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サクラ三姉妹の楽しい学校  作者: 千間 美胤
出会いと旅立ち編
29/64

26 秘密の取り引きと昇天





「……君たちって、しっかりしてそうに見えてうっかりさん?」





うっ、そう指摘されると何とも言い返せない……



「……いや、まさかハヤテが同郷なんて想像もつかなかったし。……っていうか、一言、言いたかったんだけどー?ハヤテさ、今日はこんなに暑かったのにあんな暑苦しい格好しててさ……その格好、どうにもならないワケ?」



確かに。



今日のこの気候であの真っ黒な格好は……自殺行為だったと思う。

ローさんもなかなか暑そうだったけど、ハヤテくん程じゃなかったかな。実際、ハヤテくんは熱中症一歩手前で倒れかけていたし?



すると、



「……いや、ほんと目立ちなくなくて。貴族に目もつけられたりしたくないし……この格好が一番落ち着くっていうかさ。……願わくばワニクロのエアプリズムとか、あれば欲しいけどさ……」



あぁ、便利よね。ワニクロ……



「なんだ。特にその格好にこだわりがあるってワケじゃないのね。黒くて目立たない格好なら何でもいい、っと……。……それなら僕と取り引きをしない?」



「……何の取り引きさ」



すんごい疑うような声で聞き返してきた。

いや、私でもそんな話急に聞かされたら、まず疑うだろうけどさ。詐欺、とかね。



「まず〜このスマホなんだけど、あと2台ちょうだい?それと〜この世界の事について色々レクチャーしてほしいんだ!」



いや、三葉(みつは)よ。それはいくらなんでも吹っかけすぎでは?

ハヤテくんだってスマホは★5アイテムで、レア度が高いって言ってたやんけ……。





「……おい、ずいぶん図々しいな。それで?俺に何のメリットがあるって言うのさ?……俺が損する未来しか見えないんだが」



「いやいや〜損はさせないよ?まず、ハヤテが欲しているワニクロのエアプリズムのTシャツをあげようじゃないの」



「……は?どういう事?話が読めないんだけど……」



「僕のスキルは〝水〟じゃなくて〝創造〟なんだ。イメージしたものの構造さえ理解していれば再現出来るんだよね〜」




「…………詳しく話を聞こうじゃないか」




おっしゃ、釣れた!とガッツポーズをする三葉(みつは)よ。




逞しくなったわね………お姉ちゃんは嬉しいよ………









「……ってワケで僕たちが今着ているこの服も、同じ原理で僕が作った服なんだ。汗をかいてもベタつかないし、接触冷感でひんやり気持ちいいんだよ。大きさとか色を言ってもらえば今すぐにでも作れるよ?勿論、黒も可能さ。デザインを指定したいなら、紙に絵を描いてもらえばその通りに作ってあげられる。……悪い話じゃないと思うんだけど、どう?」



話を聞いたハヤテくんは、すぐに了承した。



「……分かった。その取り引きに応じよう。……今俺が持っているスマホのストックはちょうど残り2台だから、それはあげるよ。レクチャーは……その都度メッセージ機能で聞いてくれれば返せる時に返信する、でどう?」



「OK!で、服はどうする?」



「…………考えてからあとでメッセージを送るよ。ついでだから、その他の機能についての説明書も添付してあげる。物のやり取りは……対人で試したことが無いけど、メールに〝添付〟って言えば指定した物を収納してメールごと送信出来るよ」




「なにそれ、めちゃくちゃ便利じゃん!?」




どうやら話はまとまったらしい。




「……君たちに言われたくないんだけど。えっと…… 三葉(みつは)は〝創造〟のスキルに加護で〝水〟も扱えると。ニ葉(つぐは)さんは〝結界〟と〝防音〟でしたっけ?一葉(かずは)さんは〝癒やし〟ですよね?……まずこの世界でスキルを2つ以上持っているのはかなり珍しい。ましてや加護持ちなんて……神たちの〝お気に入り〟にしか与えられないモノで更にレアなんだよ。……まぁ、俺も多分、加護持ちなんだけど、さ」



「ハヤテだって十分すぎるくらい〝チート〟じゃん……」



「……話が脱線しちゃうけど、もしかして三葉(みつは)って漫画とかラノベとか、ゲームとか行ける口?」



「ん〜…ま、隠してもしょうがないからぶっちゃけちゃうと、前世では相当〝ヲタク〟だったかも。ヌマメイトとか通ってたし、部屋中グッズやら同人誌やらで埋まってたかな?」




三葉(みつは)はそうねぇ……大学生頃に一気に目覚めていたわね。




「……ふぅ〜ん。漫画とか読みたいなら貸そうか?……明らかに俺の守備範囲外の漫画もあってさ、そっちは趣味が合うならあげるよ」





「……マジ?」






「……同郷のよしみだよ。ちょうど語れるヲタ友がほしかったんだ。……色んなジャンルの……色々送ってあげるから、たまに話し相手になってよ。ローとミストはその手は全然でさ……ちなみに2人は俺の事情は全部知っている。……向こうは自分らの事情に付き合わせて悪いって思ってるけど、俺の方こそ結構助けられているんだ……」



「そうだったんだ。……良かったら今度またローさんとミストさんとも話せないかな?私たちの事について、黙っていたことも多かったから……」



すごく良い人たちだったし、このまま関係を絶ってしまうのは勿体無いとそう思ったからだ。



「……聞いておきます。いい奴らなんで、NOっては言わないだろうし」



「ハヤテくん、ありがとね」



いや、もう、ほんと良い子〜〜〜





「……いえ、気にしないでください。あとは三葉(みつは)にチャットで色々送っておきますんで、それじゃ、また」



「うん、今日はありがとね。僕も準備が出来次第、メールで送るから。んじゃね〜」




そう最後に言い残すと、三葉(みつは)は電話を切った。


こうしてみると、ここは地球なんじゃないかと勘違いしそうになるけど……ここは〝異世界〟なんだよなぁ。





「…………はぁ〜〜まさか、ハヤテが〝転移者〟だったなんてね〜〜」



「びっくりだよね。まさか私たち以外にも地球から、こっちの世界に来ている人がいるなんて〜」



「私もびっくりしたわ。最初は子どもを送り届けようとしただけなのにね?」





今日のことについて話していたら、間もなくスマホがピロンっと鳴った。





「……ん?ハヤテからだ。ん?メールに色々〝添付〟されてる?」





そう言った瞬間、メールに〝添付〟されていたファイルが解凍されたようだった。



バサバサと本がその場に現れて、あっという間にベッドの上が大量の本で埋まってしまう。



メールに早速添付されていたのは……大量の漫画本だった。



古いジャンルの物から、割と新しい漫画まであった。この世界で漫画があるなんて変な気分だな〜と漁っていると、三葉(みつは)が1冊の本を手に取ってフリーズしていた。



何だ?と思って手元を覗き込むと……





「「あ」」





それは三葉(みつは)の〝推し〟の〝翼リン〟が出ているゲームのコミカライズ本だった。





「う」





「「う?」」





「……今日、僕は死ぬのかもしれない……」






そう言うと三葉(みつは)は本を抱えて、そのまま昇天してしまった。





「み、三葉(みつは)ちゃん!??」





※あくまでイメージです。死んでいません。






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