お題『勇者』
『次なる者』
「やった、魔王を倒した」
『勇者様、聞こえますか?』
「その声は姫」
『いま思念を送っております。帰還はせず、どこか遠いところへ逃げてください』
「なぜ」
『魔王がいないいま、一番の恐怖はなんだと思いますか』
「一番の恐怖?」
『逃げてください。いまお父様のつくった、第二の勇者が放たれました』
『追放された英雄の話』
「勇者様」
「きみは」
「何してるんですか。お墓の前で」
「世界が平和になった報告を、ね。彼はパーティの一員だったんだ」
「そうなんですか!」
「でも弱すぎて、このままだったら絶対に死ぬと思ってクビにしたんだ。……この村で幸せを掴んだと聞いてるよ。息子のきみを、魔物から守って死んだ英雄は」
『死亡していたフラグ』
私は魔術師。王様の命を受け、勇者様と魔王討伐の旅をしている。
ある夜、勇者様が昔話をするように、自分のいた村にいた幼馴染の話をしてくれた。
「魔王を倒したら、彼女と結婚するつもりなんだ」
その言葉に、どきりとする。だけど言えなかった。
王様が記憶をいじったことは。その村はもう滅びている。
『勇者の剣』
僕の住む村には、『勇者しか抜けない剣』がある。
その剣を抜こうと、世界中から力自慢が訪ねてくる。だから僕の両親が営む宿屋も大繁盛している。
剣を抜いたひとがまた出たらしい。七人目だ。剣を抜いた旅人は、宿屋の一室で眠っている。
僕と両親は武装した村人たちを宿に招き入れる。
墓がまた増える。