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LEGEND2 聖塔

 ここはアフリカなのか? アラブ系を思わせる衣装や帽子を着けてる民族衣装の民衆がひとしきり通過していた。

 充夏はここがどこかだなんて把握(はあく)する気持ちは持ち合わせていない。

 輪郭線(りんかくせん)が激しく存在感の濃い人種の徒歩移動が目立つ街並。

 エクスキューズミーと聞きたくなるような国際的交渉(こうしょう)の現場らしいが、ここが異世界だと思うと、普通の会話で通じ合いそうな環境に思えた。


「ここはドコですか? あのう、すみません。誰か、わたしを助けてください」


 誰も彼もが通り過ぎるだけで、見向きすらない。家族連れの子供すら見向きしない。完全スルーであった。

 そればかりかすれ違う人たちと接触しだすとすり抜ける。まるで自身が()けてるような感覚だ。

 透明人間になったかのような現象だった。

 しばらく放心状態の充夏。ふと左手首の装具(そうぐ)に気付き、それを見やった。


「ブレスレット? なんで着けてるのかしら? 一旦外してみようかな?」


 装具を手首から離した少女。繁華街(はんかがい)の民衆の誰もが、彼女に注目しだした。環境がどよめきだしたのだ。


「今までスルーだったのに?」


 ふたたび装具を装着しだす少女。注目浴びせられたが、民衆たちはさっきと同じく普通に徒歩移動を再開した。

 つまり、装具は透明化するマジックアイテムだと認識した充夏だった。


 ブレスレット着けたまま移動しだす少女。とりあえず人通りを抜け、人気(ひとけ)の少ない街路をわたり、少人数が利用する通路に出た。

 通路(わき)垣根(かきね)に身をひそめ、一人歩きの女性をターゲットに、ふたたび装具を引き離した。ターゲットに聞き込みいれてみた。


「あの、ちょっとすみません。わたし、この街来たばかりでよく分からないんです。えっと……ですね、初めて来た人はまずどこを訪ねるといいか教えていただきたいです」


 そこで、年相応(そうおう)の同い年風の娘は応答した。


「そうですね。えっと、それならあなたの目線からなら、あそこの右手奥にちょっと突き出した細長い建造物が見えるでしょう。あれを目指して進んでください。近くになるとあそこは聖塔(せいとう)になってると分かります。お気を付けて行ってらっしゃいませ」


 最初はぎこちなくぞんざい的な言い方だったが、姿を目にした時に上品さを持った話し方になった娘。


「あの、娘さんありがとう。あ、金目の物ないから、とりあえずこのブレスレットで情報料金代わりにどうぞ」

「そ、そそ、それは恐れ多い事であります。どうかそのままお進みくださいませ。よろしくお願いします!!」


 と、そそくさと早足で駆け出して行ってしまった娘だった。

 そんな娘がどこかの垣根の裏側に隠れた。


(どこかの金持ちのお姫様かな? ああ……生きた心地しなかったわ。聞き込みされるから、緊張感が取れないわ〜。まだ心臓がバクバクしてるし)


 とにかくだ。先の娘が言っていた通りに聖塔の上部尖端(せんたん)を目印に歩みだした充夏だった。

 

 10分以上も進み、やっと目的地に到着した。普段から通学以外の徒歩移動はないので、こうした進出なんて、足が()れるくらいに厳しく感じた少女であった。

 某小動物をファンシーキャラにした着ぐるみをメインとしたレジャーランドを彷彿(ほうふつ)させる塔だったので、自分は場違いなのだと緊張しまくった。

 物陰でふたたびマジックアイテムを外し、その姿を顕出(けんしゅつ)させた充夏。

 そこの門番たちに呼び止められた。


「おい……そこの身分未詳の者、提示物の確認をする。証明物がないと、ここは通さぬぞ」


 提示物? もしかしたら、このブレスレットかも知れないとブレスレットを提示してみせた。


「これしか所有してません。これで大丈夫ですか?」

「小娘、どこから参られた?」

「えっと〜、ドレッサーの鏡面から……あ、でも、それじゃ分かりませんですね。でも本当にそうなんです。信じてください」

「アウトランド? あれが産物でなく実在してたとは。申し訳ない、ささ、どうぞ門をおくぐりなさいませ!!」


 複数の門番たちは、彼女の入塔を許可し誘導しだした。

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