セッ○スしないとでられない部屋
「『みたい』っていうか、ここはきっと『セッ〇スしないと出られない部屋』ね」
「いや……え? 何を言って……」
「あっ、ごめんなさい、コウジさん。私ったら変な事を」
突然意味不明な事を言い出した葛葉メイ。訝し気な視線を向けるコウジにメイは慌てて謝った。どうやら正気に返ったようだ。
「部屋じゃないから『セッ〇スしないと出られない世界』ね」
返ってなかった。
『コウジとか言ったっけ? あんたちょっと考え直した方がいいわよ』
言い返せないコウジ。
「いい? よく考えてみて、コウジさん」
しかしメイは追撃の手を緩めない。
「この場合三つのケースが考えられるわ。まず一つ目、ここが夢の中だった場合。夢の中でセッ〇スしてもパンツがガビガビになるだけで特に問題ないわね。次に二つ目、ここが『セッ〇スしないと出られない世界』だった場合。セッ〇スをすればここから脱出出来て万事解決。何の問題も無いわね。そして三つ目、ここが前述のどちらでもなかった場合。まあ脱出は出来ないけれどちん〇んが気持ち良くなるわ。やはりデメリットはない」
むふー、っとメイの鼻から大きく息が吐きだされる。
彼女としては完璧な論理展開を見せてドヤ顔、といったところなのだろう。コウジはドン引きである。
『どんだけセッ〇スしたいのよこの淫獣が』
「いや……」
沈黙を守っていたコウジが口を開いた。
「しかし、セッ〇スをしないと、人類は生まれてこないわけで……」
折れた!
「行きましょうコウジさん! すぐそこに私のアパートがあるわ。ちょっと散らかってるけどこの際贅沢は言ってられない。善は急げよ!!」
『やめろ! この世界でそんな汚いことするなんて許さないわよ!!』
しかしここでメイの眼光がギラリと光った。
「そんなに嫌なら、この世界から外に追い出したら?」
なんと、『セッ〇スしないと出られない世界』ではなく『セッ〇スしようとすると追い出される世界』だったのだ。
ぐだぐだ揉めているうちに夜も大分更けてきた。車の一台も走っていない町は静寂が支配している。そんな中、メイとヤニアのにらみ合いが続く。(ヤニアは姿を見せていないので正確にはにらみ合いではないが)
「そもそもあんた、自分は潔癖みたいな言い方してるけど、既婚者よね」
『!! なぜそれを!?』
「自分は子供産んでおきながら、他人には反出生主義みたいな態度取りやがって……勝手な奴ね」
もちろんアスカの事である。どうやらヤニアの方はアスカの存在に気付いていなかったようで、このメイの発言には大いに動揺を見せている。