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何でも屋5  作者: 風雷
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何でも屋5 第3話 道具

 ロボット三姉妹は息の合った見事な連携でデルバドを翻弄するが、デルバドには全くと言っていいほど効いている様子は無かった。

 「おねーちゃーん。この戦いきらーい。飽きたー」

 ロワが駄々をこね始め、ロウもそれに続き気だるそうに言う。

 「姉さん。この不毛な争い、何時までやるつもりですか?」

 「んー。そうですねー……」

 二人の妹に対応を迫られ考えていると、デルバドの拳が近付いていたので取り敢えず避ける事にした。

 「二人共、そろそろ武器を解禁していきましょう。本気でこの人を倒しますよ」

 「そうこなくっちゃ!」

 「それじゃ早速」

 そう言って、ロウが左手の刃をしまい腕を伸ばす。手首がぱかっと開き現れた穴をデルバドに向けるとそこから黒い球が射出される。

 デルバドはそれに手を伸ばし掴んで投げ返してやろうとするが、その前に爆発して無数の破片が襲う。

 「爆発で威力が付いたそれならどうだ?」

 ロウは得意気に言うが、それがデルバドに効いている感じは無かった。

 「マスターが爆発の威力を高めて範囲じゃなくて前方に特化した作りにしてくれたのに効かないのか。そうですか」

 とても不満そうに言う。

 「もっと改良してもらう様に、帰ったらマスターに頼みましょうね」

 ロアが慰めるように言った。

 「情けないなーロウお姉ちゃん。私のを見とけー!」

 言い終わるや否や、口を開いてそこから筒が出てロウが出した物と同じような黒い球が発射される。デルバドの前で爆発すると無数の小さな弾丸が飛び出し襲い掛かるが、さっきと同じような展開になった。

 「あれれー?おかしいなー?」

 「中身がほとんど一緒なんだからそりゃそうでしょうよ」

 「ロワの装備も、マスターに頼んで改良してもらいましょうね」

 「うーん……」

 「……」

 デルバドは暢気な三人のやり取りに呆気にとられた様子で見ている。

 「ほら二人共、遊びはここまでにして下さい」

 「はい。姉さん」

 「はーい!」

 ロウとロワがデルバドに向かって走り出す。そんな二人の後ろ姿を見ながら、ロアは思いを馳せていた。

 (マスター達と出会って、私達はどこか変わったような気がします。プログラムの書き換えのせいでしょうか?それとも、これが、人間というやつなのですかね?)

 そんな事を考えながら、二人に続いていく。

 先に再びデルバドに近付いていた二人は、会話をしながら攻撃を始めていた。

 「こういうのってさ、同じ所を突いてたらさ、いつかヒビが入ったりして壊れるってあるよね」

 「あれでしょ?雨だったかが石を削ったとかそう言うのでしょ?」

 「雨だれ石を穿つ、ですね」

 そこにロアも合流して会話に付け足す。

 「同じような言葉だと、どこかの国は一日にして成らず、とか、石の上にも三年、とか」

 「それそれ~。これもその内、傷になるのかな?でも、三年もやってられないよ~」

 「ほんとにね。何か対策は思い浮かぶ?」

 「なんにも」

 「分かんなーい」

 「あらそう。じゃあ、糸口を見付けるしかありませんね」

 デルバドの後ろに回ったロワは、また口を開け筒を出し黒い球を射出する。数秒後に爆発をして無数の弾丸がデルバドの背中を襲う。無論、傷が付く事は無い。

 ロアは全ての指をデルバドに向け先端を開く。そこから、弾丸をばら撒いた。デルバドはそれを鬱陶しそうにしながら右手を顔に添えて防ぐ。

 「……」

 軽い反撃をしつつも、好き勝手やられていたデルバドが突然その場から姿を消す。

 しかし、三人は焦る事は無く冷静に対処する。

 「どんなに早く動けても一部例外を除いて、私達のセンサーから逃れる手段はありません」

 三人は一斉に背中合わせになりお互いの死角を無くして部屋全体を見回す。

 「いた!」

 叫んだロワが指し示した方向は部屋の隅だった。

 「逃がすか―!」

 移動した先で、デルバドは深く深呼吸をしていて、その姿は先程までとは雰囲気が違って見える。それを察知したロアは、先に突っ込んでいったロワに呼びかける。

 「待ちなさいロワ。何か様子が――」

 「へっ?」

 足を止めようとしたロワの前に瞬時に移動したデルバドは、左手を右から左へ勢いよく振る。まるで顔の前の虫を追い払うように。それをまともに受けたロワが盛大に吹っ飛んでいった。

