24 ロウソク亭と三姉妹会議
それから村を見て回り、私の〝鑑定〟で良い宿を見つけた。
とにかく安全で、清潔で、昼と夜の2食出る美味しいご飯が出るという結果が出た〝ロウソク亭〟という宿に今日は泊まる事になったのだった。
村での評価もなかなか高かった。
年配のご夫婦が経営しているお店で1階が食事を食べられるスペース、2階と3階が宿泊部屋になっていた。
各階4部屋ずつあり、2階が女性の専用フロアで3階が男性の専用フロアになっている。
こういうフロアが分かれてるタイプの宿って、なんか安心するわ〜
私たちは3人だったので、大部屋の4人部屋を借りる事になったんだけどね。
もう一つ同じ4人部屋があって、もう二部屋は2人部屋らしい。2人部屋に比べると料金も倍違ったが、こればっかりは仕方ない。
にしても部屋が空いていて良かった〜〜。
今日は何と、残り1部屋しか空いてなかったようなのだ。
ギリギリセーフだったわ……
ご夫婦には、
「あれま、可愛いお嬢さん方だけでこんな村まで歩いてきたの?大変だったねぇ……」
「今晩の夕飯はうんとサービスしておくから、た〜んとお食べなさいな」
と、大歓迎されてすごく良くしてもらった。
なんて素敵なご夫婦………!!
最初は流石に悪いと思って、ちゃんと断ろうとしたんだけど、
「若いもんはほとんど村の外へ出稼ぎに出ていてねぇ、久々に若い子たちと話せてババァも嬉しいのよ。遠慮しなくてもいいのよ?なんならうちの子になる?」
なんて言われたりしたもんだから、ここはご厚意に甘えることになった。
この日の夕飯は村で取れたというカボチャの野菜スープと、ソースがたっぷりとかかったハンバーグにポテトサラダだった。
それに籠にたくさん入った丸いパン。余ったら、部屋に持って行って次の日に食べてもいいよとまで言ってくれて至れり尽くせりだった。
食事を食べ終わる頃には、籠盛りのフルーツまで出してくれた。
りんごにみかんに、ブドウまで。この世界にも同じフルーツがあるんだと分かって嬉しいと思ったし、どれも糖度が高くて美味しかった。
余ったフルーツとパンは、包んでもらい部屋に持ち帰ることにした。
家で自炊して食べるご飯も美味しかったけど、やっぱり人の作ってくれたご飯ってなんて美味しいんだろうと思う私たちであった。
それから部屋に戻る頃には、もう外もすっかり暗くなっていた。
空には星々が煌めき、月も顔を出している。
村には徐々にロウソクの灯りが照らされ、道行く人々もとても楽しそうに談笑している。夜の屋台も出ていて、肉の焼ける良い音がパチパチとそこら中から聞こえてきた。
ここはほんとうに良い村なんだろうな。
最初に訪れた村がここ〝暁月村〟でよかった。
部屋に戻ってきた私たちは、まずニ葉に〝結界〟と〝防音〟を部屋の周りにかけてもらった。
危険性は無くとも、念の為、だ。
「はぁ……やっと、落ち着いて色々と話し合いが出来るね」
「そうだね。ネイサンはずっと一緒にいたし、途中からは〝グランディ〟の方々とも一緒だったし。悪い人たちじゃなかったけどさ〜」
「うん、そうね。むしろこの村に着いてからも、この宿のご夫婦も含めて皆んな良い人ばかりだったわ〜」
今日一日で、色んなことがありすぎた。
まず、判明したのは私が持っているスキル〝癒やし〟が、周りにバレてしまうと貴族に狙われる可能性が高いということ。私一人のためで妹たちに迷惑をかけるワケには行かないし、慎重にならなきゃ。
まずは情報収集が必要そうね。
ミストさんもそれで村を追われたって言っていたし、使いところは見極めないとダメね……。
危険を回避するためにもこの世界について、もっと知らなきゃ。
そして別れ際にキースさんが三葉に手渡したこの黒い板……スマホの存在だ。
「何でキースさんは三葉にコレを渡したんだろう……?仮にキースさんが私たちと同じ〝転生者〟だと考えるなら、私たちの事も同じ同郷だって確信があって渡してきたのよね?」
「ん〜、でも、使い方が分かるなら〜……っていうフレーズだったし、確信までには至ってなかったんじゃないかな?分からなかったら捨ててもいいって言ってたしさ」
そこが謎なのだ。
前世の話はこの3人以外は知らないし……一部、神さま?は知ってるけど。
「そこは、アレよ。本人に聞いてみるのが一番早いんじゃない?」
ニ葉はそう言うが、う〜ん…確かにそれ以外方法もないのが実情だ。
それから三葉にスマホの電源を入れてもらって、いじってみることになった。構造としては私たちが知っているあのスマホと何も変わらなかったが、不思議なのはいくら使っても充電が無くならないのと電波ってどうなっているの?という謎だった。
試しに電話帳を開いてみると、1件の連絡先が登録されている。
その相手は、もしかしなくてもキースさんの連絡先だった。
「……どうする?」
「いやぁ〜、どうする?って……渡されたのは三葉ちゃんなんだし、私たちに決定権は無いかなぁ〜なんて」
「そうねぇ…… 三葉に任せるわ」
「えぇ……僕の判断?責任重大なんじゃないの?」
三葉はスマホと睨めっこをしながら、しばらく迷っていたみたいだけど。
いよいよ決心が固まったのか、スマホを手に取って恐る恐るといった感じでボタンを押してコールする。
電話口からは、懐かしいコール音が3回ほど鳴ってそれから、
「………はい、もしもし」
と、キースさんが電話に出たのだった。
………何回も言うけど、電波どうなってんの?この世界。
 




