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サクラ三姉妹の楽しい学校  作者: 千間 美胤
出会いと旅立ち編
33/64

30 ネコの隠れ家にて




ゴーーンゴーーン




お昼の12時を知らせる鐘が鳴る。





ローさんが予約をとってくれたのは、オムライスが自慢の洋食店だった。

村の角っこにあるお店で、お店の周りには綺麗な紫色のラベンダーが咲きほこっている。風でゆらゆらと揺れるラベンダー、そしてその風にのってラベンダーの爽やかなフローラルな良い香りが運ばれてくる。



ラベンダーには、「あなたを待っています」「清潔」「疑惑」「許し合う愛」なんて花言葉もあった記憶がある。

今度家の庭で育ててみるのもいいわね……。ハーブティーとしても飲めるし、ドライフラワーにしても素敵そうだし。



そして極め付けはお店の前の看板に〝ネコの隠れ家〟という文字が。



名前からして、もう、可愛い!

書かれているフォントも丸みを帯びた感じで、女性が特に好きそうな見た目のお店だった。ローさんたち、よくこんな良い店を知っていたわね。


それによ〜くみると、お店のドアにもネコのシルエットが………それになんとなんと、ネコ専用のミニドアまで……





ここは天国か何かかな???





カランカラン……



とお店のドアを開けると、



まず目に入ってきたのは〝猫〟



カウンター席に寝そべっているネコが2匹がまず視界に入った。この世界に来て、初めて見たネコだ。ちょっとテンションが上がった。



他にも床にゴロンと転がっているのが1匹、窓辺で寝ているのが2匹いた。




かっ、可愛い〜〜〜〜〜!!!




コレは……コレではまるで…………まるで……






〝ネコカフェ〟






猫好きには最高のご褒美では??いっそ〝ネコカフェ〟っていうコンセプトで売り出せばいいのに〜〜〜絶対流行ると思うのに。



でも、お店の名前といい、店主さんはかなりセンスがあると思う。



本当に素敵!




「予約をしていたローじゃが〜」



「いらっしゃいませ。予約のロー様ですね……席へご案内いたします」




出迎えてくれたのは10歳くらいの三つ編み髪の女の子。

エプロンをしていて、エプロンのポケットにも猫の刺繍があしらわれている。お店全体が〝ネコ〟で統一されていてほんと素敵だ〜〜




案内された席は一番奥で、ほんのりと日が当たるテーブル席。6人掛けの一番大きな席だった。




窓辺の奥から順番に私たちは、


一葉(かずは)ニ葉(つぐは)三葉(みつは)と並んで座り、




同じく窓辺の奥から順番に、


ロー→ミスト→ハヤテと並んで座った。




間もなく可愛い店員さんが、メニュー表をトテトテと持って来てくれた。

歩き方からこの子可愛い〜〜〜




って、このお店に来てから〝可愛い〟としか口に出していないような???




気のせい?




「こちらがメニュー表です!どうぞ、ご覧くださ………って!シロ!テーブルの上に乗っちゃダメっっっ!ほらっ、おーりーてーーー」



店員さんがテーブルの上に乗ってしまったネコのジジをおろそうとするが、本人は全く降りる気がないようだ。

テーブルの中央に堂々とゴロンゴロンと寝そべる。




「……かっ、かわいいわねっっ!」




ミストさんは口元に手を当てて、既にメロメロになっている。




「すみません……うちで飼っているシロっていうメスネコなんですけど、人懐っこくて……誰かれ構わず近付いていっちゃうんです……」



「え〜でも、ほんとかわいい〜構ってほしいのか?君は」




ニ葉(つぐは)はシロに話しかけちゃっているし……。その隣では三葉(みつは)も、




「…かわいい」




と言って尻尾をいじっているし。



すると周りのネコたちも気になったのか、近くに寄ってくる。




私たちはあっという間にネコに包囲されてしまった。




やはりここは、猫カフェ(てんごく)だったのかな。




テーブルにヒョイっと追加で乗ってきたのはジジ。黒いメス猫で、テーブルを一周するとどこかへ行ってしまった。

ネコは気まぐれな生き物だって言うけど、この世界のネコも向こうの世界と変わらないんだな。



ハヤテくんの足元でスリスリしているのは子猫。茶色いキジトラネコのミミだ。メス猫で好奇心旺盛なのだとか。



そして三葉(みつは)の足元に寄ってきたのは黒猫のクロ。

大きなネコでオスネコだ。大きいくせに三葉(みつは)の足元に寄ってはグルグルと周り、ちょっと離れては近付くといったのを繰り返している。



カウンターで欠伸をかいて寄ってこないのはハチワレでグレー色のハチ。

こちらもオスネコだ。全然興味がないようで微動だにしない。




「わわ……いつもはこんなに寄ってこないのにっ!?お、お客様、すみませんっっ!」




店員さんは慌てて謝ってくるが、




「いや、むしろありがとうございます……」




むしろご褒美だと、そう思った。








それから奥から出てきた店主さんに号令をかけられると、テーブルに寄ってきたネコ達は一斉にはけていった。




店主さん、強い……。




店主さんは年配のおじいさんで、この道のプロといった出立ちだ。


こんな店主さんが作る料理なんだから、美味しいんだろうな。何ていったって事前の情報によればお米もあると言うではないか!


