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何でも屋5  作者: 風雷
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何でも屋5 第4話 姉

 お互いに放った銃弾は顔のすれすれを通っていく。

 イルダへと向かってサリアが走り出す。それに、拳銃を構えながら後ろへと小刻みに飛びながら距離を取りつつ引き金を引く。勿論、殺すつもりで狙いを付けたはずだった、しかし、同じタイミングで引き金を引き弾丸同士を当て、もう一方の弾丸はナイフで斬り払って落とし、それを当たり前かの様に連続でやってのける。

 (成程。あの時のようにはいきませんか)

 イルダがそう思っていると、お互いの弾薬が尽いた所に近接攻撃が十分届く範囲まで来ていたサリアのナイフの刃が上から斜めに下ろされた。それに対して、下がるのを止め迫る刃に一丁の拳銃で受け止めて、もう一丁の拳銃の引き金から指を離しグリップを逆手で握りしめサリアの顔に殴り掛かった。

 サリアは負けじと迫る拳銃を自分の拳銃で弾き軌道をずらすと、右足を勢いよく蹴り上げる。が、体を逸らせ後ろに飛ばれ躱されてしまう。そこに体制を整えてナイフを構え投擲する。

 地面に着地し迫るナイフを拳銃で払い弾き、新しい弾倉を取り出しながら柱の陰に隠れる為に走り出す。

 サリアもナイフを投げた後に弾倉を取り出しイルダよりも早くリロードを終え、走る先を予想して狙いを付けており撃ち始めた。だが、相手の能力は高くひらりひらりと躱されて弾丸は当たらずに、逆に装填し終えたイルダの反撃を受ける事になる。

 「ちっ!やりますわね!」

 怒りながらもちゃんと避けつつ、不満げに言い放ちイルダと同じように柱の影へと移動していく。

 (怒りで我を忘れていると思っていましたが。案外、冷静に動いていますね。簡単にやれると思っていましたが、これは本腰を入れないとこちらがやられますか)

 二丁の拳銃のリロードを終え、刃が取り付けられた金属の輪を銃身に通し銃剣の様な物をこしらえる。一度大きく深呼吸をしてから、ちらりと周囲の様子を窺う。すると突然、どこからともなく銃声が鳴り響いた。咄嗟に身を隠し銃声が止むのを待ってから再び様子を見る。地面から何かが転がってきたのでよく見ると形的に手榴弾だった。

 (形状から閃光か?この場所、この状況で?)

 不審に思いつつも同じ柱の陰でやり過ごそうとしたのだが、手榴弾が転がってきた逆側からサリアが現れたかと思ったら逆手に持ったナイフを突き立ててきた。瞬時に体を伏せてそれは避けたのだが、体の影から銃口がこちらに狙いを付けているのが見えすぐにその場から離れる。しかし、柱から出た時に爆発寸前の手榴弾を銃に付けた刃で弾き少しだけ遠ざけはしたが、それでも被害は免れなかった。

 「あの時とは逆ですわね!」

 「……」

 サリアが姿をさらけ出し拳銃を構え、跪き俯いているイルダに向かって発砲し始める。

 (あいつの位置はさっきと同じ。近くの物陰との距離は――)

 思考を巡らせながら横に飛ぶ。弾丸を躱しすぐに立ち上がって斜め後ろに移動し二発目を躱しながらサリアが出てきた時の足音と声を頼りにその方向へ銃を構え後ろに下がりながら引き金を引く。

 「ちぃ!」

 反撃されると思い咄嗟に身を屈め、お返しとばかりに弾丸を撃ち込むのだが、まるで見えてるかのように軽く躱されてしまい、弾を撃ち尽くした頃には再び隠れられてしまう。

 「なんなんですの!?あんた化け物!?」

 言いながら新しい弾倉を取り出しイルダの後を追う。

 「この戦場に私は待ち構えていたんですよ?地形を把握していない訳が無いでしょう」

 そう答えつつ目が見えてきたのを確認し、足音で追いかけてくるのが分かったのでその場から走って移動し始める。その際、一丁の拳銃をサリアがいるであろう方へと向けておき動くと同時に発砲した。

