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#05 服を買うとは聞いてたけど下着を買うとはひとことも聞いてない。

お久しぶりです()

「とうちゃーくっ!」

「いやぁ長かった」


 僕たちを乗せた車は、家から少し離れたところにあるショッピングモールに着いた。


 「少し離れたところ」というのは、僕がお願いしたからだ。

 ほんとはもっと家の近くにもあるんだけど、もし知り合いとかがいてばったり会っちゃったりしたら嫌だし……。

 

「ここに来るのも久しぶりだわぁ」

「あれ?お姉ちゃんここ来たことあるの?」

「ん?何回かあるよ?だから任しときな!」


 そう言って胸を張るお姉ちゃん。

 どこがとは言わないけど、さらに強調されてなんだか敗北感を覚える。


「なつ姉、実は私も来たことあるんだよね〜」

「そうなの!?」

「あー、たしかあの時はあんたも(荷物持ちに)誘おうと思ったんだけど、さすがに可哀想かなぁって思って2人で行ったんだよねー」

「ねー」

「そうなんだ……待ってかわいそうって何?」

「ふふふ……それはこれからわかるよ……」

「楽しみだなぁ……」

「なんか僕の知らない間に話進んでない??」

「まぁナツキはとりあえず私の後ろに着いてくればいいからさ」

「女の子ならみんな通る道だからね」

「えぇ……なにそれ……」

「なつ姉に似合うのたくさん探してあげるからね!」

「そろそろ行くわよ〜」

「「「はーい」」」


 こうして僕らはお店の中に入って行った。


 そして数分後、僕が感じていた不安は見事的中することになる。







「そういうことかぁ……」

「そういうこと☆」


 モール内を少し歩いてとあるお店の前に連れられてきた僕は、膝から崩れ落ちた。

 あ、実際にやった訳じゃないよ?あくまで比喩ね?

 

 ガラス張りの入口の向こうはカラフルに色づいた布が陳列されていて、中にはマネキンに装着されているものもあった。


 もうおわかりだろう。

 下着のお店。通称ランジェリーショップであった。



「僕がここに入るの……?え無理」

「なにを言ってるの。今日はナツキの服を買いに来たのよ?」

「え……?だから服って……」

「服に下着が含まれてないわけないじゃない!」

「そうですよねすみませんでした!」


 お母さんに諭されてしまっては、これ以上何も言えない。

 仕方なく店内へ足を踏み入れる。


「うわぁ……なんかすごくいけないことをしてるみたい……

ていうか僕がここにいていいの?

変態さんだって思われない?」

「今のナツキはどっからどーみても女の子だよ。それもとびきりかわいい」

「なつ姉おどおどしてるのもそれはそれで小動物っぽくてかわいいけど、もうちょっと堂々としてた方が挙動不審じゃなくなるよ」

「う、うん……」


 冬華に言われた通り少し背筋を伸ばして歩こうと思った次の瞬間、前から他のお客さんが歩いてきて、僕はお姉ちゃんの背中に縮こまる。

 

「やばい……ナツキがかわいすぎる」

「なつ姉ほんとに小動物みたい。まぁ兄としてはどうかと思うけど」

「今は姉だからノーカンで……」


 そうして少し歩いている間に、僕たちは目的とする売り場に着いた。

 ……入口の方にあったのよりだいぶシンプルでいいんじゃないかな。まだ目が慣れないけど。

 それよりも問題は。


「これは……えっと……どれを選べば……」

「好きなのを選べばいいと思うけど?サイズならさっき伝えたので選んでね!」

「えっと……種類が多すぎてどれがいいかわからないというか「つまり私たちがなつ姉に選んでいいってことだね!」まだなにも言ってないよ!?」


 いや……まぁできるならそれでお願いしたいんだけどさ……。


 僕がそれを言った瞬間、2人は目を輝かせて散らばって行った。……いや、お母さんもだから3人だった。


 僕はその場でぽつんと残されてしまう。

……えっと……どうすればいいんだろう……。


「なにかお探しですかぁ〜?」

「ひゃっ、ひゃい!?」


 なんてぼーっとしてたら店員さんに話しかけられちゃったえっとえっと、どうしよう……?