 「おー。綺麗に吹っ飛んでいった」

 「ロウ。余所見してる場合じゃないですよ」

 「んっ?」

 飛んでいくロワを見ていたロウが振り向いた時、拳を振り下ろそうとしているデルバドがそこに居た。

 「ありゃりゃー」

 落ちてきた拳がロウを潰したように思えたが、頭の上に腕をクロスさせて攻撃を防いでいるロウの姿がそこにあった。

 「それで、一体何人の人間を潰してきたのかは知りませんが、生憎私達は人間ではありません。ですから――」

 「私達は、簡単にはやられないんだよねえええぇぇぇ!」

 吹き飛びながらもすぐに体勢を直し、吹っ飛んだ勢いと同じ速度で戻って来るロワは、そのまま体を回転させてデルバドの顔面に蹴りをお見舞いする。

 「……」

 蹴られて数歩後ろに下がるデルバド。

 「どうだ!少しは効いたか!」

 「……」

 デルバドの顔はなんとも無さそうである。

 「全然効いてる様子が無いね」

 「えー」

 「あんた、少しは学習しなさいよ」

 「だってー」

 二人がじゃれている所に、デルバドの腕による薙ぎ払いが襲うが、二人はひらりと躱してデルバドから距離を取った。

 「おまえ、たち。やるき、ある、のか?」

 突然、デルバドが三人に話しかけてくる。それに、落ち着いた様子でロアが答える。

 「あら。こちらは至って真剣です」

 「そう、みえない」

 「貴方が今まで戦ってきた敵と種類が違うだけですよ」

 「そう、なのか」

 「敵の発言を素直に聞くんですね」

 「てき、だからって、いって、いることを、すべて、ひてい、しては、だめ。たいちょう、が、おしえて、くれた」

 「それは良い教えです」

 「お姉ちゃん!何親しげに話してるの!」

 我慢出来なくなったロワが姉に詰め寄り、ロウもそれに続く。

 「そうよ姉さん。緊張感無さ過ぎ」

 「敵との対話だって大事な事なのよ。それに、さっきまでの私達もそうだったのでは?」

 「それはそれこれはこれ。それに、そんな事してる暇があったら、さっさと倒してお嬢様達の援護に行くのが一番大事なんじゃない?」

 「あら正論」

 「やっぱり、ふざけ、ているな」

 「申し訳ないですね。ここからは、おふざけ無しです」

 その一言をきっかけに、ロウとロワがデルバドの左右へ移動しロアは真正面から向かって行く。

 「おれ、も、おまえ、らに、つきあって、られない!」

 そう言うと、右手を地面に突き刺したと思ったら、それを抉る様に掴んで構えると、自分の右側に見えるロワに向かって瓦礫を投げつけた。

 「はえっ!?」

 無数の瓦礫がロワを襲う。両腕で顔を隠し防御したかに見えたが、一際大きな物が飛んでいきそのままの体制で吹き飛ばされる。

 「なんでもありの対決、勝つのは私達です」

 吹き飛ばされたロワをちらりと見る。首を振り頭を掻きながら瓦礫をどかしており、とても元気そうである。そんな姿を見て安心した後、今度はロウの方を向き目くばせをする。

 姉の意図は分からなかったが、取り敢えず近付くだけ近付いて後は成り行きに任せようと思った。

 デルバドが目の前のロアに対して拳を作った右手で殴り掛かる。それはぎりぎりの所で横に躱されるが、そこに左手の拳を水平に叩きつける。

 ロアは宙返りでそれを避けると、デルバドの腕に向かって右手の刃を突き立てる。しかし、当然の様に刺さりはしない。

 「ロウ。私の腕を押し込むように思いっきり蹴りなさい」

 「……!おーけー姉さん。」

 姉の言葉を受け考えが分かり、地面を蹴って勢いを付けて加減無くロアの腕を蹴っ飛ばした。まるで歯が立たなかった刃が突き刺さった。

 「……っ!」

 「あら。あっさりと入りましたね」

 刃を引き抜き二人は後ろへと下がる。

 「やったね姉さん」

 「まさか本当に上手くいくとは思っていませんでしたけど。まぁ、どんなに鍛えても、どんなに強化されても、所詮、あなたも人間という事ですよ」

 「おれが……にんげん……」

