LEGEND5 ミチカとリュート
鷹遊充夏はリュート・トゥオール・ピスフィノアと共に計画を練ろうと案を出し合っていた。
「へぇ、あなた聖塔を何度も飛び出そうと脱走はかってたんだ。だからそのシェルターも楽に出られたのね」
「くだらない事をデカい声で感動するなって。別に、そんな事は日常茶飯事さ。驚くことはない、ない!!」
「あっ、ごめんなさい。わたしが驚いたばかりに計画進まなくて……」
「クローソーやその一味を叩くなんて簡単にはいかないんだ。ましてや捕まったみんなを脱走手伝えば、おのずと連中の意のままだしな〜」
「まさかクローソーって親玉の所為で、まんまと求婚って形で乗せられるなんて、わたし馬鹿だわ」
「オレがあんたを何とかするさ。絶対にミラーの外へ帰してやるぜ」
「リュート王子、ありがとネ」
「ぞんざいに扱いやがってさ。これでもオレは王子なんだぞ。コウベを低くして物を聞けよな」
「ここまで王子らしくない王子って見てて楽しんだもん」
「変わった奴だな、あんた。付き合い切れないぜ、たくよ〜」
リュートの知識範囲でのお伽話の一節。
お伽話の中の神器は、4本で一部の戦闘宝具が存在していた。
宝具の一つに、腕鐶がある。何でも物をすり抜ける能力を備える宝具だ。
つまり、充夏が持ってたというブレスレットがその腕鐶なのだった。
これには難点がある。それは、一人につき宝具は一つしか所有できない。あと扱える者たちを3人集めねば、戦闘宝具として成り立たない。
「なんで計画の前にその腕鐶のコト伝えないんだよ!!」
「そんなコト言われてもね、わたし自身に起きたコトだから、関係性とか考えても、伝える内容かなんて知らなかったんだから」
「ちょっと本題と逸れるが、腕鐶ってそちらでは『ぶれすれっと』なんだな。ま、そういうのは余裕ある時にじっくり話すがな。ところで、そのぶれすれっとは門番の管理房で預ってるんだろ?」
「そうだけど、何で?」
「呼びかけてみな、ラウンダーブレスっつー名前で。お伽話じゃ、呼びかけ一つで所有者に戻る特殊な反応が作用するらしいぜ」
「そんなコトできるんだ。じゃ、行くよ!! ラウンダーブレス!!」
すると、彼女の左腕の手首が異様に発光しだし、宝具が顕出、自動的に装着されたという。
聖塔は門番管理房。
「ウワッ!! 宝具がひとりでに消えてったぞ⁉」
門番の一人が室内から飛び出した。
「どうした、門番スタッフ。何が起きたのだ?」
声掛けしたのはアヴァソルだった。
「アヴァソル王子、実は腕鐶が突然消失しだしまして、驚愕してしまい、落ち着きできず、申し訳ございません」
「何!? そうか。つまり、あの女が取り返しに来たようだな。私くしの手柄にしてやる。クローソー様に代わって私くしが功績上げてみせてやる!!」
シェルター付近のとある通路。
立ち話するシチュエーションで計画案を出そうと相談しあってる充夏とリュートの二人。
左腕のブレスレットはこうして戻ったとしてもだ……クローソー一味は、4つの宝具を集めさせぬと必死になっている。
クローソー一味の動きの情報すら不詳の充夏たち。
そんな二人の手前、見知らぬ人物が立ちはだかった。
「何だ、そこのあんた。立ち聞きか? 趣味悪くないか?」
「一つ尋ねる。戦闘宝具の情報、ホークスの指鐶なら、僕が大切に持ってる。そこの姉さんに似た光を解き放つヤツだ」
言うなり、その指鐶を見せびらかした。
その青年はジェグダといい、充夏となんら変わらぬ年代の存在であった。