情勢はどうだ?何か大きな動きはないか?」




少しでも情報が欲しい。と知っている事を話すよう促す。




「ふむ、そうじゃのう………王都に近付くにつれて治安は悪さを増しているように感じるのぅ。出来れば今は王都には近付きたくないのが本音じゃ。それと………これは知っているかどうか分からんが、ある組織が動き出したようじゃ」






〝ある組織?〟






「………それは〝略奪者(マローダー)〟か?」






ブレイヴは神妙な面持ちでそう尋ねる。




「そのまさかじゃ。しかしさすが耳が早いのぅ。既に情報を掴んどったか」



「いや、俺も知ったのは昨晩…… 一葉(かずは)さん、昨日の奴らを覚えていますよね?」




なんの話やらちんぷんかんな私に、ギルド長は話を振ってきた。




「あぁ〝変態貴族〟の事ですか?あの人らがどうかしたんですか?」




昨晩の事だ、よく覚えている。




「………あいつらが所持していた剣の鞘に、〝略奪者(マローダー)〟の紋章とよく似た装飾が施されていたんだ。逆さ十字と、五芒星を逆さにした逆五芒星のマークの、な」




それから、私にも昨日の事で無関係ではないと、ポツポツとその組織の実態を話してくれた。




まず〝略奪者(マローダー)〟とは、各国で暗躍している闇組織の名だそうだ。


盗みはもちろんのこと、平気で人を殺せる連中の集まりだという。禁止薬物や武器の密輸を行なっているだとか、様々な事件に関与していると噂されているそうだ。

しかしその組織の実態は不明な点が多く、各国でも手を焼いていると。各国で暗躍している闇組織の名だそうだ。



とにかくヤバい組織なのはローさんとギルド長さんの話から汲み取れた。



盗みはもちろんのこと、平気で人を殺せる連中の集まりだというではないか。

禁止薬物や武器の密輸を行なっているだとか、様々な事件に関与していると噂されていると。しかしその組織の実態は不明な点が多く、各国でも手を焼いている。


昨日の貴族が、そんなヤバい連中と繋がっていた……?





「………その変態貴族とやらは今どうしておるのじゃ?」


「色々吐かせたあと、そのままギルドの地下牢に繋いでいる。まだ聞き出せることがあるやもしれんからな」





「そうか。拷問なら手伝うぞぃ?」



剣の鞘に手をかけてそう微笑むが、ローさんの微笑みはいつもと違って愛嬌のあるものではなく、Aランク冒険者と言って間違いないオーラを秘めているような表情だった。


私は、背筋がゾクっとするのを感じた。





「………そういうの好きだよな、お前。しかし心配には及ばない。うちの優秀な部下が、しっかりと聞き出してくれるはずだ」



「部下というと、ビーン副ギルド長の事かぇ?なら、間違いないのぅ」



「あぁ。珍しく手こずっているようだが、それも時間の問題だろう」





ギルド長がそう言うと、ローさんの殺気のようなものは消えた。今のは何だったんだ?

しかし、ここまで聞いといて今更なのだが、





「………あのさ、無関係ではないのは分かったけど、そんな重要な話私にしちゃっていいの?いや、ほんと今更なんだけど……」



「………これも噂に過ぎないんだが、〝略奪者(マローダー)〟は〝癒やし〟のスキルを持つものを攫っているという情報もあるんだ。そう、〝一葉(あなた)〟のような、ね。用心していた事に越した事はない」



「………そう。気をつけなくちゃいけない対象が増えるのね………〝貴族〟に〝教会〟に〝略奪者(マローダー)〟か。一気にきな臭くなってきたわね」





それから3人は黙り、部屋の空気はより重いような雰囲気になった。









「………関係あるかどうかは分からないけれど、北の山から魔物たちが住処を追われているようね」





それからフレイとフレイママ、そしてコボルドの話を要点を絞って話す。だいぶ端折ったが、重要なところは伝わったようだった。その話を聞いた2人は目をまん丸くして、驚いたような表情をする。





「つまるところ、 一葉(かずは)殿は魔物と意思疎通ができるというわけか?にわかには信じ難いのぅ……」



「これも加護のおかげなんですがね。〝言語理解〟といいます」



「それに〝加護〟持ちときたか………昨日から驚かされてばかりだよ」





また間が空いたが、ブレイヴが顔を上げて語り出す。





「これで色々と合点がいった。近頃魔物が活発化しているという事実、大規模な住処の移動………それらは全て〝北〟で起きている事と関係しているようだな」



「………そのようじゃのぅ………はぁ、どうなっとるんじゃ近頃は」



「私も、フレイたちに今度改めて聞いてみます。他にも何か、北で起こっていることについて知っているかもしれませんし」



「………もし、可能であれば私もついて行って構わないだろうか。先ほどの話によると、その加護は周囲にいる人間にも効果が反映されるようだし、実際に私も聞いてみたいのだが」



「ふむ、そういう話ならワシも気になるのぅ……どれ、滞在期間を伸ばすのもアリかの?一箇所に留まらなければワシら的にも問題ないし?」



「えぇ……私の独断では決められませんよ。いっしょに住んでいる以上、妹たちにも確認を取らなきゃですし……」



「ふむ、ではその話は追々じゃの?どれ、ひとまず話はこれくらいにして受付へ戻ろうかの?もう発行手続きも終わっとるじゃろ」



時間をみると、随分と時間が経ったようだった。

お昼はとっくに過ぎているし、お腹も空いてきた。




「そうですね、私も一度宿に戻ろうかな?」



「もうこんな時間か。長々と引き留めて悪かった。お詫びと貴重な情報、そして貴重なスキルを使ってくれた礼に昼でも奢ろうか?」



「わ〜ぃ。ただ飯じゃ!」




ローさんが便乗して話に乗ってくる。




「………誰が貴様にまで奢ると言った」



「人の財布で食う飯は格別じゃからのぅ〜」



「………話を聞かんのも相変わらずか。これでAランク冒険者などと、どうなっているんだか」






そうしてワーワーと騒いでいると、ポケットに入れていたスマホが鳴った。

どうやら電話、着信のようだ。




相手は………あら?ハヤテくん?


三葉(みつは)といっしょに商業ギルドへ登録しに行ったはずだけど、どうしたのかしら?無事終わったという報告?

それならメールかチャットでもいいような気がするけど……何かあったのかしら?



緊急かもしれないからと、私はそのままスマホを操作して電話に出た。





「はい、一葉(かずは)です。どうしたの?ハヤテくん。三葉(みつは)といっしょなんじゃ………」



「………………俺がついていながら申し訳ありません。三葉(みつは)が、湖に飲み込まれて消えたんです」




「………………えっ、どういう事?」





私は嫌な予感と全身の血の気が引くのを感じ、その場に立ち尽くす事しかできなかった。






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