LEGEND1 鷹遊充夏
鷹遊充夏。16歳になる高校1年生。
一見して変わった名前だが、鷹遊家とは、代々伝わる古杖戦道場の門戸紋章を継承していた。
その叔父貴は国産ブランド革製バッグメーカー、ヒナトリバッグの会長をしている。
充夏は、普通ならクラスメイトからしたらお嬢様級に見られる存在だ。
しかし、そばかすが多くガリ勉思わす丸眼鏡に鼻先は赤い。鼻腔は横に広がってる、。質素で目立たないショートツインテール。薄茶色の頭髪。小学高学年から成長してなさそうな体形で、胸は発育してなさそうな平凡なスタイル。とても謎の多い存在だと、客観的に判断できる。
とにかくクラスじゅうにネタにされるような裕福層オーラは解き放たれてないのが、大きなポイントになっていた。
学校からの帰宅後、充夏は自室の姿見ドレッサーの鏡面に向かって必ずしもこうつぶやいていた。
「鏡よ鏡……この世の中でみにくい姿の存在を映し給え」
惨めな思いでそうぶつくさ言っておのれを卑下していた。
鏡面を覆いかぶせる観音扉でドレッサーをしまう寸前のこと。
室内灯の点灯もなく、西陽がさす部屋でもないのに、鏡面から光が漏れだしたのだ。
光を発した鏡面に吸い取られるかのように、観音扉は全開しだしては充夏をドレッサーの内側へともぐらせたのだった。
鏡面内の世界……そこは、ミラーレットという世界だと、後から聞かされるのだが、そんな異世界へと転移された少女、充夏。
彼女は、曇っていて汚れた窓ガラスを発見して、おのれの身を確認したのだ。
「わたし? えっ⁉ こんなのわたしじゃないわ。夢見てるのね。そうよ、鏡の向こうに行けるだなんてアリスじゃあるまいし」
そう、その鏡写しになった窓ガラス面の自分の姿は、まぎれもなく本人である。
まるで鏡の国のアリスの主役のように可愛らしく、谷間が確かめられるくらいの豊かなバスト。くびれた腰回り。だがドレスではなくて冒険の旅をするようなライトな短パンと軽装とも言えるほどのタンクトップらしきシャツをよそおっていた。
髪の長さは本来の鷹遊充夏のそれと不変で、髪型はショートボブ。相変わらずの薄茶色ではある。
童話とかの扉絵とかにあるようなアリスらしき顔の形に違和感あるもの、しばらくは窓ガラスの自分の身の姿に見とれてしまっていた。