お題『異世界』
『ボロ雑巾』
会社の同僚に、『小説家になろう』で小説を書いている奴がいる。
彼曰く、「テンプレを使って、トントン拍子に成り上がる作品はクソ」だそうだ。「主人公はいつまでもボロ雑巾のように扱われないといけない」とも。
そんな彼が事故で死んだ。異世界に行けただろうか。
会社の雑巾がひとつ増えた気がする。
『余命半年の恋人』
恋人が余命半年になった。
「絶対に救う」と俺が言うと、「医者でもないのに?」と恋人が笑った。俺は本気だ。
異世界に行き、冒険者になり、不老不死の薬を手に入れると、役立たずの振りをしてパーティーから追放され、薬だけ奪って、こっちに戻ってきた。
恋人は死んでいた。
蘇生魔法を使うことにした。
『生まれ変わっても』
死の間際、俺は先に死んだ妻との約束を思い出す。
「生まれ変わっても一緒になりたい」結局、俺は異世界に転生して、いまは悪役令嬢みたいな奴と結婚させられそうになっている。
「断る」
「なんで」
「また一緒になる、って約束したひとがいるんだ」
「知ってるよ。だから、結婚しよう、って言ってるのに」
『異世界ライセンス』
異世界へ行くにはライセンスがいる。
僕も友人に強引に誘われ、教習所に通うことにした。
カリキュラムを終え、僕はいまビルの屋上にいる。
「背中、押しますか。それとも自分で」
「最後にひとつ聞いてもいいですか。異世界に行くことを、どうやって証明してるんですか」
「はは。さて行きますよ」
「ちょ、