 「むかつきますわね!その余裕の返し!」

 苛立ちを隠さずに言い、イルダのその姿が見えたのでサリアは慌てて柱の陰に隠れてやり過ごしながら拳銃をホルスターに戻し、背負っていた短機関銃に持ち替える。ちらりと顔を覗かせすぐに引っ込み銃声がしないかを確かめたらもう一度顔を出してみる。そこにカラカラと音がするので下を向くと見慣れたものが転がってきた。手榴弾だ。

 「いっ!?」

 即座に爆発を躱せる位置に移動をするが

 「先程のお返しですよ」

 言い終わらない内にいきなり現れたイルダが刃を突き出してきた。瞬時にしゃがみで躱して短機関銃の銃口を向け引き金を引こうとした。

 それは銃口を蹴り上げられてすぐに対処されてしまうが、上げられた足の膝辺りを下からナイフを持っている腕を絡ませて勢いよく投げ飛ばしてやる。

 「っ!?」

 流石のイルダもこれには驚いたようだったが、投げられながらも銃口を向ける事は忘れずに狙いを付けて撃ち始めようとしたのだが、サリアはイルダを投げた直後に射線を切れるように移動した後だった。

 「貴女が投げたそれは、どうやら不良品みたいね」

 次にどうするか考えながら、陰から一向に爆発しない手榴弾を見ながら言う。

 「ああそれですか」

 地面に着地した後転がっているそれに近付きながら答える。

 「これ、ピンを抜いていないんです。だから、不良品ではないんですよ」

 「何よそれ」

 「同じやり方でやり返したかったので」

 「貴女って負けず嫌いなんですの?なんか意外だわ。そんな感情で行動するなんて」

 「そうなんでしょうか?」

 「知らないわよ。自分のことでしょ?」

 「……そうなのかもしれないです。ここにきて、新しい自分を発見しました」

 「あっそ。それはおめでとう」

 「なので、これは新しい自分を教えてくれたお礼です」

 「は?」

 言った後、転がっている手榴弾をサリアが隠れている場所に向かって蹴り、それに向かって銃口を向ける。

 「ふっざけんじゃないわよ!」

 何をするか察したサリアは急いでその場から離れると同時に引き金が引かれ手榴弾に弾が当たり爆発した。

 「とんだお礼だこと!」

 上手く転がりすぐに起き上がりながら叫び、短機関銃の目標を定めて引き金を引く。

 イルダも後ろへと下がりつつ遮蔽物を利用すると共に二丁の銃を構え撃ち始める。

 サリアは指切りをすると共にナイフで銃弾を弾きながら狙い続けた。

 「全く!一発も当たらないわ!」

 悪態をつき、弾を撃ち尽くしたそれを無造作に放り投げる。新しい拳銃を取り出すとイルダに向かって走り出す。

 隠れてリロードしていたイルダは足音から近付いてくるのを察知し、その場から飛び出してすぐに左手の拳銃を構える。

 「馬鹿正直に真っ正面から来ますか!」

 「回りくどいのは苦手なのよ!」

 お互いの拳銃が火を噴く。放たれた銃弾は弾き合いあらぬ方へと飛んでいく。それが二回三回と続き次第に二人の距離が縮まっていく。

 お互いの刃が届く距離になった途端、サリアがナイフを握る力を強め大きく振り上げた。イルダは一歩下がり避けるのだが、二振り三振りと攻撃の手を緩めずに当たらなくてもナイフを振り続けるが、突如腕を曲げ後ろに引いた後に勢いよくナイフを突き出した。顔を傾けられ避けられはするのだが瞬時に逆手持ちに切り替え、肩目掛けて突き刺そうとする。しかし、イルダもそれに即座に対応して腕を曲げサリアの腕を止め、お返しにと右手の拳銃の刃を突き刺しにいく。だが、すんでの所で銃身で受け止められてしまうが間髪入れずに足で蹴り上げる。

