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サクラ三姉妹の楽しい学校  作者: 千間 美胤
出会いと旅立ち編
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16 早朝と響く声


フレイと花冠を作るのに夢中になっていた私は、空が赤く染まる頃まで気が付かなかった。


「あっ、もうこんな時間……フレイ、ごめん。今日はもう帰るね」


「うーう?うーう」


暗いし、送っていくよ。と言ってくれるフレイ。

だけど……



「大丈夫よ。すぐ近くだし。それより、フレイはお母さんにこの花冠を早く渡してあげなさいな。きっと喜ぶわよ?何て言ったってフレイが一生懸命作ったプレゼントなんですもの」


「うー…、うー、ううーう」



迷った素振りを見せたフレイだったが、うん、分かった。と納得してくれた



「うーう!」



気をつけて帰ってね。とフレイに見送られ、一葉(かずは)はフレイと分かれた。

急ぎ足で帰り、峡谷付近まで戻った頃にはすっかり日も暮れていた。






「ただいま〜〜」



家に帰ってくると、とても良い匂いが部屋中に立ち込めていた。

この匂いは…揚げ物の匂い?



「あ、やっと帰ってきた。遅いよ一葉(かずは)姉ちゃん」



三葉(みつは)が真っ先に出迎えてくれる。すると奥からニ葉(つぐは)も出てくる。



「そうよ〜。もう少し経っても帰って来なかったら探しに行こうって話してたんだからー」



ニ葉(つぐは)も心配してたんだからね?といった表情で頬を膨らます。どうやら2人にはだいぶ心配をかけてしまったようだ。

これは、とても申し訳ない気分になってくる。



「ごめんなさい。フレイと花冠を作っていたらね……」



そんな今日の出来事を話しながら、夕食を食べた。


今日の夕食はベーコンとコーンのタルタルトースト、ほうれん草の胡麻和え、キャベツとにんじんと玉ねぎと肉を炒めた野菜炒め、とりの唐揚げの4品だ。


温かいうちにニ葉(つぐは)が〝結界〟で〝保温〟をしてくれていたようで時間が経っても料理は温かかった。それにしても、〝結界〟の応用技というか、ほんとに使いこなしているなぁ〜と感心させられるばかりだ。


それにしても、どれもかも美味しい。


今では家の畑も徐々に拡大し、今では10種類ほどの野菜を育てているし、収穫できる野菜の種類と量も増えて料理の幅も格段に広がった。


この世界に転生してから毎日交代で料理を作っているが、やはりニ葉(つぐは)の当番回の時の料理はひと味違う。

私が作ると毎回ありきたりなメニューで簡単なものになってしまうし、変わり映えがしない。


三葉(みつは)が作ると料理が偏る。偏るというのは魚なら魚料理のみ、野菜なら野菜を使ったものだけ、肉なら全部肉料理。というように文字通り偏ってしまうのだ。


と、いうこともあって、結果的にニ葉(つぐは)の料理の方がバランスよく、毎度違ったものを出してくれるので一番良いということになる。

なので話し合いの末、料理のローテーションはニ葉(つぐは)に多く入ってもらっている。その分、他の掃除や畑の世話などは私と三葉(みつは)で多くローテーションを組んでいる。



人には誰しも得意不得意があるからね……


コレは理にかなった、日々を生き抜く戦術なのである。







その日は夕食を食べ終え、お風呂に入り、談笑した後それぞれの部屋で夜を過ごした。


月が峡谷の真上にくる夜も深まった頃、桜家の家の灯りは消えた。







一方、暗い森の中では、穴の中ですすり泣く子どもの声があった。


「………帰りたいよぉ………」


か細い声は誰にも届くことがないまま、夜の闇に消えていく。


そうして長い夜は過ぎていった。








次の日の朝、この日はいつもより早く目覚めた一葉(かずは)


せっかく早起きしたんだし、野菜に水をあげようと起き上がる。

〝早起きは三文の徳〟と、中国宋時代の偉い人も言ってたらしいし。



パジャマからラフな作業着に着替え、外に出る。

すると外は濃い霧が立ち込めていた。ちょっと冷んやりとしたので、部屋に一度戻って外套も羽織る。

今日の昼間は良い感じに晴れるかもしれない。今日は洗濯日和だ〜


私は水車から水を汲んで、ジョウロに水を入れる。


コレも最近発見したのだが、このジョウロに水が入った状態で〝癒やし〟のスキルを使うと水がキラキラと輝く。

このキラキラした水を野菜に与えると野菜の成長が早く、大きく育つというのがスキル使用時の利点だ。

逆に欠点は……周りの雑草もいっしょにすくすく育ってしまうから、妹たちには控えるように言われている。まぁ、何とか力をセーブして良い感じにまけたのではないかと思う。



畑に水やりも終わり、いよいよ暇になった。



次は朝食の準備でもしようかなと家の中へ戻ろうとした時、誰かの〝声〟が聞こえたような気がした。


もう一度耳を澄ます、が、今度は何も聞こえない。


やはり気のせいかと思ったが、今度は複数の足音が聞こえてきた。


盗賊や悪い人たちだったらどうしよう、と一瞬焦ったが、峡谷の周りはニ葉(つぐは)が〝結界〟で守ってくれているし〝認識阻害〟の効果も与えているはずだからここは安全だ。


特段気にし過ぎる必要はない、そう思った時だった。





「……はぁ、はぁ。こっ、こっちへくるなっっっ!!!」





切羽詰まったような幼い子どもの〝声〟が峡谷に響いた。






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