 自分の腕から血が流れているの見て、急にニッと笑う。

 「おれが!にんげん!はっ!はっ!はっ!これが、いたみ!おれの!ち!あかい!はっ!はっ!はっ!」

 「あれって、笑ってるんだよね?」

 「多分、そうでしょうね」

 「変な笑い方」

 「笑うのに慣れていないのでしょう」

 デルバドのぎこちない笑いを見て、若干引いてしまう二人。

 「たいちょう、が、いってた。てきにも、けいいを、はらわ、ないと、いけないって」

 「はい?」

 「おまえ、たちは、おれを、にんげん、って、いって、くれた」

 「ええ。壊すではなく殺す事が出来るみたいですからね」

 「そんな、あいて、には、さいだい、げんの、けいいを」

 「一体、どんな事をしてくれるのでしょう?」

 ロアの言葉に被るようにデルバドは動き、ロアの隣に居たロウを殴り飛ばした。その速度は、二人ですら追えぬほどに速かった。

 「あらら。そうきますか」

 飛んでいったロウを目で追いかけ顔を戻すと、拳が目の前に迫っていた。それを体を傾けてぎりぎりで躱す。そこに二撃目が迫るがなんとか避けて距離を空けようとする。が、すぐに詰められ攻撃を続けられる。

 「おおおらあああ!」

 どうにか拳を喰らわずにいると、体を横にして足から火を噴きながらロワが物凄い勢いで突っ込んで来ていた。

 デルバドは平手で叩き落とそうと腕を振る。

 「さっきは油断したけど!」

 ロワがニヤリと笑う。体を起こして火を噴いている足の裏を地面に向け、一瞬だけ強く噴く。その場で上に高く飛び上がりデルバドの腕を見送ると、右足を曲げ火を噴き急接近してそのまま顔面を蹴る。

 相変わらず効いている様子は無く、顔の周りを飛ぶ虫を払うように腕をぶんぶん振るデルバドの顔の周りを、ロワが器用に飛び回り注意を引く。その間にロアは距離を取り、吹き飛ばされていたロウが合流をする。

 「大丈夫?ロウ?」

 「なんとかね。でも、あんなの喰らい続けたら、回路がイカレちゃうよ」

 「そうね。ロワも同じでしょう。少し動きがぎこちなく見えるし」

 「だからこそどうするの?あいつが人間だってのは分かったけど、だからって、あんな攻撃何度も通るとは思えないよ」

 「そうですね……」

 ロアは目をつむり、一度大きく深呼吸をしてから目を開ける。その顔は、何かを決意したかのようにキリっとしている。

 「いい、かげん、うっとう、しい!」

 「ふえっ!?」

 飛び回っていたロワに平手打ちが入り、ロアとロウの近くに飛んでくる。

 「大丈夫?ロワ?」

 「んー。なんとかー」

 「とか言って、本当は結構やばいくせに」

 「……実はねー。視界がざらつくんだよね。関節も動き鈍いし」

 「やはり、早急に決着を付けないと持ちませんね。二人共、行きますよ」

 「どうするの?姉さん」

 「二人は、どんな手段を使ってもいいのであの男を止めて下さい。その後は私に任せて」

 「分かったー」

 「姉さんは大丈夫なの?」

 「ええ。二人ほど調子が悪くなってはいませんよ」

 片手で小さくガッツポーズをして大丈夫だとアピールをする。

 「ならいいんだけど……」

 姉のその態度に、ロウは何か違和感を感じていたが、姉の考えている事なので感情を押し殺した。

 「さぁ……やりますよ」

 「ええ」

 「おっしゃー!」

 叫ぶと同時にロワは足から火を噴き一気にデルバドに近付いて行く。それに合わせる様にデルバドは拳を突き出すが、跳び箱を飛び越える様に避けるとそのまま顔面を蹴ってやる。

 「それしか、できな、いのか」

 「へっへーん。お前に私の手の内は見せてあげないだけだよーだ」

 もう片方の腕が伸びてくるが、蹴りに使用していない足の裏をその拳に向けて火を噴射して逃げていく。そこにロウが手首を曲げて出した刃を飛ばした。それはロアが先程つけた腕の傷に見事命中させる。そして、刃を飛ばしていない方の腕を地面に向けそのまま射出して突き刺した。