あとで是非、お米について聞きたい。









そんなやり取りの後にメニュー表を見て、どれにしようか散々迷った末に注文したものは……



一葉(かずは)は店主おススメのオムライスとサラダのセット、ニ葉(つぐは)はデミグラスのハンバーグに果実ジュース、三葉(みつは)はカルボナーラパスタにミルクティーを頼んだ。



それぞれがそれぞれに好きなものを頼んだ。



ローはナポリタンとコーヒーのセット、ミストはグラタンとサラダのセット、ハヤテはカレーライスにビーフカツが乗っている謎の裏メニューを頼んだらしい。


なんだか、手慣れている?






食事が来るまでの無言が少々居心地が悪かったが、その間にサラッとスマホの受け渡しと、服の受け渡しをおこなった。


スマホには今ここにいる6人の連絡先を、全部登録してくれたという。それはすごくありがたい……。

服の方は紙袋に入れて、それぞれローさんとミストさんに渡した。2人はすっごく喜んでた。帰ったら早速着てみるそうだ。





それから少し経って、食事が出来上がって運ばれてくる。

食事が届くと、冷めないうちにそれぞれ食べ始めた。





「んん〜やっぱり暁月村にきたら、ここのグラタンとサラダのセットよねぇ〜」




ミストさんが嬉しそうに一口、そしてまた一口と噛み締めるように食べ始める。




「ここのお店、初めてじゃなかったんですね」




そう聞くと、




「えぇ、国中あっちこっち旅しているからねぇ。ここに来るのは3回目?くらいかしらね?」




暁月村に着いたら必ず立ち寄るんだそうだ。こういう、行きつけのお店の存在って、なんだかいいよね。思い出の味?っていうかさ。


〝帰ってきた〟って思えるんだろうな。






「……で、問題が……」






ローさんはハヤテを見るが、食事を黙々と食べているようだった。



すると勇者三葉(みつは)が、そのタイミングで話しかけにいった。



「ん、ハヤテ……じゃなかった。外ではキース?…の食べてるのって裏メニューなんでしょ?そういうのもいいねぇ〜」



「…まぁ、名前はどっちでもいいけど…。初対面の人に最初にキースって名乗っているだけだし……日本人にそれ言われると中二病っぽくて恥ずかしいんだよな…。裏メニューは来店が2回目以降に頼めるよ……店主の気まぐれでカレーにプラスされるのが変わるけどね。今日は〝アタリ〟だな」



「〝ハズレ〟もあるの?」



「………ここの村のギルドの冒険者が言ってた情報だと、カレーの上にまるっとりんごが乗って出た事もあったとか………」



「うぉ…豪快……ある意味〝アタリ〟じゃん」



ほんと、それは色んな意味で〝アタリ〟だと思う。

りんごをすって入れると美味しくなる〜とはよく言ったものだが、りんごをまるまる入れるなんて……お笑いのネタか漫画でしか見たこと無いわよ。



現実に存在したのね。ビックリだわ………




「………ビーフカツも食ってみる?結構美味いよ」



「え、いいの?わ〜ありがと〜」




なんてやり取りが始まるし………?

まるで友だち同士の……?ん?コレは友達同士のやり取り?なのか。



イチャコラしているように見えるのは、私の目が汚れているからなのかな。



ハヤテくんは使っていないフォークでビーフカツを取り分けて、三葉(みつは)の皿の上に乗せてあげた。

なんだか……コレって側から見たら…………………………っていや、いや!!!早とちりは良くない。……………あそこでぐずぐずしている大人と、同じになってしまうところだった。




でも正面の席で、ローさんもミストさんもジト〜〜っと疑うような目で見ているし。




「………ワシだってハヤテと話したいのに……ぐすん……」



「アタシだって………羨ましいわ………」




2人は寂しそうに遠目で眺めていた。


コレ、食事が終わったら、話の流れで仲を取り持つ感じだよね??

うまくいくのか……





よし、三葉(みつは)に特に頑張ってもらおう……






ここはそれが手っ取り早いと、瞬間的に察した一葉(かずは)ニ葉(つぐは)である。






女の〝勘〟だ







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