「あっ、あの……僕、こういうとこはじめてで」

「僕っ子だ……(ボソッ)」

「……えっ?あっ、それで、お姉ちゃんたちが今選んでくれてて……」


 とにかく怪しまれないように必死に言葉を紡ぐ僕に、店員のお姉さんはさらに追撃を加えてくる。


「そうなんですね〜。はじめて、ということはサイズ測ったこととかもない感じですかね?

良ければフィッティングさせて頂きますよ〜?」


 フィッティング……ってあれだよね、胸のサイズを測るやつ。……ということは、触られたりする?

 ほんとは男だってバレたりしないかな……

 僕にはまだハードルが高すぎるよぉ……


「えっと……お姉ちゃんが測ってくれたので……今日は……大丈夫ですぅ……」

「あ〜そうなんですね。失礼いたしました〜」


 そう言って店員さんは離れて行った。

 ふぅ。これでひと安心……


「なーつきっ!」

「ひゃぁ!?」

「なつ姉おどろきすぎ〜」


 そう気を抜いた瞬間にお姉ちゃんに飛びつかれて、僕は素っ頓狂な声を上げてしまった。自分の声ながらかわいかったからまぁ良しとするけど。

 いつの間にか帰ってきていたお姉ちゃんと冬華の手には、たくさんのブラジャーとショーツが握られていて、こちらにじりじりとにじり寄ってくる。


「何着か持ってきたんだけど、とりあえずつけてみて」

「わかったよ……ってなんで入ってくるの!?」

「なんでって、あんたつけ方わかるの?」

「なんとなくは……えっと……わかりません……」

「ほら言わんこっちゃない。今回は特別にやさしいやさしいお姉ちゃん様が直々に付け方を教えて進ぜようでは無いか」

「ははぁ……ってなんで冬華まで入ってきてるの!?」

「だって美少女のなつ姉がブラつけて恥ずかしがってる顔とか絶対そそるじゃん」

「やだこの子怖い!?」

「大人しく上着を脱げ〜」

「ちょっまっ、それぐらいは自分でやるからぁっ!!」






「ありがとうございました〜」


 お会計をしてくれたさっきの店員のお姉さんに見送られてお店を出る。

 結局お姉ちゃんと冬華が持ってきたものは全部買わされ、ついでにお母さんが持ってきたショーツやキャミソールなどもぜんぶ買わされてしまった。


 うぅ……女性モノの下着って結構お高いんだね……。

 お父さんから貰ったお金の半分以上が飛んで行った。


「まぁそれだけあればしばらくはもつっしょ!」

「あんなに買わなくても良かったじゃん……下着なんてどうせ見えないんだし、それこそ同じのを3つか4つぐらい買えば良くない……?」

「下着は服と同じだって言ったでしょ?あんた毎日毎日同じ服着てる人いたらどう思うよ」

「それは……たしかに」

「それに、数があればその日によってどれにしようかなって迷ったり、気分やコーデによって変えたりできるんだから。せっかくお金たくさんあるんだから買っとかなきゃ損よ」

「それはそうかもだけど……ほ、ほら、すぐ大きくなるかも!?」

「ナツキのくせに生意気な……まぁでもそうなったら仕方ないから買え変えなきゃだね。早めに言いなさいよ?合わないの我慢して付けてても苦しいだけだから」

「アキ姉は経験談だもんねぇ〜」

「うっさいわ」


♪〜


 そのとき、モール内に1時を知らせる音楽が流れる。

 もうそんな時間だったんだ……。そういえばけっこうお腹空いたかも。


「服見る前に、なにか食べる?」

「やったぁっ!あっ、フードコートあるよ!行こう行こう!」

「そうねぇ。行きましょうか」


 こうして僕らはフードコートに向かうのだった。

 なに食べよっかなぁっ〜!

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