 「うん?」

 「こっちの腕は貰い」

 腕を引きデルバドの腕を引き寄せる。

 「ぐううう、うっとう、しい!」

 刃が刺さっていない腕で刃を引き抜こうとする。

 「それはさせない!」

 デルバドの動きを見て、ロワが全ての指先を向ける。そこから次々と鎖が放たれうまい具合に腕に絡まっていく。

 「ほーら!こっちの腕ももらいー!」

 「ぬうー!」

 デルバドから離れるように足裏の火をめいっぱい噴射する。磔られているような格好になったデルバド。

 「姉さん!言われた通りにしたけど、やることがあるなら早くして!」

 「お姉ちゃーん。色んなとこから嫌な音が鳴ってるよー」

 「はいはい。ちょっと待ちなさい」

 「ぐぐぐっ!」

 妹達の催促を軽くあしらいながら、必死にその状況を何とかしようとしているデルバドにロアが近付いて行く。

 「それで、姉さんは何を考えているの?」

 ロウはロアの考えを聞こうとする。

 「この人も、私達も、共通の弱点があるのに気付きませんか?」

 「共通の弱点?」

 「そんなのあるのー?」

 「ええ。私達は外を傷つけられても特に問題はありませんが、中の回路や配線を傷つけられると動けなくなってしまいます。この人も同じです。体の中を直接傷つければ」

 「動けなくなる!」

 「そう言う事です」

 ロワのはねた声に頷きながら答える。

 「うがあああ!」

 デルバドが叫ぶと腕を縛っている二人が徐々に引き寄せられて行く。

 「姉さん!やりたいことは分かったから、早くやっちゃって!」

 「いいいいい!痛みは無いけど、人間だったら、痛いー!って叫ぶかもー!」

 みしみしと鳴っている妹達を横目に急いで行動に移す。

 デルバドは、動きを制限されながらも縛られていない足を使って迎撃を試みる。左に振り右に振った後にかかと落としをする。ロアがそれを何とか躱した直後、凄い勢いで眼前へと迫った。

 デルバドが驚きで口を開いた時、ロアは腕を伸ばしそこへと入れる。

 「ぐううう!」

 「これでお終いです」

 必死に抵抗するデルバドはロアの腕を噛み砕こうとするが、もう一方の手で阻止される。

 肩から右腕を外し爆弾のスイッチを入れたら押し込むように左腕を振りながら、デルバドを蹴って急いで離れる。

 「ううううう!」

 「あらら」

 「うわっと!?」

 力強く地面から離れたデルバドが姉妹を引き連れてロケットの様に飛び掛かってくる。

 「最後の抵抗ですか?お見苦しいですよ」

 残っている左腕の手首を曲げ刃を出すと向かって来るデルバドに振った。しかし、歯で止められたと思ったらそのまま噛み砕かれてしまう。そしてその勢いで首元を噛まれみしみしと嫌な音が響く。

 「全く……すぐに爆発しないとは。マスターには後で文句を言わなくてはいけません」

 砕かれた刃を仕舞おうとするが、収納口にトラブルが起きたのか仕舞えず、仕方なく不格好なまま抵抗をする。それでもデルバドを引きはがす事が出来ずに、遂には首から破壊されてしまった。

