29 朝のコールと追加発注
ハヤテくんとのやり取りがあって、2日後の朝だった。
昨日はこの村に来て初めての村探索!という事で、3人で大いに遊び回った。
村の畑を見て回って〜
「きゃー!お野菜新鮮!私もこんな野菜が作りたいわ〜〜」
「嬉しい事言ってくれるじゃないか!どうだい?食べてみるかい?」
と畑で作業をしていたご夫婦と話した。
「いいんですか?ーーーーーんん!あっま〜い!最高です!」
「だろう?いくつか包んであげようねぇ!」
っというやり取りがあって、袋いっぱいに野菜を分けてくれた。
もちろん、タダでというワケにはいかないので、三葉に〝水〟を出してもらい、畑中に水撒きをした。
ご夫婦は大変喜んでくれた。最近は水汲みすら大変だったというので、いつもは半日かけて水やりをするそうだ。
最近は雨も降っていなかったらしいので、尚更喜ばれた。
それから田んぼを見て〜同じようなやり取りを繰り返し〜、
お店が並んでいる通りを見て〜、美味しそうなものを食べて〜、買って〜、またまた遊んで〜〜……
そう、何が言いたいのかと言うと、ついつい〝身分証の発行〟なんてすっかり忘れてしまうほど、私たちは遊びまわっていました★
そうして今に至る。
朝からピロンピロンなんかうるさい……
「ちょっと〜〜誰かのスマホ鳴ってんだけどぉ?」
ニ葉が目をこすりながら、ベッドから起き上がる。
「誰かのって、私のじゃないわよー?」
私も目は覚めていたので、すぐにそう返す。
「じゃぁ、誰の?」
「誰のって……」
三葉のスマホのコールが、ベッドの上で忙しそうに鳴っていた。
「………ん?僕の?………ん、ハヤテじゃん………んん………おはようございます?母さん」
どうやら電話だったらしい。
「……俺はいつから三葉の母さんになったの?」
「ん〜?3日くらい前?」
「……俺たち、まだ出会ってすらないんだけど」
言われてみればそうだ。
「こんな朝早くからどったの?服の方は昨日の夜、〝添付〟して送ったと思うんだけど」
「……あぁ、ワニクロのエアプリズムのTシャツ、……控えめに言って最高でした。ありがとう。……で、本題はそのワニクロの件なんだけどさ、薄らト…………いや、ローとミストも欲しいってゴネててさ……悪いんだけど追加で発注してもいい?」
おお、それは嬉しい反応。
一回着ると、癖になるよね〜〜。特に真夏なんか手放せなくなるもん。気持ちはよく分かるよ〜〜
で、どういうワケかお二人も欲しいと。
「ローさんとミストさんもほしいの?別にいいけど?」
どうせマジックバックに在庫ちょっとあるし?何なら色んな色の服もたくさん持っている。Tシャツもだし下着や靴下、ズボンにスカートまで。
ハヤテに頼まれていた帽子の試作で、色々作っていた物もあるし?こうやって在庫品を腐らせておくくらいなら、使ってもらった方が有り難い。
「……悪いね。お詫びにまたなんか送っておくから。お姉さん方のスマホも準備出来たし……ん?……は?何、ロー……ミストも……は?代われって?使い方分かんないでしょ、機械オンチのくせに…………あー、はいはい……」
何やら電話口で揉めてるような声が聞こえてきた。
「…… 三葉、ローとミストが代われってうるさいんだけど、代わってもいい?」
「ふぁぁ……あ、ごめん。寝起きでさ……うん、いいよ?」
それからガサゴソと音が聞こえて、
「……あー、もしもし?ローじゃ。使い方合っとるかの?……2日振りかのぉ?えーっと…… 三葉殿」
「〝殿〟?」
なんか、態度がよそよそしいような……仰々しいような……気が。気のせいだろうか
「あ〜…えっとぉ?話すと長〜〜くなってしまうんじゃが、要約するとワシらハヤテに呆れられてしまったようで……つまり、助けてほしいんじゃーーー!!!」
ん、どゆ事?
「つまりのぉ?ーーかくかくしかじか…………………というワケなんじゃ。いや、ほんと、ワシらが100%悪いのじゃが……」
「………それ、僕でもキレると思います………ちゃんと謝ったんですか?」
謝っていなかったら論外だな。酔っ払って絡んだ挙句、勝手に関係性を決め付けちゃうなんてさ。
ってか、いつの間にか僕まで巻き込まれてたんかい……。
僕、3次元の男は愛せないんで……何て言っても通じないだろうから、胸の内にしまっておいたが。
「謝ったのじゃが……何なら、東方より伝わりし秘伝の土下座までしたのじゃーーー!!でも、でもーーーハヤテが……ハヤテが冷たいのじゃーーー何とかしてくれたもーーー」
この世界にも土下座で謝る文化があったんだ……
でも、えぇ…自業自得なんじゃ…。
酒癖悪い人ってどこの世界でも世界共通なのかな……ま、僕も良いとは言えないらしいけど。
すると今度はミストさんに電話を代わられた。
「……ミストよ。事情はローが話した通りなの……一生のお願い……アタシ、ハヤテに嫌われちゃったら……もう、死ぬしかないわ」
ミストさんもローさんと同じで、相当参ってそうな声だった。
それに〝死ぬ〟とは穏やかな話ではなくなってきた。
それから数分、お悩み相談をする事になった僕。
それで分かった事は、2人の状況は思った以上に深刻だったという事である。
結局、2人に泣きつかれて、また6人で今日の午後に会う事になった。
ローさんとミストさんがお詫びにお昼を奢ってくれるという話で、あちらで全て予約をしてくれたらしい。
待ち合わせ場所は2日前に分かれたあの村の中央付近になった。
…………思っていたより早い再会になりそうだ。
それから超急いで追加分のTシャツやら何やらを作り、午前中はあっという間に過ぎていった。
待ち合わせ場所に着くと、〝グランディ〟の3人は既についていてハヤテが真ん中に立っていて、それを遠巻きにローさんとミストさんがどうしようどうしようと、イジケテいるという何とも奇妙な光景があった。
え、コレを取り持ってほしいって事?
関わりたくねぇーーーーー
そう心がシンクロした、三姉妹であった。
 