 サリアはそれに合わせる様に体を逸らせて大きく後ろへと飛び攻撃を躱すと、ナイフの持ち方を元に戻しつつ新しい弾倉を取り出しながらナイフをイルダに向かって投擲しすぐさま拳銃の弾倉を取り換え地面に着地したと同時に銃口をイルダへと向ける。

 イルダの方は飛んできていたナイフを刃で払い飛ばしている時に銃を構えているサリアを見て、咄嗟に顔を傾ける。次の瞬間にはその横を銃弾が掠めていき傷ついた部分から血が滲む。間を置かずに続けて銃弾が飛んでくるが銃に付いた刃で軽くいなしながら発砲し返した。

 お互いの銃弾がすれ違っていき、やがて弾が尽きるとサリアはイルダへ向かって走り出し、途中でリロードを挟みつつナイフを抜いた。イルダは空になった弾倉を放り投げる様に外してリロードの隙が無いと判断しその場で迎え撃とうと構える。

 サリアはまず拳銃を前に出し引き金を引く。刃で弾かれてしまうのを分かっていつつ一発二発と撃ちこむ。案の定弾かれてしまうが、その間に距離が縮まったのでナイフを突き出しにいく。

 体を逸らしナイフを躱すと、伸ばした腕の脇の下を狙って刃を鋭く動かした。

 避ける様に体を捻り避けそのまま一回転をして再びナイフを横から突き刺しにいった。後方へと軽く飛んで躱されたものの、回転の勢いを即座に殺し追いかけざま今度は下からナイフを斬り上げる。イルダはそれに合わせて銃を振り下ろす。金属音が鳴り互いの武器が止まる。

 ナイフを止められ、次は拳銃を向け引き金を引こうと動かす。しかし、同じく銃を動かして構えた拳銃に当て銃口を逸らし弾丸を躱されてしまう。何回も躱されている内に再び弾切れを起こして仕方なくサリアはイルダから距離を取った。それに対してイルダは追いかける事はせず、そこに構えたまま立っていた。

 「やりますわね」

 「貴女も。ここまで出来るとは、正直思っていませんでした」

 「どういう意味ですのよ」

 「妹や従者に守られているか弱いお嬢様だと、思っていました」

 「はっ!当たってはいますけど、自己防衛出来るくらいの力は身に付けてるわよ」

 「そのようで」

 会話が終わると、二人は同時に並走し始める。拳銃の弾倉を新しいのに変え同じタイミングで銃を構え走りながら撃ち始める。柱の影に出たり入ったりして二人は銃弾を躱しながら撃ち込み続け、共に残弾が無くなると共に敵に向かって行き距離が縮まったタイミングで片足を軸にして一回転をしてから双方の蹴りがぶつかる。逆回転をしてもう一度蹴りを入れ合い、二人は一旦距離を離してまた近付いて行く。

 イルダが刃を横に振ると、それに合わせてサリアはイルダを超えるように飛び、飛び越える寸前にナイフをイルダの首元に振った。イルダはそれを体を逸らせて躱す。

 着地したサリアが顔を上げると、近付いていたイルダの放った蹴りが迫ってきていた。咄嗟に腕で防御をしたが勢いは殺せず派手に蹴り飛ばされてしまう。上手く受け身を取りすぐに起き上がるが、その間にリロードを済ませていたイルダの銃口がサリアを狙っていた。

 「ちっ!」

 即座にその場から移動しようとするがそこに銃弾が襲い掛かる。数発はどうにか躱したが、残りは頬や肩を掠め一発は腕を貫通するほどの怪我をしてしまう。

 それでも、何とか物陰に隠れて相手の出方をうかがう。どうやら、追撃は加えてこないようであった。

 「こんな状況で余裕かますって、どこまでもそのなめた性格は変わりませんのね」

 「なめている訳ではありません。用心をしているだけです」

 「ふん!まっ!こっちとしてはありがたいですけどね!」

 両者のリロードが終わり、サリアが腕の痛みに耐えながらどうするか考えていた時、不意に胸のポケットの携帯が震えた。

 (誰ですの?こんな時に)

