お題『写真』
『父親の黒歴史』
気付くと私と両親は見知らぬ部屋に閉じ込められていた。目の前にはボタンが。
『押すと、父親の黒歴史が分かる』とアナウンスが聞こえ、私がボタンを押すように言われた。
私じゃないならいいか。ぽちっ。写真が降ってきた。
不良っぽいバイクに乗った男の写真だ。
「「誰?」」と私と父の声だけが重なる。
『猫と作家』
最近Xで、猫を抱く作家の写真がバズっていた。私も一応、作家だ。
だから自分が死んだ後、そんな写真が多くのひとの目に触れる状況に、すこし憧れる。だけど私は猫アレルギーだから、触りたくても触れない。
その話を妻にすると、「じゃあ、一日だけ待ってて」と言われた。
翌日、妻が猫耳を付けていた。
『何者かに』
友人が何者かになるための旅に出た。
何年か経って再会すると、友人が写真を見せてくれた。
彼と一緒に三人の有名人が写っている。
「有名歌手のAさんだろ。で、こっちは世界的な映画監督のBさん。あと若手ナンバー1俳優のCさん。どうだ、すごいだろ」
「で、きみは何者に」
「えっ、俺、すごくない?」
『歴史は黒くなかった』
私はある有名な企業で、歴史を改ざんする仕事をしている。
倫理的な仕事ではないのは分かっているし、実際、抗議の電話は多い。
今日も電話が掛かってきた。男性の声だ。
『俺の人生を改ざんしただろ!』
「は、はぁ」
『学生時代の写真を久し振りに見たら、俺、全部、包帯と眼帯してた。お前らの陰謀だ!』