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サクラ三姉妹の楽しい学校  作者: 千間 美胤
出会いと旅立ち編
42/64

38 裏路地と商業ギルド登録




Cランクパーティー〝ガイダンス〟の3人と離れた三葉(みつは)とハヤテは、そのまま村の中央を突っ切って狭い路地裏へと入った。

表の通りとは打って変わって、人気のない道だった。狭いし、人一人すれ違うのがやっとといった狭さの道。

こんな道を通るの?!



何とかついていったが歩くスピードが弱まり、ハヤテが急に立ち止まったから三葉(みつは)も慌てて止まる。



が、間に合わず、ハヤテの背中に思いっきりぶつかってしまった三葉(みつは)




「〜〜〜っ、もう、いきなりどうしたんだよハヤテっ!」


「…………あ、ごめん。鼻、ぶつけた?…………見せて」




ハヤテはそう言うと少し屈んで、三葉(みつは)の顔を覗き込んできた。


頬に手を当てられ、じっと三葉(みつは)の顔をみる。それでも路地が暗くてよく見えないのか、視力が単に悪いのか、被せていた帽子を取り顔を近付けてくるハヤテ。



って顔近っっっ!!!

思わず後退り、三葉(みつは)は壁を背にハヤテと向き合っていた。


これじゃまるで……壁ド……




「…………ちょっと赤くなってる?あ〜……目、腫れちゃってるじゃん……」




鼻と鼻がくっつくくらいまでハヤテは三葉(みつは)に近付くと、そのままキ…………







「って!それ以上は許しませんからっっっっ!!!キっ…………キスしようだなんてっっっ!!!」







路地裏に飛び込んできたのは何と、ニ葉(つぐは)。顔を真っ赤にさせて、わなわなと僕らを指差している。それ以上って……?今、僕ら何をしようとしていたんだ……?




「あらやだ〜〜ハヤテったら、見かけによらず手出すのが早いんだから〜〜」




ニ葉(つぐは)姉ちゃんの後ろには、ミストさんがニヤニヤして立っていた。えっと、何でここにミストさんまで?一体どんな状況?




「な、何でここにニ葉(つぐは)姉ちゃんとミストさんが……?」




いきなりの2人の登場に動揺していると、ミストさんが説明してくれた。




一葉(かずは)ちゃんに頼まれてね。ニ葉(つぐは)ちゃんが心配だからって、様子を見てくるように言われたらしいのよ。アタシはたまたま朝の散歩の途中だったんだけど?ニ葉(つぐは)ちゃんとたまたま会ったから、ノリでついてきたんだけど………」




「そうよっ!!人が心配してあとをつけてきたってのにっ!!」



「まぁまぁ、落ち着きなさいなニ葉(つぐは)ちゃん。で、ハヤテ………ってあらやだ(笑)」





僕はミストさんのその反応が気になってハヤテを見上げると、信じられないくらい顔を真っ赤にしてフリーズしているではないか。




「………ハヤテ?」


「………俺、今なにしようと………」




「………んもう、朝から盛ってんじゃないわよ?それじゃ、行きましょうかニ葉(つぐは)ちゃん」


「え!?でも、私はっ!!」


「いいからいいから。あなたたちだって、もうとっくに成人しているんでしょ?これ以上の介入は野暮ってものよ?」




ミストさんはそう言うとニ葉(つぐは)姉ちゃんを肩によいしょと担ぎ、足早に去っていった。




「は〜〜な〜〜せ〜〜」




ニ葉(つぐは)姉ちゃんの声が聞こえてきたが、今はそれどころではない。どうしよう、この居た堪れない雰囲気。

ハヤテはハヤテであれから一歩も動かないし、僕は僕でびっくりしたままその場から動けなかった。



えっと、ここからどうしたらいいの……?