 自分でも馬鹿な事をしていると思ったが、何故だかこれは目にしなければいけないと思い、ナイフを仕舞いそれを手に取る。

 そこには短い文章と一枚の画像が貼りつけられていた。

 「――!」

 送り主と文章、そして画像を見たサリアは驚いた後に顔が綻んでしまう。

 「全く……方針転換しなきゃいけなくなったじゃない!」

 携帯を仕舞いまたナイフを取り出して手で遊びながらテンション高くイルダの前に飛び出した。

 そんなサリアの雰囲気が変わったのを察したイルダは不思議に思い聞いてみる。

 「何か良い事でもあったんですか?」

 「まぁね。早く終わらせて帰らないといけなくなりましたわ」

 「……そうですか」

 はぁ、と溜息をついたイルダを見て今度はサリアが聞いてみる。

 「そっちは、何か悪い事でもあったんじゃない?」

 「ええ。誰かさんがやる気を出してしまって。めんどくさくなりそうです」

 「それはそれは。お気の毒様ですわね」

 遊んでいた手を止め、サリアは前進をイルダは後退をし始める。

 サリアに向けて銃口を向け引き金を引く。当てようと狙いを付けているはずなのだが、躱され、ナイフで弾かれ、銃弾で撃ち落とされてしまう。

 「本当に!簡単にやってのけますね!」

 「当たり前ですわ!貴女達がどれだけの死線を越えてきたのかは知りませんけど、私達だって、別の形でいくつも越えてきてますのよ!」

 柱の影を縫うように動いていた二人だったが、イルダがそこから飛び出した時目の前にいたサリアが忽然と消えてしまう。

 「……」

 驚きつつもサリアを探そうと辺りを見ようとしたのだが、思ってもいなかった所からサリアが現れ飛びあがりながら回し蹴りを放ってきた。

 「ちっ!」

 それに即座には対応出来ず、左手の拳銃を蹴り落とされてしまう。しかし、その反撃に右手の拳銃の刃を突き刺しにいく。

 サリアは地面に着地した瞬間に後ろに飛び躱して見せると、イルダが空いた左手に腰に差してあったナイフを取り出して投擲してくる姿が見えた。迫りくるナイフを自分のナイフや銃で叩き落す事も出来たが、首を傾けるだけで躱してみせてどや顔を決める。

 そんな顔を見てイルダは呆れた顔を向けた。

 「その顔!家族に何度も向けられてますわ!」

 「今更になって、貴女が本当にあの人達のリーダーなのか疑問に思えてきました」

 「ふん!こんなリーダーでもいいって言ってくれる人達しか周りに居ませんの。だから、これでいいんですのよ」

 「そうですか。恵まれた環境で生きてこられて良かったですね」

 「ふふん。羨ましいでしょう?」

 「いいえ。私も、恵まれていますから」

 「それは、良かったですわね!」

 言い終わらないうちにサリアはイルダに向かって走り出していた。

 身構えたイルダは近付いてくるサリアが間合いに入ったタイミングで素早く刃を突き出す。

 刃を躱すように飛びイルダの後ろに背中合わせで着地する。そして、右手のナイフを首目掛けて横に振る。

 迫るナイフを、腕を曲げてナイフを持っている腕に当てて止め、同じように刃を横に振るってサリアを斬りにいく。

 同じように攻撃を止められるも、すぐに体を回転させイルダの放つ刃に向かって自分のナイフの刃をぶつけにいく。二人の刃が刃音を立てて、向かい合わせになり睨み合う。

 「まだまだ!元気ですわね!」

 「やる気を出したとこ申し訳ないのですが、諦めてくれません?」

 「ここまでやっといて!?諦める訳ないでしょ!」

 同時に距離を離し体制を立て直すと、最初に動いたのはサリアだった。十分近付くと体を捻り足に力を入れ蹴りをいれにいく。

 それを分かっていたかのようにイルダはしゃがみ、片足立ちになっているとこに蹴りを入れる。

 「いっ!?」

 その場に勢いよく転び早く起き上がらないと思った時、イルダが拳銃を振り下ろした姿が見え咄嗟に持っていた銃を捨て、銃を持っているイルダの腕を掴み目の前まで迫った刃を何とか止めて、変わりに自分のナイフを突き刺しにいくのだが