 「まサか……こうナル……とハ」

 「姉さん!」

 「お姉ちゃん!」

 体と分離した頭が転がる姉の無残な姿を、二人は呆然と見るしかなかった。

 「これ、は、むりだ。ならば、みち、ずれ!」

 そう言うと、大きく口を開けロアの首の根元を入れる。その時、くぐもった音が鳴る。

 二人はその場に力無く倒れ、デルバドの口から大量の血が流れ出す。動かなくなったのでロウとロワは拘束していた物を取り外してから近付いて行く。

 「お姉ちゃん……ロアお姉ちゃん……」

 「大丈夫……マスターにまた直してもらえば……」

 ロウとロワが姉に被さっているデルバドを弱々しく退けようとすると、突然ロウの方に拳が勢いよく迫ってくる。

 「えっ?」

 考える暇もなくそれに殴り飛ばされると、次は裏拳紛いにロワに拳が近付き力強く吹っ飛んだ。

 「くっ……まだ生きてるんですか?しぶとい……」

 「がっ……ああぁぁ……おれ、しぬ、かくじつ。けど、てき、は、みちづれ!」

 ロウは血を流しながらそう叫ぶデルバドを恨めしそうに見つめる。

 「どうせ死ぬんだ。だったら!最後まで付き合ってあげるよ!貴方が死ぬその時まで逃げ切るって形でね!」

 ロワが高らかに宣言すると、ロウもそれに続く。

 「かっこ悪いね。けど、それしかないか。ほんとは、姉さんの敵討ちをしたいけど、こっちも自分の体が何時までもつか分からないし」

 とうとう壊れ始めたのか、ロウの右腕はぷらぷらと揺れている。

 「させ、ない!」

 一瞬にして距離を詰められ、振り上げた拳がロウに迫る。避けようとして足の反応が少し遅れるが横に倒れる様に回転し受け身を取りながら動いてぎりぎりの所を躱す。すぐに立とうとするが立ち眩みのような異常が発生し膝をついてしまう。攻撃されると思いデルバドの方を見ると、同じように膝をついて苦しそうにしている。

 「どっちも、死にかけ壊れかけ……どっちが先に動かなくなるやら」

 「うごかなく、なる、そのまえに……さきに、ころす」

 「壊すではなく、殺すですか……」

 「おれが、にんげん、なら、おまえらも、にんげん」

 「ふっ……そうですか」

 ゆっくりと同時に立ち上がる二人だったが、急にデルバドが飛び掛かってくる。回避しようとするが、突然足との接続が切れその場に倒れてしまう。

 「こんな時に……!」

 迫りくる攻撃にどう対処しようか迷っていたその時

 「いゃおらぁ!」

 物凄い勢いでロワが体当たりをしてそのまま一緒に転がっていく。

 「ありがとねロワ。助かった」

 「もーへとへとだよー」

 「泣き言言わない。来てるよ」

 「おっ」

 すぐに立ち上がったデルバドが上から打ち付けるように振った拳を、寝転がったまま足の火を一瞬だけ思いっきり噴射して滑るように避ける。

 「もう燃料も無いや」

 「それじゃ、これからは自分の足で逃げないとね」

 足裏の穴からプスプスと情けない音を出して、ロウはそれに苦笑しながら返す。

 ロワの首根っこを掴んで一緒に後方へと飛ぶ。そこにデルバドの拳がくうを切る姿が見えた。

 「ほら。さっさと立つ」

 「ぅえーでもさー見てよあれ」

 言われて前を見ると、片膝立ちをして息をするのもやっとの様な姿のデルバドが見える。

 全てを察したロウは声をかける。

 「何か、残す言葉はありますか?」

 「……」

 デルバドは目の前が暗くなっていく最中に、にっこりと笑いながら答えた。

 「おれを、にんげん、だと、みとめて、くれて、ありがとう」

 「どういたしまして」

 ゆっくりとその場に倒れ瞳を閉じる。

 (みんな。みんな、いがいに、おれのこと、にんげん、だって、みとめて、くれた、ひとたちが、い、たよ……)

 そう心で報告しながら、デルバドは静かに息を引き取った。それを見送った二人は、深く溜息を付く。

 「はぁ……これだけ壊れてると、お嬢様やマスターに怒られて泣かれちゃうね」

 「そうね」

 「ロアお姉ちゃん……」

 「大丈夫。マスターが何とかしてくれる。信じましょ」

 ロウはそう言うと、視界の端に何かを見付ける。

 「ん?これは……」

 それに近付き拾い上げると、小さなメモリーチップのようだった。

 「ふふ……後は、本当にマスター次第のようだね」

 「えー?」

 「何でもない。ほら、自分達の状況を確認したら、サリアお嬢様の援護に行くよ」

 「無理だよー。足手まといにしかならないよー」

 「盾ぐらいにはなるでしょ」

 「とかなんとか言って、動けるのー?」

 お互い顔を見合わせて自分達の足を動かそうとしてみる。とてもぎこちなく、体の中のあちこちで軋む音も聞こえる。

 「……お嬢様とマスターには悪いけど、休憩させてもらおうか」

 「そうしよー」

 二人は寝転がって天井を見ながら招集がかかるまで大人しくしている事に決めた。

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