僕たちはそのまま一歩も動けなかった。










しばらく経ってお互いに落ち着いてきた頃、ハヤテの方から、




「…………さっきはごめん。俺…………」




と言葉を詰まらせながら謝ってきた。僕だってそんなに改まって謝られると返す言葉に迷う。




「……いや、びっくりしたけど、さ。姉ちゃんが大袈裟なだけだろ?気にすんなって」


「……あぁ。ありがとう。それじゃ、……商業ギルドに行こうか」




それからもお互いに顔の火照りはおさまらないまま、商業ギルドに向けて歩いていった。示し合わせたわけじゃないけど、自然と僕とハヤテは手を繋いで歩いていた。










商業ギルドは路地を抜けたその先に建っていた。




大通りを通っても行けるらしいが、今の路地を抜けた方が早いらしい。

荷車など大きな荷物がある場合はその道は使えないが、身一つなら最短のルートだという。




村の建物と同様に西洋風の建物で、看板には〝商業ギルド〟と書かれている。

階段を数段上がると、ハヤテは扉を開けて中へ入る。僕もそれをついて行く。



ギルドの中はまだ閑散としていて、2・3人しかいなかった。



ハヤテと共に受付とみられるカウンターへ行くと、そこに座っていた若い褐色肌の女性職員へ声を掛ける。

目の下には大きな隈ができていて、とても眠そうにしていた。




「………マロンさんお久しぶりです。キースです」



「あら〜?キースくん村に戻っていたのね。それにしても早朝から商業ギルドに来る何て珍しいじゃない。今日は冒険者ギルドの方じゃなくていいの?」




「………今日は付き添いで。この子の商業ギルドへの登録と、身分証の発行をお願いできます?」


「へぇ〜。キースくんが世話を焼く何て珍しくじゃない。もしかして付き合っているの?」




ローやミストにもこの前言われたな。と思い出すハヤテ。




「は?……何でいきなりそうなるのさ」


「え?いや、だってそれ……」




マロンさんは僕とハヤテの間を指さす。すると、手を繋ぎっぱなしだったことにようやく気が付いた。




「「っっっっ!??」」




慌てて2人して手を離すが、時すでに遅いような気もする。




「………ま?個人の事で詮索はしないけど?それじゃ、まずお名前を教えてくれるかしら?」


「あっ、はい。三葉(みつは)です」




三葉(みつは)さんね。それじゃこの木のプレートにちょっとだけ血をつけてくれる?はい、コレ針ね」





「えっ……血、ですか?」


「ほんのちょっとでいいのよ?登録するだけだし」





僕は先の尖ったもの……特に〝針〟が特に苦手だ。

小さい頃に病院で予防接種をした時、倒れたのをきっかけに〝針〟がダメになってしまった。物が二重三重に見えて足元が覚束なくなり、過呼吸で倒れてしまった記憶はいまだに鮮明に覚えている。〝泣くは〟〝針がダメ〟だわなんて……カッコ悪い。



しかもこの針、めっちゃ太い!何なら千枚通しくらい太いしデカいし、普通に怖い。




皆んなこんな太い針で刺してんの!?と血の気が引いた。




どうしよう……と内心慌てる。

ここまで来てやっぱり無理なんです!何て言えないし……ついてきてくれたハヤテにも悪いし……





「…………マロンさん、刺すのってその針じゃなくても大丈夫?」


「ん?ええ。プレートに血がつけられれば何でもOKよ?」





「そう……… 三葉(みつは)、ちょっとだけ目を閉じていてくれる?………大丈夫。すぐ済むから」




「う、うん?」




ハヤテに言われた通り、目を閉じる。するとハヤテはそっと三葉(みつは)の手をとると、指に触れた。




「………少しだけチクっとするけど、我慢してね」


「う、うん」




ハヤテは鞄から裁縫道具のセットを取り出すと、一番細い針で三葉(みつは)の指にそっと針を刺した。




「うっ……」




少しチクっとして思わず目を開けそうになったが、ハヤテの手がそれを遮った。




「………だめ。もうちょっと我慢して」


「うん」




ハヤテはプレートを受け取ると、すかさず血をプレートにつけて登録を終わらせた。

鞄から消毒液とポケットティッシュを取り出し、ティッシュに消毒液を吹きかけそっと指を拭く。更にポケットから絆創膏まで取り出すと、その指に絆創膏を貼り付ける。




「……三葉(みつは)、目開けていいよ」




三葉(みつは)が目を開けると、商業ギルドへの登録と身分証の発行は既に終わっていた。しかも指には絆創膏まで貼られているし……。

もしかしなくても、針がダメな事、バレてた?





「ハヤ……キース、もしかして分かって………」

          「………今日のお詫び。これで許して」





ハヤテが言葉を被せてきた。




「あ……ありがとう」


「……どういたしまして」




そんな2人のやり取りを、マロンとギルド内にいた数人の村人は目撃していた。






甘酸っぺぇな〜






その場にいた当事者たち以外は全員、そう思ったのだった。







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