 「なっ!?」

 イルダがしたことは、それを掌で突き刺されたうえでナイフを握っているサリアの手をそれごと握り逃げれなくしてきた。

 「こいつ!」

 「このまま、終わりです!」

 少しの間膠着状態が続くが、サリアがいきなり両足を自分の方へと動かしイルダの腹目掛けて思いっきり突き上げた。

 「おらぁ!」

 「うぐっ!?」

 蹴り飛ばされた衝撃で拳銃を落としてしまい地面に背中から落ちるもすぐに立ち上がり前を向く。既にサリアが走り込んで来ていた。身構えていると、先程と同様に蹴りを入れようとしてくる。

 「学習しないのですか?」

 対処しようとしゃがもうとした時、サリアは突然ジャンプして一回転をしそのままかかと落としを決めに来た。すぐに両腕をクロスさせそれは防いだのだが、片足を地面に付けた瞬間体を逸らしその足を顎目掛けて思いっきり蹴り上げた。

 「っ!?」

 それがイルダの顎にもろに入り後ろに吹っ飛ぶ。意識を朦朧とさせながらも立ち上がろうとしている所にサリアは近付き、太腿辺りに吊っていた一丁の銃を抜き狙いを定めた。

 「これでお終いですわね」

 「……撃ちなさい」

 「ええ。そうさせてもらいますわ」

 負けを認め覚悟を決めたのかぶっきらぼうに言うイルダに対して淡々とサリアは返した。

 引き金が引かれ銃弾が発射される。銃弾は地面に跡を付けるだけに終わる。

 「はい。これで貴女は一度死にました」

 「……何のつもりですか?」

 「何のつもりって、私なりに戦いを終わらしただけですけど?」

 「殺しなさい。貴女は勝者なんですよ。敗者には死あるのみです」

 「貴女の中ではそうなんでしょうけど、私の中では違うんですの」

 「情けをかけるつもりですか?そんな気遣いは必要ありません」

 「そんなこと、する訳ないでしょ」

 ポケットから携帯を取り出し、先程届いたメールの画像を突きつけた。

 「……何ですか?それは?」

 「貴女、初めてなんじゃない?人を殺し損ねるのは」

 そこに写っていたのは、嬉しそうに泣きじゃくっているのが見て分かる女性と、そんな人に抱き付かれて物凄い顔で嫌がっている女性の二人、アメリアとエミリーの姿が写っていた。

 「最初は、勿論貴女を殺すつもりでやってきましたわ。アメがもしも死んでしまったら、あの世でリベンジをさせてあげたかったからね。でも、こうやって生きてますから。貴女を殺してしまったら、この世でリベンジをさせてあげられなくなっちゃうでしょ?だから、生かしてあげるんですの。お分かりになりまして?」

 「……」

 理由を聞いて渋い顔で黙るイルダ。それを見て、携帯をしまいながら勝ち誇った顔でサリアは言い放つ。

 「どうです?負けた相手に生かされる気分は?」

 「最高にむかつきますね」

 「おーほっほっほっほっ!まぁそうでしょうね!」

 高笑いするサリアの姿は一層イルダの顔を歪め溜息をつかせた。

 「そう言う事だから、これが終わったら一度は私達の家に来なさいね。歓迎しますわ」

 「争う事を分かっていて行くんですか?」

 「そうですわね」

 「憂鬱です」

 肩を落としながらイルダは考えていた。

 (さっきまで殺し合いをしていた敵とこんなに親し気に話し合うなんて……私も、疲れが溜まっているんでしょうか)

 そんな時、サリアは付け足すように言う。

 「因みにですけど、私の従者は私よりも強いですわよ。覚悟しておくことね」

 「……」

 にやりと笑うサリアに、イルダは心底呆れてしまった。

 (貴女よりも強い?冗談でしょ。紛れもなく貴女があの中で一番強いですよ。お嬢様)

 そんなイルダの気持ちを知らずに、サリアは再び高笑いをし始めた。

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